獅子は考えると、首を横に振った。
「それは違う。あんなものと、それを同じにするな」
「ってことは、おまえも好きだったのか」
「ああ」
獅子は当然、水面に突き出た竹筒に火をつけた。
孔雀はもがきながら浮上し、げほげほ言ってた。
俺はもう孔雀が哀れになってきたので、孔雀の姿を空中に固定し、俺たちの手前ま
で引き寄せると、手足を大の字に引き伸ばした。
俺は獅子をみつめた。視線には、もうラクにしてやれ、という意味を込めたつもり
だ。
そして、獅子の全身全霊を込めたアッパーパンチをアゴに受けて、孔雀は泡をふい
て気絶した。
射手が拍手した。
「すげえ。いいコンビだなーおまえら。格好いいなあ」
俺は悲しい気持ちで射手に問い返した。
「おまえ何も感じねえ? こいつを見て」
「哀れなくらい馬鹿で、可愛いと思うぜ。悪いやつじゃないんだろ?」
最後の問いは、獅子に向けられていた。
獅子は、うなずいた。
「悪くはない。馬鹿なだけだ」
「獅子はなんだって過剰だから、好かれるときも過剰だし、好かれすぎて恨まれると
きも過剰なんだよ」
まえに獅子は、射手を欠落していると言っていた。
そして射手に言わせりゃ、獅子は過剰なのか。
「どうするよこいつ。放っておいていいのか? 生きてる限り獅子を狙ってくる気が
するけど」
「かまわん」と獅子が言った。「そのたびに灸をすえてやればいい」
というわけで、孔雀を放っておいて、三人で家に帰った。
すると家では、皆が待ち構えていた。
部屋から消えた俺を心配した山羊が、俺が置いていった針と糸から、俺たちの行動
を読んだらしいのだ。
最終更新:2008年08月31日 18:26