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「あれが無いと何も見えない。仕事にならない」
「今日はゆっくりしてたらいいんじゃねえの」
「そうはいかない。時間もないし、出来る準備は完ぺきに整えておかないと」
 言いながら乙女は身を起こし、宙を睨んだ。
「……山道の工事が、終わってる。道具を撤去している。やはりルートの変更は無い
から……」
 俺は、驚いた。いま制限で倒れたばかりなのに、また能力を使ってるのかこいつは。
 ベッドに飛び乗って手を伸ばし、乙女の目をふさいだ。けどそれじゃ意味が無いっ
てことも知ってた。
 だからとりあえず、くすぐっておいた。
 ひとしきり乙女を暴れさせたあと、もう何も見てないと確認してから、俺は手を離
した。
 乙女は肩で息をしつつ、俺を睨んだ。
「なんなんだ、いったい」
「今日は休むんだよ乙女は。神経が参ってるんだから」
「いま思い切り暴れさせておいて、休めもくそも無いだろう」
「体は大丈夫なんだろ? あんたの制限は。だから、心を休ませねえと」
「……何かしてないと苛々する。働かせろ」
「駄目だ」
 乙女はむっとしていたが、俺は動揺することなく乙女を見返した。
 やがて乙女はあきらめたようだった。ぱたっと上体をベッドに倒すと、体を向こう
に向けてしまう。
 そのまま「視て」るんじゃねえだろうなと観察したが、そんな様子も無かったので、
俺は椅子を引き寄せてその上に座った。
 腕組みしながら決意した。ぜったいに、乙女に仕事をさせねえと。
 そのまましばらく、乙女の背中を睨みつづける。
 乙女はじっと動かなかったが、ふいにこちらを向いた。
「蟹は今日、遅くなるんだ」
 そういや、そうだ。蟹は食料その他の買い出しに出ているのだが、その量が12人
分だから、一日仕事になってしまうのだ。