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MEIKO シナリオ:二章 後編

	;<背景:店内,立ち絵:MEIKO,オーナー>
【オーナー】
「動物園ね!」
【主人公】
「…は?」
【MEIKO】
『??』
【オーナー】
「明日は動物園に行くしかないわっ!!
 それはもう動物園日和よ!!
 朝からおべんと作って動物園に行くわよっ!!」
【主人公】
「…すいません。
 今週こそ寝休日でありたいので、こいつだけを連れて行って」
【MEIKO】
『えぇっ!せんぱいっ!!あんまりですよぅ』
【オーナー】
「あんたたち…従業員がオーナーに逆らっていいと思ってるの?」
【主人公】
「………」
【MEIKO】
『………』

	;<背景:黒,立ち絵:消える>
うちの経営者は相変わらず横暴だった。
組合とか作ったほうがいいかもしれない。…組合員二人だけど。

	;<背景:動物園,立ち絵:MEIKO,オーナー>
【オーナー】
「ふぅ…やっぱり、動物園はいいわぁ…心洗われるわねぇ」
【主人公】
「…眠いです」
【MEIKO】
『どーぶつえんってはじめてだから、たのしみです』
【オーナー】
「うんうん。メーコちゃんはいい反応っぽいわねぇ」
【主人公】
「…雰囲気で会話できるオーナーはすごいと思います」
【オーナー】
「さあて、やっぱり動物園といえばキリンよねっ!!」
【主人公】
「いや、あんた…なんでそんなにテンション高いんですか…」

…ちなみに、店長は動物園マニアだ。
月に数回突発的に動物園めぐりを敢行する。
店休日かんけいなく…。
そして当然のように従業員を巻き込む。

【MEIKO】
『パンダ…見てみたいです』
【オーナー】
「そうねっ!!わかってるわねぇ、メーコちゃんは、やっぱりキリンよねっ!!」
【MEIKO】
『いえ、そのパンダ』
【オーナー】
「うんうんっ…あのツノの謎は永遠のクエッションよね~」

会話が成立していなかった。

【主人公】
「オーナー」
【オーナー】
「なに?」
【主人公】
「俺たち、パンダ見てくるから」
【オーナー】
「…なにそれ、別行動?
 でも残念ねっ!メーコちゃんはキリン派よっ!!」
【MEIKO】
『あ、あの』


“パンダみたいです”
【主人公】
「…というわけで」
【オーナー】
「うぅ………なによっ!!ふんっだ!!
 勝手にデートでも何でもすればいいじゃないっ!!」
【主人公】
「…小学生か、あんたは」

		;<立ち絵:オーナー去る>
捨て台詞を吐いて、行ってしまった。
ちょっと泣きそうに見えたような気もするけど、そんなはずないわけだから
そういう可能性を考えるべきじゃない…って俺も何考えてるんだか。

【MEIKO】
『いいんでしょうか?』
【主人公】
「…とりあえず、パンダ見て、昼メシどきくらいに合流すればいいだろ」
【MEIKO】
『はぁ…』
【主人公】
「こっちが弁当持ってるんだし、腹が減ったらメールで連絡してくるだろ」
【MEIKO】
『…そうですか?』
【主人公】
「ああ」
	;<暗転>

	;<背景:動物園(檻前),立ち絵:MEIKO>
【MEIKO】
『これが…パンダ』
【主人公】
「ああ…」
【MEIKO】
『………せなかしか見せてくれないです』
【主人公】
「ああ…」
【MEIKO】
『えっと』
【主人公】
「これが、パンダだ」
【MEIKO】
『…笹とかもってくるべきでしたか?』
【主人公】
「いや、あいつらは餌に釣られるようなケモノじゃない」
【MEIKO】
『そうなんですか?』
【主人公】
「ああ、気高い生き物だからな」
【MEIKO】
『へぇ~』

;<暗転>

;<背景:動物園,立ち絵:MEIKO>
さっきから、他の客がみんな一方向に駆け出している。
なんだろう?

【主人公】
「妙に人があわただしいな…」
【MEIKO】
『あ、さっきアナウンスでイベントがあるって言ってましたから
 みなさんそれに行ってるんじゃないでしょうか?』
【主人公】
「…何のイベントだ?」
【MEIKO】
『えっとたしか、
“ライオンのトーマスくんとカピバラのジェラルドくんとの仲良くケンカしまショー”
 っていう』
【主人公】
「…行くぞ」
【MEIKO】
『え?でも、あと5分くらいで始まっちゃいますよ?』
【主人公】
「走るぞ?」
【MEIKO】
『え、待ってくださ…きゃっ』
【主人公】
「ん?」
【MEIKO】
『…走るのニガテなんです』

…なぜか走り出してもないのに転んでいた。
運動性能も低いらしい…。このロボットって…。

【MEIKO】
『…うぅ、どうせ、どうせどうせ…わたしは』
【主人公】
「…ほら、つかまれ」
【MEIKO】
『え?』
【主人公】
「いいから、早く!時間が無いっ!!」
【MEIKO】
『はいっ!!』

MEIKOの手をとって走り出す。
やばい…今から行ってもポジションが…
しかし、行かないわけにはいかないっ!

;<暗転>

;<背景:動物園(檻前),立ち絵:オーナー>
【オーナー】
「遅いわよーふたりともー」
【主人公】
「あ、オーナー」
【MEIKO】
『………』
【オーナー】
「ちゃあんと席とっておいたから」

さすがオーナーだ…。
動物園でのオーナーの動きには感心させられる。

【オーナー】
「って…ふぅん、仲のよろしいことで」
【主人公】
「は?…なにが」
【MEIKO】
『………』
【主人公】
「………」

走ってきたまま…手をつないだままだった。

【MEIKO】
『…えと』
【主人公】
「…悪い」

手を離す。

;<立ち絵:MEIKO>
【オーナー】
「手ぇ、つないだまま見ててもいいわよぉ?
 …バカップル」
【主人公】
「ち、ちがいま…」
【MEIKO】
『あ、あの、すいません』
【オーナー】
「さ、始まるわよ、バカップル」
【主人公】
「………」
【MEIKO】
『………』


なぜかオーナーの視線が冷ややかだった。

;<暗転>

;<背景:動物園,立ち絵:MEIKO,オーナー>
【MEIKO】
『かわいかったですね~』
【オーナー】
「うん、血沸き肉踊る感じだったわね~」
【主人公】
「あのショーにそんな感想を抱けるのはあんたらだけです」

ショーの内容はとっても赤かった…
しかし、また見たいと思わせるあのショーを考案者はもはや人間じゃない気がした。

【オーナー】
「そろそろ、お昼にしましょう」
【MEIKO】
『はい』

;<暗転>

;<背景,立ち絵戻す>
持ってきた弁当を広げていく。

【主人公】
「…わりと、マジメに作ってたんですね」
【オーナー】
「お前、食うな」

褒めたつもりだったのに…

【MEIKO】
『おいしそうですねぇ』
【オーナー】
「メーコちゃんは素直でかわいいわねぇ」
【主人公】
「すいません…ごめんなさい…」
【MEIKO】
『あ…』
【主人公】
「ん?どうした?」
【オーナー】
「あ、私のケータイよ………先に、食べてて」
;<立ち絵:オーナー去る>

【MEIKO】
『どうしたんでしょう?』
【主人公】
「…先に食ってよう」
【MEIKO】
『え?でもでも』
【主人公】
「………」
【MEIKO】
『はい…』

…オーナーの携帯が鳴ることは少ない。
単純にかけてくる人間が限られるからである。
おそらく…オーナーの様子から
発信者はオーナーの身内の誰かなんだろうなと思う。

;<暗転>

;<背景:動物園,立ち絵:MEIKO,オーナー>
【オーナー】
「え?今?………わかったわ。たぶん50分くらいで着くから。
 着かなかったら事故に遭って死んだとでも思って…はいはい、切るわよ」

【主人公】
「…オーナー?」
【オーナー】
「ごめんね。ちょっとヤボな用事が入っちゃった」
【主人公】
「…そうですか。じゃあ今日はお開きってことで」
【オーナー】
「せっかくだから、まだ全部見回ってないでしょ?
 …二人で楽しんでらっしゃい」
【MEIKO】
『え…でも』
【主人公】
「…でも、オーナー、今の電話」
【オーナー】
「うるさいわねぇ…従業員の気にする話じゃないわよ」
【MEIKO】
『………ぅ』

電話の内容は、楽しいものではなかったのだろう。
そう親しくない者からの連絡だったのかもしれない。
オーナーにもいろいろあるんだと思う。

【主人公】
「…夕飯までには戻ります」
【オーナー】
「そ、私もそれくらいには帰ってるから
 先に着いた方がゴハン作っとくってことで」
【主人公】
「わかりました」

;<立ち絵:オーナー去る>
身内からの連絡か…そういうものには少し憧れがあった。
でも、オーナーにとっては不快極まりないものなのかもしれない。

そして、ここから先は関われない。
俺とオーナーの関係は労働者と使用者であり、それ以上は踏み込まない。
それが適切な距離。
この3年間で俺とオーナーが落ち着いた心地の良い距離だから…

;<暗転>

;<背景:動物園,立ち絵:MEIKO>
【MEIKO】
『いいんですか?』
【主人公】
「さあて、オーナーおススメのキリンでも見にいくか」
【MEIKO】
『あの』
【主人公】
「…いいんだと思う。たぶん、関わってほしくないんだ。オーナーも」
【MEIKO】
『オーナーさん、も?』

なんとなく、そんな気がする。
俺と同じような…違うのかもしれないけど。

【主人公】
「…だから、暇つぶしだ。今日中に全部まわるぞ」
【MEIKO】
『…はい………って全部ですかっ!?』
【主人公】
「走れっ!!」
【MEIKO】
『あっ………はいっ…』

そう言って、彼女の手をとる。
時間から言ったら、走る必要なんて無いかもしれないけど。
もしかしたら、自分以外の誰かに触れたかっただけなのかもしれない。

;<暗転>
………

有言実行…とカッコよくいっても仕方ないが
その日のうちに、全動物を制覇した。

;<背景,立ち絵戻す>
【MEIKO】
『日がくれそうです』
【主人公】
「そろそろ帰るか…」

二人とも疲れきっていた…。

【MEIKO】
『?………あの、あれって、人が乗れるんですか?』
【主人公】
「あ、ああ」
【MEIKO】
『…乗ってみたいって、言ってもいいですか?』
【主人公】
「………まぁ、いいけど」

;<背景:黒>

彼女が指をさした先には、動物園の池のほとり
周りのビルと比べても小さい
本当に小さい観覧車があった。

;<暗転>

;<背景:CG02(観覧車内,夕陽色に染まるMEIKO)>
【MEIKO】
『うわっうわわわわっ』
【主人公】
「…いや、おい」
【MEIKO】
『すごいですっ!!高いです!!』
【主人公】
「隣のビルの方が高い…」
【MEIKO】
『ゾウさんがあんなにも小さく!!』
【主人公】
「そりゃ、人間もあんなに小さくなってるし」
【MEIKO】
『夕陽がきれいですよ!!』
【主人公】
「いつだって夕陽はきれいだ」
【MEIKO】
『ぅ』
【主人公】
「?」
【MEIKO】
『…ちょっと、いやなかんじです』
【主人公】
「そうか?…少しは静かにしてもいいと思うぞ」
【MEIKO】
『うぅ…』

静かになった。まぁ…最初から静かなんだろうけど。

さっきはああ言ったが、確かに夕陽なんて、ここしばらく眺めてない。
そういえば、こういう暖かい色だったなと思う。

ふと横を見ると、MEIKOも同じように夕陽に見入っていた。
短くそろえた髪、大きな瞳、すこし薄い唇、
夕陽を浴びてオレンジがかったその顔は、素直に…

【主人公】
「…きれい、だな」
【MEIKO】
『そうですね…きれいです』

ここで、「おまえのことだ」とかいうような男でなくて良かった
ほんとうによかった…
と我ながら思う。

【MEIKO】
『あの、せんぱい』
【主人公】
「…なんだ」
【MEIKO】
『楽しい…ですよね?』
【主人公】
「…そうだな」

いろいろあったけど…全部ひっくるめて
楽しい一日だったと思う。

【MEIKO】
『よかったぁ…』
【主人公】
「なにが?」
【MEIKO】
『…楽しいって言ってもらえて』
【主人公】
「…お前は?楽しかった?」
【MEIKO】
『…ずっと、ずっとこんな日がつづくといいなぁっておもいます』
【主人公】
「…そうだな」

観覧車を降りたとき、もうほとんど日が暮れていた。

;<暗転>
………

;<背景:店内,立ち絵:オーナー>
その晩、俺たちが帰ったときにオーナーの姿はなく、
メールを送っても返信がなかった。

【オーナー】
「あれ?明かりつけっぱな~?…ういっく…」
【主人公】
「…遅かったですね…って飲んでます?」
【オーナー】
「…あんたか。ただいま。
 ちょっとね~ほろ酔い気分~」
【主人公】
「おかえりなさい。
 こんな時間まで帰ってこないと思ったら」
【オーナー】
「もしかして、待っててくれたとか?心配して?」
【主人公】
「………んなわけないでしょう?」

待っていたわけじゃない。
午前2時をまわったところだけど、いつもの感覚で寝られなかっただけだ。
決して、夕飯までに帰ってこなかったオーナーが心配だったわけじゃない。

…誰にいいわけしてるんだか。

【オーナー】
「あははっ…そだよねそんなわけないよねぇ………ね?ちょっと飲まない?」
【主人公】
「は?」
【オーナー】
「いいじゃん。ね?飲もうよ~」
【主人公】
「いやです。あんたの酒癖の悪さは身にしみてますから」
【オーナー】
「だって、メーコちゃん寝ちゃってるでしょ?」
【主人公】
「俺だってもう寝ます」
【オーナー】
「ひとりで飲むのつまんないし~」
【主人公】
「じゃあ、飲まなきゃいいでしょ」
【オーナー】
「酔っておしり触ってもいいから~」
【主人公】
「…けっこうです」
【オーナー】
「…じゃあ、ムネ?おっぱいがいいの?」
【主人公】
「おやすみなさい、オーナー。
 早く寝ないと、明日きついですよ」
【オーナー】
「む…店長命令よっ!つきいあなさいっ!!」
【主人公】
「今は勤務時間外ですから」
【オーナー】
「…うぅ」
【主人公】
「………まだ何か?」
【オーナー】
「…ふ、ふんっ………いいもんっ!
 …ひとりでさみしくちびちびのむから…ひとりで…」

…この人は、わかっててこういうことを言うんだろうか。
そういう言いかたされたら、俺が断れるわけないのに。

【主人公】
「………はぁっ」
【オーナー】
「さっさと寝てきたら?明日つらいわよ?…うぃっく…」
【主人公】
「…3時までですよ?」
【オーナー】
「…いいの?」
【主人公】
「あと1時間ないですけど」
【オーナー】
「………無理してつきあってくれなくても、
 さっき店長命令って言ったの冗談だし」

だからそういう弱いとこ見せるなって…

【主人公】
「…俺もちょっと飲みたくなったんです」
【オーナー】
「でも」
【主人公】
「…ひとの厚意は素直に受けとってください」
【オーナー】
「コウイ?」
【主人公】
「厚意です」
【オーナー】
「………コウイねぇ…ふーん」
【主人公】
「な、なんです?」
【オーナー】
「よっしゃー、駆けつけ三杯っ!!」
【主人公】
「…どこの体育会系だ、あんたは…
 ってウィスキーをその濃度で飲めるわけないでしょっ!!」
【オーナー】
「駆けつけ三杯~。飲めないんなら…口移しで飲ませちゃうぞ~」
【主人公】
「この酔っ払いっ!!」


;<暗転>

;<背景:店内,立ち絵:MEIKO>
【MEIKO】
『?…おはようござい………ま゛?!』
【オーナー】
「………う゛~」
【主人公】
「………あ゛~」

なんだかんだで朝まで付き合わされた…
二日酔い…やばい…

;<暗転>
………
こうして、休日が…俺たちの日常が終わった。

;<独白モード>
その夜のことだった。

いつものようにピアノを弾いていた。
違ったのは、仕事がほとんどなくなり暇になったMEIKOが
ピアノのそばにいたことくらい。

ピアノを弾くといつものようにMEIKOは“歌った”。
この日は、本当に何となく、ピアノを彼女に合わせてみた。
俺の耳は聞こえないし、あいつは声だって出せない。

だから、ほんの自己満足だった。

彼女の声を想像して、彼女のために音を奏でてみた。

そして、今晩、最後の曲を弾き始めたとき…

俺はいつもどおりだったと思う。
ただ、客の反応が違った。
そして…目の前にいるMEIKOが明らかに違った。


;<背景:(CG03,歌うMEIKO)or 背景:店内,立ち絵:MEIKO>
声が響いていた。
圧倒的な声量が、音ではなく振動として、俺に『歌』を伝えた。
ああ、これが、ボーカロイドか。

カウンターに座ってる客は振り返り、
テーブルで毎晩酔って管を巻いている連中も大人しく耳を傾けた。

歌っていた。
感じられた。この距離ならば。
…本当に楽しそうに歌っていた。

演奏が終わって、静けさが残った。

天使が通り過ぎたあとなのだとしたら、
きっとマラソン大会でもやっていたんじゃないかっていうほど
店は静まり返っていた。


;<ウィンドウモード>
;<背景:店内,立ち絵:MEIKO,オーナー>
が、そんな静けさが支配し続ける店であるわけでもなく

【佐々木】
「アンコールっ!!」
【オーナー】
「アンコールっ!!」

そして、客達からアンコールの合唱…たぶんそうだろう。

【MEIKO】
「せ、せんぱいっ!ど、どうしましょうっどうしましょうっ!?」
【主人公】
「…アンコールには答えないとな」
【MEIKO】
「あ、…はいっ!!」
【主人公】
「あと2曲だけですよっ!!」

【客】「「「「おーーう!!」」」」

結果、さらなるアンコールとオーナー命令によって
その後30分弾き続け、歌い続けた。

;<暗転>


彼女の歌は店に響き渡り、彼女は声を取り戻した。
オーナーと客達は彼女の歌を褒めちぎった。

でも、彼女の歌声は、俺にだけは絶対に届かない。

それが、なぜか心に刺さった。

なぜ?
聞きたいから?
歌を?彼女の声を?

…わからなかった。


………


そして、朝の空気が寒さを忘れたころ
MEIKOは歌姫として、
この界隈でちょっとした人気者になっていた。