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 当たり前だ。そうしなきゃ、カラスが危ないじゃないか。
 俺が降下を念じると、牡牛はなんか格好よい形にカラスを抱いたまま、地に降り立
った。
 カラスも驚いていた。不思議がるように牡牛に尋ねる。
「聞いてもいいかな。どういうことか」
 牡牛はうなずいた。
「たぶん俺にとっては、あなたの魅了は意味が無いんだ。もともと俺はあなたが好き
だったから。あとは俺が、スピーカー越しの声だけでなく、あなたの実際の姿を知る
ことさえできれば良かった。あなたは自動的に俺の能力下に入る」
 手に入れたい、自分のものにしたい、食いたい触りたい感じたいという思いが、牡
牛の能力であると同時に、制限。
 もともとカラスの声に魅了されていた牡牛にとっては、さらなる魅了は意味が無い。
 むしろその魅了の力は、牡牛の欲望を深めるだけだ。
 だから牡牛が選ばれたんだ。牡牛は対カラスの戦いにおいて、かならず負けない資
質を持っていたから。
 牡牛はカラスを傷つけはしないだろうが、もうぜったいに、自分のものだっていう
思いは消さないだろう。
 俺は叫んだ。
「ずりーぞ、牡牛!」
「役得」
 牡牛はここぞとばかりに、カラスをギュウ抱きしている。
 愛情という感情を理解しないカラスには、まだ状況が飲み込めてねえみたいだ。不
思議そうな顔をしている。
「ええと、参ったな。残念ながらぼくは制限のために、きみの思いには答えられない
んだが」
 牡牛はあっさりと言った。
「関係ない。俺が好きだから」
 この野郎。
 俺は念を放って二人を引き剥がそうとしたが、牡牛はものすごい腕力で抵抗した。
 カラスが痛がったのでやめた。どうすりゃいい。この強敵からカラスを奪うにはど
うすればっ。