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207 :やぎの夏休み(ことり池攻略):2008/09/30(火) 21:37:29 ID:???0

 ことり池攻略の日、川田地方の朝は曇りだった。
 平野部よりも標高が高いこの地方で山羊は涼しい朝を迎えたが、起きるなり窓の外の明るさ
で天気がよくないことを知った彼は出発を少しばかりためらった。今日は神社からことり池
までかなりの距離を一人で歩かなければならない。どんなに途中で疲れても、最低でもバス停
まで歩かなければ自力で家には帰れないのだ。
「雨にぬれたらやだなあ。ザーッて降るのかな」
 明日に延期してもいいけれど……そこまで考えて、思い直す。もし本当に雨が降るのなら
家の中にいたくない。することがなさすぎてまた考え事の虫が畳の隙間からわいてきそうな
気がするから。
 結局リュックの中に折り畳み傘を追加し、ビニール袋ももう少し余計に入れた。先に起きて
いた乙女おじさんが窓の外を見上げ、早駆けするねずみ色の空に山羊の身を気遣う。
「ちょっと天気がよくないな。今日はやめておくか? 明日以降でもいいんだぞ」
 山羊は頑固に首を横に振った。
「いく。今日って決めたから」
「そうか。雨が降ってきても小降りならいいが、大降りになりそうならいつでも電話しなさい。
一人だからな。危なそうなときには早めに帰ってくるぐらいでちょうどいい」



 湿気た空気にまかれた林が神社の石段のところで一瞬切れる。その神社の長い石段を降りて、
山羊は背中に背負ったリュックサックをもう一度しょいなおした。自作の攻略マップの他に
乙女おじさんから借りたこの辺の地図もある。ことり池までは大きな車道沿いに歩いて、
あとは大きな看板を見ればたどり着けるということらしい。
 遠くまで続く車道を見通しながら、少しの不安と一緒に歩き出した。虫たちは一度しかない
夏を無駄にすまいと今日も忙しく鳴いている。車道沿いの林は誰が入っても遠くまで見える
ように木が間引かれ、開かれた雰囲気をかもしていた。車道沿いに続く山羊の遠足はその
天気にもかかわらず、歩いてみると案外見晴らしは悪くないのだった。
「お昼までにそば屋さんに行けるかなあ。雨ふらないといいな」