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続き。天秤と双子。
これで本スレと合わせて全員分ネタが出たかな、という感じです。
レス下さったみなさま、どうもありがとうございます。



狂乱の一夜が明け、海に朝日が差す。
船内の客の大部分はまだ眠っていた。しかし船内のビュッフェはこんなときでも開放されており、
窓際の一席ではリゾート用のジャケットを着た双子がのんびりと朝食を摂っている。
天秤が質のいい服を着て彼の前の席に座ったのは、そんな朝のことだった。

天「実は、牡牛は僕の兄なのです」
双「ふうん。それは初耳だ。それじゃあ君もギャンブラー志願ってことかな、少年」
天「いいえ。兄を連れ戻しに来た、だけです」
双「そして契約書のわからない部分も確認せずに判を押した。
  見たところ成人しているように見えないが、よく参加できたな。
  参加するだけでも子どもの小遣いじゃ話にならない金が必要だったと思うが。
  それはそうと、ここのハムサンドは美味いな。君も食べてみるかい」

双子の手からかじりかけのハムサンドを受け取りながら天秤は滑らかに話し続ける。
昨日あんなことがあったとは思えない楚々としたたたずまいを見せる少年に、
双子は密かに関心していた。

天「……正直楽に参加できたとは言いません。家の財産も底をつきかけています」
双「だろうね。俺もあいつを賭場で見るようになって長いけど、
  いつも勝っているようには見えなかった。あいつはギャンブラーじゃない。
  ただの穀潰し、中毒者だっていうのが俺らの間での評価だよ」

天秤の声はやはり滑らかだった。若いのに技巧的な苦笑をしているのが双子にはわかる。

天「家の、恥です。でも悪い人じゃない。兄はもともと誰にでも優しい人でした」
双「だが変わった」
天「ええ! 家族も一生懸命支えようとしたんですが。うまくいかなくて」
双「支援ね。一つ聞いてもいいかな」
天「何でしょうか」
双「酒を飲みたい奴にいくらでも酒を飲ませてやり、賭けをしたい奴に無尽蔵に金を
  くれてやるのははたして支援というのかな?」

細かい剣先のような双子の言葉を天秤は微笑で完膚なきまでにかわす。
若いのになかなかそこが手ごわくて双子は気に入っている。

双「(微笑んで)悪かった。忘れてくれ。君の家族は一生懸命あいつを支えた」
天「兄は絶対に許されないことをしました。昨日、やっと僕にもそれがわかった」
双「俺はそれを見て笑ってたぜ?」
天「だから貴方にした。貴方なら兄と戦える」

双(違うだろう。おれなら、自分を叱らないと思ったんだろう。
  お前は結局まじめぶった連中に自分や家のことを叱られるのが怖いだけなのさ)

天「共同戦線を張りませんか。僕は全力で双子さんを支えます。
  上手くいったら賞金は双子さんのものです。
  その代わり、貴方には兄に引導を渡していただきたい」
双「……勝者は一人だけだ。少年。言っておくが俺は負ける気はないよ。
  お前さんそれは、助かる道を自分から捨てるって言っているようなもんだぜ?」

天秤の笑みは硬くこわばっている。それでも野蛮になれぬところが自分に似て、
いや自分よりもうんと上品で、裏切る可能性も多分にあって大変によろしいと双子は思った。

天「構いません。兄にそれだけのことをする以上、僕もただで帰れるとは思っていない。
  同じ苦しみを背負って帰ります」


双「よろしい。おれはお前がとっても気に入った。
  デザートを食いながら契約の書類でも書こうか。サインと捺印も欲しいな。少年」