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プロローグ

subtitle:prologue
last update:090227


[背景/黒]

――誰もいらない
たいていのコトは一人でできたし、誰にも頼らずに生きてきた
他人の助けなんて…同情なんていらない

    『さみしいですか?』

どんなに分かりあおうとしても
わかりあえたと思えても
他人は所詮、他人…そう思ってる

    『かなしいですか?』

だから、ずっとひとりだったし…
これからも、ひとりでいい
寂しさなんて

    『ひとりは…』

寂しさなんて感じない 



   『ひとりは、さみしいですよね』;<画面中央に配置>



A Fairy Tale in the Small Bar;<画面中央に配置>
序章『―Prelude―』;<画面中央に配置>


[背景/白]

[台詞/田中/]「ん……」

朝…か……

まぶしい………てか、もう昼かぁ…
あれ? 昨日、カーテン閉めてなかったか?
………頭イタイ…

あーまぶしい……。 鳥の声もない朝……ていうか、昼か。
………眠い。 もう慣れたとはいえ夜の仕事はきつい。
ま、転職を考えるほどじゃないけど。

[背景/自室]

(もぞもぞ)

覚えてない程度には飲んでってことか…
昨日のオーナーは荒れてたしなぁ

確か、店を閉めて………………うぅ…頭イタイ…
体も重い…

(もぞもぞ)

ん? なんか、あったかい……

背中に違和感っつーか……さっきから息がうなじにかかってこそばゆいような
例えば、なんか隣にひとがいるような……

………ベッドのなかに? それって、もしかしてさ………いわゆる………

ま、待て、落ち着け。 昨日の夜なにがあった? 思い出せ……えっと………

思い出せん!

あー頭イタイし、酒けっこう飲んだからなー……たしかオーナーに………
お、落ち着け俺、状況的にはあの人しかいないけど、あの人なわけもないし
ていうか、ヤってしまったのか? 脱童貞の記憶もなくヤってしま――

よし、落ち着こう。
どうやったのかは知らんが、昨日の俺グッジョブ! 記憶はないけど事実はきっとそこにある! よし!
とりあえず、まあ、時間も時間だろうし、起こしてやんないと

ていうか、あの人が俺より寝てるっていうのも珍しいな。
あの人の寝顔なんてほほえましいっつーか――

[台詞/カイト/]「ZzzZzzZzz」

[台詞/田中/]「…って、お前かよ!」

男じゃん。
てか、カイトじゃん。

[台詞/カイト/]「ZzzZzzZzz」

となりには規則正しい寝息を立てて、安らかに眠る同僚。
てか、なんで裸なんだ、お前は。
………とりあえず起こすか。

[台詞/田中/]「………おい」

[台詞/カイト/]「ZzzZzz………?……なんだ、田中か」

[台詞/田中/]「…なんだじゃない。 あの一瞬のときめきを返せ……じゃなくて、何でお前が俺とベッドイン?」
[台詞/カイト/]「………………なんで同衾?」
[台詞/田中/]「だから、それを俺が聞いてる」
[台詞/カイト/]「ふむ……同衾とは同じ布団で寝ることだよ」
[台詞/田中/]「……そうじゃなくて」
[台詞/カイト/]「んー………それで僕を連れ込んで、どうするつもり?………あ、した後か」
[台詞/田中/]「してねぇっ!!………よな?」
[台詞/カイト/]「ふむ………ま、でも田中にならいいかな」
[台詞/田中/]「ちょと待て待って、そういう誤解を招くような言い方はやめよう? な?」
[台詞/カイト/]「ん? 誰か階段上がってきてるね」

かすかに部屋が揺れる。
この築ン十年のボロアパート兼職場は、ちょっと階段を駆け上っただけでもその振動は家中に伝わるという
非常に防犯性が優れた――って

[台詞/田中/]「お、おい、起きろっ! オーナーが上がってきてるっ!」
[台詞/カイト/]「ん? ねえさんー? あ、そうだ。 田中、おはよー」
[台詞/田中/]「おはよー…じゃねぇっ!! 起きろっ!!」
[台詞/カイト/]「起きてるってーあはは」

あはは、じゃねぇ!
という俺の声をさえぎるかのように、無情にも開くドア。

[台詞/メイコ/]「田中、起きてる? いや、あのさー昨日うっかり飲みすぎちゃってワインが………」
[台詞/田中/]「………」
[台詞/カイト/]「あ、姉さん、おはよ。」

ああ、むじょう。

[台詞/メイコ/]「………ええと。 不純同性交友?」
[台詞/田中/]「ち、ちがうぞっ! 朝起きたらコイツが布団の中にもぐりこんでて、俺は何も」
[台詞/カイト/]「田中ー、僕のパンツはー?」
[台詞/田中/]「お、俺に聞くなよ…」
[台詞/メイコ/]「………」
[台詞/カイト/]「むー」
[台詞/田中/]「…えっと、オーナー? 聞いてくれ。 常識で考えればわかると思うが」
[台詞/メイコ/]「え、あ、う、うん。 わかってるって、うん。…そ、そういう関係っていうのもアリだと思うし」
[台詞/田中/]「わかってねぇっ!! あんた、わかってねぇっ!!」
[台詞/カイト/]「田中ー、パンツー」
[台詞/メイコ/]「ええと、痔のお薬ってあったかしら」
[台詞/田中/]「そういう気も使わなくていいっ!!」
[台詞/カイト/]「パンツー」



[背景/街]


[台詞/田中/]「ふぅ………」

あのあと、必死にオーナーの誤解を解き………

[台詞/メイコ/]『うんうん、わかった。 わかったから。 でも、ほどほどにしときなさいね。そんなことより、ワインがなくなりそうだから買出し行って来て。 いつものとこ』

との命令を下され、先ほど買出しを終えたのだった。
あー……誤解とけてねぇなー。 いや、オーナーの場合、わかってて、からかってるのかも。

ちなみに“いつものとこ”とは、オーナーがひいきにしている酒屋のことだ。
無計画に酒類を消費してしまうウチの店にとって、なくてはならない小売店である。
店番をしている双子の弟の方には今日もささくれだった心を癒してもらった。姉の方は……ま、いいか。

今度、弟の方には菓子でも買っていってやろう。

………

今日も街は静かだなぁ。
俺の世界からほとんどの音が消えてずいぶん経った。
街頭のTV。くるくる舞い踊り、歌うボーカロイドたち。

聞こえない。

女性型ボーカロイドの声は、ほとんどが高い。
ごく低い音しか拾えない耳。
必死に耳ではなく目で彼女らの歌を追う。

………
やめとこ。
未練がましい。

―――
[背景/バー]

[台詞/田中/]「ただいまっと」
[台詞/ミク/]「!!」
[台詞/田中/]「………ん?」

店内に入ると、知らない女がいた。
女っつーか…女の子?
客か?…酒を飲める年齢には見えないが、見た目で判断できないのが、この店の客層だしな…

[台詞/田中/]「………すいません。まだ、準備中なので」
[台詞/ミク/]「!!!!」

いや首を振られても……
客じゃないのか?

[台詞/田中/]「えっと、客じゃねぇの?」
[台詞/ミク/]「!!」

首を縦にふった。
客じゃない……とすると

[台詞/田中/]「強盗か」
[台詞/ミク/]「………」

無反応…マジ? マジで強盗? こんなナリで?

[台詞/ミク/]「!!!!!!!!!」
[台詞/田中/]「いや、そんなに首振ってると、首取れるぞ……ていうか冗談だっつ――」

後頭部に衝撃。

いつものだ。

[台詞/田中/]「ってぇな」
[台詞/メイコ/]「あんたねぇ…いくらかわいいからって女の子いじめない。 しかも初対面でしょ?」

痛い…。

[台詞/田中/]「……いじめてねぇよ」
[台詞/メイコ/]「え? ホント?」
[台詞/ミク/]「………」

首肯。

[台詞/メイコ/]「でも、あんた今、この子が声出せないのをいいことに何かセクハラ的なことを」
[台詞/田中/]「してねぇっつーの! ほら、お前も黙ってないで俺がどれだけ紳士的だったかと……しゃべれないの?」
[台詞/メイコ/]「ええ。 あ、耳は聞こえるし、筆談で意思疎通はできるみたいだから安心して」
[台詞/ミク/]「……」

首肯。
あーなるほど。さっきから(こくこく)か(ぶんぶん)なのはそのせいか。

[台詞/カイト/]「姉さーん。オイスターソースってウスターソースで代用でき……あ、田中、帰ってたんだ。 おかえりー」
[台詞/田中/]「ああ」
[台詞/メイコ/]「お、じゃあ、みんなそろったとこで、自己紹介といこうか」
[台詞/田中/]「は?」
[台詞/カイト/]「えー。 カイトです。 厨房&フロア担当です。 好きな体位は後背位。 性感帯は左の乳首です」
[台詞/田中/]「いや、わけわからん」
[台詞/カイト/]「げふぅっ!?」
[台詞/ミク/]「!?」
[台詞/メイコ/]「ごめんねー、こいつのことは気にしないでねー。 はい、自己紹介続けるわよ。 そこで倒れてる変態がカイトで、倒れてないのが田中。 以上」
[台詞/田中/]「俺を倒れていない変態のように言うなと」
[台詞/メイコ/]「はい、今日からみんなと一緒に働くことになったミクさんですーみんな仲良くねー」
[台詞/ミク/]『あ、あの、ミクです。フロア担当です。 そ、その好きな大尉はクラ』
[台詞/田中/]「いや、お前も見習わなくていいから…ってフロア担当!?」
[台詞/メイコ/]「うん。 だって、あんたがフロア人手たんないーとか言ってたでしょ?」
[台詞/田中/]「言ったけど…」
[台詞/メイコ/]「これで人手不足解消ね」
[台詞/田中/]「いや、あのさ、オーナー。 考えてもみろ? うち深夜営業だぞ? こんな小さい女の子が」
[台詞/メイコ/]「ん? だいじょぶ、この子もボーカロイドだから」
[台詞/田中/]「あ、やっぱ、そうなのか………って、こいつ、ボーカロイドのくせにしゃべれないのか?」
[台詞/ミク/]『…うぅ』
[台詞/メイコ/]「あんたねー…何気ないその一言が誰かを傷つけることもあるって、おじいちゃんが言ってたでしょ?」
[台詞/田中/]「え…あ……や…その…すまん」
[台詞/カイト/]「謝って、それで済むと思ってるのか」
[台詞/田中/]「なんでお前が偉そうなの?」
[台詞/メイコ/]「反省の色がないわねぇ…」
[台詞/田中/]「う…いや、ごめん。 でもさ、しゃべれないのにウェイトレスって」
[台詞/メイコ/]「あんただって、耳聞こえないくせに、ウェイターやってるでしょ」
[台詞/田中/]「オーナーがやらせてるんだろ」
[台詞/ミク/]『え? 聞こえない?』
[台詞/田中/]「そーだよ。 だから、お前が声が出せようが出せまいが、俺にはわからん」
[台詞/ミク/]『あ……その、ごめんなさい』
[台詞/田中/]「は?…いや、わけわからん」
[台詞/ミク/]『あ、そっか……だから、さっきから私の言ってることが伝わるんですね』
[台詞/田中/]「まぁ、唇読めるように訓練してるし」
[台詞/ミク/]『そうなんですね。 私、こんな風に誰かと話すのって初めてです』
[台詞/田中/]「そ、そうなんですか。 い、いやまぁ、アレだ……そのなんだ」
[台詞/メイコ/]「ちょっと二人の世界に入ってるとこ悪いけど」
[台詞/田中/]「は、入ってないし!」
[台詞/メイコ/]「ということで、ミクちゃん、わかんないことは、この田中に聞いてね。 あなたの先輩だから」
[台詞/田中/]「どういうことだ……え? なにそれ、いつの間に俺、教育係みたいなことになってんの?」
[台詞/ミク/]『よろしくお願いしますね。せんぱい』
[台詞/田中/]「え? あ、うん。よろしくお願いします」
[台詞/カイト/]「僕のことは、お兄ちゃんとでも呼んでくれ……いや、ここはお兄様あたりの方が……田中、どう思う?」
[台詞/田中/]「いや、お前はお前で話を混沌とさせようとすんな」
[台詞/メイコ/]「さー、開店まであと一時間、今日もがんばっていきましょう!」
[台詞/田中/]「しめんな。 ちょ、ちょっと待って」
[台詞/メイコ/]「あ、田中、開店準備から教えてあげてね」
[台詞/田中/]「いやさ、オーナー」
[台詞/ミク/]『よ、よろしくお願いします!』
[台詞/田中/]「………」
[台詞/ミク/]『?』
[台詞/田中/]「………はぁ」

[背景/黒]




選択肢
ミクの様子を見に行く(001mi)
メイコの様子を見に行く(001me)
カイトの様子を見に行く(001ka)