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 なら……、なら、俺は、今ちょっと思いついたことを、水瓶に言えるんじゃねえだ
ろうか。
 言っていいのか。言うか? むしろこれは、言うべきなのか。
「あのよ水瓶。俺が怒ってるのは、いまの川田だ。俺は嘘は言ってねえ」
「ぼくだって感情的になっているわけじゃない。客観的に判断しているつもりだ」
「おまえならそうだろうな。ってことはだ。むかしの川田がいいやつなのなら、きっ
と今の川田に変わっちまうような、なにかの理由があったんだ」
「……」
「おまえ川田と友達なんだったら、そっちの川田をちゃんと守ってやれよ。性格変え
ちまうような出来事から」
 こっちの水瓶が嫌がってる「歴史を変える」ってのは、こういうことなのかもしれ
ない。
 けど、俺はためらわねえ。
 水瓶が川田ってやつを、いいやつに変えてくれるんなら。それによって、みんなが
困らずにすむんだったら。
 それによって、俺たちは家族ではなくなっちまうのかもしれねえが……、でも、や
るのが正しいと俺は思うんだ。
 水瓶は黙って考え込んでいた。それから顔をあげて、俺を睨んだ。
「帰してくれ」
 二度目のキスで水瓶は消えた。
 俺は、待った。水瓶はたぶんまた来る。また少し年を取って。
 予想どうり水瓶は来た。今の水瓶にずいぶん近い老け具合になってた。
 そして水瓶の表情は、暗かった。
「久しぶりだな、牡羊」
「俺にとっちゃ10秒ぶりくらいだよ」
「そうか。しかし僕にとっては、本当に久しぶりなんだ」
 水瓶はしばらく黙って、辺りの様子を見回した。なにかを懐かしむように。
「この光景も久しぶりだ。古くなってしまった理科室。……今まで気づかなかったが、
よく見てみれば、この時代ではもう、使われていないようだな」
「もうすぐ建て替えさ」
「川田がここの生徒だったんだ。僕は別の学校だった。ここには学校どうしの交流で
よく訪れていたよ」