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「いーじゃねーか。大きめに切ったんだから崩れても」
「出来上がったときに不恰好になるだろう」
 俺は鍋の中身を取り出して、角っこを削っていった。
 やがて角を取り終え、すべての材料を放り込み終えて、鍋に水を加えた。
 調味料の器を持って、中味を鍋にあけようとしたら、また乙女の声が飛んできた。
「早い」
「……」
「火をつけて、煮立ってから三分後。でないと味を含まなくなる」
 なんか、イライラしてきた。
 しかし俺は黙って従った。乙女の好きにさせねえと。リラックスさせてやらねえと。
 大鍋は沸騰するまで時間がかかった。俺は腕組みして待った。
 やがてぐつぐつ言い始めたので、醤油の瓶を握りつつ時計を見て、三分待って、い
ざ投下しようとしたら、また声が飛んできた。
「順番」
「なんだよ!」
「甘いものが先。砂糖とみりん。次に塩。醤油は材料が煮えてからだ」
「……」
「しかもちゃんと量を計ってない。目分で入れると味が狂う。辛すぎてはどうしよう
も……」
 俺は乙女の首を抱くようにして台所を出た。
 ロビーを横切る途中で、乙女が椅子に腰をぶつけたので、いったん立ち止まった。
 乙女は痛そうに腰を撫でながら、俺を見た。
「どうしたんだいきなり」
「乙女、やっぱり寝てたほうがいい。あんた目を開いている限り、なにかにピリピリ
し続けるから」
 乙女は口を開いて、なにか言いかけ、その言葉を飲み込んだ。
 それから皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「能力と性格には関係があると思うか?」
 いきなりの話題変換に驚いた。
 だが乙女は、いま腰をぶつけたばかりの椅子に座って、俺の返事を待っていた。
 だから俺も別の椅子をひいて、そこに座った。