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 牡牛は馬鹿正直にうなずいていた。
「思ってた。銃で狙撃したら、たぶんもう勝ってた」
「なぜそうしなかったの」
「あんたの歌が好きだから。死んだら、もったいないから」
「嬉しいけどね。だけどその判断のせいで、きみが死ぬはめになるかもしれないよ?」
「それはない。あんたの能力は相手を利用するためのもので、相手を殺してしまって
は意味が無い」
「そこまで読んでいたわけだ。頭が良いな」
 牡牛は礼を言うように、すこし頭をうなずかせただけだった。
 ……なんだかなあ。頭が良いっていうのかそれ。頭が悪いふうにも感じないか。
 むしろ俺は牡牛って、肝が据わってんだか、にぶいんだか、よくわからないやつだ
と思うんだ。
 カラスは微笑み、俺を見た。
「川田の話だと、ぼくは何事も無く、きみらの家まで辿りつけるはずなんだけどね。
その予定がこうして狂っているということは、きみの家族が未来を読んだのかな」
 カラスのほうは、本当に頭が良いんだと思う。
 俺はカラスのバイクを指さした。
「あれに乗って引き返す気、ないか?」
「そんなことをしたら、ぼくが川田に殺されてしまう」
「あんたは蠍の大事な人だったわけだから、おれ傷つけたくないんだよ」
「現在の大事な人であるきみが、過去の人であるぼくを心配する必要は無いだろう」
 そのへんは完全に誤解なんだが。
 カラスはなんか、戦う雰囲気なんかぜんぜん感じられないような、落ち着いた様子
を崩さなかった。
「……ぼくの制限はもう知ってるよね。ぼくは残念ながら、人を大事に思う感情を持
っていない。それを持てたのは、蠍がそばに居た時だけだった。しかしその時の気持
ちも、今のぼくはもう忘れている。にもかかわらずぼくの能力は、人にその気持ちを
強制する。矛盾だな」
 たしかに矛盾だ。本人にとっちゃ、面白くも何ともない能力だろう。
 そして俺らにとっちゃ、厄介な能力だ。