※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 射手は辺りを見回すと、大声で叫んだ。
「天秤ー。どこだー!」
 がさがさと足音がした。
 俺は警戒して身構えた。距離を取って、目前に意識を集中する。
 しかし表れたのは天秤だった。どこかに置いてあったらしい服のボタンを止めつつ、
こちらに歩いてくる。
 そして天秤は、首をかしげた。
「まあ大声でぼくを呼んでしまった時点で、これを言っても意味が無いんだけど。大
きな音を出すのは、やめたほうがいいんじゃないかな」
 射手は、肩をすくめた。
「わざとやってるんだ。予定に無い行動」
「なぜ?」
「作戦らしいぜ。俺らがこうして、相手の行動を読んで行動しても、相手はさらにそ
れを読んでるから、その予定をさらに……。わけわかんないな」
「うん。わからない」
「井戸マークに○×書いて遊ぶゲームに、勝手に△をつけてみよう、みたいな……」
「うん。やっぱりわからないから、早く帰ろう。迎えに来てくれたんだろう?」
 射手はなにも起こらないことが不満みたいな感じだった。
 俺も拍子抜けはしたが、安堵もしつつ、手招きをする射手に向かって歩いていこう
とした。
 そのとたん、世界が暗転した。
 俺は暗がりで、土と枯れ葉にまみれながら呆然としつつ、一瞬で敵の正体を悟って
いた。
 頭上を見上げる。俺の背よりはるか遠いところに、落とし穴の出口が見える。
 そして、さらにその向こうには、交差しあう木の枝が見えて、そこに掴まってこち
らをのぞき込んでいる、馬鹿の顔も見えた。
「はっはっは! 引っかかったな悪人め!」
 どっと緊張感が抜けた。孔雀かよ。
 俺は立ち上がってケツの土をはらうと、穴を這い上がろうとした。
 しかし湿気をたっぷり含んだ土はすべる。仕方が無いから足元の土を持ち上げるか
と思ったところで、上方の出口に、天秤の顔がのぞいた。