「#79」(2010/04/14 (水) 15:03:20) の最新版変更点
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*#79 異世界からの使者
「お、風邪治ったの?」
教室に入ったあたしは、何日かぶりに見た武志に声をかける。
休んでた日の分のノートも貸してあげるつもりだ。
「治ってなかったら学校来ないっつーの」
武志はからからと笑った。
あたしは机に鞄を置きながら「それもそうね」と言った。
「そういや土曜日剣治と遠征してきたんだってな。どうだったよ?」
あたしは赤髪に悠然と立ち向かう剣治の姿を思い出して少しどもったあと、「全然ダメ…だったかな」と答えた。
正直大会のことはあんまり覚えてないし。
「剣治ってなんだかんだ言って強いよな」
「え?」
あたしは思わず聞き返す。
「だって普通、00Pのユニットなんてあんまり強そうに見えないじゃん?」
「あー…そっちね」
「他にどっちがあるんだよ」
そこで始業の鐘が鳴り、あたしたちは自分の席に戻る。
わりと普通の日だった。「AO入試では前期までの成績を送るから、今回の試験は重要だぞ」とかを1時間ごとに聞くハメになったのは言うまでもないけど。
休み時間にクラスメイトが話す進路目標や夢、そういうのを聞かされるたびに焦るんだよね、無理に決められるもんじゃないのに。
掃除の時間になり、あたしは掃除用具入れから箒を取り出して廊下に出た。
誰が開けたのか、窓から流れ込む16時の風が少し冷たい。
そういえば、今日は「リベンジだー」と言って入ってくる男子――まあ剣治なんだけど――来なかったな。
確かに放課後まで来ない日とかもあったけど、意識してみると…なんかアレなんだよね。
「なんだよ?今日はなんかボケッとしてんな」
「そう?」
廊下に突っ立ってるあたしに武志が声をかける。
確かにボーっとしてたかも。他の掃除分担区だったコイツが戻ってきてる時間まで箒握ってるなんて、不覚でござった。
「おう。いつもは”掃除なんて瞬殺してやるわ”とか言ってるのに」
「はは。熱でもあるのかもね」
あたしは冗談言って教室の中に入る。
剣治風邪でもひいたのかな?
「今日カキヨで調整付き合ってくんない?」
ホームルームが終わってすぐ、武志が「そういや」と言ってあたしの席に来る。
総体が終わって部活は無いし、試したいデッキもある。
「いいわよ。あ、でもちょっと待ってて」
あたしは立ち上がって鞄を武志に渡す。
「どこ行くんだよ?」
「ちょっと確認したいことがあるの」
そう言って手を振ってあたしは廊下に出る。
剣治のクラスは確か、ちあきと同じ6組だ。下校する生徒たちの波を逆走し、あたしは6組の前に向かう。
ちょうどちあきが出てきたところだ。
「剣治まだいる?」
少し息をついてあたしは質問する。
ちあきはジャージ姿…また部活に顔出す気だな。
「あぁ、的場なら…」
「どうした、本田京子」
ちあきが言い終わる前に、6組の戸口から剣治がぬっと現れる。
あたしは、なんだかよくわかんないけどドキリとして少し目をそらす。
「あ、いやこっちに顔出さないから風邪かなんかで休んでるのかと思ったからさ」
「いや、”特に用もなかった”からな」
は?
あたしはぽかんとする。
「…いつもリベンジ!リベンジ!って叫んでたのはどうなったのよ?」
「フッ、リベンジは達成できた」
あ…そっか。
あたしは一人で頭を抱えた。
うわぁ…あたしが負けたから、もう剣治は毎日顔出さないじゃん…なぜ負けたよあたし!
「そ、そうね、うん。じゃ」
あたしはそう言って、もっともらしく頷く剣治を尻目に6組を後にする。
あたしの様子に違和感を覚えたのか、ちあきが追って来た。
「何?あんた、的場に気でもあるの?」
「な、な、ないよ」
あたしは露骨に噛みながら手をひらひらさせて否定する。
数秒の沈黙。自分の誤魔化し方の下手さに涙が出そうだ。
「ほほう、相変わらずわかりやすい。っとこんな時間だ」
ちあきはあたしを小突きながらわざとらしく時計を見た。
「なんか進展あったら、ちゃんと母さんにも話すんだよ~」
「違うってばー!てか、だれが母さんじゃー!」
あたしは廊下の向こうに消えたちあきに突っ込みつつ、廊下をもと来た方向にむけて歩いた。
×××
「2枚目の白G、プラント最高評議会をプレイ」
「了解」
あたしはむすっとしてゲームを進めた。さっきからこの調子で武志には悪いけど、こういう気分何だから仕方ない。
武志の場には赤の基本Gが2枚。多分青赤だろうけど、周辺警護は勘弁。
「ターン終了よ」
「ドロー、ホワイトベース隊をプレイしてターン終了だぜ」
あたしは内心安心してターンを開始する。
まずは最高評議会で手札を入れ替えて、ドローっと。
「配備フェイズ、OZをプレイしてアフトフレーム(バックホーム装備)をプレイするわ」
「OZかよ…オッケーだぜ」
これで先攻の武志は4ターン目にヴァーチェを戦闘配備することはできなくなった。
あたしは手札を軽くチェックしてターンを終了した。
「ドローして…配備フェイズ、ホワイトベース隊を使うぜ。送るのは赤基本Gだ」
ホワイトベース隊Gは23弾の特殊Gだ。
ユニットとコマンド以外のカードを本国に送って国力を発生する特殊Gで、混色の出色調整にもなる便利カード。
でも、ミーティアの弾にできなかったり、詩織の虚偽の報告で完封されたりしたからあたしはあんまり好きになれないんだけどね。
「さ、ヴァーチェ来るかしら?ロールインだけどね」
「おう!ロールインだろうがパワーなら負けないぜ」
武志は考える様子も無く手札からヴァーチェを出した。
他にユニットが来たときのことを考えてここで出しておこうって訳?
まあいいわ。
「ターン終了だ」
「じゃあこのターンも最高評議会を使った後ドローするわ。って、うわぁ…」
ひどい本国。
うちのユニットは一体全体どこにいったんでしょうか?
「白基本Gをプレイして、アークエンジェル《女神2》をプレイ。このまま戦闘フェイズに入りたいけど?」
「ランチャーもなしか…いいぜ」
武志はニヤリとする。
うーん…まあでもバックホームで送ったカード引っ張ってここは切り抜けるしかなさそうね。
「地球にバックホームとアークエンジェルで出撃するわ!ハンガーにはこの2枚!」
ハッキングと凶弾の犠牲者!
凶弾の犠牲者はお互いのプレイヤーがG以外の自軍カード1枚を選んで廃棄するコマンドよ。
もっと違う活用方を考えて入れたんだけど、今撃たないとエンジェルかバックホームが次のターンに食われるし…しかたない。
「そのまま攻撃ステップに凶弾の犠牲者をプレイするわ!このカードにはカットインできないわよ」
「他のカードを出すことができないってことは、俺はヴァーチェを廃棄するしかないな…」
「じゃああたしは最高評議会を廃棄するわ♪」
おし!これでとりあえず範囲兵器で配備エリアが脅かされることは無くなった。
ヴァーチェが登場して1年。さすがに対処は慣れてるんだから。
「通すよ、5点」
武志が本国を5枚捨て山に送ったのを見て、あたしはアークエンジェルのテキストを使ってターンを終えた。
これで次のターンはハッキングも合わせて確実にユニットを引っ張ってやるんだから。
「ドロー…よし、戦力の補強には十分だ」
「何?まさか2枚目のヴァーチェとかはナシにしてよ?」
「いや…枚数勝負でいくぜ」
意味ありげに武志はそう言って、ユニットを出した。
「ガンダムキュリオス(デュナメス搭載時)!このカードは敵軍ユニットがいる状態で出た場合、GNコインを出すことができる高機動ユニットだ」
「なるほど…本体はロールインでもコインが戦闘配備で戦力になるわけね」
しかも、そのコインはエクシアよろしくの5/2/5。
冗談じゃないわ。
「ターン終了だ。待つことにするぜ」
「あらそう?来なかったことをきっと後悔するわよ?」
あたしは根拠の無いことを言いつつドローする。
うん、ハッキングの出番だ。
「ハッキングをプレイするわ」
あたしは本国の上3枚を見る。即決だ。
今まであたしが作ってきた白デッキは、どうも足が遅いのが弱点だった。でも、このユニットがそれを克服できるかもしれない。
「ナイトガンダムッ!」
「異世界からの使者のあれか…?」
「ご名答。あたしのデッキを助けるために異世界からわざわざ来てくれたのよ。戦闘フェイズ!」
うん、わかってる。
来訪者を警戒してないわけじゃない。さっきはバックホームとアークエンジェルだけだったから撃たなかっただけで、手札に握ってる可能性は十分ある。
でも、それにいちいちビビッてたら始まらないわ。
「地球にバックホーム、ナイトガンダム、アークエンジェルを出撃させるわ」
あたしはバックホームのテキストでハンガーにカード2枚を送る。
ロゴスの私兵と基本G…しかたない。あとは…。
「特殊兵装を探すわ、電磁スピアをね」
「おう。そんなもんまで入れてんのかよ?」
武志は苦笑気味に言う。
あたしは捨て山3枚を見て「あったあった♪」と声をあげ、捨て山から電磁スピアをセットする。
「んで、規定後にテキストを使うわ。戦闘エリアに3枚ユニットがいるから、地球エリアの部隊の3枚のユニットは+3+3+3!これで部隊戦闘力15ッ!」
2撃でチェックメイトできる破壊力。それにこの攻撃が防がれようが通ろうが、電磁スピアが起動して配備で寝ているキュリオスを血祭り。
この突破力こそがこのカードの特徴!まぁもっとも、こっちの場が整っていればの話なんだけどね。
「デカイな…GNコインがチャンプブロックレベルだぜ。…しかたねえ防御ステップ規定前、彼方からの来訪者」
「対象は?」
「ナイトガンダム」
うーん。持ってたかぁ…しかたないね。
「1枚使わせた」の考えで行くわ。それにね…。
「未だ打点は11点あるんだよな…コインでブロックだ」
「一方的に討ち取りでいい?」
「ああ。かまわないぜ」
あたしはユニットを帰還させながら、さらに1枚の手札を表にする。
「中東国の支援。このカードを使いたいんだけど?」
「それ”今”なのかよ?」
「ええ。来訪者で戻るときにスピアを本国トップにしたからこのカードでナイトガンダムを回収よ」
武志は「ふぅん」と言って許可を出した。
まあ兵装拾えたからこそできたのは内緒。
「ターン終了」
あたしはそう言って手札をトントンとした。
つづく
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:
更新日:10.04.14
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*#79 異世界からの使者
「お、風邪治ったの?」
教室に入ったあたしは、何日かぶりに見た武志に声をかける。
休んでた日の分のノートも貸してあげるつもりだ。
「治ってなかったら学校来ないっつーの」
武志はからからと笑った。
あたしは机に鞄を置きながら「それもそうね」と言った。
「そういや土曜日剣治と遠征してきたんだってな。どうだったよ?」
あたしは赤髪に悠然と立ち向かう剣治の姿を思い出して少しどもったあと、「全然ダメ…だったかな」と答えた。
正直大会のことはあんまり覚えてないし。
「剣治ってなんだかんだ言って強いよな」
「え?」
あたしは思わず聞き返す。
「だって普通、00Pのユニットなんてあんまり強そうに見えないじゃん?」
「あー…そっちね」
「他にどっちがあるんだよ」
そこで始業の鐘が鳴り、あたしたちは自分の席に戻る。
わりと普通の日だった。「AO入試では前期までの成績を送るから、今回の試験は重要だぞ」とかを1時間ごとに聞くハメになったのは言うまでもないけど。
休み時間にクラスメイトが話す進路目標や夢、そういうのを聞かされるたびに焦るんだよね、無理に決められるもんじゃないのに。
掃除の時間になり、あたしは掃除用具入れから箒を取り出して廊下に出た。
誰が開けたのか、窓から流れ込む16時の風が少し冷たい。
そういえば、今日は「リベンジだー」と言って入ってくる男子――まあ剣治なんだけど――来なかったな。
確かに放課後まで来ない日とかもあったけど、意識してみると…なんかアレなんだよね。
「なんだよ?今日はなんかボケッとしてんな」
「そう?」
廊下に突っ立ってるあたしに武志が声をかける。
確かにボーっとしてたかも。他の掃除分担区だったコイツが戻ってきてる時間まで箒握ってるなんて、不覚でござった。
「おう。いつもは”掃除なんて瞬殺してやるわ”とか言ってるのに」
「はは。熱でもあるのかもね」
あたしは冗談言って教室の中に入る。
剣治風邪でもひいたのかな?
「今日カキヨで調整付き合ってくんない?」
ホームルームが終わってすぐ、武志が「そういや」と言ってあたしの席に来る。
総体が終わって部活は無いし、試したいデッキもある。
「いいわよ。あ、でもちょっと待ってて」
あたしは立ち上がって鞄を武志に渡す。
「どこ行くんだよ?」
「ちょっと確認したいことがあるの」
そう言って手を振ってあたしは廊下に出る。
剣治のクラスは確か、ちあきと同じ6組だ。下校する生徒たちの波を逆走し、あたしは6組の前に向かう。
ちょうどちあきが出てきたところだ。
「剣治まだいる?」
少し息をついてあたしは質問する。
ちあきはジャージ姿…また部活に顔出す気だな。
「あぁ、的場なら…」
「どうした、本田京子」
ちあきが言い終わる前に、6組の戸口から剣治がぬっと現れる。
あたしは、なんだかよくわかんないけどドキリとして少し目をそらす。
「あ、いやこっちに顔出さないから風邪かなんかで休んでるのかと思ったからさ」
「いや、”特に用もなかった”からな」
は?
あたしはぽかんとする。
「…いつもリベンジ!リベンジ!って叫んでたのはどうなったのよ?」
「フッ、リベンジは達成できた」
あ…そっか。
あたしは一人で頭を抱えた。
うわぁ…あたしが負けたから、もう剣治は毎日顔出さないじゃん…なぜ負けたよあたし!
「そ、そうね、うん。じゃ」
あたしはそう言って、もっともらしく頷く剣治を尻目に6組を後にする。
あたしの様子に違和感を覚えたのか、ちあきが追って来た。
「何?あんた、的場に気でもあるの?」
「な、な、ないよ」
あたしは露骨に噛みながら手をひらひらさせて否定する。
数秒の沈黙。自分の誤魔化し方の下手さに涙が出そうだ。
「ほほう、相変わらずわかりやすい。っとこんな時間だ」
ちあきはあたしを小突きながらわざとらしく時計を見た。
「なんか進展あったら、ちゃんと母さんにも話すんだよ~」
「違うってばー!てか、だれが母さんじゃー!」
あたしは廊下の向こうに消えたちあきに突っ込みつつ、廊下をもと来た方向にむけて歩いた。
×××
「2枚目の白G、プラント最高評議会をプレイ」
「了解」
あたしはむすっとしてゲームを進めた。さっきからこの調子で武志には悪いけど、こういう気分何だから仕方ない。
武志の場には赤の基本Gが2枚。多分青赤だろうけど、周辺警護は勘弁。
「ターン終了よ」
「ドロー、ホワイトベース隊をプレイしてターン終了だぜ」
あたしは内心安心してターンを開始する。
まずは最高評議会で手札を入れ替えて、ドローっと。
「配備フェイズ、OZをプレイしてアフトフレーム(バックホーム装備)をプレイするわ」
「OZかよ…オッケーだぜ」
これで先攻の武志は4ターン目にヴァーチェを戦闘配備することはできなくなった。
あたしは手札を軽くチェックしてターンを終了した。
「ドローして…配備フェイズ、ホワイトベース隊を使うぜ。送るのは赤基本Gだ」
ホワイトベース隊Gは23弾の特殊Gだ。
ユニットとコマンド以外のカードを本国に送って国力を発生する特殊Gで、混色の出色調整にもなる便利カード。
でも、ミーティアの弾にできなかったり、詩織の虚偽の報告で完封されたりしたからあたしはあんまり好きになれないんだけどね。
「さ、ヴァーチェ来るかしら?ロールインだけどね」
「おう!ロールインだろうがパワーなら負けないぜ」
武志は考える様子も無く手札からヴァーチェを出した。
他にユニットが来たときのことを考えてここで出しておこうって訳?
まあいいわ。
「ターン終了だ」
「じゃあこのターンも最高評議会を使った後ドローするわ。って、うわぁ…」
ひどい本国。
うちのユニットは一体全体どこにいったんでしょうか?
「白基本Gをプレイして、アークエンジェル《女神2》をプレイ。このまま戦闘フェイズに入りたいけど?」
「ランチャーもなしか…いいぜ」
武志はニヤリとする。
うーん…まあでもバックホームで送ったカード引っ張ってここは切り抜けるしかなさそうね。
「地球にバックホームとアークエンジェルで出撃するわ!ハンガーにはこの2枚!」
ハッキングと凶弾の犠牲者!
凶弾の犠牲者はお互いのプレイヤーがG以外の自軍カード1枚を選んで廃棄するコマンドよ。
もっと違う活用方を考えて入れたんだけど、今撃たないとエンジェルかバックホームが次のターンに食われるし…しかたない。
「そのまま攻撃ステップに凶弾の犠牲者をプレイするわ!このカードにはカットインできないわよ」
「他のカードを出すことができないってことは、俺はヴァーチェを廃棄するしかないな…」
「じゃああたしは最高評議会を廃棄するわ♪」
おし!これでとりあえず範囲兵器で配備エリアが脅かされることは無くなった。
ヴァーチェが登場して1年。さすがに対処は慣れてるんだから。
「通すよ、5点」
武志が本国を5枚捨て山に送ったのを見て、あたしはアークエンジェルのテキストを使ってターンを終えた。
これで次のターンはハッキングも合わせて確実にユニットを引っ張ってやるんだから。
「ドロー…よし、戦力の補強には十分だ」
「何?まさか2枚目のヴァーチェとかはナシにしてよ?」
「いや…枚数勝負でいくぜ」
意味ありげに武志はそう言って、ユニットを出した。
「ガンダムキュリオス(デュナメス搭載時)!このカードは敵軍ユニットがいる状態で出た場合、GNコインを出すことができる高機動ユニットだ」
「なるほど…本体はロールインでもコインが戦闘配備で戦力になるわけね」
しかも、そのコインはエクシアよろしくの5/2/5。
冗談じゃないわ。
「ターン終了だ。待つことにするぜ」
「あらそう?来なかったことをきっと後悔するわよ?」
あたしは根拠の無いことを言いつつドローする。
うん、ハッキングの出番だ。
「ハッキングをプレイするわ」
あたしは本国の上3枚を見る。即決だ。
今まであたしが作ってきた白デッキは、どうも足が遅いのが弱点だった。でも、このユニットがそれを克服できるかもしれない。
「ナイトガンダムッ!」
「異世界からの使者のあれか…?」
「ご名答。あたしのデッキを助けるために異世界からわざわざ来てくれたのよ。戦闘フェイズ!」
うん、わかってる。
来訪者を警戒してないわけじゃない。さっきはバックホームとアークエンジェルだけだったから撃たなかっただけで、手札に握ってる可能性は十分ある。
でも、それにいちいちビビッてたら始まらないわ。
「地球にバックホーム、ナイトガンダム、アークエンジェルを出撃させるわ」
あたしはバックホームのテキストでハンガーにカード2枚を送る。
ロゴスの私兵と基本G…しかたない。あとは…。
「特殊兵装を探すわ、電磁スピアをね」
「おう。そんなもんまで入れてんのかよ?」
武志は苦笑気味に言う。
あたしは捨て山3枚を見て「あったあった♪」と声をあげ、捨て山から電磁スピアをセットする。
「んで、規定後にテキストを使うわ。戦闘エリアに3枚ユニットがいるから、地球エリアの部隊の3枚のユニットは+3+3+3!これで部隊戦闘力15ッ!」
2撃でチェックメイトできる破壊力。それにこの攻撃が防がれようが通ろうが、電磁スピアが起動して配備で寝ているキュリオスを血祭り。
この突破力こそがこのカードの特徴!まぁもっとも、こっちの場が整っていればの話なんだけどね。
「デカイな…GNコインがチャンプブロックレベルだぜ。…しかたねえ防御ステップ規定前、彼方からの来訪者」
「対象は?」
「ナイトガンダム」
うーん。持ってたかぁ…しかたないね。
「1枚使わせた」の考えで行くわ。それにね…。
「未だ打点は11点あるんだよな…コインでブロックだ」
「一方的に討ち取りでいい?」
「ああ。かまわないぜ」
あたしはユニットを帰還させながら、さらに1枚の手札を表にする。
「中東国の支援。このカードを使いたいんだけど?」
「それ”今”なのかよ?」
「ええ。来訪者で戻るときにスピアを本国トップにしたからこのカードでナイトガンダムを回収よ」
武志は「ふぅん」と言って許可を出した。
まあ兵装拾えたからこそできたのは内緒。
「ターン終了」
あたしはそう言って手札をトントンとした。
つづく
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[[前へ>#78]] / [[SeasonTOP>あたしのガンダムウォーSeason3]] / [[次へ>#80]]
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.06.17
更新日:10.04.14
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