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カジノ・ロワイヤル 天秤と牡牛(+双・射・水) 1/2 774チップ 2007/09/17(月)17:34

58の続きです。



賭博場から遠く離れた客室の一つで、天秤が気絶したように眠っている。
獅子の爪が体に残した傷痕は大きかった。本来もっともっと休息が必要だったのに、
少年は午後になると再びノックの音で跳ね起きることになった。
起きた瞬間、すぐとなりに獅子がいる幻覚を見てぞっとした。
実際にドア越しに立っていたのは獅子ではなく、双子の伝言を受けた水瓶だった。

天「はい」
水「双子と契約を結んだ人ですか」
天「! ……はい、そうですが」
水「双子から伝言です。契約が果たせそうなので今すぐ賭場に来てほしいと」
天「──はい。わかりました。準備をしてすぐ行きます」
水「良かった。それでは失礼する」

水瓶は用事を済ませるとさっさと賭博場へと戻っていく。
伝言を受けた後、天秤はしばらくその場から身動きをとることが出来なかった。

天(あの人、案外律儀だった。約束を果たそうとしてくれているのか)

同時にそれは、今から兄が自分と同じ目に遭うことを意味している。
今更ながらなんてことを頼んでしまったのだろうと思う。
とりかえしのつかないことをしてしまったのは自分も一緒だ。

天(いかなきゃ。僕だけ逃げるわけには……)

ベッドから出ようとして膝がかくっと崩れ、力なく床に転ぶ。
力が出なかった。タキシードを着る力もなくて簡単な私服に身を包み、
だれの力も借りずに賭博場まで歩いてゆく。
兄の最期を見届けなければならないという一心で必死に足を動かし賭博場に入ると、
観客の視線がポーカーの卓に集まったまま一瞬全ての音が消えた。

真っ白になってポーカーの卓に崩れ落ちた牛の手から、最後の一チップが転げ落ちた。
卓の先には凛々しい射手の顔と平常心を保つ双子の顔。そして山積みのチップがある。
「プレイヤー牡牛氏は破産です。
 相手プレイヤーを撃破した双子氏と射手氏には追加で撃破ボーナスの二分の一ずつが加算されます」
場内に歓声が爆発した。場の注目を一心に浴び、双子と射手が顔を見合わせる。

双「ボーナスが半分になるのかよ。先にお前を追い出しときゃよかった!」
射「(笑いながら)フタ~! それは言わない約束でしょ♪」

射手がノリで出してきた手を、双子が肩をすくめながら叩く。
天秤は観衆の一番後ろから双子の姿を見ていた。冷たくて意地悪な交渉相手だと思ったのに、
あの男は自分との約束を守った。言葉もなくぼんやりしていると場を見回す双子と目が合った。
双子は遠くの天秤に向けて微笑すると、片目でウインクをしてみせた。
天秤がびっくりしているとすぐによそを向いて歓声に手を振る。あれはそういう男だったのだ。