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混沌を孕んだ沈黙の中、みなが立ち上がる。
獅子が立ち上がるのを見て山羊も仕方なく腰を上げる。

じゃん、けん、ぽん。

一度ごとに喜びの声と失望の声が入り乱れ、人が減っていく。途中で負けて座る獅子。
遠くではわけがわからず勝とうとしている蟹、複雑な顔の蠍、
まだ事情が飲み込めずに流される羊と魚、天秤、何が起こるのかと訊ねる射手に答えない水瓶、
蔑笑とも冷笑ともつかぬ顔のまま観客にまぎれている双子と眠そうな牡牛がいる。
川田が観客の中の誰なのか、どこにいるのかは誰も知らない。

じゃん、けん、ぽん!

ざわめきと共に観客の視線が山羊へと集まる。
勝ち残ったのは山羊だった。思いがけぬ展開に呆然とする山羊に
獅子が意地悪い笑みを浮かべながら悠然と拍手を送る。思わず獅子を見る山羊。

獅「おめでとう。貴様が拒否すればあの男は多分犬の餌だが、どうするね」

舞台には裸でチンピラに取り押さえられたまま真っ青になっている乙女がいる。
前からと後ろからどちらがお好みですかと訊ねられ、言葉を失う山羊。
全員が山羊を注視する。

何があっても来るんじゃなかったという山羊の後悔は誰にも伝わらなかった。

山「ウォッカをくれ」

バーのマスターが静かにウォッカの入ったグラスをカウンターに置く。

山「違う。瓶ごとだ」

場内に淫靡な音楽が流れる。山羊はウォッカのグラスを一気に飲み干すと瓶を掴み
異常な歓声の中を乙女の待つステージへと降りていった。
乙女は絶叫しながら暴れ、チンピラたちに押さえつけられて仰向けにさせられた。
山羊は酒のまわった顔でステージに上る。
そして、初めて見る男の前に膝をつくと乙女を組み敷く形になり、ウォッカの瓶を
乙女につきつけて低くささやいた。

山「飲め。少しは楽になる」

乙女は恐慌を起こしている。暴れて、うまくウォッカを飲まないので
山羊は自分の口にしこたまウォッカを含むと彼の口を塞いだ。
山羊の口から酒を流し込まれる間乙女は裸で呻いて、屈辱に涙ぐんでいた。

山「済まない。できるだけ酔ってくれ。そうしたら何も気にならなくなる。
  きっと、忘れられるから」

歓声と光が雨のように降り注ぐ中で最初のまな板ショーが行われる。
ステージの上にいる二人の姿はまるで恋人のように見えた。
たくさんの観客たちにまぎれて、外野では羊と魚が二人してパニックに陥っている。
蟹の顔は青く、天秤に至っては白い顔をして倒れそうになっている。
蠍と水瓶は覚悟を決めているのか笑わない。双子と獅子は魔王のように笑ってショーを眺めている。
牛は下らなさそうに卓にうずくまり平然と眠っている。
そして水瓶の横では、射手が拳を握り締めぶるぶると怒りに震えている。