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双子はものを言えないでいる天秤のベルトを手早く外すと、靴下を口から取り出して
少年の腕を引き上げ、その手にベルトと靴を持たせた。

双「行け。廊下に出たら走ってけ。もう寄り道すんな」
天「……(震えながら双子を見つめている)」
双「(無理やり天秤を廊下に押し出して背中を叩く)ほらっ!!」

天秤は背中を叩かれると裸足のまま弾かれたように走り出した。
パニックでまた泣きじゃくっている。だがもう部屋に戻るまで迷うことはないだろう。
双子は苦虫を噛み潰した顔で天秤がきちんと逃げたのを見送ると、扉のふちにもたれて大きく息をついた。

双(まったく手のかかるガキだ。昨日もそうだがここに何があるってんだ?
  こんな誰も居なけりゃ何もないような場所に)

途方にくれてほんの少しの時間、眉間を揉みほぐす。
双子の背中に何か大きなものがぶつかる。衝撃とともに息が止まった。
……コンマ数秒ほどの間に、双子は後ろからわき腹の肉の中に何かを無理やり圧し込まれたのを感じた。

振り向くと、さっきの男が自分にぶつかってきている。
その手元から伸びたナイフの刃の部分が、自分の体の肉に沈みこんでいるのが見えた。
体の中で異物を押し込まれた部分が火のついたように熱を持ってくる。

双「何やってんだよ。おい」

男が自分からナイフを引き抜く。刃に鮮血がついていた。
素手で戦い慣れていない双子は迷わずもう一度バールを拾うと突きかかってくる男をかわし、
勢いをつけて渾身の力で男の顎を打ち上げた。骨が割れる鈍い音がして男が吹っ飛び、
計器に叩きつけられて床に崩れ落ちる頃には、自分も痛みで思わず叫んでいた。
壁にもたれながら必死で叫び声を噛み殺した。手を当てたわき腹の裏が血で濡れている。
呼吸が短く浅くなる。一気に頭から汗が噴き出してくる。

双(まずい。離れないと……いてえ! 医者……)

双子はよろめきながら部屋を出る。医務室はどちらだっただろうか。
いや、それよりも他のプレイヤーにこの事態を知られたくない。なのに普通に歩けない。
目の前から培ってきた自信ががらがらと崩れ落ちて涙が出そうになった。

双(なんでだよ。ここまで俺はほば完璧に勝ち進んできたのに。
  うまくやってたのに。ここまでほぼ勝ちが決まってたのに……なんでこんなことに……)