カジノ・ロワイヤル 乙女・射手・水瓶・天秤・牡牛 1/2 774チップ 2007/09/19(水)18:05

61の続きです。バスルーム周りのネタはあくまでも趣味です。



賭博場がトラブルを受けて立ち入り禁止になってから一時間後。
船内には乗客を安心させるべく船内の安全を強調するアナウンスが流れ、
その一方で全船室の立ち入り調査を行う旨の連絡がなされた。
賭けの再開は翌日の午前の部からを予定しているという。

乙「……それで、その騒ぎを起こした連中とやらの処分はどうなる」

乙女の部屋のドアの前で、調査に来た船員たちが一瞬こちらをさげすむ目つきをした。
いつの世も敗者への目は冷たい。まな板ショーに晒された男ならなおさらだ。
ギャンブラーは、さげすまれることに動じぬ強さがなければ務まらない。

「はい。逃げ出した牡牛についてはペナルティを課します。
 それに加え、配電盤を破損させた犯人と場内で発砲した犯人には
 しかるべき処分をした上で船外追放の流れになるかと」

乙「ペナルティや処分とは具体的に?」

「残念ながらそちらのほうは機密事項となっております。お部屋拝見します」

船員たちが乙女の横をすりぬけて部屋へと入る。使用者の人柄を表す整頓された部屋に、
他人の入った形跡はおよそ見受けられなかった。
只一つ、バスルームから漏れるシャワーの音を除いて。
船員たちが怪訝な顔をして乙女を見ると、
乙女は「先客がいるから遠慮してもらえないか」と告げる。
船員たちは容赦しなかった。彼らはバスルームの戸を開けると、
「入ってるよ」というシャワーカーテンの人影の声も無視してカーテンを開けた。

ユニットバスの中に、男が二人全裸のままで立っていた。
シャワーの湯気の中片方の男がもう一人を壁に押し付けるようにしてキスしている、ように、見えたが、
すぐに動いてしまったので詳しいところは定かでない。

射「うわっ! マジかよ」

キスしようとしていた側──射手が声をあげたのに船員たちが面食らっていると、
すぐにキスされかけた側──水瓶が仏頂面になり、ユニットバスの外にあった
白いバスタオルを掴んで射手に投げつけた。自分は自分でもう一枚を腰に巻き、
相方に向かって猛然とまくしたてる。

水「だから僕はこういうスリル優先のやり方は嫌だったんだ。
  君があんまり言うから流されてやったが、なんだこの無様さは!
  みっともないじゃないか! ええ? 確かにね『アドニス的でよいではないか』っていう
  君の言い草もわからないじゃないけど、僕らもうそういう年齢じゃないだろ。
  客観的に見て自分たちの絡みがベタだってわかった時のこのすさまじい羞恥心は
  君にはないのか? ええ? 君には羞恥心そのものがないのか? そもそも……」

男同士の痴話げんかから逃げるようにして船員たちが部屋を出て行く。
「失礼しました!」という捨て台詞を傍で受け流し、船員たちが戸を閉めるまで
乙女はその場で事態の成り行きを見守っていた。
部屋の戸が閉まると、室内はバスルームも含め急に静かになった。

最終更新:2007年10月10日 20:17