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後編  『友』


 妬み屋は今日も繁盛していた。
 人里の中心部に店を構える妬み屋には避難勧告そのものは関係ないようだったが
 避難所に指定された場所の近くに位置しているということでいつも以上の客の入り方である。

「wataさん、今日はやたら慌ただしいみたいだがなにかあったのか?」

 そんな妬み屋に事情を知らない健康マニアの焼き鳥好きが一名。
 言わずと知れた藤原妹紅である。
 相対する相手はwata。
 創業時からの来てくれている常連でもある。

 代金は正直ツケて貰っているようではあるが、急患の際に妹紅と連絡がとりやすいという理由で
 里の人達が代わりに代金を裏で払っているとかいないとか
 裏で払っている理由は妹紅がそういうことをされても喜ばないだろうし逆に悪く思ってしまうだろうということだ。
 裏で払われた代金はwataが店の売上とは別に大事に保管しているようである。
 里の人から感謝の気持ちで妹紅ために贈られたお金に自分が手をつけるのはどうかということだ。


「んー。なんか今日は慧音先生が最近起こってた行方不明事件の解決のために避難してもらったらしいよっ
 ここは里の入口から結構離れてるし詳しいことはよく分からないかなっ」
「慧音の奴、そういう事件解決とかの時ぐらい頼ってくれてもいいのにな……」

 妹紅は焼き鳥を摘みながら呟いた。
 妹紅と慧音は友なのだから相談してくれたっていいじゃないか、そう思っているのだろうか?
 慧音としては妹紅無駄な心配をかけたくないと思っていて
 妹紅もそれを理解しているのだろうがそれでもやっぱり納得がいかないようだった。


「多分慧音先生1人で解決できると思ったから相談しなかったんだよっ
 もこたんに心配をかけたくなかったんじゃないかなっ」
「そうなんだろうけどそれでも相談してもらった方が……」
「まぁきっと大丈夫だよっ 帰ってきたら暖かい笑顔で迎え――」

 そこまでwataが言った時だった。
 家々の崩れる音が聞こえた。
 それは里の入口の方から――
 つまり、慧音がそこにいるはずの場所。


「慧音!」

 妹紅はその音を聞くと取るものも取らず店の出口に走りだす。
 お勘定を払っていないがそこに突っ込むような人間はここにはいない。
 慧音と妹紅の中の良さは里でも知られているのだから。

「ぱるすぃ、行くよっ! あ、お店は今日は閉店だよ!お勘定はいらないよ!みんなごめんね!」

 wataもまた店を閉める旨を伝えて店から飛び出しパルスィも後に続いた。


◆◆◆

 里の入口付近に辿り着いた3人が見たものは倒れる慧音と今にも押し切られそうなつゆくさの姿。
 それを見るが否やパルスィと妹紅はスペルカードを発動する。

『不死「火の鳥 -鳳翼天翔-」』
『妬符「グリーンアイドモンスター」』

 まさに間一髪。
 光線が押し切られる前に弾幕の発生源となっていたものを二つのスペルカードが吹き飛ばした。

「だ……誰が……?」

 先ほどまで光線を発射し弾幕と打ち合っていたつゆくさが助けた3人の姿を確認することなく気絶し倒れる。
 つゆくさも体力が完全に限界に来ていたのだ。
 むしろ今まで良く持ちこたえたと言ってよい、つゆくさの気力が付きていればwata達が到着する前に2人はこの世のものではなかっただろう。

「慧音!大丈夫か!しっかりしろ!君もしっかりするんだ!」

 妹紅が気絶している二人の元へ向かう。
 2人は本当にボロボロで今まで厳しい戦いをしてきたということがよく分かる状況だった。
 何と戦っていたのか――当然さっきほど2つのスペカで吹き飛ばされたバグと。

「もこたん、色々と込み入った事情があるみたいだけどどうやら2人を助けられるのはまだ先らしいよっ」
「あれを喰らってすぐに復帰するなんて……その耐久力が妬ましい」

 そういってwataが指をさす先には煙の中から立ち上がる先ほど吹き飛ばされたバグの姿。
 バグはまたゆっくりと妹紅へと近づきながら姿を変える。
 それにパルスィとwataは戦闘態勢をりパルスィはけんせい程度に弾幕を放ち
 wataも自身の持つ妖怪退治用の装備を構える。
 戦闘準備は万端、そんな状態である。
 だがその2人に妹紅は待ったをかけた。

「すまないが、2人は手を出さないでくれ、こいつはわたしがやる」
 慧音とこの子をどこか安全な所――君の店にでも頼む。君たちがいると巻き込んでしまいそうだ」

 反論を一切許さない言葉。
 その言葉をうけてwataとパルスィは慧音とつゆくさを連れて無言でその場から離れる。

 言葉などいらない、その判断。
 妹紅の表情からは色が消えて、ただ怒りしかなかった。
 友を傷つけたものに対する、怒り。

「さて、よくも慧音をあんな目に合わせたな」
「キキッ……」

「許さない」

 再び戦いが始まる。

 バグが変えた姿はレミリアのもの。
 文には及ばないもののかなりの速度を持ち、鬼には及ばないがかなりの力を持つ。
 その速度と力を生かしを生かしバグは妹紅に突進を仕掛けるが――

「キ?」

 妹紅はその突進をかわすことも防御することもなくただその場で受けた。
 この行動には流石のバグも面を喰らい動きが止まる。

 時が止まる。

 妹紅の目から涙が一つ流れる。

「慧音もこの痛みを味わったのか……」

 ぽつりとつぶやく。 

「許さない」

 そして、はっきりと声に出す。
 それと同時に妹紅を中心として周囲に激しい炎が噴き上がる。
 バグはその炎から逃げようともせず、先ほどまで慧音やつゆくさと戦っていた時のようにインファイトを続ける。

 その様相はまったくの互角。
 火力、ダメージという意味では妹紅もバグに有効打を与えられないが
 バグも同様に不死の体をもつ妹紅に有効打を与えることはできない。

「キキッ」
「……ッ!」

 奇声と共にバグは拳を繰り出す。現在の姿は近接戦闘に秀でた美鈴のもの。
 妹紅はそれを交わすこともなくそのまま受けてカウンターの要領で拳をバグに向けて放つ。
 バグは妹紅の拳を受けて体勢を一瞬崩す。
 その崩した一瞬の隙を妹紅は見逃さず弾幕を放つ。
 バグは弾幕を交わすことができずに吹っ飛んだ。

「いってぇ……」
「キキッ」

 不死の体を持つとはいえ妹紅にも痛覚は存在する。
 不死の体を頼りにバグの攻撃を受けカウンターを放ったが美鈴の体での一撃、その力は笑って過ごせる程度ではない。
 一方のバグは体制を崩したところに弾幕を受けた所為でわずかにダメージを受けている。
 ダメージの量としては不死では妹紅のほうが少ないが精神的優位という意味では
 バグの攻撃をもろに受けた妹紅のほうが不利である。

 バグの再度の突進をさっきと同じように受けるつもりは妹紅には毛頭ない。
 先ほどと同じように受けたのでは不死の体であるとはいえ痛覚が存在する以上長期的には痛みの所為で不利になる可能性もある。 

『滅罪「正直者の死」』

 だから今度は慧音がやったのと同じ、喰らいボムを放つ。
 先ほどバグの攻撃を受けたのはわざと、この喰らいボムへの布石――

 だがこれは通用しない。
 既にバグは慧音がこれと同じパターンでスペルカードを受けるのを経験済み――

「キ!」

 妹紅のスペルカードが発動する寸前に美鈴の体から紫の体に変身し隙間を使い即座に離脱。
 移動した距離は少ないがスペカは空振りするのには十分だった。
 離脱直後には紫からだからこんどは庭師の体へと変身する。
 バグはあくまで近接戦闘を好むようだった――

(……ちっ)

 必殺の喰らいボムが交わされたことによる衝撃は一瞬。
 すぐに妹紅は落ち着きを取り戻し、庭師の体へと変身したバグへと向き直る。

「さっきから変身ばっかりして、それが能力か?」
「キキッ……ワカラナイ」
「分からない……か」

 そう言いながら、バグと妹紅は戦闘態勢を取る。
 バグが妹紅に再び攻撃する。
 それに対して妹紅は先ほどの喰らいボムを前提とした動きとは違う動きで対応する。
 バグと妹紅が接近し交錯する――
 そして凍り付く空気、刹那の硬直。

 だがそれはすぐに終わりを告げる――

「キィィィィッ!!!」
「ああああああァッ!!!」

 バグのラッシュが妹紅をとらえる。
 それは明らかに妹紅にダメージを与えるが妹紅も黙って喰らい続けるわけではない。
 喰らいボムが回避されるのならば
 回避されないようにしてスペルカードをぶちかませばいい。

 妹紅はバグの腕をつかみ取ると同時にスペルカードを放つ――


『滅罪「正直者の死」』

 今度こそスペルカードはバグをとらえるが
 バグも何も対策をしないわけではない――
 バグは今まで自分がされていたようにそのスペルカードを受けて――

『人鬼「未来永劫斬」』

 喰らいボムを放つ。
 刀がないのは幸いだがそれでもこの一撃は重い。
 スペルカードを使った状態、無防備な状態でこれを受けることとなり

「ぐっ……」

 妹紅は吹き飛ばされる。
 意識も飛びそうになるがそれをなんとか気合いで持ちこたえる。
 だが不死の能力の耐久性でなんとか持ちこたえる。

 バグは笑みを浮かべる。
 それに対し妹紅もまた笑みを浮かべる

 それからも続く近接戦闘によるガチバトル。
 妹紅が炎を操り怒りでバグを焼きつくそうとすれば
 バグは姿を何度も変え変えその炎をかいくぐり妹紅に攻撃を当てようとする。
 そんな戦闘がしばらく続く。
 この戦闘により徐々に不利となるのは――バグ。
 いかに驚異的耐久力、攻撃力を誇ろうと
 多くの存在に姿を変えその能力を使おうとも有効打が与えられなければ何の意味もない。
 妹紅も痛覚があるせいで痛みこそ受けているがダメージとしてはほとんどないに等しい
 しかし本当にわずかずつではあるがバグの体力は少しずつ削られていた。

「キキキ……」

 バグがレミリアの姿へと変身しながらバックステップで距離を取る。
 突如として距離を取ったバグに対して妹紅は警戒心を強める。
 バグの周囲に集まる霊力。
 その膨大な霊力を感じ妹紅もまた自身の霊力を練り上げる。
 そしてしばしの硬直。

 先に動くのはバグ。
 アローで一気に妹紅の懐に入り込みスペカを発動する。
 それとほぼ同時に妹紅は自身の懐に潜り込んだバグを確認してスペカを放つ。


『紅魔「スカーレットデビル」』
『蓬莱「凱風快晴 ‐フジヤマヴォルケイノ‐」』


 巨大な霊力の奔流が2人の近くで荒れ狂う。

 メキメキと音を立て周囲の木々がさらに倒され
 周囲の家がさらに破壊される。

 2人の巨大な霊力からすると太い幹も丈夫な柱も細い枝にしか過ぎない。
 その霊力の奔流はともにぶつかり続け――



 二つの紅い光が、天を貫いた。

◆◆◆

「派手にやってるみたいだねっ」

 私の隣ではwataが空に見える紅い光を見て声を出している。
 先ほど拾って来た慧音と男はまだ眠ったまま。
 2人ともあいつと戦っていたせいなのか全身がボロボロだ。

「心配じゃないの?」

 私は妹紅のことを心配することもなく明日の分の仕込みをしているwataに聞いた。

「心配だよ!でももこたんなら大丈夫っ!」

 簡単にではあるがそう答えた。
 そういう風に人を簡単に信じられる心、妬ましい。

「もこたんはやるって言ったらやる人だよ、それに友達が傷つけられて怒らない人なんていないよっ!
 僕だってパルスィがもし傷つけられたりしたらおこるよっ!」

 私が傷つけられたら怒ってくれる……
 そんな人間がいてくれるのもいいのかもしれない
 でも私はあくまで妖怪で――

「僕ができることは信じることだけだよっ、それにこの2人を安全な場所に移さないといけなかったって言うのも事実だしねっ!」

 いつもの通り信じて、私のことを見てくれるwataはまぶしく見えた。 

「それより今は2人が起きた時に美味しい手料理をふるまってあげようねっ


場所:【人間の里・妬み屋/1日目・夜】
名前:慧音 つゆくさ パルスィ wata
備考:つゆくさと慧音は気絶中 2人とも大ダメージ受けてます
   戦闘の轟音は人里にいた人たちに聞こえていると思います(一日目夜)

◆◆◆

「取り逃がしたか……」

 紅い光が消えた後そこにいるのは妹紅だけだった。
 バグは逃亡――

 どうやって?
 少なくともレミリアにあの状況から逃げるすべはない。
 あの状況になればレミリアの姿では双方の霊力が切れるまで撃ち合うのが限度だ。

「八雲紫の力――か――」

 妹紅は確認していた。
 紅い光が消える直前、バグが八雲紫の姿へと変身していたことを。
 八雲紫の姿に変身するならば隙間を操りここから逃亡することも容易だっただろう。

「どこに逃げても許さないからな――」

 妹紅は呟き慧音達がいる妬み屋へと歩き始める。
 その歩みは確かで迷いはない、そこにあるのは激しい怒りだけ。

「てめーは私の友を傷つけた」

場所:【人間の里・入口付近/1日目・夜】
名前:妹紅
備考:バグを取り逃がしました
   戦闘の轟音は人里にいた人たちに聞こえていると思います(一日目夜)

◆◆◆

「キキキ……コロスコロス……」

 バグはまたあの人の死骸あふれる洞窟にいた。
 絶対の優勢の状況から奇襲同然で受けたスペルカード

 そして現れた妹紅。
 妹紅はどれだけ攻撃を与えても倒れることなく向かって来た。

 あのその前に戦っていた慧音も何度攻撃を受けても立ち上がってきたが最後には倒れた。
 しかし妹紅はどうか、攻撃を受けてダメージを喰らっていても倒れることはなかった。

 そう、妹紅は不死者だから。

 だがバグはそれを知らない。
 バグの中にあるのは獲物を始めて仕留めそこねたという不満足感と

 自身の食事を邪魔した妹紅への憎悪だけ。


場所:【?/1日目・夜】
名前:バグ
備考:妹紅から逃走しました
   戦闘の轟音は人里にいた人たちに聞こえていると思います(一日目夜)

  • 変身している人の能力を使えます
  • 変身していられるのは1分~5分、時間がすぎると他の姿に変身します
  • 紫やえーりんのような強い能力を持つものへの変身時間は短いようです