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乙「(溜め息)お前らな、全裸になる必要はないだろう。
  言い出したのは射手か。いつ俺が全裸になっていいと許可を出した」

射手が悪戯っ子丸出しの顔で頭を掻いて笑う。

射「だってそっちのが面白そうだったしリアリティが超高まっていいかなーと思いまして」
水「僕は反対したんだが射手が先に全裸になったもんで着衣のままだと負ける気がした。
  冷静に検証すると自分だけ着衣のほうが変態度が高まって良かったかもしれない」
乙「反省点はそこか!! 最初のところから脱ぐなと言ってるんだ俺は!!」

馬鹿笑いしながら体を拭く射手の声を背に、乙女は自分のベッドへと歩いていって
ベッドの下までかかっているシーツをまくった。
クイーンサイズのベッドと床との間のスペースに、天秤とぐったりした牛が隠れていた。

乙「もう出てきていい。念のためにシーツを被っておけ」

育ちのよい顔でこくりとうなずく天秤を前に、乙女の心中は複雑だった。
射手と水瓶が二人を連れ込んだときには猛抗議したのだが、
牛の全身についた噛み傷と天秤の存在がかろうじて乙女の理性を納得させた。

乙「船内の調査が終わって一段落着いたら、部屋を移ってくれ。
  そいつ(→牛)がいる部屋ではおちおち寝られん」
射「ああ、そのことなんだけどさ。オトには悪いんだけど、もう少し匿ってもらえないかな?
  俺らはもう川田の側からマークされてるだろうし、この部屋が一番安全なんだ」
水「僕もその方がいいと思う。心配しなくても牛はその傷じゃ二・三日動けないだろう……。
  山羊が焼酎を吹き付けて消毒だけはしてくれたんだけど、本当は医者に診せたほうがいいくらいだ」

山羊、と聞いて乙女の胸が一瞬ざわめく。
牛を追う都合上プレイヤーの顔は全部覚えていた。あの男だ。
惑いそうになるところを周囲からの視線に気づいて復調する。

乙「一晩だけだ。それ以上は保障できん」
射「オト!」

乙女は天秤の不安げな顔を前にして、あえてベッドの下の男を峻険な目で睨みつける。

乙「その男は俺のディーラー時代の同僚を再起不能にした。
  同僚に散々難癖をつけた上、泥酔状態で車を運転してカジノ帰りの同僚を撥ねた。
  同僚は半身不随になり、おまけに車が怖いのか屋外恐怖症になって今も暗い部屋の中にいる」

部屋の中がしんとなった。
射手と水瓶が予想外の牛の過去にたじろぐ。牛は気絶しているのか身動きひとつしない。
そしてそれを庇う天秤の目は、全てを知っていたのか深い憂いに満ちていた。

乙「俺がそいつを船員に突き出さないだけ、ありがたいと思ってほしい」