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「僕は獅子の過去をすこし知ってる。なぜ獅子がむかし何故、自分がリーダーだった
グループを抜けたのか知ってるかい?」
 俺は首を横に振った。本当に知らなかったからだ。
 天秤は裸のからだを、俺のほうに向けた。
「裏切り者が出たからだ。メンバーの誰かが獅子を裏切った。そして裏切り者の正体
は不明なままだ。獅子としては誰も疑いたくなかったんだろうね。狙いが自分なのは
明らかだったから、グループを解散するしかなかったんだよ」
「その裏切り者が、孔雀かもしれねえって?」
「あるいは。だから彼を家族に会わせるのは反対だ。仲間を裏切るような人間は、危
険だ」
 天秤の言葉が、自嘲に聞こえたのは、俺の気のせいだろうか。
 俺は天秤を説得することをあきらめた。そもそも向いてねえ。俺は俺の言葉でしか
語れねえ。
「天秤! 頼むからやめてくれ。この通りだ。天秤が正しいのかもしれねえが、俺は
馬鹿だから判断できねー」
「僕は牡羊が馬鹿だとは思わないけど、自分が正しいとは思っているよ」
 駄目だ。俺は射手に怒鳴った。
「家に飛んでくれ射手! 孔雀を連れて!」
 射手は素早く納得してくれた。さっと姿を消す。
 俺はほっとした。地面に落ちていた服を拾い上げて、天秤に差し出す。
 天秤は受け取らず、困った顔をした。
「強引だね、牡羊」
 俺はなんか、恨めしい気分になった。
「うまく言えねえけど、孔雀は違うと思うんだ。勘っつーか」
「僕を信じてはくれないんだな」
「信じてる。だから弱ってんだろ」
「……」
「けど天秤が正しいとしても、正しいのと、良いのとは、ちょっと違うと思うんだよ」
「……」
「うまく説明できねえ! あーもう、こういうときって何をどう言えばいいんだ?」