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「まあ気にすんなよ。俺でよければ、帰りのキスぐらいしてやるから」
「奇妙な能力だ。それで、この時代のぼくは、きみの弟なのか?」
「いや。今の水瓶は俺より年上だから、俺のほうが弟だよ」
「ぼくはずいぶん未来に来たんだな。当然、きみも何かの能力を使えるわけだね」
「おう。ものを動かせるんだ」
「それは普通だよ。……ああ、ぼくは川田くんのキスでここに来たんだけど、彼にも
事情を説明するべきだろうか。きっと、とつぜん消えて驚いている」
 俺は驚いた。
「川田ぁ!?」
「知ってるのか。それでは彼は、ひょっとして、家族……」
「んなわけあるか! 川田は敵だ! 俺らあいつにひどい目に会わされてるんだよ!」
 それから今までのことを話した。俺が体験したことや、俺が聞いた話を。
 水瓶は戸惑っていた。
「どうも、信じられない。彼はそんな人間じゃない。ぼくの友人なんだ」
 それから何か、弱ったみたいな目を、俺に向けてきた。
「す、すまないが、ぼくを帰してくれ。川田くんに確認してみるから」
 真っ赤な顔してるのが妙にかわいい。俺は了解して、水瓶の唇に、自分のそれをち
ょんと押し付けてやった。
 水瓶の姿がにじみ、消え、古い教室には誰もいなくなった。
 俺は帰ろうとした。風景に背を向けようとしたその瞬間、世界がにじんだ。
 また水瓶が立っていた。微妙に髪型がかわっていた。顔も少し老けてた。
「やあ、久しぶりだね、牡羊」
 10秒ぶりくらいだと思うが。
 水瓶は興奮した様子だった。
「やはりきみの勘違いだよ。あれから暇を見ては川田くんと話し合ってるんだ。彼は
そんな人間じゃない。だいいち彼は能力者じゃない」
 俺は首を横に振った。
「能力者じゃないのは知ってるよ。おまえの時代では川田はいいやつなんだろう。で
もって将来、おまえを裏切るんだ」
「馬鹿な! いくら将来の弟といっても、友人への侮辱は許さないぞ」
 へえ。いつも飄々としているけれど、実は友達思いなやつなんだな、水瓶って。