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獅「おい、どうした」
天「……(震えている)」
獅「顔をあげて、顔を客へ見せろ」

獅子の残酷な手が天秤の髪を鷲づかみにする。「あうっ」と生々しい声が漏れた。
暴力を本職にする男の野獣のような手。無理やり自分の顔を外に逸らして客に見せようとしている。
少年は獅子の手に必死に逆らい、声を噛み殺して耐えた。

獅「声を、出せと言っているんだ」
天「……」

獅子の手が少年の体の内側へ伸びる。
少年の体が何度もびくびくと跳ね、限界まで噛み殺した悲鳴が間欠的に小さく外へ漏れた。
少年は絶対に観客へ顔を見せようとしなかった。獅子の顔が苛立ってみるみる歪んでゆく。

獅「俺の言うことが聞けないならそれなりの見せ方もある。そっちにしてやるか。
  お前はまだガキだ。ごめんなさいと大きな声で言えば許してやるが?」
天「……」

涙ぐみ、絶望的な顔をしながら少年はなおも声をあげるのを拒んだ。
後ろに兄がいる。覚悟していたはずだったのに。それなのに。

獅「誰か手伝いに来い! こいつの体を俺からひっぺがせ。
  脚をひらいて、全部を客に見えるように座らせろ」

幕内に控えていたチンピラたちが飛び出してくるのに合わせ、観衆から声の大波が湧き起こる。
牡牛の視線が今度こそステージ上の舞台にとまった。
少年の体は獅子の手にいたぶられて、すっかり反応してしまっていた。
声にならぬ悲鳴をあげながら少年は無理やり観客の前に見せしめになった。
兄弟の視線が瞬時に結ばれ、凍りついた。


少年はどうしてか、泣きながら、人形のような笑みを兄に向けてしまった。


牡牛の目が狂ったように見開かれて、体が猛牛のように客を掻き分けこちらへ走ってくる。
「こないで」と口から音が漏れた。こんな姿を見られたと認めたくなかった。
少年は、押さえつけられて全てを晒したまま獅子の前へ座らされる。今度こそ突き刺されながら。
牡牛が獣のようにステージへ駆け上ってきて、チンピラたちを何人かなぎ倒し、
自分の腕を掴んだところでさらに走ってきたチンピラたちの群れに取り押さえられる。
叫んでいる。悲痛な顔で「てん」と自分の名を叫んでいる。自分の口からも叫びが出ている。
後のことは、もう何も憶えていない。