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 髪をかきむしって考えていると、なぜか天秤は笑った。
 そして俺の肩を抱いた。
「僕が悪かったよ。すこし判断を急ぎすぎた。すまない。本音を言うとね、焦ってい
たんだ」
 焦る? 天秤が?
 天秤はなんか、はにかむみたいな顔をしていた。
「うん。焦ったんだな。牡羊がここに来るなんて予想外だったしね。これ以上、家族
ときみを、危険な目には会わせたくなくて」
「敵を焦らせるための作戦だったんだけど」
「それで僕が焦ってれば世話は無い。本当に悪かった。すこし歩いて頭を冷やそう」
 そして天秤は宙を見上げた。
「乙女、視てるかい? 僕らは歩いて帰るよ」
 ふたたび差し出した服を、天秤はやっぱり受け取らなかった。「実は裸のほうが歩
きやすいんだ」と言って。
 たしかにそうみたいだ。裸の天秤には障害物が無い。樹木を通り抜け、落ちてくる
木の葉を透過させ、ただまっすぐに歩いていくだけでいい。
 幽霊か、妖精か、そんなもんにも見える。正直、綺麗だ。
 体力には自信があったんだが、ついていくのに苦労した。
 汗をかきつつ思った。本当は綺麗な天秤なのにな、って。

色々編その1です。