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---- ・[[リレー小説1]] ・[[リレー小説2]] ・[[リレー小説3]] ・[[リレー小説4]] ・[[リレー小説5]] ・[[リレー小説6]] ・[[リレー小説関連コメントページ]] ----  62話現在の現在位置票 1.神社        あお&篠秋&霊夢  2.プリズムリバー家  ○○&プリズムリバー3姉妹 3.魔法の森        (魔理沙の家)    魔理沙&きーご 4.霧の湖         5.アリスの家     CAST.er&アリス&三月精 6.幻想郷のはしっこ  狐ノ連 BBRC&文 7.魔界        ロリス*3 神綺 8.人里        つゆくさ&WATA&慧音&妹紅&パルシィ             外来人in無縁塚&なおきん&DY 9.彼岸        ぞうちんちん&映姫&小町 (メディスン) 10.永遠亭      鈴仙とウサ鍋&鈴仙&永琳 輝夜 11.紅魔館      RSC&まだら&紅魔館メンバー ⑨&チルノ 12.妖怪の山     金木犀 いーあるさん&烏天狗 13.灼熱地獄跡    Nowe&空 14.白玉楼      湊&ダメギ&幽々子&妖夢 15.地霊殿      長き童貞 ---- *第63話 黒幕達の暇つぶしと衣装チェンジ 第63話担当[[皇束篠秋]] #region(close) 「迷った」  開口一番にこれである。皇束篠秋は迷いの竹林で迷っていた。目的地は言うまでもなく永遠亭である。ひとまず中間報告に向かうためだ。  実は彼はいちどここに来たことがあるのだが、そのときは輝夜の部屋からのスタートだったので、道順は全くわからなかった。  ちなみに左手法も試してみた。バカである。   「こうなりゃ妬けですな」  そういうと目をつぶって一直線にかけだした。  10分後 「いやあすいませんな」 「バカでしょあんた」  輝夜から頭をたたかれていた。  輝夜の部屋には人型の穴があいている。超ド級のバカである。 「……片づけはうまくいったのかしら?」 「ええ、結構弱ってたみたいで」 「それはよかったわ。あれは人を攻撃するために用意したんじゃないもの」 「あ、そうだ。帰ってくるときに神社の破壊と、その上の結界の一部を弱くしておきました。あと皆の向こう側での生活場所も」 「上出来よ」  輝夜は立ち上がると部屋にかかっていた掛け軸に近づくと掛け軸を外した。後ろには扉が隠されていた。 「ほらこっちにきなさい」  言われるがままにその扉の中へ入ると、武器や衣装があふれんばかりに無造作に散らかっていた。 機関銃、ピストル、槍、鉄砲、竹刀そのほかにもいろいろある。 「八雲紫が酔ったときにいろいろ出させてここに運んどいたわ。好きなのを選びなさい。あと……」  そういって取り出したのはタキシード服とシルクハット、まるで夜の闇のようにまっ黒な。 「これは?」 「火鼠の皮衣で作った服よ」 「もったいねえええええええええ!」 「……口調がえらく変わるのね」 「あ、ちょっと仰天してしまって」 「まあいいわ。間違いなく大妖怪クラスが貴方を妨害しに来るから、私の宝物の一つを加工してあげたわ。ちょっとやそっとじゃ傷一つつかないわよ」 「……ありがとうございます」  服を受け取ると彼は一瞬で着替えた。別に書く描写を省いたのはめんどくさかったからじゃないんだからね! 「で、武器は決まった?」 「ええ」  そういって彼が手に持っているのは、ギザギザした刃、真っ赤な取っ手、垂れ下がった紐。いわゆるチェーンソーというものだ。  ちなみに永遠亭には電気があるので充電はばっちりだ。 「なぜそれを?」 「古来から神殺しといえばこれですので」 「ふーん……よくわからないわね。まあその程度なら袖にいれてごらんなさい。その袖はいろんなものが入るから」  言われるがままにチェーンソーの刃を袖に近づけると、一瞬にしてチェーンソーは袖へと消えた。 「ちなみに取り出す時は念じれば出てくるわよ」 「これってなんて四次元ぽ」 「しゃーらっぷ」  これ以上はかなりまずいので輝夜は言葉をさえぎる。 「ま、まあとにかく次の仕事は夕方からよ。貴方にはがんばってもらうからね」 「了解です。それまで何しましょうか」 「……なにしましょうか」 「麻雀なんてどうでしょうか」 「そういえばあったわね。じゃあそれでいいわ」 場所:【永遠亭/2日目・朝】 名前: 篠秋 永遠亭住民 備考: 幻想郷と現実を結び付けているのは輝夜のパソコン 永遠亭の技術は幻想郷の中でもトップなので電気くらいはあるとおもう。 幻想郷にやってくるもの(一部例外)以外は現実には無いものなので不老不死はないので消える。はす。 #endregion *第64話 付けるならば……なんだろうね…… 第64話担当[[⑨]] #region(close) 「あら?あいつはどこに?」  朝がきて霊夢はようやく帰って来た。  その様子はいつものように飄々としていて  ただ篠秋がそこにいなかったから聞いた、その程度の言葉だ。 「別にどうでもいいんじゃないか?もともとあいつは良く分からん奴だったしな  メッセでも気が向いた時に来て気が向かない時は別のことをしていた」 「そうね、別にどうでもいいわ」 「ところで弾幕のうちかたのことなのだけれど――」 === 「まずスペルカードを用いた弾幕はあくまでお遊びだということは理解している?」 「知識としては、ただしそのお遊びでも死ぬ可能性があると」 「なら、なんで弾幕ごっこ以外でもスペルカードは扱われるの?」 「分からないな」  霊夢の言葉に素直に分からないと答えるあお。  そんなあおに霊夢は分かってないわねと言ったようなしぐさをしながら 「単純なかっこつけよ、普通に打つより必殺技宣言したほうがかっこいいじゃない  それに声を出したりした方がより多くの力が出せるしね」 「なるほど」  と。言ったのであった。  あおもあおでそれに納得しているがお前本当にそれでいいのか? 「ではここで本題、その弾幕やスペルカード。それを放つには具体的に何が必要?」 「……霊力とか妖力って奴か?」 「正解。ならその力をあなたは持っていると思う?」 「外の世界では持っていなかったし、力は持っていないだろう」 「それは不正解ね。あなたは間違いなく弾幕を放つための力を持っている」 「どういうこと?」  霊夢とあおの間で質問とそれに応える行為が繰り返される。  霊夢の質問にあおが応えるという形で。  「外の世界には霊力や妖力、魔力が存在していないらしいけれど、それはなんで存在していないの?」 「存在しない理由……考えたこともなかったな。  ”カガク”でそんなものは存在しないと教えられていたし、最初からそんな存在は―――あ」 「気が付いた?外の世界で霊力や魔力というものは忘れられたものなの、その”カガク”というものによって  忘れられたものは一部の例外を除いて全ては幻想郷に流れ着く  それは”カタチ”として存在しない不定形の力でも同じ」  そしてその質問のなかであおは気が付く。  自分達がその魔力という幻想を忘れていたことに。 「ならば流れ着いた力はどうなるか――力は寄り代を求めて人に憑く  即ち幻想郷の住民には例外なく大なり小なりなにかしらの力を持っているということ  でないと商家である霧雨家から生まれたマリサが人間の魔法使いをやっていることに説明がつかないでしょう?  マリサはその持っていた力を真摯に磨き上げて妖怪にも匹敵する力を手に入れたというだけ  まぁ、全部紫の受け売りだけどね、嘘か本当かは分からないわ」  最後に八雲紫の受け売りであるということ。   そう付け加えて霊夢は”チカラ”についての説明を終えた。  それをあおは興味深げ考える。 「つまりその力は今現在幻想郷の住民である私も持っているということか」 「そういうこと、あとはあなたが持っている力が大きいか、それとも小さいか、ね  こればかりは生まれついての才能。もし大した力がなければ諦めることね」 「たいした力がなければその時でまた新しい何かを考えるさ」 「それじゃちょっとついてきなさい、アミュレットや護符の扱い方を教えるから  それを扱ってるうちにあなたがどれだけの力を持っているかわかるでしょう」  そうして霊夢は崩壊した神社の中に足を踏み入れアミュレットや護符を探し始める。  大きな木材などは弾幕で恐しながら――お前本当にそれでいいのか?  あおはそんな霊夢の姿を見ながらひとり考える。  力を持つ物への対抗策――即ち弾幕のことや  自身がこの幻想郷にきた意味  そして自身と同じDYやきーご、篠秋のようなVIPの雀士のこと――  そして彼女はそこで気が付いた。 「まて――私はメッセで篠秋と初めて会話というかチャットをしたはずだ。きーごやDYはskypeを介して一応声も聞いていたとはいえ実際にあったことはないはず」  呟いて頭を振りながら考える。  自身の思考、頭に突如としてかかったモヤ。  消えぬ違和感。 「なのに――私は――なぜ――知っている」 場所:【崩壊した神社/2日目・朝】 名前: レムー あお 備考: レジェンドが違和感に気がつきました。俺設定いっぱいでごめんなさい。     崩壊した神社がレムーのアミュレット等を探す作業によりさらに破壊されます #endregion *第65話 闇の始動 第65話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 「紅魔館とか欲しいな」 「……え?」 烏天狗が自ら進んで鎖につながれてから一夜明け、主従は人里のとある茶屋に腰を下ろしていた。 「やはり、ああいう童話に出てくるような洋館と言うのは人にノスタルジィを抱かせるのかな。無意識のうちに昔読んだであろう、そして空想の中で夢見たであろう『お屋敷』が見られるという状況が、忘却されていた記憶を呼び起こすのかもしれない。湖の傍なんて最高のロケーションとも言えるしな」 そんなことを呟きつつ、天狗の新しい主は茶碗を傾ける。その姿は昨日までの一般的な洋服ではなく、ボロボロの翅の揚羽蝶があしらわれた和装に包まれている。 髪も丁寧に結われており、小柄ながら異質な雰囲気を纏ういーあるさんにはよく似合った退廃美で彩られていた。 烏天狗はそんな主の姿を礼を失さない程度によく目に焼きつけ……無茶振りな言葉にどう返すか必死に思案する。 「……紅魔館は、その、にわかには落ちないでしょう。吸血鬼としての身体の他に強力な能力を持つレミリア・スカーレット、フランドール・スカーレットは言わずもがなですが、メイド長の十六夜咲夜は時間を操ることができますし、館の主の友人であるパチュリーノーレッジはよく精霊魔法を用いると聞きます。また門番の紅美鈴も外見は愚鈍に見えますが弱点らしき弱点が無く、外柔内剛と言うべき人材でしょう……ここはご忍耐が肝要かと」 なんとか思いとどまってもらいたい思いから、烏天狗は若干脚色を加えた住人の説明をする。 それは決して自分の命が惜しいからではなく、主の身に何かあってはという危惧からくる、忠誠心に満ちたものだったのだが、いーあるさんは不可解な笑みを浮かべるだけであった。 もう一言、と言葉を紡ごうとする天狗を遮るように、彼女は口を開いた。 「……レミリアスカーレットは誇ることしか知らないただの雌獅子だ。自分の妹を495年も監禁したことからも代表される、問題を後回しにしようとする悪癖もまた見逃しがたい。フランドールも著しく情操と理性に欠けているし、パチュリーのような魔法使いは魔法の持つ特性から咄嗟の対応には弱いだろう。まあそれでもその知性は侮るべからず、と言ったところだが……ああ、あとあの門番なんかは言うに及ばず、だ」 くくく、と面を伏せ笑いを漏らす姿を見て、天狗は戦慄と共に理解した。 決して戯れではなく、自身の力に酔っているのでもない。 冷静に事実を見据えた上で、主は悪魔の館を盗ろうと言っているのだと…… 絶句する下僕の前で、いーあるさんはま、そうは言っても……と茶をあおりながら続きを語る。 「殴り込みをかけるつもりはない。心配せずとも。……ところで、私は賭け事において大切なことが一つあると考えている。それは勝つことでも負けない事でもない。それは勝負がおぼつかない素人の考え方だ……それじゃ何か分かるか?」 波打つ茶碗をしげしげと眺める主を見ながら、数秒後天狗は最後の言葉が自分に向けられたものだと気がついた。 「いえ……私ごときの凡庸な者には、とても……」 その言葉にいーあるさんは唇を舐めながら、その答えを口の端へと上らせる。 「『いかに賭けの内容を履行させるか』なんだよ。どんなに勝っていても無いものは無いってケツ捲くられたら博打の天才だってどうしようもない。痛めつけたってそれで財布が膨れるわけじゃないからな……だけど、この幻想郷には『悪魔の契約』とかいう素敵な制度があるみたいじゃないか。こいつがあればそんな心配は無用だ……」 なんでそんなこと知ってるのか。天狗は思わず言葉に出しそうになり、やめた。別に自分が知らなければならない事柄だとも思わなかったからだ。 ――悪魔の契約。それは吸血鬼条約に代表される『破る行動がとれない誓約』だ。勿論日常的に行われるものではない。幻想郷においては異変クラスの事件でも無い限り、破れない制約を設ける必要性があまりないからだ。 ……そこまで考えて唐突に、天狗はいーあるさんが何を言わんとしているかを理解した。 「まさか、レミリアスカーレットと……」 「そうそう。麻雀を打ってさ、館の登記証を賭けさせるんだ。そうとう負けがこまなきゃ出してはこないだろうが……なに、あの性格じゃどうせ引かないだろう。私にとっちゃ嚢中から物を出すようなものだ」 とん、と軽い音を立てて茶碗を置くいーあるさん。主の絶対的な自信に再び胸を打たれる烏天狗。 会計を済ませるために立ち上がる主従は知らなかった。 件の館にはVIP雀士が滞在している事。茶屋だと思っていたのが実は雰囲気の明るい居酒屋で、外来人によって切り盛りされている『妬み屋』であった事。 ……その密談がある人物に漏れてしまっていた事を。 場所:【人里・妬み屋/2日目・朝】 名前: いーあるさん、烏天狗 備考:個人的にいーあるさんはルミさんっぽいイメージ(え #endregion *第66話 ヒーローは動かない 第66話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 「なんだか変だな」 夜。里の外に比べれば問題にならないようなレベルであるが、科学力が惜しげもなく使われている現代社会に比べれば心もとない光量と言わざるをえない。 ふっと目を転じれば、そこにあるのは底の知れない闇ばかり。 生気を感じさせない、ねっとりとした濃密な昏黒がたゆたっていた。 「……ふむ」 そんな状況を興味深そうに眺めるのは、腕を組みながら何事か思案する上半身裸体の男……DYと。 「……フン?」 周りに広がる玄夜に負けず劣らず暗い瞳を持つ少女のようなナニカ……なおきんと。 「何々、どうしたの」 痩せた体にボサボサの髪を乗っけて落ち着かない素振りで辺りを見回す青年……無縁塚であった。 ――彼ら3人は結局のところそれぞれ腹に一物抱えながらも停戦協定を結ぶ事になり、とりあえずは行動を共にしようということで話がまとまっていた。表向きはまず魔理沙をどうにかしようという理由であったが、当然それは建前。ライバルを野放しにしておくよりは視界に納めていたほうがなにかと都合がいいだろうという現実的な理由があった。 互いに牽制しあいながらも宿をとろう、と里の入り口付近に足を運んだのであったが…… まるでゴーストタウンのように静まり返った一帯を目にしては、計画を変更せざるをえなかった。 「何があるんだろうな……古い民家の取り壊し工事?」 軽い口調で言葉を紡ぐのはDY。だがその眼には笑みが無い。 彼の額にうっすらと浮かぶ汗も、決して暑いだけが理由では無いだろう。 漠然とではあるが危機を悟るDYに、華奢な体をした少女もぼそりと言葉をこぼす。 「子供ガ、攫ワレテイルラシイナ。今日ケイネとその助手ガ討伐スルラシイガ、オソラクハ……」 なおきんの推測に、DYは頷くだけで大きな反応を示さない。 無論、あらかじめ知っていたわけではないが、彼にとっては驚くに値しない情報であった。 里といえど幻想の郷であれば、そういった生臭い事件も起こりうるだろうという考えだ。 そんな平常と変わらぬ男の隣でリアクションがあったのは無縁塚。 「えぇ!じゃ、じゃあさっさと逃げないと……」 不吉なものから逃れるように後ずさり、上ずった声で二人に言葉をかける。 攻撃手段を持たない彼にしてみればある種当然の反応であったが……それはいささか無様であった。 そんな青年を一瞥した後、DYは短く息を吐くと、逞しい腕を解き指を鳴らす。 ぽきり、ぽきりといくたびに、目の前の闇を慄かせるような音が響く。 言わずもがな、それは慧音の手助けを意味する挙措だ。 そして心の準備が整い、一歩踏み出そうとした瞬間――服に小さな手がかかった。 「……なんだ?」 せっかくの出陣を邪魔され、多少むっとなりながら振り返るDYに、なおきんは表情を変えずにわけを話す。 「行クベキデハナイ。……ルーミアガ見エタ」 途端、残りの二人の眉が曇る。 「見えたって……真っ暗だぞ?」 「チラリト見エタンダ……相手ガルーミアなら行ッテモ邪魔ニナル」 その言葉に、出鼻をくじかれた形のDYはそのまま足をとめる。 ルーミアは人食いの妖怪だ。当然、……子供だって食べるだろう。 ならばこの決着は弾幕ごっこなんてぬるいものではつかない。それでは里の人間が黙っていない。 そんな東方キャラの命をかけた戦いに肩入れする必要があるのか否か。 「……宿を探すか」 対局中、まるで未来を見通したかのように、残り少ないアガリ牌を見送り同順に暗カン後リンシャンで倍マンまで引き上げた男、なおきん。確かに、そういう能力を身に着けていたところでおかしくは無い。 くるりと踵を返すDYに、相変わらず冷たい顔のなおきんとどこかほっとした表情の無縁塚が続く。 ……ここでDYが後数歩闇に踏み入れていれば、あるいは何かが変わったのだろうか。 その時の3人には知る由も無かった。 場所:【人間の里/1日目・夜】 名前:無縁塚、なおきん、DY 備考:なんかジョーカー氏の見てたら書きたくなっちゃったんだ。……続けてもいいのかな……。 #endregion *第67話歓喜後困惑  第67話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 昼下がりの日差が、金木犀の体に容赦なく照りつける。 地球温暖化なんてどこ吹く風、という幻想の郷でも、じわりと汗が浮かんでいくのが分かる。 加えて彼は妖怪に見つからないように常に気を張り続け、水分も摂らずに歩き続けたのだから、その消耗はばかにならない。 「まずいな。どこもかしこも良くない『気』に満ちている……。休憩したいところなんだがな……」 呟きながらも、それが叶わない望みである事を彼は重々承知している。 能力が無ければ、もう15回は見つかっているだろう。リアルイライラ棒状態のわが身を思い、思わず舌打ちしてしまう。そして、直後に、そんな感情のおさえが効かなくなり始めている自分に不安を抱く。 このままいけばいずれ致命的なミスをおかしてしまう。ならばリスクを負っても少し体を休めるべき。 後2分歩いたら立ち止まろう。そう金木犀が考えた直後であった。 鬱蒼と茂っていた木々が唐突に終わりを告げ、視界が大きく開ける。 「……!」 思わず走り出す彼の目に飛び込んできたのは、蓮の葉が浮いた澄んだ池。 金木犀は更に神経をぴんと張り詰めて……そしてどっとその場に腰を下ろした。 「つ、ついてる……こんなラッキーなことがあるなんて」 大蝦蟇の池。山の中腹に存在するそのスペースに偶然にたどりついたのだ。 すかさず彼は水辺に寄り、透き通った水を心ゆくまで乾いた体に取り込んでいく。 ひとしきり飲み、癒され、己の幸運をかみ締めながら浮かべる喜悦の表情。……しかし。 「ん、なんだあれ」 ふと興味を惹かれたように、その双眸は手近な木に引っかかった紙の束へと焦点を合わせた。 罠か。そう思い蜘蛛の巣のように気を張り巡らせるも、こちらへの害意をとらえることは出来ない。 ならば……情報は少しでも多い方がいい。そんな心持で金木犀は紙の束へと歩み寄り、手にとってみる。 目を落とした瞬間、彼は本日2度目の衝撃に胸を打たれていた。 「放課後の……JOKER!?」 日付はかすれてしまって読めないが、それはまごうことなき文々。新聞であった。 だが彼の驚きのポイントは勿論そんなところにはない。 スポーツ新聞ばりのでかでかとしたタイトルが、視線を捕らえて放さなかった。 「『レミリア・スカーレット破れる!?相手は外来人の剣客【放課後のJOKER】!!』……なに、これ」 足元の力が抜けてくる。本当に自分は意識があるのだろうか。ひょっとしてこれは夢で、今現在自分の本体は麻雀中に寝オチとかそんな状態なんじゃないだろうか。そんな益体もない考えに陥ってしまいそうになるくらい、金木犀は混乱していた。 ……自分を取り戻し下山をはじめるまでの20分間、彼の頭の中には記事の内容がぐるぐると回り続けていた。 場所:【妖怪の山/1日目・夕方】 名前:金木犀 備考: #endregion *第68話 カリスマブレイク 第68話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) ゆとりというものは、意識して時間を取らなければ養われないものである。 それは意図せずとも他者の自我を冒涜してしまう妖怪――――古明地さとりもまた例外ではない。 彼女は毎日、どれほど忙しくとも必ず時間をみつけ、お茶を楽しむようにしていた。 立場、義務からといったあらゆるしがらみから開放されるひと時。現代人が忘れがちな優雅な過ごし方を、さとりは今も大切にしていた。 その日もさとりは仕事をはやめに切り上げ、自分の部屋へと戻ってくると、鼻歌交じりに戸棚へと手を伸ばした。 あまり物の無いその中に、一筋きらりと光る茶葉の缶。 それを手に取ると、いそいそと彼女は紅茶を淹れる。 しばらくすると立ち上ってくる匂いに、滅多に変わらない冷たい容貌を緩ませつつ、ティーカップへと注ぎ、口元へと運ぶ。 途端に口から鼻へと抜けていく芳醇な香り。 「……ああ、幸せ」 椅子へとゆったりともたれかかり、リラックスしきった表情でそう呟く。彼女の妹やペットが見ればきっと驚きを隠せないであろう程に、今のさとりは無防備であった。 否が応でも他者の精神に触れ続け、ともすると己と他者の感情が区別できなくなりそうな普段の彼女。それに対するただひとつの救済が、このティータイムなのだ。 ――――しかし、その日の彼女の有意義な時間は、たったの一口で幕を閉じた。 「さとりさまー!玄関に変な人がー!変な人がー!」 どたどたどたと廊下を駆けてくる音に、さとりの聖女のごとき豊かな笑みはドロドロと崩れていく。 私のティータイムを邪魔すんじゃねえよ。……心の中だけでそう呟くと、彼女は普段の冷静さを装い、勢い良く扉を開け部屋に飛び込んできたお燐へと顔を向けた。 「どうしましたかお燐?」 「あ、え、えーとさとり様。そのーえーと……」 わたわたと落ち着き無く腕を動かす彼女を冷めた目にならないよう気をつけながら眺め、一拍後に大体の事態を察する。 「……死体が息を吹き返した可能性は?」 玄関前に裸の男。……となると、普通に考えればそれが一番ありそうだ。 「そ、それは無いです!いくら私でも死体と生き物の区別はつきますよ!」 ……しかし彼女の思惑に反し、お燐は「しまった!」という顔にならない。本当に心あたりがないっと言った様子でさとりに弁明する。 そんな彼女を見てふむ、と一考すると、さとりはカップを置き静かに立ち上がる。 「お燐、下がっても構いませんよ。その男は私が応対します」 もし害意を持っていたらその場で始末すればいいし、なんらかの理由があってこの地霊殿を訪れているのだとしても自分が出て行った方が事情を理解しやすい。 そんな実利的な考えから紡がれた言葉であったが、何故かお燐は引き止めたそうな顔でこちらを見ている。 そんな表情を、彼女は疑問に思った。 自分のことを心配してくれているのだろうか。だとしたら喜ばしい事だが、彼女と過ごした時間は決して短くない。手間取らないで一番安全なのは自分が出て行くことだと分かっているはずなのだが…… 心を読もうとしても、正体不明の火照りが伝わってくるばかり。 ペットとの間に相互不理解があってはならないと、さとりは素直にお燐へとたずねた。 「何か、私が出て行くと不都合なことが?」 「え、あ、あの……は……」 「……?」 「裸……なんですよ?その男の人。それでさ、さとり様が不愉快な思いをされたらと思うと……」 ……そんな初心な乙女のように恥ずかしがって言われたらこちらまで想像してしまい顔が赤くなってしまうではないか。 さとりはさばさばとした彼女の意外な一面を見た気がして、そしてそんな様子につられて顔色を変えてしまった自分を悟られたくなくて、さとりは気がつかれないよう素早くドアへと向かう。 「私は別に殿方の裸を見ても特別な感情を抱いたりはしません」 冷静な声色。かつ敢えてストレートな語句を用いる事で普通の人間との格の違いをアピールする事も忘れない。 そのまま彼女はごくごく自然にノブへと手をかけ、自室の扉を開けた。 古明地さとりは そこに ……そこに ひどいものをみた。 一瞬、自分の目の前に何があるのか分からなかった。 そして数瞬後に理解する。丁度顔の高さにあるものは、男の下腹部なのだと。 「お、さとりんじゃん。いや勝手に入ってすいませんちょっと火傷がうずいt」 **「きゃあああああああこの変態ぃぃぃぃぃぃ!!」 ……それからゆうに四半刻、地霊殿の主、古明地さとりは子供のように泣きじゃくってたという。 場所:【地霊殿/1日目・夜】 名前:長き童貞 備考:色々とごめんなさい。 #endregion *第69話  第69話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) この世の終わりを想起させる程の光と破壊に満ちた狂騒から一夜明け。 wataは休業にしようと準備中の札を取り上げ、外に出たところで不思議な二人の客に出会った。 一人はやや小柄な女性。独特の模様を持つ和装や、整った顔立ちが目を引く人物であった。 そしてその連れは、あまり人里では見ない烏天狗。どことなく尊大な雰囲気が感じられる男性だ。 客が来た、と思った瞬間にはwataは顔にいつもの人好きのする笑みを浮かべていた。 「やっ、いらっしゃい!……と言いたいところなんですが、申し訳ありません。誠に勝手ながら本日は休業とさせていただいております」 よどみ無く告げられる口上。だがそれを聞いた天狗の顔が剣呑なものとなる。 「ほう……この店は客を選ぶのか?」 言いがかりも同然のセリフに、しかしwataは笑みを崩さずにやんわりと応対する。 「そんな、滅相もありません。昨日、あんなことがあったばかりですから、よんどころなくそうさせていただいている次第です」 どう捉えても悪く解釈できない返答だったはずだが……天狗の顔に子供じみた笑みが浮かぶのを見て、wataは心の警戒を強めた。 「昨日、か……私が聞いたところでは、この店はその騒ぎのあった時間帯にも営業を続けていたようだが」 しまった、と妬み屋の店主は唇を噛む。 それは本来ならあり得ないような凡ミス。意識はなくとも、騒ぎの渦中の人物を献身的に看ていたことによる疲れが招いてしまった失言だった。 言葉に詰まるwataに、それまで口を開かなかった女性がつ、と前に出る。 ……途端、彼の背中に電流のような寒気が走った。 「まあまあ……店主がいつ店を閉めようが勝手だろう?それにとやかく言うのは、野暮だよ」 「は……申し訳ありません。心得違いでありました」 形の良い唇から漏れる言葉に、天狗は軽く頭を下げる。 ……その光景がどれほど異質なものであるか、wataはよく知っていた。 明文化されていなくとも、妖怪のヒエラルキーの中で天狗がかなり高い位置を占めているのは周知の事実。 その天狗が人間に従属しているというのは幻想郷においてはあり得ない事だ。 これは一体どういうことなのか。 いぶかしげに向けられる視線をいなすように、女性は微笑し、wataへと語り始める。 「ただ、こちらもどうも長距離を移動したためか喉が渇いて仕方が無い。茶を一杯とほんの四半刻程の時間をもらえるだけでいいんだが……駄目かな?」 ごくごく友好的な姿勢。言葉。 だというのに、wataの背中を冷や汗が伝ってしまう。 彼女から発散される、言いようの無い『気』。それが、彼の精神を、己が気がつかぬほどにゆっくりと締めていく。 その不快感に突き動かされ、思わず、彼は口を開いてしまった。 「……そういうことでしたら、たいしたおもてなしは出来ませんが……」 何が己の意志を曲げたのか、悟ることなく引き戸を開ける店主に気がつかれないよう、女性……いーあるさんはにたりと口角を吊り上げた。 いくばくかの時間が流れ、二人連れの話が核心に入ったとき、つゆくさが覚醒したのは偶然か天意の表れか。 ビリビリと痛む体を引きずりつつ、厠に向かう途中、彼は二人の間に交わされる言葉をはっきりと聞いていた。 「まさか、レミリアスカーレットと……」 「そうそう。麻雀を打ってさ、館の登記証を賭けさせるんだ。そうとう負けがこまなきゃ出してはこないだろうが……なに、あの性格じゃどうせ引かないだろう。私にとっちゃ嚢中から物を出すようなものだ」 眠けの残る頭でその言葉をバラバラのピースとして認識し、組み立て、意図を読み取った瞬間彼は用を足しに行く途中だということも忘れ、雷に打たれたように静止してしまった。 ―――――紅魔館って確か、霧の湖の近くの……。本気なのかな。主が吸血鬼って聞いたけど……ってちょっとまてよ!? 違う、驚くべきことはそんなことじゃない。つゆくさの心臓が早鐘のように脈を打つ。 ――――俺はどうして『レミリア・スカーレットが吸血鬼だ』ということを知っている……?先生の話には名前は出てきていない。 曖昧な綻び。そこから見える決定的な矛盾。 ――――そうだ、俺は戦闘中にメイドの姿をした女性を見た途端、それが「十六夜 咲夜」だと断定した。会ったはずがない人物の姿をどうして知っているんだ? 幻想の郷に迷い込む寸前の記憶の混濁。 ――――もしかして、俺は…… 本来、到達し得なかったはずの結論へと辿りつく。 ――――迷い込む前から、幻想郷のことを知っていたんじゃないか? 沈黙するつゆくさを、いつの間にか上がった朝の日差しが照らし出していた。 場所:【妬み屋/2日目・朝】 名前:wata いーあるさん 烏天狗 wata 備考: #endregion
---- ・[[リレー小説1]] ・[[リレー小説2]] ・[[リレー小説3]] ・[[リレー小説4]] ・[[リレー小説5]] ・[[リレー小説6]] ・[[リレー小説関連コメントページ]] ----  62話現在の現在位置票 1.神社        あお&篠秋&霊夢  2.プリズムリバー家  ○○&プリズムリバー3姉妹 3.魔法の森        (魔理沙の家)    魔理沙&きーご 4.霧の湖         5.アリスの家     CAST.er&アリス&三月精 6.幻想郷のはしっこ  狐ノ連 BBRC&文 7.魔界        ロリス*3 神綺 8.人里        つゆくさ&WATA&慧音&妹紅&パルシィ             外来人in無縁塚&なおきん&DY 9.彼岸        ぞうちんちん&映姫&小町 (メディスン) 10.永遠亭      鈴仙とウサ鍋&鈴仙&永琳 輝夜 11.紅魔館      RSC&まだら&紅魔館メンバー ⑨&チルノ 12.妖怪の山     金木犀 いーあるさん&烏天狗 13.灼熱地獄跡    Nowe&空 14.白玉楼      湊&ダメギ&幽々子&妖夢 15.地霊殿      長き童貞 ---- *第63話 黒幕達の暇つぶしと衣装チェンジ 第63話担当[[皇束篠秋]] #region(close) 「迷った」  開口一番にこれである。皇束篠秋は迷いの竹林で迷っていた。目的地は言うまでもなく永遠亭である。ひとまず中間報告に向かうためだ。  実は彼はいちどここに来たことがあるのだが、そのときは輝夜の部屋からのスタートだったので、道順は全くわからなかった。  ちなみに左手法も試してみた。バカである。   「こうなりゃ妬けですな」  そういうと目をつぶって一直線にかけだした。  10分後 「いやあすいませんな」 「バカでしょあんた」  輝夜から頭をたたかれていた。  輝夜の部屋には人型の穴があいている。超ド級のバカである。 「……片づけはうまくいったのかしら?」 「ええ、結構弱ってたみたいで」 「それはよかったわ。あれは人を攻撃するために用意したんじゃないもの」 「あ、そうだ。帰ってくるときに神社の破壊と、その上の結界の一部を弱くしておきました。あと皆の向こう側での生活場所も」 「上出来よ」  輝夜は立ち上がると部屋にかかっていた掛け軸に近づくと掛け軸を外した。後ろには扉が隠されていた。 「ほらこっちにきなさい」  言われるがままにその扉の中へ入ると、武器や衣装があふれんばかりに無造作に散らかっていた。 機関銃、ピストル、槍、鉄砲、竹刀そのほかにもいろいろある。 「八雲紫が酔ったときにいろいろ出させてここに運んどいたわ。好きなのを選びなさい。あと……」  そういって取り出したのはタキシード服とシルクハット、まるで夜の闇のようにまっ黒な。 「これは?」 「火鼠の皮衣で作った服よ」 「もったいねえええええええええ!」 「……口調がえらく変わるのね」 「あ、ちょっと仰天してしまって」 「まあいいわ。間違いなく大妖怪クラスが貴方を妨害しに来るから、私の宝物の一つを加工してあげたわ。ちょっとやそっとじゃ傷一つつかないわよ」 「……ありがとうございます」  服を受け取ると彼は一瞬で着替えた。別に書く描写を省いたのはめんどくさかったからじゃないんだからね! 「で、武器は決まった?」 「ええ」  そういって彼が手に持っているのは、ギザギザした刃、真っ赤な取っ手、垂れ下がった紐。いわゆるチェーンソーというものだ。  ちなみに永遠亭には電気があるので充電はばっちりだ。 「なぜそれを?」 「古来から神殺しといえばこれですので」 「ふーん……よくわからないわね。まあその程度なら袖にいれてごらんなさい。その袖はいろんなものが入るから」  言われるがままにチェーンソーの刃を袖に近づけると、一瞬にしてチェーンソーは袖へと消えた。 「ちなみに取り出す時は念じれば出てくるわよ」 「これってなんて四次元ぽ」 「しゃーらっぷ」  これ以上はかなりまずいので輝夜は言葉をさえぎる。 「ま、まあとにかく次の仕事は夕方からよ。貴方にはがんばってもらうからね」 「了解です。それまで何しましょうか」 「……なにしましょうか」 「麻雀なんてどうでしょうか」 「そういえばあったわね。じゃあそれでいいわ」 場所:【永遠亭/2日目・朝】 名前: 篠秋 永遠亭住民 備考: 幻想郷と現実を結び付けているのは輝夜のパソコン 永遠亭の技術は幻想郷の中でもトップなので電気くらいはあるとおもう。 幻想郷にやってくるもの(一部例外)以外は現実には無いものなので不老不死はないので消える。はす。 #endregion *第64話 付けるならば……なんだろうね…… 第64話担当[[⑨]] #region(close) 「あら?あいつはどこに?」  朝がきて霊夢はようやく帰って来た。  その様子はいつものように飄々としていて  ただ篠秋がそこにいなかったから聞いた、その程度の言葉だ。 「別にどうでもいいんじゃないか?もともとあいつは良く分からん奴だったしな  メッセでも気が向いた時に来て気が向かない時は別のことをしていた」 「そうね、別にどうでもいいわ」 「ところで弾幕のうちかたのことなのだけれど――」 === 「まずスペルカードを用いた弾幕はあくまでお遊びだということは理解している?」 「知識としては、ただしそのお遊びでも死ぬ可能性があると」 「なら、なんで弾幕ごっこ以外でもスペルカードは扱われるの?」 「分からないな」  霊夢の言葉に素直に分からないと答えるあお。  そんなあおに霊夢は分かってないわねと言ったようなしぐさをしながら 「単純なかっこつけよ、普通に打つより必殺技宣言したほうがかっこいいじゃない  それに声を出したりした方がより多くの力が出せるしね」 「なるほど」  と。言ったのであった。  あおもあおでそれに納得しているがお前本当にそれでいいのか? 「ではここで本題、その弾幕やスペルカード。それを放つには具体的に何が必要?」 「……霊力とか妖力って奴か?」 「正解。ならその力をあなたは持っていると思う?」 「外の世界では持っていなかったし、力は持っていないだろう」 「それは不正解ね。あなたは間違いなく弾幕を放つための力を持っている」 「どういうこと?」  霊夢とあおの間で質問とそれに応える行為が繰り返される。  霊夢の質問にあおが応えるという形で。  「外の世界には霊力や妖力、魔力が存在していないらしいけれど、それはなんで存在していないの?」 「存在しない理由……考えたこともなかったな。  ”カガク”でそんなものは存在しないと教えられていたし、最初からそんな存在は―――あ」 「気が付いた?外の世界で霊力や魔力というものは忘れられたものなの、その”カガク”というものによって  忘れられたものは一部の例外を除いて全ては幻想郷に流れ着く  それは”カタチ”として存在しない不定形の力でも同じ」  そしてその質問のなかであおは気が付く。  自分達がその魔力という幻想を忘れていたことに。 「ならば流れ着いた力はどうなるか――力は寄り代を求めて人に憑く  即ち幻想郷の住民には例外なく大なり小なりなにかしらの力を持っているということ  でないと商家である霧雨家から生まれたマリサが人間の魔法使いをやっていることに説明がつかないでしょう?  マリサはその持っていた力を真摯に磨き上げて妖怪にも匹敵する力を手に入れたというだけ  まぁ、全部紫の受け売りだけどね、嘘か本当かは分からないわ」  最後に八雲紫の受け売りであるということ。   そう付け加えて霊夢は”チカラ”についての説明を終えた。  それをあおは興味深げ考える。 「つまりその力は今現在幻想郷の住民である私も持っているということか」 「そういうこと、あとはあなたが持っている力が大きいか、それとも小さいか、ね  こればかりは生まれついての才能。もし大した力がなければ諦めることね」 「たいした力がなければその時でまた新しい何かを考えるさ」 「それじゃちょっとついてきなさい、アミュレットや護符の扱い方を教えるから  それを扱ってるうちにあなたがどれだけの力を持っているかわかるでしょう」  そうして霊夢は崩壊した神社の中に足を踏み入れアミュレットや護符を探し始める。  大きな木材などは弾幕で恐しながら――お前本当にそれでいいのか?  あおはそんな霊夢の姿を見ながらひとり考える。  力を持つ物への対抗策――即ち弾幕のことや  自身がこの幻想郷にきた意味  そして自身と同じDYやきーご、篠秋のようなVIPの雀士のこと――  そして彼女はそこで気が付いた。 「まて――私はメッセで篠秋と初めて会話というかチャットをしたはずだ。きーごやDYはskypeを介して一応声も聞いていたとはいえ実際にあったことはないはず」  呟いて頭を振りながら考える。  自身の思考、頭に突如としてかかったモヤ。  消えぬ違和感。 「なのに――私は――なぜ――知っている」 場所:【崩壊した神社/2日目・朝】 名前: レムー あお 備考: レジェンドが違和感に気がつきました。俺設定いっぱいでごめんなさい。     崩壊した神社がレムーのアミュレット等を探す作業によりさらに破壊されます #endregion *第65話 闇の始動 第65話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 「紅魔館とか欲しいな」 「……え?」 烏天狗が自ら進んで鎖につながれてから一夜明け、主従は人里のとある茶屋に腰を下ろしていた。 「やはり、ああいう童話に出てくるような洋館と言うのは人にノスタルジィを抱かせるのかな。無意識のうちに昔読んだであろう、そして空想の中で夢見たであろう『お屋敷』が見られるという状況が、忘却されていた記憶を呼び起こすのかもしれない。湖の傍なんて最高のロケーションとも言えるしな」 そんなことを呟きつつ、天狗の新しい主は茶碗を傾ける。その姿は昨日までの一般的な洋服ではなく、ボロボロの翅の揚羽蝶があしらわれた和装に包まれている。 髪も丁寧に結われており、小柄ながら異質な雰囲気を纏ういーあるさんにはよく似合った退廃美で彩られていた。 烏天狗はそんな主の姿を礼を失さない程度によく目に焼きつけ……無茶振りな言葉にどう返すか必死に思案する。 「……紅魔館は、その、にわかには落ちないでしょう。吸血鬼としての身体の他に強力な能力を持つレミリア・スカーレット、フランドール・スカーレットは言わずもがなですが、メイド長の十六夜咲夜は時間を操ることができますし、館の主の友人であるパチュリーノーレッジはよく精霊魔法を用いると聞きます。また門番の紅美鈴も外見は愚鈍に見えますが弱点らしき弱点が無く、外柔内剛と言うべき人材でしょう……ここはご忍耐が肝要かと」 なんとか思いとどまってもらいたい思いから、烏天狗は若干脚色を加えた住人の説明をする。 それは決して自分の命が惜しいからではなく、主の身に何かあってはという危惧からくる、忠誠心に満ちたものだったのだが、いーあるさんは不可解な笑みを浮かべるだけであった。 もう一言、と言葉を紡ごうとする天狗を遮るように、彼女は口を開いた。 「……レミリアスカーレットは誇ることしか知らないただの雌獅子だ。自分の妹を495年も監禁したことからも代表される、問題を後回しにしようとする悪癖もまた見逃しがたい。フランドールも著しく情操と理性に欠けているし、パチュリーのような魔法使いは魔法の持つ特性から咄嗟の対応には弱いだろう。まあそれでもその知性は侮るべからず、と言ったところだが……ああ、あとあの門番なんかは言うに及ばず、だ」 くくく、と面を伏せ笑いを漏らす姿を見て、天狗は戦慄と共に理解した。 決して戯れではなく、自身の力に酔っているのでもない。 冷静に事実を見据えた上で、主は悪魔の館を盗ろうと言っているのだと…… 絶句する下僕の前で、いーあるさんはま、そうは言っても……と茶をあおりながら続きを語る。 「殴り込みをかけるつもりはない。心配せずとも。……ところで、私は賭け事において大切なことが一つあると考えている。それは勝つことでも負けない事でもない。それは勝負がおぼつかない素人の考え方だ……それじゃ何か分かるか?」 波打つ茶碗をしげしげと眺める主を見ながら、数秒後天狗は最後の言葉が自分に向けられたものだと気がついた。 「いえ……私ごときの凡庸な者には、とても……」 その言葉にいーあるさんは唇を舐めながら、その答えを口の端へと上らせる。 「『いかに賭けの内容を履行させるか』なんだよ。どんなに勝っていても無いものは無いってケツ捲くられたら博打の天才だってどうしようもない。痛めつけたってそれで財布が膨れるわけじゃないからな……だけど、この幻想郷には『悪魔の契約』とかいう素敵な制度があるみたいじゃないか。こいつがあればそんな心配は無用だ……」 なんでそんなこと知ってるのか。天狗は思わず言葉に出しそうになり、やめた。別に自分が知らなければならない事柄だとも思わなかったからだ。 ――悪魔の契約。それは吸血鬼条約に代表される『破る行動がとれない誓約』だ。勿論日常的に行われるものではない。幻想郷においては異変クラスの事件でも無い限り、破れない制約を設ける必要性があまりないからだ。 ……そこまで考えて唐突に、天狗はいーあるさんが何を言わんとしているかを理解した。 「まさか、レミリアスカーレットと……」 「そうそう。麻雀を打ってさ、館の登記証を賭けさせるんだ。そうとう負けがこまなきゃ出してはこないだろうが……なに、あの性格じゃどうせ引かないだろう。私にとっちゃ嚢中から物を出すようなものだ」 とん、と軽い音を立てて茶碗を置くいーあるさん。主の絶対的な自信に再び胸を打たれる烏天狗。 会計を済ませるために立ち上がる主従は知らなかった。 件の館にはVIP雀士が滞在している事。茶屋だと思っていたのが実は雰囲気の明るい居酒屋で、外来人によって切り盛りされている『妬み屋』であった事。 ……その密談がある人物に漏れてしまっていた事を。 場所:【人里・妬み屋/2日目・朝】 名前: いーあるさん、烏天狗 備考:個人的にいーあるさんはルミさんっぽいイメージ(え #endregion *第66話 ヒーローは動かない 第66話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 「なんだか変だな」 夜。里の外に比べれば問題にならないようなレベルであるが、科学力が惜しげもなく使われている現代社会に比べれば心もとない光量と言わざるをえない。 ふっと目を転じれば、そこにあるのは底の知れない闇ばかり。 生気を感じさせない、ねっとりとした濃密な昏黒がたゆたっていた。 「……ふむ」 そんな状況を興味深そうに眺めるのは、腕を組みながら何事か思案する上半身裸体の男……DYと。 「……フン?」 周りに広がる玄夜に負けず劣らず暗い瞳を持つ少女のようなナニカ……なおきんと。 「何々、どうしたの」 痩せた体にボサボサの髪を乗っけて落ち着かない素振りで辺りを見回す青年……無縁塚であった。 ――彼ら3人は結局のところそれぞれ腹に一物抱えながらも停戦協定を結ぶ事になり、とりあえずは行動を共にしようということで話がまとまっていた。表向きはまず魔理沙をどうにかしようという理由であったが、当然それは建前。ライバルを野放しにしておくよりは視界に納めていたほうがなにかと都合がいいだろうという現実的な理由があった。 互いに牽制しあいながらも宿をとろう、と里の入り口付近に足を運んだのであったが…… まるでゴーストタウンのように静まり返った一帯を目にしては、計画を変更せざるをえなかった。 「何があるんだろうな……古い民家の取り壊し工事?」 軽い口調で言葉を紡ぐのはDY。だがその眼には笑みが無い。 彼の額にうっすらと浮かぶ汗も、決して暑いだけが理由では無いだろう。 漠然とではあるが危機を悟るDYに、華奢な体をした少女もぼそりと言葉をこぼす。 「子供ガ、攫ワレテイルラシイナ。今日ケイネとその助手ガ討伐スルラシイガ、オソラクハ……」 なおきんの推測に、DYは頷くだけで大きな反応を示さない。 無論、あらかじめ知っていたわけではないが、彼にとっては驚くに値しない情報であった。 里といえど幻想の郷であれば、そういった生臭い事件も起こりうるだろうという考えだ。 そんな平常と変わらぬ男の隣でリアクションがあったのは無縁塚。 「えぇ!じゃ、じゃあさっさと逃げないと……」 不吉なものから逃れるように後ずさり、上ずった声で二人に言葉をかける。 攻撃手段を持たない彼にしてみればある種当然の反応であったが……それはいささか無様であった。 そんな青年を一瞥した後、DYは短く息を吐くと、逞しい腕を解き指を鳴らす。 ぽきり、ぽきりといくたびに、目の前の闇を慄かせるような音が響く。 言わずもがな、それは慧音の手助けを意味する挙措だ。 そして心の準備が整い、一歩踏み出そうとした瞬間――服に小さな手がかかった。 「……なんだ?」 せっかくの出陣を邪魔され、多少むっとなりながら振り返るDYに、なおきんは表情を変えずにわけを話す。 「行クベキデハナイ。……ルーミアガ見エタ」 途端、残りの二人の眉が曇る。 「見えたって……真っ暗だぞ?」 「チラリト見エタンダ……相手ガルーミアなら行ッテモ邪魔ニナル」 その言葉に、出鼻をくじかれた形のDYはそのまま足をとめる。 ルーミアは人食いの妖怪だ。当然、……子供だって食べるだろう。 ならばこの決着は弾幕ごっこなんてぬるいものではつかない。それでは里の人間が黙っていない。 そんな東方キャラの命をかけた戦いに肩入れする必要があるのか否か。 「……宿を探すか」 対局中、まるで未来を見通したかのように、残り少ないアガリ牌を見送り同順に暗カン後リンシャンで倍マンまで引き上げた男、なおきん。確かに、そういう能力を身に着けていたところでおかしくは無い。 くるりと踵を返すDYに、相変わらず冷たい顔のなおきんとどこかほっとした表情の無縁塚が続く。 ……ここでDYが後数歩闇に踏み入れていれば、あるいは何かが変わったのだろうか。 その時の3人には知る由も無かった。 場所:【人間の里/1日目・夜】 名前:無縁塚、なおきん、DY 備考:なんかジョーカー氏の見てたら書きたくなっちゃったんだ。……続けてもいいのかな……。 #endregion *第67話歓喜後困惑  第67話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 昼下がりの日差が、金木犀の体に容赦なく照りつける。 地球温暖化なんてどこ吹く風、という幻想の郷でも、じわりと汗が浮かんでいくのが分かる。 加えて彼は妖怪に見つからないように常に気を張り続け、水分も摂らずに歩き続けたのだから、その消耗はばかにならない。 「まずいな。どこもかしこも良くない『気』に満ちている……。休憩したいところなんだがな……」 呟きながらも、それが叶わない望みである事を彼は重々承知している。 能力が無ければ、もう15回は見つかっているだろう。リアルイライラ棒状態のわが身を思い、思わず舌打ちしてしまう。そして、直後に、そんな感情のおさえが効かなくなり始めている自分に不安を抱く。 このままいけばいずれ致命的なミスをおかしてしまう。ならばリスクを負っても少し体を休めるべき。 後2分歩いたら立ち止まろう。そう金木犀が考えた直後であった。 鬱蒼と茂っていた木々が唐突に終わりを告げ、視界が大きく開ける。 「……!」 思わず走り出す彼の目に飛び込んできたのは、蓮の葉が浮いた澄んだ池。 金木犀は更に神経をぴんと張り詰めて……そしてどっとその場に腰を下ろした。 「つ、ついてる……こんなラッキーなことがあるなんて」 大蝦蟇の池。山の中腹に存在するそのスペースに偶然にたどりついたのだ。 すかさず彼は水辺に寄り、透き通った水を心ゆくまで乾いた体に取り込んでいく。 ひとしきり飲み、癒され、己の幸運をかみ締めながら浮かべる喜悦の表情。……しかし。 「ん、なんだあれ」 ふと興味を惹かれたように、その双眸は手近な木に引っかかった紙の束へと焦点を合わせた。 罠か。そう思い蜘蛛の巣のように気を張り巡らせるも、こちらへの害意をとらえることは出来ない。 ならば……情報は少しでも多い方がいい。そんな心持で金木犀は紙の束へと歩み寄り、手にとってみる。 目を落とした瞬間、彼は本日2度目の衝撃に胸を打たれていた。 「放課後の……JOKER!?」 日付はかすれてしまって読めないが、それはまごうことなき文々。新聞であった。 だが彼の驚きのポイントは勿論そんなところにはない。 スポーツ新聞ばりのでかでかとしたタイトルが、視線を捕らえて放さなかった。 「『レミリア・スカーレット破れる!?相手は外来人の剣客【放課後のJOKER】!!』……なに、これ」 足元の力が抜けてくる。本当に自分は意識があるのだろうか。ひょっとしてこれは夢で、今現在自分の本体は麻雀中に寝オチとかそんな状態なんじゃないだろうか。そんな益体もない考えに陥ってしまいそうになるくらい、金木犀は混乱していた。 ……自分を取り戻し下山をはじめるまでの20分間、彼の頭の中には記事の内容がぐるぐると回り続けていた。 場所:【妖怪の山/1日目・夕方】 名前:金木犀 備考: #endregion *第68話 カリスマブレイク 第68話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) ゆとりというものは、意識して時間を取らなければ養われないものである。 それは意図せずとも他者の自我を冒涜してしまう妖怪――――古明地さとりもまた例外ではない。 彼女は毎日、どれほど忙しくとも必ず時間をみつけ、お茶を楽しむようにしていた。 立場、義務からといったあらゆるしがらみから開放されるひと時。現代人が忘れがちな優雅な過ごし方を、さとりは今も大切にしていた。 その日もさとりは仕事をはやめに切り上げ、自分の部屋へと戻ってくると、鼻歌交じりに戸棚へと手を伸ばした。 あまり物の無いその中に、一筋きらりと光る茶葉の缶。 それを手に取ると、いそいそと彼女は紅茶を淹れる。 しばらくすると立ち上ってくる匂いに、滅多に変わらない冷たい容貌を緩ませつつ、ティーカップへと注ぎ、口元へと運ぶ。 途端に口から鼻へと抜けていく芳醇な香り。 「……ああ、幸せ」 椅子へとゆったりともたれかかり、リラックスしきった表情でそう呟く。彼女の妹やペットが見ればきっと驚きを隠せないであろう程に、今のさとりは無防備であった。 否が応でも他者の精神に触れ続け、ともすると己と他者の感情が区別できなくなりそうな普段の彼女。それに対するただひとつの救済が、このティータイムなのだ。 ――――しかし、その日の彼女の有意義な時間は、たったの一口で幕を閉じた。 「さとりさまー!玄関に変な人がー!変な人がー!」 どたどたどたと廊下を駆けてくる音に、さとりの聖女のごとき豊かな笑みはドロドロと崩れていく。 私のティータイムを邪魔すんじゃねえよ。……心の中だけでそう呟くと、彼女は普段の冷静さを装い、勢い良く扉を開け部屋に飛び込んできたお燐へと顔を向けた。 「どうしましたかお燐?」 「あ、え、えーとさとり様。そのーえーと……」 わたわたと落ち着き無く腕を動かす彼女を冷めた目にならないよう気をつけながら眺め、一拍後に大体の事態を察する。 「……死体が息を吹き返した可能性は?」 玄関前に裸の男。……となると、普通に考えればそれが一番ありそうだ。 「そ、それは無いです!いくら私でも死体と生き物の区別はつきますよ!」 ……しかし彼女の思惑に反し、お燐は「しまった!」という顔にならない。本当に心あたりがないっと言った様子でさとりに弁明する。 そんな彼女を見てふむ、と一考すると、さとりはカップを置き静かに立ち上がる。 「お燐、下がっても構いませんよ。その男は私が応対します」 もし害意を持っていたらその場で始末すればいいし、なんらかの理由があってこの地霊殿を訪れているのだとしても自分が出て行った方が事情を理解しやすい。 そんな実利的な考えから紡がれた言葉であったが、何故かお燐は引き止めたそうな顔でこちらを見ている。 そんな表情を、彼女は疑問に思った。 自分のことを心配してくれているのだろうか。だとしたら喜ばしい事だが、彼女と過ごした時間は決して短くない。手間取らないで一番安全なのは自分が出て行くことだと分かっているはずなのだが…… 心を読もうとしても、正体不明の火照りが伝わってくるばかり。 ペットとの間に相互不理解があってはならないと、さとりは素直にお燐へとたずねた。 「何か、私が出て行くと不都合なことが?」 「え、あ、あの……は……」 「……?」 「裸……なんですよ?その男の人。それでさ、さとり様が不愉快な思いをされたらと思うと……」 ……そんな初心な乙女のように恥ずかしがって言われたらこちらまで想像してしまい顔が赤くなってしまうではないか。 さとりはさばさばとした彼女の意外な一面を見た気がして、そしてそんな様子につられて顔色を変えてしまった自分を悟られたくなくて、さとりは気がつかれないよう素早くドアへと向かう。 「私は別に殿方の裸を見ても特別な感情を抱いたりはしません」 冷静な声色。かつ敢えてストレートな語句を用いる事で普通の人間との格の違いをアピールする事も忘れない。 そのまま彼女はごくごく自然にノブへと手をかけ、自室の扉を開けた。 古明地さとりは そこに ……そこに ひどいものをみた。 一瞬、自分の目の前に何があるのか分からなかった。 そして数瞬後に理解する。丁度顔の高さにあるものは、男の下腹部なのだと。 「お、さとりんじゃん。いや勝手に入ってすいませんちょっと火傷がうずいt」 **「きゃあああああああこの変態ぃぃぃぃぃぃ!!」 ……それからゆうに四半刻、地霊殿の主、古明地さとりは子供のように泣きじゃくってたという。 場所:【地霊殿/1日目・夜】 名前:長き童貞 備考:色々とごめんなさい。 #endregion *第69話  第69話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) この世の終わりを想起させる程の光と破壊に満ちた狂騒から一夜明け。 wataは休業にしようと準備中の札を取り上げ、外に出たところで不思議な二人の客に出会った。 一人はやや小柄な女性。独特の模様を持つ和装や、整った顔立ちが目を引く人物であった。 そしてその連れは、あまり人里では見ない烏天狗。どことなく尊大な雰囲気が感じられる男性だ。 客が来た、と思った瞬間にはwataは顔にいつもの人好きのする笑みを浮かべていた。 「やっ、いらっしゃい!……と言いたいところなんですが、申し訳ありません。誠に勝手ながら本日は休業とさせていただいております」 よどみ無く告げられる口上。だがそれを聞いた天狗の顔が剣呑なものとなる。 「ほう……この店は客を選ぶのか?」 言いがかりも同然のセリフに、しかしwataは笑みを崩さずにやんわりと応対する。 「そんな、滅相もありません。昨日、あんなことがあったばかりですから、よんどころなくそうさせていただいている次第です」 どう捉えても悪く解釈できない返答だったはずだが……天狗の顔に子供じみた笑みが浮かぶのを見て、wataは心の警戒を強めた。 「昨日、か……私が聞いたところでは、この店はその騒ぎのあった時間帯にも営業を続けていたようだが」 しまった、と妬み屋の店主は唇を噛む。 それは本来ならあり得ないような凡ミス。意識はなくとも、騒ぎの渦中の人物を献身的に看ていたことによる疲れが招いてしまった失言だった。 言葉に詰まるwataに、それまで口を開かなかった女性がつ、と前に出る。 ……途端、彼の背中に電流のような寒気が走った。 「まあまあ……店主がいつ店を閉めようが勝手だろう?それにとやかく言うのは、野暮だよ」 「は……申し訳ありません。心得違いでありました」 形の良い唇から漏れる言葉に、天狗は軽く頭を下げる。 ……その光景がどれほど異質なものであるか、wataはよく知っていた。 明文化されていなくとも、妖怪のヒエラルキーの中で天狗がかなり高い位置を占めているのは周知の事実。 その天狗が人間に従属しているというのは幻想郷においてはあり得ない事だ。 これは一体どういうことなのか。 いぶかしげに向けられる視線をいなすように、女性は微笑し、wataへと語り始める。 「ただ、こちらもどうも長距離を移動したためか喉が渇いて仕方が無い。茶を一杯とほんの四半刻程の時間をもらえるだけでいいんだが……駄目かな?」 ごくごく友好的な姿勢。言葉。 だというのに、wataの背中を冷や汗が伝ってしまう。 彼女から発散される、言いようの無い『気』。それが、彼の精神を、己が気がつかぬほどにゆっくりと締めていく。 その不快感に突き動かされ、思わず、彼は口を開いてしまった。 「……そういうことでしたら、たいしたおもてなしは出来ませんが……」 何が己の意志を曲げたのか、悟ることなく引き戸を開ける店主に気がつかれないよう、女性……いーあるさんはにたりと口角を吊り上げた。 いくばくかの時間が流れ、二人連れの話が核心に入ったとき、つゆくさが覚醒したのは偶然か天意の表れか。 ビリビリと痛む体を引きずりつつ、厠に向かう途中、彼は二人の間に交わされる言葉をはっきりと聞いていた。 「まさか、レミリアスカーレットと……」 「そうそう。麻雀を打ってさ、館の登記証を賭けさせるんだ。そうとう負けがこまなきゃ出してはこないだろうが……なに、あの性格じゃどうせ引かないだろう。私にとっちゃ嚢中から物を出すようなものだ」 眠けの残る頭でその言葉をバラバラのピースとして認識し、組み立て、意図を読み取った瞬間彼は用を足しに行く途中だということも忘れ、雷に打たれたように静止してしまった。 ―――――紅魔館って確か、霧の湖の近くの……。本気なのかな。主が吸血鬼って聞いたけど……ってちょっとまてよ!? 違う、驚くべきことはそんなことじゃない。つゆくさの心臓が早鐘のように脈を打つ。 ――――俺はどうして『レミリア・スカーレットが吸血鬼だ』ということを知っている……?先生の話には名前は出てきていない。 曖昧な綻び。そこから見える決定的な矛盾。 ――――そうだ、俺は戦闘中にメイドの姿をした女性を見た途端、それが「十六夜 咲夜」だと断定した。会ったはずがない人物の姿をどうして知っているんだ? 幻想の郷に迷い込む寸前の記憶の混濁。 ――――もしかして、俺は…… 本来、到達し得なかったはずの結論へと辿りつく。 ――――迷い込む前から、幻想郷のことを知っていたんじゃないか? 沈黙するつゆくさを、いつの間にか上がった朝の日差しが照らし出していた。 場所:【妬み屋/2日目・朝】 名前:wata いーあるさん 烏天狗 wata 備考: #endregion *第70話  第70話担当[[外来人in無縁塚]] #region(close) 時折森から聞こえてくる鳥の鳴き声に、霧雨魔理沙は今日も快適な目覚めをむかえた。 ふぁっと可愛らしくあくびをすると、ぐっと背筋を伸ばして立ち上がり、カーテンへと手をかける。 小気味いい音と共に朝の日差しが魔理沙の寝巻き姿と、艶やかな金髪を照らし上げる。 しばらく、そうして外の景色を眺める魔理沙。 それは一幅の絵のように美しく、日常の一こまにも関わらず幻想的な美しさに溢れた光景であった。 そのまますっと右手を挙げる。 手で髪を梳りでもすれば、女性的な魅力が更に倍増する事間違いなしのこの状況で……しかし、彼女は傍らの箒を手にとった。 唐突に、幻想郷最速と噂されるに相応しいスピードで箒をベットへと振り下ろす。 親の仇とばかりに2度、3度と渾身の力で振り下ろした後……大きく安堵のため息をつく。 「まあ、あの馬鹿も添い寝なんて真似はしないか……」 その場で箒をうち捨てると、服を着替えてキッチンへと向かう。 例えどんな傾奇者といえど、一度面倒を見てやると言った以上、その意思を変えるつもりは無い。 無論、もし朝起きたときにベットに潜り込んでいるのを発見しでもすれば容赦なく半殺しにするつもりであった。 だが奴は自分の言われたとおりにした。あの変態的な格好からするとなんだかそれだけでも奇跡的な感じがするが、もしかすると一種のファッションのように、変でいることに一種の美意識を見出しているだけで、その本質はごくごく普通の人間なのかもしれない。 ならば、彼を泊めることにデメリットは無い。どこぞの道具屋の主人ほどではないにしろ、霧雨魔理沙は外の世界に対してそれなりの興味を抱いている。もしかしたら何か有益な話が聞けるかも。 そんな期待を胸に秘め、知らず知らずのうちに鼻歌をこぼしながらてきぱきと料理を作る。 長い間の一人住まいに、包丁を持つ手が自然に動いていき、皿がひとつ、またひとつとテーブルに乗せられていく。 朝の光に晒された食器は淡い光を反射し、その中身はある種芸術的なまでに美しく盛り付けられている。 調理を終えた魔理沙は並べられた朝食を見回し、満足げな笑みと共に一人頷く。 「これでよし!」 後は起こしに行くだけ……そう思い歩き出そうとした瞬間であった。 「魔理沙ったらまた一人で……言ってくれれば手伝ったのに」 ビクッとして振り返れば、そこには上半身だけ服を着込んだ青年がテーブルへとついていた。 幸いにも、彼女からの角度では下半身のオンバシラは丁度隠れていて見えない。……だが見えなければいいというものでもない。 「隊長さんよ……ちゃんと下も着ろって昨日言わなかったか?」 呆れと怒りを織り交ぜた口調で話しかける魔理沙。だが青年――――きーごはまったく悪びれる様子も見せない。 「寝るときは蒸れるといけないから脱ぐことが多いんだよね。こんな季節だし、構わないだろ?……っとそんなことより」 「ん?なんだ?」 もう何も言う事は無いと疲れたようにどっかり卓につく魔理沙に、きーごは内ポケットから革製の小物を取り出した。 「これ……どこで手に入れたんだ?」 どこかで見たな、と思った瞬間、彼女は目を大きく見開いていた。 「あ、ちょ、それは私の財布なのだぜ!」 素早く伸ばされた魔理沙の腕は、しかしきーごの手により優しく掴まれていた。 「これは外来人が持っていたものだろう?中に学生証が入っていた。……盗んだのか?」 いつになく真剣な口調の彼に少し驚きを滲ませながら、魔理沙は首を横に振った。 「違う。そいつは賭けのあがりだ。いくら私でも迷い込んできた外来人の命綱を切るような真似はしないさ」 ――――いや、理由の如何に関わらず巻き上げた時点で切ってるでしょう。 そんな突っ込みは胸にしまっておき、きーごは会話を続けていく。 「これの持ち主はどんなやつだった?」 「不健康そうな男だったな。なんか無縁塚から命がけで里までたどり着いたとか聞いたけど」 「……賭けの種目は麻雀か?」 「ん、なんで分かったんだ?幻想郷じゃまだ賽の方が一般的だが……」 きーごは何かを考えるように口元に手を当て……ぼそりと呟いた。 「……こりゃ思ったよりも規模が大きいのかな」 なんの話だ。そう魔理沙が言葉を返す前に、きーごは遮るように「いただきます」と箸を手に取り朝食を始めたのであった。 場所:【魔法の森 マリーサの家/2日目・朝】 名前:きーご 魔理沙 備考: #endregion

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