俺の疑問をカラスの笑顔がとろかしてしまう。すっげぇ格好いいなと思う。
俺もカラスが好きだ。ああ、こんなやつになら、何をされてもいいような……。
蠍が言った。
「牡羊。嘘だ。気づけ」
すっと頭が冷えた。
俺は気づいた。俺はカラスに嘘をつかれた! 当たり前だっ、なんで俺がカラスに
惚れられなきゃならねえんだ!
戸惑う俺にカラスが言う。
「でもぼくは牡羊を愛してるし、牡羊もぼくが好きだろう?」
ああ好きだ。なんでかわかんねーけど、今このときから、俺はカラスのものだ。
蠍が言う。
「嘘だ。魅了の能力だ。牡羊はカラスが好きじゃない」
そうだ俺はカラスが好きじゃない。なんだと能力だと。みりょーって何だ畜生。
しかしカラスがまた、
「能力でもいいじゃない。ぼくはきみを愛してるんだから」
と言ったので、なんか能力でもいいような気がしてきた。
この気持ち。熱くて、気持ちよくて、ふわっと体が舞うような感覚は、本物だと思
う。
頬染めている俺にまた蠍が言う。
「カラスは牡羊を愛してない。牡羊はカラスを好きじゃない」
※※※
こんなに動きの無ぇ戦いは初めてだ。
三人で、テーブルについて、そのうち二人がぼそぼそ喋ってるだけ。
俺は赤くなったり青ざめたりしてるだけで。
喫茶店のお姉さんが水をそそぎに来てくれた。黙ってコップを取り、水を足して、
何も気づかずに去っていった。
俺は緊張と弛緩をくりかえし、混乱していた。息が荒くなり、心臓がバクバク言っ
て、熱いのに悪寒がした。
最終更新:2008年09月15日 17:16