さらに何かを尋ねようとしたとき、俺たちは、笑い声を聞いた。
 湖面を吹きわたる哄笑。俺たちは辺りを見回し、背後を振り返った。
 ……俺は何を見つけちまったんだろう。
 高い木が生えていて、その木のてっぺんに、へんなやつが立っていた。
 真っ赤なボディースーツ。仮面。肩からかけた白いギター。青いスカーフが風にな
びいている。
 射手を見ると、目が輝いていた。
 獅子を見ると、なんか嫌そうな顔をしていた。
 俺は獅子のほうに尋ねた。
「なんだありゃ?」
 獅子はやっぱり嫌そうに答えた。
「孔雀という。むかしのグループの仲間だ。俺が今の家族に参加する前の」
 そりゃ初耳だ。獅子はむかし、川田ん所でもうちでもない、第三のグループに居た
のか。
 射手が移動した。高い木のてっぺん。ヒーロー風な孔雀の横に。
「なあ! おまえ何やってんだ?」
 とつぜん現れた射手の大声にびっくりした孔雀は、あわてた拍子にバランスをくず
し、木から落ちた。
 俺は反射的に孔雀を止めた。
 空中で、孔雀はバタバタと手足を動かした。もがきながら俺に言った。
「バカモノ! 余計なことをするな!」
 俺はきょとんとした。
 横で獅子が溜息をついていた。
「牡羊。いいから放っておけ」
 孔雀がわめく。
「聞こえたぞ獅子! 馬鹿とはなんだ馬鹿とは! 馬鹿はおまえだバーカこの悪人め!
 いますぐ私を木の上に戻せ!」
 とりあえず俺は、言われたとおりに、馬鹿を木の上に戻しておいた。
 射手は枝のひとつにぶら下がったまま、木の上に戻される孔雀を待ち受けていて、
こんなことを聞いていた。
「それで、おまえ誰?」

最終更新:2008年08月31日 18:21