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---- ・[[リレー小説1]] ・[[リレー小説2]] ・[[リレー小説3]] ・[[リレー小説4]] ・[[リレー小説6]] ・[[リレー小説関連コメントページ]] ----  42話現在の現在位置票 1.神社        霊夢 2.プリズムリバー家  ○○&プリズムリバー3姉妹 3.魔法の森      魔理沙&きーご レミリア あお 4.霧の湖       ⑨&チルノ 5.アリスの家     CAST.er&アリス&三月精 6.幻想郷のはしっこ  狐ノ連 篠秋 BBRC&文 7.魔界        ロリス*3 神綺 8.人里        WATA&パルシィ             魔理沙              外来人in無縁塚&なおきん&DY             つゆくさ&慧音 9.彼岸        ぞうちんちん&映姫&小町 10.迷いの竹林     鈴仙とウサ鍋&鈴仙 11.紅魔館       RSC&紅魔館メンバー(レミリア以外) まだら 12.妖怪の山      金木犀 いーあるさん&烏天狗 13.灼熱地獄跡     Nowe&空 長き童貞 14.白玉楼       湊&幽々子&妖夢 ---- *第43話 幻想の蒼い湖畔で 第43話担当[[wtt]] #region(close)  幻想の湖は、その時々によって面立ちを異ならせる。  朝霧の沸き立つ初夏。  紅く大きい月を水面にたたえる、秋の夜長。  なにより最も美しい情景とは――湖畔にたたずむ女性が呟きを漏らす――この陽の落ちる一時なのだな、と。  頬を、傾いた紅陽で朱に染め上げた女性――あおは、湖のほとりを静かに眺めながら、ここで考えていたのだ。  森をも焼き尽くしかねない程の、あの魔法。木にもたれかかるように倒れこんでいた、異形の美少女。眼下に広がる、静かな湖。ほとりを駆け回る、羽の生えた子供達。  やはり幻想郷、なのだ。この世界は。  大魔法が駆使されながらも決着の付かなかった、あの死闘。それを目の当たりにしたあおは、逡巡のあと、彼らから距離を置くことを選択した。  きーご、DYから離れたのは、そもそも考える時間が欲しかったからなのだが、今となっては、何より。  最悪を、考えたのだ。  魔理沙に襲われるほどの“何か”を、しでかしたのだ。それ以上に問題なのは、魔理沙と渡り合えるほどの力を、持っているのだ。きーごは。  魔理沙の魔法を――通常弾幕だけでなくマスタースパークですら――、無傷で避けきったのではなかったか?  倒れていたのは、レミリア・スカーレットではなかったか?  もしかしたら、本当にもしかしたら。  スカーレットの名を持つ吸血の姫は、“誰に倒された”のか?  倒れたレミリアを見て取った魔理沙は、きーごへの攻撃を中断して、少女の傍らに駆け寄っていた。深紅の少女を襲った人物は、きーごではないのだと、確信していたのだろう。  あおには、それができなかったのだ。分かれてから数刻のうちに、人外とも言える能力を身に着けたきーごを、手放しで信じぬくことは、出来なかった。  きーごだけではない。既に別れたDYとて、力を得たとしたら、どのような行動に出るかは、簡単に想像ができる。出会っていないだけで、幾人もの紳士が幻想に入っていることを、心の奥底で感じていた。そして、感じざるを得ないのだ。彼らがもたらすであろう、悲観的な未来についても。  別種の意味で、信頼だけは出来る人物達なのだ……紳士と言う人種は!  帰る、積もりではあった。  幻想を抜け、現実へと孵るのならば、方法はいくつかあった。  それを理解しながらも、躊躇しているのは。  もし、彼、あるいは彼らが異変だと言うのであれば。止めねばならないのだろう。  誰かが。  水面に映るあおの表情からは、彼女の心の中までは読むことが出来ない。だが斜陽を受けたその面持ちに、どこか決意を感じられると言う者がいたならば、それは気のせいではないのだろうと思わせる程の気概を、立ち上らせていた。  細くしなやかな腕を胸の前で組み合わせ、左手であごを撫ぜながら、あおは考えていた。幻想に入ったのならば、きーごがそうであるように、なにがしかの能力を得られるのかもしれない。あるいは、それを凌駕するような、そんな能力が。  だがいくら希望を募らせたところで、自らの埋もれた才能を開花させることが至難であることは、数多の文書――漫画やライトノベルと呼ばれる、一種の魔術書――で言及されているところだ。  湖上でくるくると飛び交う妖精達に目を細めながら、熟考するあおの背後に、突如として寒気を催すような気配が顕れた。  漆黒の濃霧が周囲を覆い隠したかのような、どこか運命を予感させる、そんな気配が。 「あんたかい――、」  振り向いた中空に、巫女がいた。  白と紅で強調されたその巫女は、呆れたような、そしてどこか面白がっているような顔で、ぽっかりと空に浮かんでいた。 「――異変は」  傾いた日差しを受けてか、湖は霧の深みを増し始める。  異変呼ばわりされたと言うのにむしろ清々しい表情で、湖畔に目を移したあおは、二呼吸ほど時を置いて、囁くように呟いた。 「みずうみ」 「あ?」  つられて、か。巫女も湖に目を向ける。  傾ききった日差しが湖面を輝かせ、さざ波の反射光が影に紅い彩りを添える。 「この湖が溢れるとしたら、どんな時かしら」 「そうね」  考え込む面持ちで、ふよふよと漂う紅白少女。  あおは、立ちこめる霧にも見飽きた様子を瞳にたたえながら、少女の瞳をのぞき込むように見据える。 「春の長雨の時……とか?」 「そうそう、困るのよね。散っちゃうし。春が早いと花見分が足りないわ」 「夏の大雨の時……とか?」 「あー、宴会の最中に降り始めたり。雷は花火の代わりになるけど、嫌よね。あとは、」  いつしか霧は濃く、深い陽紫に立ちこめていた。  心が、痛い程に研ぎ澄まされていくのを感じながら、あおは目を細める。  あくまでも自然を装いつつ、肩より少し高い位置に漂う巫女のより上空へと視線を移しながら腕を解いたあおは、体を斜に構えた。 「巫女を500機くらい沈めた時……とか?」 「……異変ね」  夕暮れが夜に蝕まれる、一時の刹那。息を吸い込み、紫紅に染め上げられた一際大きい雲を見上げる。湖畔が、わずか数呼吸の間に闇に包まれてしまう、そんな時刻。  湖上の妖精も、今頃は住処にたどり着いている頃だろう。湿気を含む重い空気を、雑念と共に、時間を掛けて吐き出す。  ゆっくりと、心に覚悟の衣をまといながら、巫女の――どこか間の抜けた、しかし揺るぎのない真っ直ぐな――瞳を、再び見据えた。  お互いの視線が絡み付いた瞬間、同時に跳びすさった。  相手に対して右手方向に跳躍したあおは、後方に距離を取った巫女が、先程まで自分の立ちつくしていた位置を護符の火線で薙ぐのを見て、背筋が凍りついた。  勝算は、なかった。  空を飛ぶ巫女を相手に、ただの人間が勝てるわけもない。湖を背後に構えていることも不利でしかない。湖岸は若干ではあるが傾斜しているし、土は湿気でぬかるんでいる。  そして何より、――力が、ない。  一呼吸すらも自分に許さず、着地と同時に反対方向へと跳躍した数瞬後、またも火線が襲いかかる。一瞬の内に位置を切り替え窮地を脱したあおは、突如巫女へと突進した。  巫女が弾幕で勝負するというのなら、勝利の手段は数える程しかない。  それは例えば、“肉弾攻撃”による“身体的接触”――!!  しかしその行動は見透かされていたのだろう、巫女は護符をばらまきながら、空中に飛び上がることなく――手加減でもしているのか――難もなくかわし切り、有利な距離を模索する。 「へぇ、いい勘してるわね」 「ありがと。……博麗の巫女、よね」 「……あん?」 「被害者だと言ったら、信じるかしら」 「当たり前じゃない――この加害者め!」 「苦手なんだけど」 「犯罪が?」 「手加減が」 「……良い結界の肥やしになりそう」 「有機栽培結界?」 「産地直送よ」 「軒並み引っこ抜くか」 「犯罪者め」  位置取りを勘案している巫女の懐に、あおは対話で出来た一瞬の隙――地へと降り立った瞬間の出来事――を見逃さずに飛び込んだ。  踵で巫女の足を踏み抜きながら、全身の力で腹を殴り抜ける! 拳に走る鈍い衝撃を感じた瞬間、その感触が消え失せた。殴りつけたあおの右腕に――悪寒を感じるより早く飛び退いたにも拘わらず――光が収束し、破裂した。  無傷とはいかなかった。反応が遅れていたら、掌が焼けただれていたかもしれない。  だが、得たものは大きい。  広範囲霊撃(ボム)にも、“対処の仕方”はあるのだ。 「普通、」  目を丸くした巫女が、息を詰まらせる。 「今のって避けられないんだけど」 「普通じゃないのかも。って、思いたい気分」 「あなた、人間よね?」 「空は飛べないけど、多分ね。それはそうと……まだ?」 「そうねえ。……ただの人間なら、次で最後にしましょうか」 「もう暗いしね」 「知ってるわ」 「?」 「鳥目ね」 「あはっ」  距離を取ろうとする巫女に対して、足を鞭のようにしならせて攻撃を加える。巫女は流れるように繰り出される蹴撃を冷静にかわしながら、あおの周囲に光条の結界を張り巡らせる。  地を這うしかない人間では、到底脱出出来ない護符の網が、刻一刻と押しつぶすように迫り始める。通常弾を掠め(グレイズさせ)ながらも結界の粗を探し、最善手を探し出すあおには、結局は結末を先延ばしにするだけでしかないことが、良く判っていた。  地面から空中に伸び上がって張り巡らされた結界は、通常弾符ではなく、先ほどの霊撃に使われたものと同質の護符を使用しているのだと、あおは符に描かれた紋様から推察した。絶対に触れたくはないと思わせる霊力の奔流を網として、符は立体的な結界を展開していた。紡がれた光の柱は、あおを中心とした円柱ではなく、ベニヤ板を幾重にも貼り合わせたようないびつな形をしていることに、あおは気がついた。全能を以てすれば、終端までたどり着けるような経路を残しているのだと、そう感じられるのは、巫女の遊び心の顕れでもあったろう。  今からどれほどの最善手を尽くしたとしても、現在の駆動力、瞬発力を最大に引き出して結界の終端までたどり着いたとしても、その瞬間こそ巫女が張り尽くした罠の最終段階であることが、あおには漠然と理解できた。  とはいえ、――奔る。  思考すらなく、体の赴くままに、走り抜ける。  一瞬前に駆け抜けた場所を、護符がなぎ払う。  一瞬後に駆け抜ける場所が、弾幕で埋め尽くされる。  なびいた髪を光の網で焦がしながら、弾符の火線を駆け抜ける。  巫女の視線・反応から、二手、三手先の思惑を読み取り、刹那の時間で裏をかく。一手を追う度、取り得るべき未来をはぎ取られて行く感覚に、あおは不思議な高揚を覚えた。  その愉悦が招いた、反応の空白。  走り込む位置がわずかばかりずれた、その間隙。  次善であるにも拘わらず、最善ではなかったと言う、ただそれだけの、致命傷。  有無を言わせない護符の弾頭が、地面を打ち崩す。頬先を、陰陽玉が、残像を残してかすめる。足を止めたあおの目の前、霊力網を隔てたわずかな距離で、巫女は微笑を浮かべる。 「惜しいわね」 「……つもりもないんだろ」 「まあね。命乞いなら、聞かないけれど」 「さすが巫女、さすがだな」 「良く言われるわ。何のことだか、わからないけど」 「一つ言っておこうか。……命乞いなら、聞いてやる」 「面白いわね。どうやって、」  考えていたわけではなかった。  ただ、思いついただけの、分の悪い掛け。  あおは中空に固定されている、霊力のほとばしりで、今にも弾け飛んでしまいそうな程に輝いている護符に、勢いよく拳を放った!  あおが霊撃でのたうち回る光景を想像していたであろう巫女の、望外の事態が、目の前に繰り広げられた。青白い閃光を放ちながら、瞬きの間に結界が“ほどけた”!  護符の一枚が、突如としてほつれ、結果として結界全体の霊力流が消え失せたのだと理解したのは、手拳が巫女の顔前で止められたその時だった。 「こう――やって、ね」 「な、……なにそれ!?」 「さっきの、護符。返しただけよ」  開いた掌の中には、焦げ付き焼き切れた、護符の残骸があった。  巫女が緊急の霊撃に使用する護符の一種だ。つまり――、 「……発動中の護符を奪い取って霊力供給を絶ったの? くらいボムが避けられた理由はそれか……っていうかその上結界にぶつけて無理矢理霊力ねじ曲げて、反対に霊撃したってこと!? ……どんなインチキ!」 「これはSTGじゃない、ってことさ……あつつ」  巫女が弾幕で勝負するというのなら、あおが取ることの出来る勝利の手段は、本当に数える程しかない。  それは例えば、肉弾攻撃による身体的接触であり、そして“スペルカードを全て避けきる”――その程度。  だがどうやら、戦いはそこまで長引かなかったようだ。  月の蒼い光が湖上を照らし始める頃には、巫女から立ち上る敵意は微塵も消え失せていた。 「はぁ。まあいいわ、あなたは異変じゃあなさそうだし。ウチに来なさい。手当したげるわよ。……鳥目だとここらへんは危ないでしょ」 「ふふ……じゃあ、頼もうかな」 「で、なんで撃ってこない?」 「教えてあげてもいいけど、一つ教えてくれないか」 「私に教えられることなら」 「一つでいいんだ……“弾幕の撃ち方”だけで」 「本当に一般人だったのね。そのために?」 「戦った理由というのなら、そうだ。識りたいものだろう、誰しも?」 「呆れてるわ」 「日本語、おかしくない?」 「いいのよ、幻想郷だし。呆れてるのは事実なんだし」 「ま、“今日から”よろしくたのむよ、霊夢センセイ」 「……呆れてるわ」 「経験が足りないな」  霊夢と呼ばれた巫女は、思い出したかのように尋ねる。 「そう言えば。異変を探しに来たんだけど。さっき、魔法の森が騒がしくなかった?」 「ああ……。……あれだ、霧雨の魔法使いが、なにやら嬉しそうに魔法をぶっぱなしてた」 「……帰りましょうか」  やれやれと肩をすくめる霊夢に、清々しく微笑んだあおは、これからの幻想郷について、想いを馳せる。  きーご、DY。魔理沙と、レミリア。そして、自分。幻想の郷に、現出した、その意味を。  博霊神社の倒壊を霊夢がまったくもって失念していた――忘れたかったのかも知れない――ことは、二人が身を以て思い知ることになる、異変の一つだった。  湖は、霧に包まれながらも、蒼く、静かに、月を染め上げていた。 場所:【湖畔/1日目・夕暮れ】 名前: 博麗霊夢 あお 備考: これより神社へと向かう。あおが弾幕スキルを取得できるかは展開による。 #endregion *第44話 白玉楼の一戦 第44話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 魂そのものに吹き付けてくるような涼風が流れてくる一室。 みなとが対面した外来人は、彼の予想を超えていた。 「ダメギさん……?」 つんつんととがった髪に派手派手なスーツとグラサン。 男女比のおかしい某麻雀漫画に出てくる登場人物に良く似た姿で、その男はこちらに笑いかけていた。 「まさかリアルで会うことになるとはね。一つよろしく頼みます」 格好にそぐわない人のいい笑みに、つられてみなとも頭を下げる。 そんな様子を幽々子は面白そうに、口の端に笑みを浮かべながら眺めていた。 「ふふふ……こんな偶然があるとはねぇ。それとも私達には分からない『必然』かしら。……まあいずれにせよ早くやりましょうよ」 その思わせぶりな言葉に、みなととダメギは視線を向けるが、まるでそれをあらかじめ予想していたように幽々子は扇で口元を覆ってしまった。 「食い断あり赤なし、一発裏ドラカンドラありの半荘、白玉楼特別ルールとして15000の20000返しでトビありでいこうと思うけど、構わないかしら?」 問いかけられた二人は視線を合わせ、頷く事で了承の返事とする。 予想通り、東方幻想麻雀の卓ルールと同じであった。能力による説明は無かったからそれは多分無視して大丈夫だろう。 だったら……負けるわけが無い。 同じような思考回路を経て、外来人……いや、人外魔境なVIPで腕を磨いてきた雀士は不敵な笑みを浮かべた。 風牌で場所決めが行われ、決定した席順は幽々子、みなと、ダメギ、妖夢であった。 緊張に手のひらを湿らせながら、配牌を取っていくみなと。 もとの世界に帰れるかどうかが掛かっているとなれば、その必死さも当然であろう。 そうして持ってきた配牌は、彼の願いが通じたか…… (よし!チートイドラ2のイーシャンテン!) まさに、好調者のそれであった。 持ち点が少ないこの白玉楼ルールであれば、これを上がりきれば一歩ぬきんでることが出来るだろう。 だが…… (……!またトイツ被りッ) 配牌良ければツモ悪し。彼がテンパイしたのは12順目のことであった。 もうその頃には他家も揃っているのか、ツモ切りが多くなっていた。 おまけに少しでも可能性を増やそうと合わせ打ちを多くしたのが不味かったか、待ちの一枚切れの西も出そうな気配が無い。 そうしてもう直ぐ流局、というところでツモってきた牌が……2万。 ちらりと河に視線を移すと、幽々子、ダメギに一枚ずつ捨てられていた。 (振込みは期待できないか……) そうしてそのまま河に置こうとしたところで…… 「み な と に 電 流 走 る!!」 寸でのところで、彼の視線は対面の妖夢の捨牌へと吸い寄せられる。 彼女の捨牌はごく平凡なタンピン形であったが…… (11順目に1万を手出し?) この順目で1万だけが浮いていた、ということはあり得ない。 ……そこでみなとの頭脳が高速回転する。 (どういう形から出てきたか。考えられる可能性は…… ①1万3万からのターツ落とし ②1万2万からのターツ落とし ③1万2万2万から2万が重なったため1万切り と、こんなところか。③は河と自分の手牌で合計3枚になるから除外していいとして……①と②だが……) そこで妖夢の河を更に注意深く観察する。すると…… (ん、8順目に5万が無造作にツモ切られてるな。もし3万があったらツモった時に少考するだろうし、切ってくのは1万だろうな。ってことは①もおそらくない。ってことは②のターツ落とし。……!!ッこれは2万の出るフラグ!!) 「リーチッ!!」 1枚切れの西が横に滑り、乾いた音を立てて転がる千点棒。 その自信に満ちた顔からダメギはさっと河を眺め、何かを悟ったようににやりと笑みを浮かべる。 刹那に行われた鋭い読み、危険な気配を気取るには……まだ妖夢は麻雀慣れしていなかった。 次順、彼女の河へと置かれた2万を見ながら、みなとはゆっくりと自分の手牌を倒したのだった。 場所:【白玉楼/1日目・夜】 名前: 湊 ゆゆこ よーむ ダメギ 備考: 東1局が丁度終わったところ #endregion *第45話 存在 ――ナ ニ カ―― ※微グロ注意。苦手な人は注意な。 第45話担当[[⑨]] #region(close) 「先生!ありがとうございましたー」 「しっかりと帰るんだぞ慧音先生がいないからと言って宿題を忘れたりしないように」 「はーい!」  子供が寺子屋を終え家路へ急ぐ。  既に子供の行方不明者は5人に達している。  寺子屋の教師上白沢慧音とつゆくさが子供たちを捜索している間は稗田家の者が寺子屋で教師をしている。  そんな生活はまだ始まったばかりだ。  外来人と先生が探しに行くというのは里の者にとっては心強い限りだがある意味でそれは里の問題がどうしようもない地点まで表面化したという意味を持つのだ。  里の大人達も自らは力になれないが攻めて彼らを心配させないようにと子供を見守り、里に緊急のお触れを出した。  外を出歩く際には大人と一緒にいること、できれば家からあまり出ないこと。 その他である。  しかしそれでも子供は一人で外を構わず出歩く。  大人無しで仲間と遊ぶ。  大人がいなくなったというのに子供は元気だ、本当に子供は危険性を――  ――いや、大人を心配させないために、帰ってくる仲間が戻りやすいように明るくふるまっているだけなのかもしれない。  大人がこれだけピリピリとした緊張感を強いていては子供も息が詰まる。  だからこそ大人に自分たちは大丈夫だ、ということをアピールしたいのではないだろうか?  仲間が帰るときこんな緊張感のかでは入りにくいのではないだろうかと心配しているのではないだろうか  しかし行方不明者は―― 子供5人?  ――本当に?   犠牲者は本当に―― ソ レ ダ ケ ? ◆◆◆  苔むした土の上に布切れが散らばる。  その布切れを良く観察すればその布切れがもともとは衣服であったことがわかるだろう。  その布切れには赤い液体が付着し、肉塊の様なものも散らばっている。    その場に漂うのは―――  『死臭』  よくこの地を観察すれば何か丸い物が奥の方におちていることもわかるだろう。  その丸いものからは異臭が放たれ既に腐り始めている。  原形をとどめるその丸い物――人の頭にある二つの窪みは恐怖で見開かれている。  だがこの腐りかけた頭や既に白骨化した頭がい骨。  その数は明らかに両の手では収まらない。  明らかに20――いやそれ以上の死骸がそこにはあった。  そこで動くものはただ一つ。            ナ ニ カ  人のような形をした『存在』だけ。  その『存在』はこの苔むした土の上で姿を変えている、  八雲藍の姿へ、放課後の姿へ、レミリアの姿へ、DYの姿へ  あるいはZUNの姿へ、はたまたルーミアの姿へ――  それは幻想麻雀に関連する存在に姿を変え続ける。  その姿は一時は安定するがまたすぐにまた別の姿へと変わる。  姿を変えながらその存在は喰らっている。  ――何を?  人を。  いや、かつて人として生き、笑い、泣き、存在していてた物体を。  物体の衣服を引き裂き、その腕にかぶりつく。  胴を引き裂き骨ごと血肉を喰らう。  足を引き裂きのそのあしを喰らう。  足の中にあるアキレス腱や筋肉を喰らう。  手足を失い胴を引き裂かれた肉片から臓物を引きずり出す。  心臓を、肺を、腸を喰らう。  そして、最後に残った頭を割り――脳を啜る。  残るのは頭を割られた頭蓋、布きれ、血。  そして、僅かな食べ残し。  タ ベ ノ コ シ ?  いや、人であったもののなれの果て。 「キキキ……クキキキキキ……」  この『存在』とは何なのか――  即ち、『バグ』  パッチ1,3に置いて続出したような幻想麻雀に置けるバグの集合体。  幻想麻雀に関連する想いから捨てられてしまった悲しみの結晶。  あるいは修正され、なかったことにされてしまったもの。  いや、それだけではないだろう。  多くの矛盾を内包する幻想郷その物のバグ。  人の根本に位置するバグ。  そのバグが今この場に現出していた。  本来は現出しないはずの『バグ』が。  幻想郷が時間を掛け直していくはずのバグが。  この幻想郷に幻想麻雀に関連するものが多く同時期に現れたのもこの『バグ』が所以  この『バグ』のなかに取り込まれている幻想麻雀の力が作用しこの地に現出した。  現在幻想郷はこの『バグ』により『深刻なエラー』が出ている状態だ。  この存在はバグであるが故に人間でもなく妖怪でもない中途半端な存在。  幻想郷の法則の人間は妖怪に襲われ、妖怪は人間に襲われるという法則に適用されない存在。  この幻想郷に『深刻なエラー』をもたらし崩壊へと導く『バグ』  なぜこのようなバグが生まれることとなったのか、それは誰も知らない。  おそらくは八雲紫でも、この幻想郷の最高種である龍でも知らないであろう。  バグとは予想が付かないからバグなのだ。  バグであるからこそ予想とはかけ離れた動きを行い崩壊へと導く。  バグは――まだだれにも見つからず、動き出したばかりだ。 ◆◆◆  苔むした土の上にあるのはかつて生きていた者のなれの果て。  その果てはかつて生きていたことを感じさせぬ様子でその場にある。  バグは人を喰らう。  なぜ喰らうのか――力をためるため?恐怖を味あわせるため?  それはバグのみが知るということだ。  バグはバグであるが故に多くの力を持つ。  バグはバグであるが故に多くの姿を持つ  バグは人を喰らう。  犠牲者は―― 5人?  いや――犠牲者本当に こ こ に あ る 死 骸 の 数 だ け ? 場所:【不明/1日目・夕方】 名前: バグ(?) 備考: 唐突にやりたくなった。反省はしている。 簡易設定まとめ ・バグは幻想雀士、及び幻想郷住民に姿を変えることができる。但し完ぺきではない ・バグはある一定の学習能力を持っている。 現在はこんなものですかね #endregion *第46話 土下座 第46話担当[[皇束篠秋]] #region(close) 「いやもう本当すいません」  二人の女性に自分は土下座をしている。それも地面に額をこすりつけて。  崩壊した神社は月明かりに照らされて、妙に神秘的な雰囲気を出している。  一人はこの神社の主である博麗霊夢。彼女はあきれているのか憐れんでいるのかわからないような、微妙な表情をしていた。正直彼女はまだいい。問題はもう一人だ。  眉をひくひくと動かしながら腕組みをしている女性、自分の大敵、レジェンド。あおがそこにいた。 「本当すいませんそのなんていうかその場のノリと勢いに任せてぶっ壊しました」 「ごめんですんだら警察はいらないよな?」 「……おっしゃる通りで」  投げつけられた木片を土下座品がら器用にかわす。どうやっているかは説明するのが面倒なので省略。 「ま、まあ二人とも落ち着きなさい」  さすがにまずいと思ったのか霊夢が中に入ってきてくれた。  途中まで持ち上げられた木片を地面に下ろすと、あおはため息をついた。 「本当にいいのかい?」 「……いいわよ別に。また立て直すから」 「だ、そうだ。よかったな」  女性は怒らせると非常に怖い。心からそう思った。 ===========  霊夢はさすがに神社で寝るわけにはいかないので、誰かに一泊を頼みに行ったようだ。  今、神社には自分とレジェンドしかいない。  レジェンドは無言で酒を飲みながら月を見上げていた。女性には全く興味がなかったが、美しいと思う感性はどうやらあるようで。 「なにを見ている?」 「別に」 「そうか私を見ていたんだな」 「……否定はしませんね」  そういうとあおはお猪口に注いだ酒を一気に飲み干した。 「で、誰に頼まれた?」 「……言ってる意味がわからないんですが」 「お前は霊夢のことをよく知っていたはずだ。そして神社を壊したら結界が不安定になることも」 「手違いです」 「……ふん、それでいいさ。今は」  もう一度あおは注いだ酒を飲み干す。唇からこぼれた酒が首筋へとむかった。 「では今度はこっちが聞く番ですね」 「ん?」 「あなたはここでナニをするつもりなんです?」  一瞬彼女は悩んだが、すぐに答えを見つけたようで二ヤリと笑った。 「面白い事さ」  そこで確信した。彼女は整備されたバイクのようなものだ。  現実の世界で丁寧に整備された彼女は待っていた。自分にガソリンが注がれ、キーを差し込まれる日を。  そして一度動き出すと彼女は止まらないだろう。壊れるか燃料がなくなるまで。 「……なるほど」 「どうだい一杯?」  彼女がお猪口を手渡してきたが断る。  もう少しだけ酒を飲む彼女が見たかったからだ。 場所:【神社(崩壊)/1日目・夜】 名前: あお 皇束篠秋 備考: とくになし #endregion *第47話 兎は穴に落ちずに竹で頭を打つ 第47話担当[[金木犀]] #region(close) 気が付くと見知らぬ天井で布団に寝かされていた。 確か私は何者かによって謎の空間に引きずり込まれ、ふらふらと竹林をさまよっていたはずなのだ。 急に何かが近づいてくる音が聞こえてパニックになっていた…。 そこからの記憶はない。ということは誰かがここまで運んでくれたのであろう。 「気が付いたのね。おはよう」 布団の傍らにはブレザー姿のウサ耳を付けた少女が座っていた。 なんだウサ耳少女か… ウサ耳っ!? 俺は布団から勢いよく抜けだし、ウサ耳少女に近づく。が急な立ちくらみでまた布団に倒れ込んでしまう。 そういえば腹が減っていたのだ。思いだしたかのように腹も鳴る。ぐぅ~。 「ちょっと待ってて。今、おかゆ暖めてくるから」 そういってウサ耳少女は襖を開けて外に出て行く。返事をする気力が無かったが代わりに腹の虫がしてくれた。ぐぅ~。 そういえばここは何処なのだろうか。殺風景すぎて特に手がかりも無い。 取りあえず畳で襖、要するに和室なのだろう。 しかも部屋の雰囲気的になかなか良い所のようだ いろいろ考えてる間に少女は土鍋を持って帰ってきた。ほかほかと優しそうな湯気を立てている。 もう待てない。体が食べ物を欲している。 「そんなにがっついちゃ火傷するよ」 制止の声も聞かずにレンゲでおかゆをがっつく。案の定火傷した。 どうやら記憶が飛んでいるのは竹林で頭を強打したらしい。そりゃ気絶もするだろう。 しかもここは病院らしいから渡りに船だ。舌も火傷したことだし医務室に連れて行ってもらうことにした。 外に出て永遠に続くような廊下を歩いていく。 同じような部屋がたくさん並んでいて全然見分けが付かないため一人で歩いていたら確実に迷っていただろう。 分からないままに後ろをついていってるのだが、ウサ耳少女は意外にも背が大きかった。 多分見上げないと顔すら見られないだろう。歩幅も広いのかついて行くのに必死である。 どれだけ歩いたか忘れたがいつの間にか医務室についていた。良く見る清潔な白を基調とした一般的な医務室の中で赤と青をはんぶんこにしたようなナース服を着た人が座っていた。 「あら、この子が竹林でドジした兎ね。取りあえずここに座ってじっとしててね」 椅子を差し出され言われたまま着席する。この人には逆らってはいけない気がするのだ。 そして頭をさわさわされる。少し違和感を感じるがくすぐったさの方が上だ。思わず笑ってしまう。 「んー。取りあえず優曇華は倉庫から湿布でもとってきて貰えるかしら。あと氷とか冷やせるもの」 そういわれると優曇華と呼ばれる少女は外に出て行った。そういえば優曇華という名を聞いたことがある気がする。  そんなことを考えていると目の前のナース服の人が口を開いた。 「ようこそ永遠亭へ、兎の外来人さん?」 場所:【永遠亭/1日目・夕】 名前:鈴仙とウサ鍋 備考:兎になってます 自分はまだ兎だと気づいてません。 #endregion *第48話 人のチカラ 第48話担当[[⑨]] [[SSの在り処>http://www42.atwiki.jp/vipthmj/pages/344.html]] 謝罪 調子こいて書いてたらとんでもない量になった お手数ですが読みたい方はリンク先のページをどうぞ *第49話 そんなに赤くない紅魔館 第49話担当[[金木犀]] #region(close) 紅魔館の前で一人の男 まだらは覚悟を決めていた。 現在の紅魔館には門番の姿はなく代わりに木製の看板で「出入り自由」とつるされている。 きちんと出入り自由と書いてあるのだ。自分は何一つやましいことはない。 男は決心して中に入っていった。 門から一歩踏み込んだ瞬間、室内にいた…! 何をいってるかわかんねーと思うが俺もなにをされたかわからなかった。 超スピードだとか催眠術だとかなんとかかんとか… 「いらっしゃい、不審なお客さん。なにかご用かしら?」 話しかけられている間に大広間で椅子に座らされ、しかもぐるぐるに縛られている。 周りにはメイド姿の妖精ががやがやよってきた。まるで動物園のパンダの気分だ。 「門に出入り自由と書いて入ってきたんですけど…」 「一応ここは悪魔の館よ。知らない訳じゃないでしょ。なにをされても文句は言えないわよ?」 そういいつつ目の前で咲夜さんがサディスティックな笑みを浮かべながら首筋にナイフを当ててきた。 何かに目覚めそうだ。 首にナイフを当てられてるといっても本当に切る訳ではないだろう。少し落ち着いたので周りを見回してみると、たくさんのテーブルの上にめいっぱい食べ物がのせられている。 パーティーでもしているのかとても酒臭い。座ってるだけなのに酔ってしまいそうなアルコール濃度だ。 そのなかに微かなながら上品な酢の香りが漂っている。 「この香りは…寿司?」 確か幻想郷には海は無かったはずだ。川魚や山菜で寿司でも作っているのだろうか。 「随分余裕なのね、まぁいいわ。今日は貴方以外にも変な人がいるのよ。そこの酒臭い人なんだけどね」 ひらひらと手を振っている男が広間の真ん中に立っていた。原理はよく分からないがアルコールの真ん中にいる気がする。 しかし顔は紅潮しておらずまるで素面だ。なにより奇妙なのはその服装だった。 まるで板前のような格好に小さく胸に「あるえ寿司」と刺繍してある。 あるえ寿司…… あるえずし…… あーるえずし…! RSC!? 「RSCさんなのか!キャーアールエスシーサーン。俺ですよ、まだらですよ!」 縛られているため立ち上がれないが椅子をがたがたさせて存在をアピールする。 「ああ、まだら君か。こんなところで会うなんて奇遇だねぇ。何か運命のようなものを感じるよ」 よく分からないことを良いながらころころと笑っている。やっぱり酔っぱらいだ。 そんなやりとりをしていたらいつの間にか縄が外されていた。 知り合いと判明し、さらに危害を加えることは無いだろうという判断だろう。 縄が外された俺は急いでRSCさんの元に駆け寄り後ろに隠れた。これ以上新しい自分に目覚めるのは勘弁なのだ。端から見ればまるで子犬が飼い主に駆け寄る姿だっただろうが、まぁ残念ながら大の大人である。 拘束を解かれた俺はRSCさんの隣で咲夜さんお手製のちらし寿司に舌鼓を打った。うまい、うますぎる。 話によるとこのちらし寿司はRSCさんの伝授によるものなんだとか…。すごいぞ、RSC! 宴もたけなわで程なくして寿司パーティーは終了した。メイド妖精はベロンベロンに酔っぱらって見るも無惨な状況であった。 パーティーの最中に七曜の魔女や悪魔の妹とも少しだけとはいえ会話もした。結局酔っていて覚えてはいないが… 無事本日の食料にもありつけたのだが、幻想郷に身寄りのない俺は咲夜さんに頼み込んで少しの間紅魔館で働かせてもらうことにした。これで当面の衣食住は確保できた。RSCさんにも勧めたのだが、彼はいろいろなところを見て回りたいのかそれを断っていた。 雇用してもらったから良いのだが、メイド長である咲夜さんが勝手に決めても良かったのだろうか? とうの主の姿は一度も見えなかったが… 場所:【紅魔館/1日目・夕】 名前:RSC まだら 紅魔館メンバー(レミリア除く) 備考:まだら、紅魔館に少しの間労力として雇ってもらう     RSC、安置をすてよ、そとにでよう #endregion *第50話 生まれついての王 第50話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 槍の穂先の、一体何が面白いというのだろう。 (こいつ……うつけか?) 眠たげな眼差しでこちらを見据え、ひたすらクツクツと笑う女を見て、天狗は言いようの知れない不安に駆られていた。 自分は絶対的な強者であり、目の前の人間は己の欲望を満たすためだけの道具でしかない。 その理路には何の過ちもない、はずだ。 だというのに……どうしてこんなにも心が冷えてくるのだろう。 「……ふん、そんなにこの槍が気に入ったか!!」 己を鼓舞するためにわざと口角を吊り上げ、手に持つ得物の先端を女の口に押し込む。 勿論、喉に当たらないように加減をしている。悦楽を得るには生きている方が何かと都合がいいからだ。 食欲にしても、性欲にしても。 「どうだ……しゃぶってみろよ、ん?」 ぐちゃぐちゃと無遠慮に口内をかき回したところで、初めて女性の表情に変化が訪れる。 が、それは天狗の期待したような、恐怖と絶望の影に染まったものではなかった。 まるで愚民の粗相に蔑視を投げかける王のような、見限りと憐憫のこもった不快極まる嗤い。 ……天狗の息が詰まった。 そのまま、雰囲気の持つ力に押しのけられるように一歩下がる。 槍の穂先が抜けたところで、女はたらりと美しく血を流しながら口を開いた。 「笑止。貴様の槍、古い造りにも関わらず血を吸った味がせんな。大方、今まで一人ではうまく得物を取ることが出来ず、今度こそはと力んでおるのだろう?」 槍を持つ手が緩み、危うく取り落としそうになる。 怒りに我を忘れて、ではない。心の隙間をさらりと言い当てられた事実に純粋に驚愕していたのだ。 恐怖と緊張に息が荒くなる天狗を前に、女は負の念を包みこむ、甘い毒ガスのような言葉を呟き続ける。 「悠久に近しき時を生きる妖怪にとって、その序列は実力差に応じたものとなっておるだろう……貴様は軽蔑と嘲笑の中で、最底辺の屈辱を甘んじて受け入れていたに違いない。だからこそ、自分より弱い種族には精一杯の虚勢を張って、それで辛うじて自己を保っている。くくく、愚かよのう?」 刺してしまおう。 もう天狗には、浅ましい欲望を満たそうという気概は微塵も残っていない。 ただ、心の隙間を笑みと共にこじ開けられていくことにこれ以上耐え切れなかっただけだ。 槍を水平に構え、再び穂先を女の口へと向ける。 女の口が再び三日月の形になり、天狗の頭の中で、その顔が自分を冷遇してきた大天狗や鼻で笑い続けてきた同僚と重なる。 「……死ね。死ねええええッ!」 己の弱さから目を背けた、天狗の何の技巧も無い突きが女を襲う……かに見えたが。 「まあ待て。……そうだな、貴様が救われる道がただ一つあるぞ」 女の、まるでついでに付け足す、といった気軽な言葉に、彼の手が止まる。 そして、改めて、初めは獲物だったはずの人間の女の顔を直視する。 「……ああ」 手から勝手に槍が離れ、ため息と共にその場に跪く。 大天狗はおろか、山の神に対しても抱かないような、鮮烈な畏怖。 自分は一体何を考えていたんだろう。なぜ、自分はこんなにも偉大な存在に歯向かおうとしていたのだろう。 まるで白痴のようにこちらを見つめる天狗を前に、女は両手を軽く広げる……あたかも、大多数の聴衆に語りかけるように。 「何も、自分が万能である必要はないのだ。……ただただ、偉大な車輪の轍を踏めばよし。完璧に限りなく近いものを崇拝し、尽くすだけだ。簡単だろう?……さて、それでは問うが、貴様にとって永遠に従属していかなければならない存在はなんだ?……大天狗か?山の神か?」 「……いいえ、あなた様でございます」 「私が糞を食らえと言えば食うか?」 「きっと食ろうてみせましょう」 女は先ほどとは違った満足げな笑みを浮かべ、頭を垂れる天狗を慈悲に彩られた視線で捉える。 ……強烈なプレッシャーで他家に露払いをさせ、高い勝率を誇ってきたいーあるさんの身につけた能力は……限りなく凶悪な代物であった。 バグとはまた違った幻想郷に巣食う闇。それがどのような軌跡を辿るかは、まだ誰にも分からない。 場所:【妖怪の山/1日目・昼下がり】 名前:いーあるさん、天狗A 備考:不安を煽る程度の能力。 相対する時間や相手の劣等感に比例した不安感を抱かせることができる。 話術も駆使すれば即席カリスマも可能? #endregion [[続き>リレー小説6]]
---- ・[[リレー小説1]] ・[[リレー小説2]] ・[[リレー小説3]] ・[[リレー小説4]] ・[[リレー小説6]] ・[[リレー小説7]] ・[[リレー小説関連コメントページ]] ----  42話現在の現在位置票 1.神社        霊夢 2.プリズムリバー家  ○○&プリズムリバー3姉妹 3.魔法の森      魔理沙&きーご レミリア あお 4.霧の湖       ⑨&チルノ 5.アリスの家     CAST.er&アリス&三月精 6.幻想郷のはしっこ  狐ノ連 篠秋 BBRC&文 7.魔界        ロリス*3 神綺 8.人里        WATA&パルシィ             魔理沙              外来人in無縁塚&なおきん&DY             つゆくさ&慧音 9.彼岸        ぞうちんちん&映姫&小町 10.迷いの竹林     鈴仙とウサ鍋&鈴仙 11.紅魔館       RSC&紅魔館メンバー(レミリア以外) まだら 12.妖怪の山      金木犀 いーあるさん&烏天狗 13.灼熱地獄跡     Nowe&空 長き童貞 14.白玉楼       湊&幽々子&妖夢 ---- *第43話 幻想の蒼い湖畔で 第43話担当[[wtt]] #region(close)  幻想の湖は、その時々によって面立ちを異ならせる。  朝霧の沸き立つ初夏。  紅く大きい月を水面にたたえる、秋の夜長。  なにより最も美しい情景とは――湖畔にたたずむ女性が呟きを漏らす――この陽の落ちる一時なのだな、と。  頬を、傾いた紅陽で朱に染め上げた女性――あおは、湖のほとりを静かに眺めながら、ここで考えていたのだ。  森をも焼き尽くしかねない程の、あの魔法。木にもたれかかるように倒れこんでいた、異形の美少女。眼下に広がる、静かな湖。ほとりを駆け回る、羽の生えた子供達。  やはり幻想郷、なのだ。この世界は。  大魔法が駆使されながらも決着の付かなかった、あの死闘。それを目の当たりにしたあおは、逡巡のあと、彼らから距離を置くことを選択した。  きーご、DYから離れたのは、そもそも考える時間が欲しかったからなのだが、今となっては、何より。  最悪を、考えたのだ。  魔理沙に襲われるほどの“何か”を、しでかしたのだ。それ以上に問題なのは、魔理沙と渡り合えるほどの力を、持っているのだ。きーごは。  魔理沙の魔法を――通常弾幕だけでなくマスタースパークですら――、無傷で避けきったのではなかったか?  倒れていたのは、レミリア・スカーレットではなかったか?  もしかしたら、本当にもしかしたら。  スカーレットの名を持つ吸血の姫は、“誰に倒された”のか?  倒れたレミリアを見て取った魔理沙は、きーごへの攻撃を中断して、少女の傍らに駆け寄っていた。深紅の少女を襲った人物は、きーごではないのだと、確信していたのだろう。  あおには、それができなかったのだ。分かれてから数刻のうちに、人外とも言える能力を身に着けたきーごを、手放しで信じぬくことは、出来なかった。  きーごだけではない。既に別れたDYとて、力を得たとしたら、どのような行動に出るかは、簡単に想像ができる。出会っていないだけで、幾人もの紳士が幻想に入っていることを、心の奥底で感じていた。そして、感じざるを得ないのだ。彼らがもたらすであろう、悲観的な未来についても。  別種の意味で、信頼だけは出来る人物達なのだ……紳士と言う人種は!  帰る、積もりではあった。  幻想を抜け、現実へと孵るのならば、方法はいくつかあった。  それを理解しながらも、躊躇しているのは。  もし、彼、あるいは彼らが異変だと言うのであれば。止めねばならないのだろう。  誰かが。  水面に映るあおの表情からは、彼女の心の中までは読むことが出来ない。だが斜陽を受けたその面持ちに、どこか決意を感じられると言う者がいたならば、それは気のせいではないのだろうと思わせる程の気概を、立ち上らせていた。  細くしなやかな腕を胸の前で組み合わせ、左手であごを撫ぜながら、あおは考えていた。幻想に入ったのならば、きーごがそうであるように、なにがしかの能力を得られるのかもしれない。あるいは、それを凌駕するような、そんな能力が。  だがいくら希望を募らせたところで、自らの埋もれた才能を開花させることが至難であることは、数多の文書――漫画やライトノベルと呼ばれる、一種の魔術書――で言及されているところだ。  湖上でくるくると飛び交う妖精達に目を細めながら、熟考するあおの背後に、突如として寒気を催すような気配が顕れた。  漆黒の濃霧が周囲を覆い隠したかのような、どこか運命を予感させる、そんな気配が。 「あんたかい――、」  振り向いた中空に、巫女がいた。  白と紅で強調されたその巫女は、呆れたような、そしてどこか面白がっているような顔で、ぽっかりと空に浮かんでいた。 「――異変は」  傾いた日差しを受けてか、湖は霧の深みを増し始める。  異変呼ばわりされたと言うのにむしろ清々しい表情で、湖畔に目を移したあおは、二呼吸ほど時を置いて、囁くように呟いた。 「みずうみ」 「あ?」  つられて、か。巫女も湖に目を向ける。  傾ききった日差しが湖面を輝かせ、さざ波の反射光が影に紅い彩りを添える。 「この湖が溢れるとしたら、どんな時かしら」 「そうね」  考え込む面持ちで、ふよふよと漂う紅白少女。  あおは、立ちこめる霧にも見飽きた様子を瞳にたたえながら、少女の瞳をのぞき込むように見据える。 「春の長雨の時……とか?」 「そうそう、困るのよね。散っちゃうし。春が早いと花見分が足りないわ」 「夏の大雨の時……とか?」 「あー、宴会の最中に降り始めたり。雷は花火の代わりになるけど、嫌よね。あとは、」  いつしか霧は濃く、深い陽紫に立ちこめていた。  心が、痛い程に研ぎ澄まされていくのを感じながら、あおは目を細める。  あくまでも自然を装いつつ、肩より少し高い位置に漂う巫女のより上空へと視線を移しながら腕を解いたあおは、体を斜に構えた。 「巫女を500機くらい沈めた時……とか?」 「……異変ね」  夕暮れが夜に蝕まれる、一時の刹那。息を吸い込み、紫紅に染め上げられた一際大きい雲を見上げる。湖畔が、わずか数呼吸の間に闇に包まれてしまう、そんな時刻。  湖上の妖精も、今頃は住処にたどり着いている頃だろう。湿気を含む重い空気を、雑念と共に、時間を掛けて吐き出す。  ゆっくりと、心に覚悟の衣をまといながら、巫女の――どこか間の抜けた、しかし揺るぎのない真っ直ぐな――瞳を、再び見据えた。  お互いの視線が絡み付いた瞬間、同時に跳びすさった。  相手に対して右手方向に跳躍したあおは、後方に距離を取った巫女が、先程まで自分の立ちつくしていた位置を護符の火線で薙ぐのを見て、背筋が凍りついた。  勝算は、なかった。  空を飛ぶ巫女を相手に、ただの人間が勝てるわけもない。湖を背後に構えていることも不利でしかない。湖岸は若干ではあるが傾斜しているし、土は湿気でぬかるんでいる。  そして何より、――力が、ない。  一呼吸すらも自分に許さず、着地と同時に反対方向へと跳躍した数瞬後、またも火線が襲いかかる。一瞬の内に位置を切り替え窮地を脱したあおは、突如巫女へと突進した。  巫女が弾幕で勝負するというのなら、勝利の手段は数える程しかない。  それは例えば、“肉弾攻撃”による“身体的接触”――!!  しかしその行動は見透かされていたのだろう、巫女は護符をばらまきながら、空中に飛び上がることなく――手加減でもしているのか――難もなくかわし切り、有利な距離を模索する。 「へぇ、いい勘してるわね」 「ありがと。……博麗の巫女、よね」 「……あん?」 「被害者だと言ったら、信じるかしら」 「当たり前じゃない――この加害者め!」 「苦手なんだけど」 「犯罪が?」 「手加減が」 「……良い結界の肥やしになりそう」 「有機栽培結界?」 「産地直送よ」 「軒並み引っこ抜くか」 「犯罪者め」  位置取りを勘案している巫女の懐に、あおは対話で出来た一瞬の隙――地へと降り立った瞬間の出来事――を見逃さずに飛び込んだ。  踵で巫女の足を踏み抜きながら、全身の力で腹を殴り抜ける! 拳に走る鈍い衝撃を感じた瞬間、その感触が消え失せた。殴りつけたあおの右腕に――悪寒を感じるより早く飛び退いたにも拘わらず――光が収束し、破裂した。  無傷とはいかなかった。反応が遅れていたら、掌が焼けただれていたかもしれない。  だが、得たものは大きい。  広範囲霊撃(ボム)にも、“対処の仕方”はあるのだ。 「普通、」  目を丸くした巫女が、息を詰まらせる。 「今のって避けられないんだけど」 「普通じゃないのかも。って、思いたい気分」 「あなた、人間よね?」 「空は飛べないけど、多分ね。それはそうと……まだ?」 「そうねえ。……ただの人間なら、次で最後にしましょうか」 「もう暗いしね」 「知ってるわ」 「?」 「鳥目ね」 「あはっ」  距離を取ろうとする巫女に対して、足を鞭のようにしならせて攻撃を加える。巫女は流れるように繰り出される蹴撃を冷静にかわしながら、あおの周囲に光条の結界を張り巡らせる。  地を這うしかない人間では、到底脱出出来ない護符の網が、刻一刻と押しつぶすように迫り始める。通常弾を掠め(グレイズさせ)ながらも結界の粗を探し、最善手を探し出すあおには、結局は結末を先延ばしにするだけでしかないことが、良く判っていた。  地面から空中に伸び上がって張り巡らされた結界は、通常弾符ではなく、先ほどの霊撃に使われたものと同質の護符を使用しているのだと、あおは符に描かれた紋様から推察した。絶対に触れたくはないと思わせる霊力の奔流を網として、符は立体的な結界を展開していた。紡がれた光の柱は、あおを中心とした円柱ではなく、ベニヤ板を幾重にも貼り合わせたようないびつな形をしていることに、あおは気がついた。全能を以てすれば、終端までたどり着けるような経路を残しているのだと、そう感じられるのは、巫女の遊び心の顕れでもあったろう。  今からどれほどの最善手を尽くしたとしても、現在の駆動力、瞬発力を最大に引き出して結界の終端までたどり着いたとしても、その瞬間こそ巫女が張り尽くした罠の最終段階であることが、あおには漠然と理解できた。  とはいえ、――奔る。  思考すらなく、体の赴くままに、走り抜ける。  一瞬前に駆け抜けた場所を、護符がなぎ払う。  一瞬後に駆け抜ける場所が、弾幕で埋め尽くされる。  なびいた髪を光の網で焦がしながら、弾符の火線を駆け抜ける。  巫女の視線・反応から、二手、三手先の思惑を読み取り、刹那の時間で裏をかく。一手を追う度、取り得るべき未来をはぎ取られて行く感覚に、あおは不思議な高揚を覚えた。  その愉悦が招いた、反応の空白。  走り込む位置がわずかばかりずれた、その間隙。  次善であるにも拘わらず、最善ではなかったと言う、ただそれだけの、致命傷。  有無を言わせない護符の弾頭が、地面を打ち崩す。頬先を、陰陽玉が、残像を残してかすめる。足を止めたあおの目の前、霊力網を隔てたわずかな距離で、巫女は微笑を浮かべる。 「惜しいわね」 「……つもりもないんだろ」 「まあね。命乞いなら、聞かないけれど」 「さすが巫女、さすがだな」 「良く言われるわ。何のことだか、わからないけど」 「一つ言っておこうか。……命乞いなら、聞いてやる」 「面白いわね。どうやって、」  考えていたわけではなかった。  ただ、思いついただけの、分の悪い掛け。  あおは中空に固定されている、霊力のほとばしりで、今にも弾け飛んでしまいそうな程に輝いている護符に、勢いよく拳を放った!  あおが霊撃でのたうち回る光景を想像していたであろう巫女の、望外の事態が、目の前に繰り広げられた。青白い閃光を放ちながら、瞬きの間に結界が“ほどけた”!  護符の一枚が、突如としてほつれ、結果として結界全体の霊力流が消え失せたのだと理解したのは、手拳が巫女の顔前で止められたその時だった。 「こう――やって、ね」 「な、……なにそれ!?」 「さっきの、護符。返しただけよ」  開いた掌の中には、焦げ付き焼き切れた、護符の残骸があった。  巫女が緊急の霊撃に使用する護符の一種だ。つまり――、 「……発動中の護符を奪い取って霊力供給を絶ったの? くらいボムが避けられた理由はそれか……っていうかその上結界にぶつけて無理矢理霊力ねじ曲げて、反対に霊撃したってこと!? ……どんなインチキ!」 「これはSTGじゃない、ってことさ……あつつ」  巫女が弾幕で勝負するというのなら、あおが取ることの出来る勝利の手段は、本当に数える程しかない。  それは例えば、肉弾攻撃による身体的接触であり、そして“スペルカードを全て避けきる”――その程度。  だがどうやら、戦いはそこまで長引かなかったようだ。  月の蒼い光が湖上を照らし始める頃には、巫女から立ち上る敵意は微塵も消え失せていた。 「はぁ。まあいいわ、あなたは異変じゃあなさそうだし。ウチに来なさい。手当したげるわよ。……鳥目だとここらへんは危ないでしょ」 「ふふ……じゃあ、頼もうかな」 「で、なんで撃ってこない?」 「教えてあげてもいいけど、一つ教えてくれないか」 「私に教えられることなら」 「一つでいいんだ……“弾幕の撃ち方”だけで」 「本当に一般人だったのね。そのために?」 「戦った理由というのなら、そうだ。識りたいものだろう、誰しも?」 「呆れてるわ」 「日本語、おかしくない?」 「いいのよ、幻想郷だし。呆れてるのは事実なんだし」 「ま、“今日から”よろしくたのむよ、霊夢センセイ」 「……呆れてるわ」 「経験が足りないな」  霊夢と呼ばれた巫女は、思い出したかのように尋ねる。 「そう言えば。異変を探しに来たんだけど。さっき、魔法の森が騒がしくなかった?」 「ああ……。……あれだ、霧雨の魔法使いが、なにやら嬉しそうに魔法をぶっぱなしてた」 「……帰りましょうか」  やれやれと肩をすくめる霊夢に、清々しく微笑んだあおは、これからの幻想郷について、想いを馳せる。  きーご、DY。魔理沙と、レミリア。そして、自分。幻想の郷に、現出した、その意味を。  博霊神社の倒壊を霊夢がまったくもって失念していた――忘れたかったのかも知れない――ことは、二人が身を以て思い知ることになる、異変の一つだった。  湖は、霧に包まれながらも、蒼く、静かに、月を染め上げていた。 場所:【湖畔/1日目・夕暮れ】 名前: 博麗霊夢 あお 備考: これより神社へと向かう。あおが弾幕スキルを取得できるかは展開による。 #endregion *第44話 白玉楼の一戦 第44話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 魂そのものに吹き付けてくるような涼風が流れてくる一室。 みなとが対面した外来人は、彼の予想を超えていた。 「ダメギさん……?」 つんつんととがった髪に派手派手なスーツとグラサン。 男女比のおかしい某麻雀漫画に出てくる登場人物に良く似た姿で、その男はこちらに笑いかけていた。 「まさかリアルで会うことになるとはね。一つよろしく頼みます」 格好にそぐわない人のいい笑みに、つられてみなとも頭を下げる。 そんな様子を幽々子は面白そうに、口の端に笑みを浮かべながら眺めていた。 「ふふふ……こんな偶然があるとはねぇ。それとも私達には分からない『必然』かしら。……まあいずれにせよ早くやりましょうよ」 その思わせぶりな言葉に、みなととダメギは視線を向けるが、まるでそれをあらかじめ予想していたように幽々子は扇で口元を覆ってしまった。 「食い断あり赤なし、一発裏ドラカンドラありの半荘、白玉楼特別ルールとして15000の20000返しでトビありでいこうと思うけど、構わないかしら?」 問いかけられた二人は視線を合わせ、頷く事で了承の返事とする。 予想通り、東方幻想麻雀の卓ルールと同じであった。能力による説明は無かったからそれは多分無視して大丈夫だろう。 だったら……負けるわけが無い。 同じような思考回路を経て、外来人……いや、人外魔境なVIPで腕を磨いてきた雀士は不敵な笑みを浮かべた。 風牌で場所決めが行われ、決定した席順は幽々子、みなと、ダメギ、妖夢であった。 緊張に手のひらを湿らせながら、配牌を取っていくみなと。 もとの世界に帰れるかどうかが掛かっているとなれば、その必死さも当然であろう。 そうして持ってきた配牌は、彼の願いが通じたか…… (よし!チートイドラ2のイーシャンテン!) まさに、好調者のそれであった。 持ち点が少ないこの白玉楼ルールであれば、これを上がりきれば一歩ぬきんでることが出来るだろう。 だが…… (……!またトイツ被りッ) 配牌良ければツモ悪し。彼がテンパイしたのは12順目のことであった。 もうその頃には他家も揃っているのか、ツモ切りが多くなっていた。 おまけに少しでも可能性を増やそうと合わせ打ちを多くしたのが不味かったか、待ちの一枚切れの西も出そうな気配が無い。 そうしてもう直ぐ流局、というところでツモってきた牌が……2万。 ちらりと河に視線を移すと、幽々子、ダメギに一枚ずつ捨てられていた。 (振込みは期待できないか……) そうしてそのまま河に置こうとしたところで…… 「み な と に 電 流 走 る!!」 寸でのところで、彼の視線は対面の妖夢の捨牌へと吸い寄せられる。 彼女の捨牌はごく平凡なタンピン形であったが…… (11順目に1万を手出し?) この順目で1万だけが浮いていた、ということはあり得ない。 ……そこでみなとの頭脳が高速回転する。 (どういう形から出てきたか。考えられる可能性は…… ①1万3万からのターツ落とし ②1万2万からのターツ落とし ③1万2万2万から2万が重なったため1万切り と、こんなところか。③は河と自分の手牌で合計3枚になるから除外していいとして……①と②だが……) そこで妖夢の河を更に注意深く観察する。すると…… (ん、8順目に5万が無造作にツモ切られてるな。もし3万があったらツモった時に少考するだろうし、切ってくのは1万だろうな。ってことは①もおそらくない。ってことは②のターツ落とし。……!!ッこれは2万の出るフラグ!!) 「リーチッ!!」 1枚切れの西が横に滑り、乾いた音を立てて転がる千点棒。 その自信に満ちた顔からダメギはさっと河を眺め、何かを悟ったようににやりと笑みを浮かべる。 刹那に行われた鋭い読み、危険な気配を気取るには……まだ妖夢は麻雀慣れしていなかった。 次順、彼女の河へと置かれた2万を見ながら、みなとはゆっくりと自分の手牌を倒したのだった。 場所:【白玉楼/1日目・夜】 名前: 湊 ゆゆこ よーむ ダメギ 備考: 東1局が丁度終わったところ #endregion *第45話 存在 ――ナ ニ カ―― ※微グロ注意。苦手な人は注意な。 第45話担当[[⑨]] #region(close) 「先生!ありがとうございましたー」 「しっかりと帰るんだぞ慧音先生がいないからと言って宿題を忘れたりしないように」 「はーい!」  子供が寺子屋を終え家路へ急ぐ。  既に子供の行方不明者は5人に達している。  寺子屋の教師上白沢慧音とつゆくさが子供たちを捜索している間は稗田家の者が寺子屋で教師をしている。  そんな生活はまだ始まったばかりだ。  外来人と先生が探しに行くというのは里の者にとっては心強い限りだがある意味でそれは里の問題がどうしようもない地点まで表面化したという意味を持つのだ。  里の大人達も自らは力になれないが攻めて彼らを心配させないようにと子供を見守り、里に緊急のお触れを出した。  外を出歩く際には大人と一緒にいること、できれば家からあまり出ないこと。 その他である。  しかしそれでも子供は一人で外を構わず出歩く。  大人無しで仲間と遊ぶ。  大人がいなくなったというのに子供は元気だ、本当に子供は危険性を――  ――いや、大人を心配させないために、帰ってくる仲間が戻りやすいように明るくふるまっているだけなのかもしれない。  大人がこれだけピリピリとした緊張感を強いていては子供も息が詰まる。  だからこそ大人に自分たちは大丈夫だ、ということをアピールしたいのではないだろうか?  仲間が帰るときこんな緊張感のかでは入りにくいのではないだろうかと心配しているのではないだろうか  しかし行方不明者は―― 子供5人?  ――本当に?   犠牲者は本当に―― ソ レ ダ ケ ? ◆◆◆  苔むした土の上に布切れが散らばる。  その布切れを良く観察すればその布切れがもともとは衣服であったことがわかるだろう。  その布切れには赤い液体が付着し、肉塊の様なものも散らばっている。    その場に漂うのは―――  『死臭』  よくこの地を観察すれば何か丸い物が奥の方におちていることもわかるだろう。  その丸いものからは異臭が放たれ既に腐り始めている。  原形をとどめるその丸い物――人の頭にある二つの窪みは恐怖で見開かれている。  だがこの腐りかけた頭や既に白骨化した頭がい骨。  その数は明らかに両の手では収まらない。  明らかに20――いやそれ以上の死骸がそこにはあった。  そこで動くものはただ一つ。            ナ ニ カ  人のような形をした『存在』だけ。  その『存在』はこの苔むした土の上で姿を変えている、  八雲藍の姿へ、放課後の姿へ、レミリアの姿へ、DYの姿へ  あるいはZUNの姿へ、はたまたルーミアの姿へ――  それは幻想麻雀に関連する存在に姿を変え続ける。  その姿は一時は安定するがまたすぐにまた別の姿へと変わる。  姿を変えながらその存在は喰らっている。  ――何を?  人を。  いや、かつて人として生き、笑い、泣き、存在していてた物体を。  物体の衣服を引き裂き、その腕にかぶりつく。  胴を引き裂き骨ごと血肉を喰らう。  足を引き裂きのそのあしを喰らう。  足の中にあるアキレス腱や筋肉を喰らう。  手足を失い胴を引き裂かれた肉片から臓物を引きずり出す。  心臓を、肺を、腸を喰らう。  そして、最後に残った頭を割り――脳を啜る。  残るのは頭を割られた頭蓋、布きれ、血。  そして、僅かな食べ残し。  タ ベ ノ コ シ ?  いや、人であったもののなれの果て。 「キキキ……クキキキキキ……」  この『存在』とは何なのか――  即ち、『バグ』  パッチ1,3に置いて続出したような幻想麻雀に置けるバグの集合体。  幻想麻雀に関連する想いから捨てられてしまった悲しみの結晶。  あるいは修正され、なかったことにされてしまったもの。  いや、それだけではないだろう。  多くの矛盾を内包する幻想郷その物のバグ。  人の根本に位置するバグ。  そのバグが今この場に現出していた。  本来は現出しないはずの『バグ』が。  幻想郷が時間を掛け直していくはずのバグが。  この幻想郷に幻想麻雀に関連するものが多く同時期に現れたのもこの『バグ』が所以  この『バグ』のなかに取り込まれている幻想麻雀の力が作用しこの地に現出した。  現在幻想郷はこの『バグ』により『深刻なエラー』が出ている状態だ。  この存在はバグであるが故に人間でもなく妖怪でもない中途半端な存在。  幻想郷の法則の人間は妖怪に襲われ、妖怪は人間に襲われるという法則に適用されない存在。  この幻想郷に『深刻なエラー』をもたらし崩壊へと導く『バグ』  なぜこのようなバグが生まれることとなったのか、それは誰も知らない。  おそらくは八雲紫でも、この幻想郷の最高種である龍でも知らないであろう。  バグとは予想が付かないからバグなのだ。  バグであるからこそ予想とはかけ離れた動きを行い崩壊へと導く。  バグは――まだだれにも見つからず、動き出したばかりだ。 ◆◆◆  苔むした土の上にあるのはかつて生きていた者のなれの果て。  その果てはかつて生きていたことを感じさせぬ様子でその場にある。  バグは人を喰らう。  なぜ喰らうのか――力をためるため?恐怖を味あわせるため?  それはバグのみが知るということだ。  バグはバグであるが故に多くの力を持つ。  バグはバグであるが故に多くの姿を持つ  バグは人を喰らう。  犠牲者は―― 5人?  いや――犠牲者本当に こ こ に あ る 死 骸 の 数 だ け ? 場所:【不明/1日目・夕方】 名前: バグ(?) 備考: 唐突にやりたくなった。反省はしている。 簡易設定まとめ ・バグは幻想雀士、及び幻想郷住民に姿を変えることができる。但し完ぺきではない ・バグはある一定の学習能力を持っている。 現在はこんなものですかね #endregion *第46話 土下座 第46話担当[[皇束篠秋]] #region(close) 「いやもう本当すいません」  二人の女性に自分は土下座をしている。それも地面に額をこすりつけて。  崩壊した神社は月明かりに照らされて、妙に神秘的な雰囲気を出している。  一人はこの神社の主である博麗霊夢。彼女はあきれているのか憐れんでいるのかわからないような、微妙な表情をしていた。正直彼女はまだいい。問題はもう一人だ。  眉をひくひくと動かしながら腕組みをしている女性、自分の大敵、レジェンド。あおがそこにいた。 「本当すいませんそのなんていうかその場のノリと勢いに任せてぶっ壊しました」 「ごめんですんだら警察はいらないよな?」 「……おっしゃる通りで」  投げつけられた木片を土下座品がら器用にかわす。どうやっているかは説明するのが面倒なので省略。 「ま、まあ二人とも落ち着きなさい」  さすがにまずいと思ったのか霊夢が中に入ってきてくれた。  途中まで持ち上げられた木片を地面に下ろすと、あおはため息をついた。 「本当にいいのかい?」 「……いいわよ別に。また立て直すから」 「だ、そうだ。よかったな」  女性は怒らせると非常に怖い。心からそう思った。 ===========  霊夢はさすがに神社で寝るわけにはいかないので、誰かに一泊を頼みに行ったようだ。  今、神社には自分とレジェンドしかいない。  レジェンドは無言で酒を飲みながら月を見上げていた。女性には全く興味がなかったが、美しいと思う感性はどうやらあるようで。 「なにを見ている?」 「別に」 「そうか私を見ていたんだな」 「……否定はしませんね」  そういうとあおはお猪口に注いだ酒を一気に飲み干した。 「で、誰に頼まれた?」 「……言ってる意味がわからないんですが」 「お前は霊夢のことをよく知っていたはずだ。そして神社を壊したら結界が不安定になることも」 「手違いです」 「……ふん、それでいいさ。今は」  もう一度あおは注いだ酒を飲み干す。唇からこぼれた酒が首筋へとむかった。 「では今度はこっちが聞く番ですね」 「ん?」 「あなたはここでナニをするつもりなんです?」  一瞬彼女は悩んだが、すぐに答えを見つけたようで二ヤリと笑った。 「面白い事さ」  そこで確信した。彼女は整備されたバイクのようなものだ。  現実の世界で丁寧に整備された彼女は待っていた。自分にガソリンが注がれ、キーを差し込まれる日を。  そして一度動き出すと彼女は止まらないだろう。壊れるか燃料がなくなるまで。 「……なるほど」 「どうだい一杯?」  彼女がお猪口を手渡してきたが断る。  もう少しだけ酒を飲む彼女が見たかったからだ。 場所:【神社(崩壊)/1日目・夜】 名前: あお 皇束篠秋 備考: とくになし #endregion *第47話 兎は穴に落ちずに竹で頭を打つ 第47話担当[[金木犀]] #region(close) 気が付くと見知らぬ天井で布団に寝かされていた。 確か私は何者かによって謎の空間に引きずり込まれ、ふらふらと竹林をさまよっていたはずなのだ。 急に何かが近づいてくる音が聞こえてパニックになっていた…。 そこからの記憶はない。ということは誰かがここまで運んでくれたのであろう。 「気が付いたのね。おはよう」 布団の傍らにはブレザー姿のウサ耳を付けた少女が座っていた。 なんだウサ耳少女か… ウサ耳っ!? 俺は布団から勢いよく抜けだし、ウサ耳少女に近づく。が急な立ちくらみでまた布団に倒れ込んでしまう。 そういえば腹が減っていたのだ。思いだしたかのように腹も鳴る。ぐぅ~。 「ちょっと待ってて。今、おかゆ暖めてくるから」 そういってウサ耳少女は襖を開けて外に出て行く。返事をする気力が無かったが代わりに腹の虫がしてくれた。ぐぅ~。 そういえばここは何処なのだろうか。殺風景すぎて特に手がかりも無い。 取りあえず畳で襖、要するに和室なのだろう。 しかも部屋の雰囲気的になかなか良い所のようだ いろいろ考えてる間に少女は土鍋を持って帰ってきた。ほかほかと優しそうな湯気を立てている。 もう待てない。体が食べ物を欲している。 「そんなにがっついちゃ火傷するよ」 制止の声も聞かずにレンゲでおかゆをがっつく。案の定火傷した。 どうやら記憶が飛んでいるのは竹林で頭を強打したらしい。そりゃ気絶もするだろう。 しかもここは病院らしいから渡りに船だ。舌も火傷したことだし医務室に連れて行ってもらうことにした。 外に出て永遠に続くような廊下を歩いていく。 同じような部屋がたくさん並んでいて全然見分けが付かないため一人で歩いていたら確実に迷っていただろう。 分からないままに後ろをついていってるのだが、ウサ耳少女は意外にも背が大きかった。 多分見上げないと顔すら見られないだろう。歩幅も広いのかついて行くのに必死である。 どれだけ歩いたか忘れたがいつの間にか医務室についていた。良く見る清潔な白を基調とした一般的な医務室の中で赤と青をはんぶんこにしたようなナース服を着た人が座っていた。 「あら、この子が竹林でドジした兎ね。取りあえずここに座ってじっとしててね」 椅子を差し出され言われたまま着席する。この人には逆らってはいけない気がするのだ。 そして頭をさわさわされる。少し違和感を感じるがくすぐったさの方が上だ。思わず笑ってしまう。 「んー。取りあえず優曇華は倉庫から湿布でもとってきて貰えるかしら。あと氷とか冷やせるもの」 そういわれると優曇華と呼ばれる少女は外に出て行った。そういえば優曇華という名を聞いたことがある気がする。  そんなことを考えていると目の前のナース服の人が口を開いた。 「ようこそ永遠亭へ、兎の外来人さん?」 場所:【永遠亭/1日目・夕】 名前:鈴仙とウサ鍋 備考:兎になってます 自分はまだ兎だと気づいてません。 #endregion *第48話 人のチカラ 第48話担当[[⑨]] [[SSの在り処>http://www42.atwiki.jp/vipthmj/pages/344.html]] 謝罪 調子こいて書いてたらとんでもない量になった お手数ですが読みたい方はリンク先のページをどうぞ *第49話 そんなに赤くない紅魔館 第49話担当[[金木犀]] #region(close) 紅魔館の前で一人の男 まだらは覚悟を決めていた。 現在の紅魔館には門番の姿はなく代わりに木製の看板で「出入り自由」とつるされている。 きちんと出入り自由と書いてあるのだ。自分は何一つやましいことはない。 男は決心して中に入っていった。 門から一歩踏み込んだ瞬間、室内にいた…! 何をいってるかわかんねーと思うが俺もなにをされたかわからなかった。 超スピードだとか催眠術だとかなんとかかんとか… 「いらっしゃい、不審なお客さん。なにかご用かしら?」 話しかけられている間に大広間で椅子に座らされ、しかもぐるぐるに縛られている。 周りにはメイド姿の妖精ががやがやよってきた。まるで動物園のパンダの気分だ。 「門に出入り自由と書いて入ってきたんですけど…」 「一応ここは悪魔の館よ。知らない訳じゃないでしょ。なにをされても文句は言えないわよ?」 そういいつつ目の前で咲夜さんがサディスティックな笑みを浮かべながら首筋にナイフを当ててきた。 何かに目覚めそうだ。 首にナイフを当てられてるといっても本当に切る訳ではないだろう。少し落ち着いたので周りを見回してみると、たくさんのテーブルの上にめいっぱい食べ物がのせられている。 パーティーでもしているのかとても酒臭い。座ってるだけなのに酔ってしまいそうなアルコール濃度だ。 そのなかに微かなながら上品な酢の香りが漂っている。 「この香りは…寿司?」 確か幻想郷には海は無かったはずだ。川魚や山菜で寿司でも作っているのだろうか。 「随分余裕なのね、まぁいいわ。今日は貴方以外にも変な人がいるのよ。そこの酒臭い人なんだけどね」 ひらひらと手を振っている男が広間の真ん中に立っていた。原理はよく分からないがアルコールの真ん中にいる気がする。 しかし顔は紅潮しておらずまるで素面だ。なにより奇妙なのはその服装だった。 まるで板前のような格好に小さく胸に「あるえ寿司」と刺繍してある。 あるえ寿司…… あるえずし…… あーるえずし…! RSC!? 「RSCさんなのか!キャーアールエスシーサーン。俺ですよ、まだらですよ!」 縛られているため立ち上がれないが椅子をがたがたさせて存在をアピールする。 「ああ、まだら君か。こんなところで会うなんて奇遇だねぇ。何か運命のようなものを感じるよ」 よく分からないことを良いながらころころと笑っている。やっぱり酔っぱらいだ。 そんなやりとりをしていたらいつの間にか縄が外されていた。 知り合いと判明し、さらに危害を加えることは無いだろうという判断だろう。 縄が外された俺は急いでRSCさんの元に駆け寄り後ろに隠れた。これ以上新しい自分に目覚めるのは勘弁なのだ。端から見ればまるで子犬が飼い主に駆け寄る姿だっただろうが、まぁ残念ながら大の大人である。 拘束を解かれた俺はRSCさんの隣で咲夜さんお手製のちらし寿司に舌鼓を打った。うまい、うますぎる。 話によるとこのちらし寿司はRSCさんの伝授によるものなんだとか…。すごいぞ、RSC! 宴もたけなわで程なくして寿司パーティーは終了した。メイド妖精はベロンベロンに酔っぱらって見るも無惨な状況であった。 パーティーの最中に七曜の魔女や悪魔の妹とも少しだけとはいえ会話もした。結局酔っていて覚えてはいないが… 無事本日の食料にもありつけたのだが、幻想郷に身寄りのない俺は咲夜さんに頼み込んで少しの間紅魔館で働かせてもらうことにした。これで当面の衣食住は確保できた。RSCさんにも勧めたのだが、彼はいろいろなところを見て回りたいのかそれを断っていた。 雇用してもらったから良いのだが、メイド長である咲夜さんが勝手に決めても良かったのだろうか? とうの主の姿は一度も見えなかったが… 場所:【紅魔館/1日目・夕】 名前:RSC まだら 紅魔館メンバー(レミリア除く) 備考:まだら、紅魔館に少しの間労力として雇ってもらう     RSC、安置をすてよ、そとにでよう #endregion *第50話 生まれついての王 第50話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 槍の穂先の、一体何が面白いというのだろう。 (こいつ……うつけか?) 眠たげな眼差しでこちらを見据え、ひたすらクツクツと笑う女を見て、天狗は言いようの知れない不安に駆られていた。 自分は絶対的な強者であり、目の前の人間は己の欲望を満たすためだけの道具でしかない。 その理路には何の過ちもない、はずだ。 だというのに……どうしてこんなにも心が冷えてくるのだろう。 「……ふん、そんなにこの槍が気に入ったか!!」 己を鼓舞するためにわざと口角を吊り上げ、手に持つ得物の先端を女の口に押し込む。 勿論、喉に当たらないように加減をしている。悦楽を得るには生きている方が何かと都合がいいからだ。 食欲にしても、性欲にしても。 「どうだ……しゃぶってみろよ、ん?」 ぐちゃぐちゃと無遠慮に口内をかき回したところで、初めて女性の表情に変化が訪れる。 が、それは天狗の期待したような、恐怖と絶望の影に染まったものではなかった。 まるで愚民の粗相に蔑視を投げかける王のような、見限りと憐憫のこもった不快極まる嗤い。 ……天狗の息が詰まった。 そのまま、雰囲気の持つ力に押しのけられるように一歩下がる。 槍の穂先が抜けたところで、女はたらりと美しく血を流しながら口を開いた。 「笑止。貴様の槍、古い造りにも関わらず血を吸った味がせんな。大方、今まで一人ではうまく得物を取ることが出来ず、今度こそはと力んでおるのだろう?」 槍を持つ手が緩み、危うく取り落としそうになる。 怒りに我を忘れて、ではない。心の隙間をさらりと言い当てられた事実に純粋に驚愕していたのだ。 恐怖と緊張に息が荒くなる天狗を前に、女は負の念を包みこむ、甘い毒ガスのような言葉を呟き続ける。 「悠久に近しき時を生きる妖怪にとって、その序列は実力差に応じたものとなっておるだろう……貴様は軽蔑と嘲笑の中で、最底辺の屈辱を甘んじて受け入れていたに違いない。だからこそ、自分より弱い種族には精一杯の虚勢を張って、それで辛うじて自己を保っている。くくく、愚かよのう?」 刺してしまおう。 もう天狗には、浅ましい欲望を満たそうという気概は微塵も残っていない。 ただ、心の隙間を笑みと共にこじ開けられていくことにこれ以上耐え切れなかっただけだ。 槍を水平に構え、再び穂先を女の口へと向ける。 女の口が再び三日月の形になり、天狗の頭の中で、その顔が自分を冷遇してきた大天狗や鼻で笑い続けてきた同僚と重なる。 「……死ね。死ねええええッ!」 己の弱さから目を背けた、天狗の何の技巧も無い突きが女を襲う……かに見えたが。 「まあ待て。……そうだな、貴様が救われる道がただ一つあるぞ」 女の、まるでついでに付け足す、といった気軽な言葉に、彼の手が止まる。 そして、改めて、初めは獲物だったはずの人間の女の顔を直視する。 「……ああ」 手から勝手に槍が離れ、ため息と共にその場に跪く。 大天狗はおろか、山の神に対しても抱かないような、鮮烈な畏怖。 自分は一体何を考えていたんだろう。なぜ、自分はこんなにも偉大な存在に歯向かおうとしていたのだろう。 まるで白痴のようにこちらを見つめる天狗を前に、女は両手を軽く広げる……あたかも、大多数の聴衆に語りかけるように。 「何も、自分が万能である必要はないのだ。……ただただ、偉大な車輪の轍を踏めばよし。完璧に限りなく近いものを崇拝し、尽くすだけだ。簡単だろう?……さて、それでは問うが、貴様にとって永遠に従属していかなければならない存在はなんだ?……大天狗か?山の神か?」 「……いいえ、あなた様でございます」 「私が糞を食らえと言えば食うか?」 「きっと食ろうてみせましょう」 女は先ほどとは違った満足げな笑みを浮かべ、頭を垂れる天狗を慈悲に彩られた視線で捉える。 ……強烈なプレッシャーで他家に露払いをさせ、高い勝率を誇ってきたいーあるさんの身につけた能力は……限りなく凶悪な代物であった。 バグとはまた違った幻想郷に巣食う闇。それがどのような軌跡を辿るかは、まだ誰にも分からない。 場所:【妖怪の山/1日目・昼下がり】 名前:いーあるさん、天狗A 備考:不安を煽る程度の能力。 相対する時間や相手の劣等感に比例した不安感を抱かせることができる。 話術も駆使すれば即席カリスマも可能? #endregion [[続き>リレー小説6]]

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