「#93」(2010/04/14 (水) 15:13:43) の最新版変更点
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*#93 あたしの最終戦!
2勝2敗で迎える最終5回戦―。
ホワイトボードで対戦する席を確認して、あたしは鼻歌交じりに向かう。
今度もコンボデッキってのはゴメンよ?ユニットで戦うのが、あたしの白デッキの持ち味なんだから。
「「あ」」
自分が座る椅子を引いたときに、対戦相手と目が合う。
…さっきぶつかっちゃった人だ!
「さっきはスミマセンでした」
あたしは相手が口を開く前に頭を下げた。
「いえいえ」
「よろしく、後藤田未来よ」とテーブル越しに手を差し出す相手さん。
あたしは「あたし、本田京子っていいます」と言って差し出された手を握った。
「それでは会場の皆さん、準備はいいですかー?」
MCの人がマイクを入れる。
5回戦って案外長かったよ…昼の騒動がずいぶん前に感じる。
「それでは最終5回戦、ガンダムウォー、レディィイ、ゴー!!」
MCの台詞と共に、参加者は手を上に突き出す。
これも5回目、そして最後。
「…先に謝っておきます」
「…はい?」
唐突に切り出す未来さん。
「私、対戦になるとちょっと強気なこと言っちゃうんです。だから…」
「あー大丈夫です」
あたしは「あたしもよくやっちゃいますから」と小声で言って苦笑した。
なーんだ。そんなことか。
見た目結構おとなしそうなのにね、この人。
「「よろしくお願いします」」
お互いに頭を下げて、じゃんけんっと…。
あたしは顔を上げて右手を出す。
「フッフッフッフッフッフッ…ハーッハッハッハッハッハッ!」
「え゛?」
あたしは急に笑い出した未来さんの顔を思わず凝視してしまう。
眼鏡を外したその顔は、さっきまでとは目つきが違う。なんていうか…。
「どうしたぁ?先番を決めるじゃんけんをしようじゃないの」
「あー…はい。じゃんけん、ぽん」
考えずに出したグーは、あたしに先攻をくれた。
『ちょっと強気』どころじゃないっしょ…。
バカ高いテンションの未来さんを面前に、あたしは手札をチェックして「やれます」と宣言する。
「この戦いは”アタシ”の勝ちだな!今、何の恐怖も感じない!」
高らかに宣言する未来さん。
うーんと…それはマリガンなしという解釈でOK…?
「配備フェイズ。白特殊G・歌姫の騎士団をプレイして、ターンを終了します」
「…白!奇遇だねぇ」
未来さんはそう言うと、ドローもそこそこに白基本Gを場に出した。
「ターン終了だよっ!」
「…白」
あたしはそうつぶやき、ターンをもらう。
ミラーマッチ?ここまできて。
でも…逆によかった。
あたしはこのゲーム、先攻なんだから!
「歌姫の騎士団で白基本Gを本国の下に送って、ターン終了」
「ドロー…白基本G」
未来さんはベチリと音を立ててGを場に出す。
「カガリ・ユラ・アスハ《19》を白基本Gにセット」
「カガリ…?」
「そうよっ、カガリ!なにか問題でも?」
あたしはテキストを思い出す。
PS装甲とは相性が悪いテキストだから…”そういう”デッキなのかな?
「ターンもらいます…ドロー。3コイン目を歌姫に、そしてこのカード!」
あたしは微笑んで、手札のカードを続ける。
「ガンダムアストレイ・アウトフレーム(バックホーム装備)」
「ハハッ、テンプレの動きだねぇ!」
テンプレ結構!
先攻が有利なのは、先にバックホーム出せて、先にハイマットで殴れて先に換装できるところ!
相手と同じ行動を相手より先にできるんだから、断然有利に決まってる。
「ターン終了です」
「ちょーと待った。帰還にカガリのテキストで、手札からバックホームを場に出し、カガリをセットするわっ!」
「え…?」
あたしはきょとんとして場に出たバックホームを見る。
そういう使い方か。
「ターンもらうわよん♪3枚目のGを配備。戦闘フェイズ!」
「っ…」
未来さんはバックホームを地球に出撃させる。
3枚目のGを今のターン配備したから、きちんとドローテキストも起動するんだ。
ハンガーに移ったのは白G2枚。
「先走ってドローした割には、Gしか引けてないみたいですけど?」
「いーのよ、手札にGないし。…それより、先攻さんのバックホームはずいぶんと足が遅いこと」
「いえいえ。あなたのバックホームが早いだけ”ですわ”♪」
あたしは内心少しイラつきながらも、本国を4枚捨て山に送る。
いいもん。まだ先にバックホームを使われただけだし。
「あたしのターン。4つ目のコインを歌姫に。そして戦闘フェイズ、デュエルガンダム《21》をプレイします」
奇襲性を殺してまで今プレイしなきゃいけないのは、カガリのせいだ!
バックホーム同士の相打ちならお互い2ドローで”めでたし”なんだけど…この状況じゃ一方的にあたしのバックホームが破壊されちゃうからね。
「デュエル、バックホームの順で地球に出撃します。ハンガーにはGとハッキング!」
「威勢がいいわねぇ~。6点は通すわ」
そう言いながら本国のカードを移す未来さんに、あたしはターン終了を告げる。
結局多少行動制限はされたけど、カガリがした仕事は2ドローの加速だけだったわね。
彼女の言うとおり手札にGがないなら結構な仕事だったんだろうけど、どうだか。
「ハンガーの白基本Gをプレイ。…バックホームを守る盾を用意しなくちゃあねぇ。イージスガンダム《21》!」
そう言って、未来さんはイージス、バックホームを地球に出撃した。ちょうどさっきのターンにあたしがしたように。
イージスは直接的な破壊テキストを持つユニット。だけどそれは自分をコストにして、だ。体のいい相打ちと考えれば、ここでデュエルとやってもらってかまわない。
「ハンガーにはブロックワードが移るわ」
あたしは確認したと合図して、自分の場に目をやる。
さっきのターンにバックホームで補給しておいた”あたしのデュエルガンダム”が悠然と立っている。
「デュエルガンダムを防御に出撃させます」
「でしょうね。イージスを野放しにすると、後続に自爆されるだけだもの」
「ですね」
「DEATHね。じゃあ遠慮なく、防御ステップにイージスはデュエルと共に自爆」
あたしはコクリと頷き、デュエルを破棄する。これでバックホームの4点は通し。
バックホームを守る盾にしては”よく切れる”盾だこと。
「ターン終了っ」
あたしはニッコリ笑って、ドローする。
なんだかんだ言って、5枚目のGは先にあたしが出すんだから♪
「ハンガーから白基本Gを…」
「カットイン。切り開く力ぁ!」
「うっ…」
あたしは言葉に詰まる。
そういえばそうね。『白は5Gから』そんなことみんな知ってる事だわ。
あたしは切り開きで6枚になる手札を見越して、ハンガーのハッキングを使うのをやめた。
出撃もナシだ。ハンガードローがないのにわざわざ殺されに行くこともない。つまり…
「ターン終了です」
「ミラーマッチでは有効ターン数がものを言う。デッキが一様になりやすい白では特にねっ!」
未来さんは妖艶な笑みを浮かべて、ドローする。
何よ、有効ターンって。Gを出せただけであたしにとっては有効ターンなんですけど?
「中東国の支援と白基本G。そしてフリーダムガンダム(ハイマットモード)!ヤーハァッ!アタシが先攻みたいじゃないか!」
高笑いで未来さんはハンガーのブロックワードに手をかける。
出すの?
ブロックワードの制限対象は全てのプレイヤー。ミラーマッチではお互いに刺さるように見える。
でも、出したほうは自分に有利な宣言をするはず。そう…握ってないカードや、先に出しておいたカード。
「ブロックワードをプレイするよっ指名は~」
「宣言待った!カットインします」
「んんっ?」
あたしは自信満々でそのカードを出す。
「部品ドロボウをハイマットに」
あたしはハイマットを指差してそのカードを表にする。
これで「ハイマットモード」宣言はなくなる。次に宣言するのは…なんだろ?
「でーは、それにカットイン。ハイマットにレイ・ザ・バレル!京子はハイマットを指定するのを読んだ気だったんでしょうが、残念。レイで移動しなくなるのよん」
「っ…」
「カットインがなければ、ブロックワードで部品ドロボウを宣言して安全にレイをセットする気だったし。すでにこっちのペースって訳ぇ♪」
あたしは短く舌打ちして、”未来”が「フリーダムガンダム(ハイマットモード)」と宣言するのを聞いた。
「戦闘フェイズ…宇宙にハイマット、地球にバックホームを出撃!ハンガーにはレイとハッキング?でも、気にしない」
勢い良く出撃してくる8点と4点。
たしかに有効ターンね。
…でも言ったはずよ。Gを出せただけであたしにとっては有効ターンだと!
つづく
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:
更新日:10.04.14
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*#93 あたしの最終戦!
2勝2敗で迎える最終5回戦―。
ホワイトボードで対戦する席を確認して、あたしは鼻歌交じりに向かう。
今度もコンボデッキってのはゴメンよ?ユニットで戦うのが、あたしの白デッキの持ち味なんだから。
「「あ」」
自分が座る椅子を引いたときに、対戦相手と目が合う。
…さっきぶつかっちゃった人だ!
「さっきはスミマセンでした」
あたしは相手が口を開く前に頭を下げた。
「いえいえ」
「よろしく、後藤田未来よ」とテーブル越しに手を差し出す相手さん。
あたしは「あたし、本田京子っていいます」と言って差し出された手を握った。
「それでは会場の皆さん、準備はいいですかー?」
MCの人がマイクを入れる。
5回戦って案外長かったよ…昼の騒動がずいぶん前に感じる。
「それでは最終5回戦、ガンダムウォー、レディィイ、ゴー!!」
MCの台詞と共に、参加者は手を上に突き出す。
これも5回目、そして最後。
「…先に謝っておきます」
「…はい?」
唐突に切り出す未来さん。
「私、対戦になるとちょっと強気なこと言っちゃうんです。だから…」
「あー大丈夫です」
あたしは「あたしもよくやっちゃいますから」と小声で言って苦笑した。
なーんだ。そんなことか。
見た目結構おとなしそうなのにね、この人。
「「よろしくお願いします」」
お互いに頭を下げて、じゃんけんっと…。
あたしは顔を上げて右手を出す。
「フッフッフッフッフッフッ…ハーッハッハッハッハッハッ!」
「え゛?」
あたしは急に笑い出した未来さんの顔を思わず凝視してしまう。
眼鏡を外したその顔は、さっきまでとは目つきが違う。なんていうか…。
「どうしたぁ?先番を決めるじゃんけんをしようじゃないの」
「あー…はい。じゃんけん、ぽん」
考えずに出したグーは、あたしに先攻をくれた。
『ちょっと強気』どころじゃないっしょ…。
バカ高いテンションの未来さんを面前に、あたしは手札をチェックして「やれます」と宣言する。
「この戦いは”アタシ”の勝ちだな!今、何の恐怖も感じない!」
高らかに宣言する未来さん。
うーんと…それはマリガンなしという解釈でOK…?
「配備フェイズ。白特殊G・歌姫の騎士団をプレイして、ターンを終了します」
「…白!奇遇だねぇ」
未来さんはそう言うと、ドローもそこそこに白基本Gを場に出した。
「ターン終了だよっ!」
「…白」
あたしはそうつぶやき、ターンをもらう。
ミラーマッチ?ここまできて。
でも…逆によかった。
あたしはこのゲーム、先攻なんだから!
「歌姫の騎士団で白基本Gを本国の下に送って、ターン終了」
「ドロー…白基本G」
未来さんはベチリと音を立ててGを場に出す。
「カガリ・ユラ・アスハ《19》を白基本Gにセット」
「カガリ…?」
「そうよっ、カガリ!なにか問題でも?」
あたしはテキストを思い出す。
PS装甲とは相性が悪いテキストだから…”そういう”デッキなのかな?
「ターンもらいます…ドロー。3コイン目を歌姫に、そしてこのカード!」
あたしは微笑んで、手札のカードを続ける。
「ガンダムアストレイ・アウトフレーム(バックホーム装備)」
「ハハッ、テンプレの動きだねぇ!」
テンプレ結構!
先攻が有利なのは、先にバックホーム出せて、先にハイマットで殴れて先に換装できるところ!
相手と同じ行動を相手より先にできるんだから、断然有利に決まってる。
「ターン終了です」
「ちょーと待った。帰還にカガリのテキストで、手札からバックホームを場に出し、カガリをセットするわっ!」
「え…?」
あたしはきょとんとして場に出たバックホームを見る。
そういう使い方か。
「ターンもらうわよん♪3枚目のGを配備。戦闘フェイズ!」
「っ…」
未来さんはバックホームを地球に出撃させる。
3枚目のGを今のターン配備したから、きちんとドローテキストも起動するんだ。
ハンガーに移ったのは白G2枚。
「先走ってドローした割には、Gしか引けてないみたいですけど?」
「いーのよ、手札にGないし。…それより、先攻さんのバックホームはずいぶんと足が遅いこと」
「いえいえ。あなたのバックホームが早いだけ”ですわ”♪」
あたしは内心少しイラつきながらも、本国を4枚捨て山に送る。
いいもん。まだ先にバックホームを使われただけだし。
「あたしのターン。4つ目のコインを歌姫に。そして戦闘フェイズ、デュエルガンダム《21》をプレイします」
奇襲性を殺してまで今プレイしなきゃいけないのは、カガリのせいだ!
バックホーム同士の相打ちならお互い2ドローで”めでたし”なんだけど…この状況じゃ一方的にあたしのバックホームが破壊されちゃうからね。
「デュエル、バックホームの順で地球に出撃します。ハンガーにはGとハッキング!」
「威勢がいいわねぇ~。6点は通すわ」
そう言いながら本国のカードを移す未来さんに、あたしはターン終了を告げる。
結局多少行動制限はされたけど、カガリがした仕事は2ドローの加速だけだったわね。
彼女の言うとおり手札にGがないなら結構な仕事だったんだろうけど、どうだか。
「ハンガーの白基本Gをプレイ。…バックホームを守る盾を用意しなくちゃあねぇ。イージスガンダム《21》!」
そう言って、未来さんはイージス、バックホームを地球に出撃した。ちょうどさっきのターンにあたしがしたように。
イージスは直接的な破壊テキストを持つユニット。だけどそれは自分をコストにして、だ。体のいい相打ちと考えれば、ここでデュエルとやってもらってかまわない。
「ハンガーにはブロックワードが移るわ」
あたしは確認したと合図して、自分の場に目をやる。
さっきのターンにバックホームで補給しておいた”あたしのデュエルガンダム”が悠然と立っている。
「デュエルガンダムを防御に出撃させます」
「でしょうね。イージスを野放しにすると、後続に自爆されるだけだもの」
「ですね」
「DEATHね。じゃあ遠慮なく、防御ステップにイージスはデュエルと共に自爆」
あたしはコクリと頷き、デュエルを破棄する。これでバックホームの4点は通し。
バックホームを守る盾にしては”よく切れる”盾だこと。
「ターン終了っ」
あたしはニッコリ笑って、ドローする。
なんだかんだ言って、5枚目のGは先にあたしが出すんだから♪
「ハンガーから白基本Gを…」
「カットイン。切り開く力ぁ!」
「うっ…」
あたしは言葉に詰まる。
そういえばそうね。『白は5Gから』そんなことみんな知ってる事だわ。
あたしは切り開きで6枚になる手札を見越して、ハンガーのハッキングを使うのをやめた。
出撃もナシだ。ハンガードローがないのにわざわざ殺されに行くこともない。つまり…
「ターン終了です」
「ミラーマッチでは有効ターン数がものを言う。デッキが一様になりやすい白では特にねっ!」
未来さんは妖艶な笑みを浮かべて、ドローする。
何よ、有効ターンって。Gを出せただけであたしにとっては有効ターンなんですけど?
「中東国の支援と白基本G。そしてフリーダムガンダム(ハイマットモード)!ヤーハァッ!アタシが先攻みたいじゃないか!」
高笑いで未来さんはハンガーのブロックワードに手をかける。
出すの?
ブロックワードの制限対象は全てのプレイヤー。ミラーマッチではお互いに刺さるように見える。
でも、出したほうは自分に有利な宣言をするはず。そう…握ってないカードや、先に出しておいたカード。
「ブロックワードをプレイするよっ指名は~」
「宣言待った!カットインします」
「んんっ?」
あたしは自信満々でそのカードを出す。
「部品ドロボウをハイマットに」
あたしはハイマットを指差してそのカードを表にする。
これで「ハイマットモード」宣言はなくなる。次に宣言するのは…なんだろ?
「でーは、それにカットイン。ハイマットにレイ・ザ・バレル!京子はハイマットを指定するのを読んだ気だったんでしょうが、残念。レイで移動しなくなるのよん」
「っ…」
「カットインがなければ、ブロックワードで部品ドロボウを宣言して安全にレイをセットする気だったし。すでにこっちのペースって訳ぇ♪」
あたしは短く舌打ちして、”未来”が「フリーダムガンダム(ハイマットモード)」と宣言するのを聞いた。
「戦闘フェイズ…宇宙にハイマット、地球にバックホームを出撃!ハンガーにはレイとハッキング?でも、気にしない」
勢い良く出撃してくる8点と4点。
たしかに有効ターンね。
…でも言ったはずよ。Gを出せただけであたしにとっては有効ターンだと!
つづく
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.07.31
更新日:10.04.14
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