水星座三兄弟 ななす 2006/10/21(土)21:18

本スレ962さんの水兄弟設定で考えていたら萌えたので垂れ流します。長文スマソ。

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小皿に移した味噌汁をすすり、蟹は顔をしかめた。辛い。味噌が多かったようだ。
料理は得意なはずなのに、昨日見たあのことで、気持ちが動揺しているのかも知れない。
(蠍……まだ高校生なのに)
──昨夜、上の弟の蠍は、なかなか帰ってこなかった。
両親は銀婚式の旅行中だ。高校生の蠍が解放感を覚えて、学校帰りに遅くまで遊んでいるのも、ありだろう。
そうは思ったけれど、11時をすぎても帰ってこないとなると、落ち着かなくなった。送ったメールに「もうすぐ帰る。家の鍵は持っているから、構わずに寝ていて」という返信がなかったら、警察に捜索願を出していたかも知れない。
過保護と笑われても、長男の自分には蠍や魚を守る責任がある。いや、とにかく単純に、弟達の身が案じられてならないのだ。何か間違いがあったらと思うと、心が針を突き立てられたように痛む。
けれど昨日のあれは、どう解釈すればいいのだろう。
(どう考えても、キスしてたよな……それも、男と……)
テーブルに茶碗や皿を並べながら、蟹は昨夜見たことを思い返した。
蠍が帰ってくる姿を見るまでは心配で、起きていた。翌日の講義は、午後の二科目を受ければいいだけなので、気が楽だった。
車のエンジン音が家の前で止まったのは、蟹が魚の様子を見に行って、ずり落ちた布団をかけ直していた時だ。
慌てて、窓から道路を見やった。
停まった車の助手席から出てきた蠍の姿を認め、ああよかった、無事に帰ってきたと、蟹はひとまず胸を撫で下ろした。
けれども蠍を追いかけるように、運転席から派手な格好をした若い男が下りてきた。
そして蠍を抱き寄せ、キスをしたのだ。
もし蠍に拒む気配が見えたなら、自分は階段を駆け下り外へ飛び出して、男の手から弟を奪い取ったに違いない。
けれど現実に見た光景は、拒むどころか、男の背に腕を回して口づけに応える弟の姿だった。
(見なかったことにした方がいいのか? 蠍にもプライバシーはあるし)
昨夜は結局、足音を忍ばせて自分の部屋に戻り、寝たふりをした。だから蠍とは顔を合わせていない。
(でも男が相手で、何より蠍はまだ高校生なんだ。やっぱりそれとなく注意した方が……だけど『それとなく』なんて、どうやって……?)
考え込んでいた蟹は、階段を駆け下りてくる足音に気づかなかった。
「おはよ、蟹兄さん!」
「わっ!」
声をかけられ、しゃもじを取り落とすところだった。
「なんだ、魚か……」
「なんだってなんだよー」
口をとがらせて答えたものの、魚には深く気にした様子はない。スリッパを鳴らして洗面所へ走っていったあと、すぐに戻ってきて食卓についた。最近学校で飼い始めたというウサギに夢中の魚は、始業時刻の三十分以上前に登校できるよう、自分で起きてくる。
「いただきまーす。……おいしい。ボク、お母さんのより、蟹兄さんの卵焼きの方が好きだな」
母は焦げ付きやすいと嫌がって、砂糖入りの卵焼きを作らない。自分はそれぞれの好みに合わせ、魚には砂糖、蠍には塩味と作り分ける。それが理由だとわかっていても、弟の喜ぶ顔を見るのは幸せだった。
しかしいつまで魚は甘い卵焼きを喜ぶだろう。八歳違いの兄の目から見れば、まだまだ子供っぽいところの方が多いけれど、それでも来年はもう中学生になる。
味噌汁を飲み干して、魚が尋ねてきた。
「お味噌汁、今日は辛いね。……ねえ、蠍兄さんは、昨日ちゃんと帰ってきた?」
「えっ……うん、帰ってきた。いや、その、見てないけど……多分……」
頭の中にあの光景が蘇り、蟹はどぎまぎしながら答えた。
「どうしたの? 顔が赤いよ、蟹兄さん」
「な、なんでもない。……それより明日は秋祭りだから、友達と夜店に行くんだろう? ほら、イッちゃんとジロ君と。ずっと仲良しだもんな。小遣いは足りるか?」
無理矢理に話題を変えた。けれども小遣いと聞いて喜ぶかと思った魚は、悄然と顔を伏せた。
「夜店……行かないって言っちゃったんだ」
「え?」

最終更新:2007年10月10日 19:41