※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「M9」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

M9」の最新版変更点

追加された行はこの色になります。

削除された行はこの色になります。

 今にも雨が降りそうな雲の下、3人は姉さんの家に向かって歩みを進めていた。 
 ミキオとタンサンが昨日のテレビ番組『金曜映画劇場』の話題で盛り上がり、その後に白いヘッドホンをしたナツキが続くといったふうだ。
 
 「道わかるの…?」
 
 迷う様子もなく肉屋の角を曲がったミキオを見て、ナツキがふとそう聞いた。 
 ミキオは今更か、という表情で振り返り「姉さんの家行ったことあるしな」と返す。 
 ナツキは納得した表情になるが、すぐにギョッとする。
 
 「うわー不潔ー!」
 
 そう言いながらミキオの背中をばしばし叩いた。 
 タンサンも調子に乗って「ミキオちゃん不潔ー」と続ける。
 
 「うっせー!弟子なんだからいいじゃねーか」
 
 ミキオは2人の罵声から逃れるように早歩きになった。
 
 
-*第3話 突入!あたしんち 
+*第3(9)話 突入!あたしんち 
 
 
 「ここだぜ」
 
 ミキオは灰色のアパートを見上げてそう言った。 
 『~A棟』とあったが、まわりにB棟なる建物は見当たらなかった。
 
 「なんか庶民っぽいわね」
 
 ナツキは階段を昇りながら、品定めするように言う。 
 白いヘッドホンは、すでに首に下ろしていた。
 
 「おめーどこの貴族だよ」
 
 先頭を歩いていたミキオが、2階の右側の部屋で止まる。 
 扉の横には『本田』と書かれたプラスチックの表札があった。
 
 「本田って苗字なんだだ。案外フツーね」 
 「姉さんにイチャモンつけねーと気が済まないのかよ…」
 
 呆れ顔でミキオはインターホンを押す。 
 壁を隔てた向こう側でピンポーンと小さい音が聞こえた。
 
 パタパタと足音がドアの前迫ってきて、止まる。 
 覗き穴からこちらを見たのであろう数秒の間を空けて、鍵がガチャリと開いた。
 
 「いらっしゃい」
 
 ドアを開けたのは黒茶色の髪の女性、姉さんだ。 
 靴を脱ぎながら「お邪魔します」というタンサンの後ろで、ナツキがぽかんとする。
 
 「え…あんたウチのガッコだったの?」
 
 姉さんの格好は、上が白いプリントTシャツで、下は白いラインと府釜高校のマークが入った紺色のハーフパンツ。 
 そのハーフパンツは、ナツキも数日前に購入したばかりだった。
 
 「言ってなかったか?」
 
 ミキオは頭をかいて「卒業したばっかだぜ」と続けた。
 
 「あれ?フガコウに決まったんだ、進路」 
 「オレたち3人ともね」
 
 ミキオがそう言った後に、「おれっちはかなりギリギリだったけどな!」とタンサンが無駄に偉そうにに付け加えた。
 
 フガコウ…府釜高校は府釜市の山沿いにある高校だ。 
 普通科6クラスの男女共学校で、レベルは中の下くらいだったがそれなりに人気があった。
 
 最初にここを受験すると決めたのはミキオだった。 
 それを追うようにナツキが、そして「じゃあおれっちも」とタンサンが受験し、見事に3人とも合格。春から通うことになっていた。
 
 「どうぞどうぞ」
 
 と言って姉さんは3人を部屋に通す。
 
 彼女の部屋は、中央に折りたたみ式のテーブル、壁に隣接するように木製のタンスと本棚が配置されていた。 
 急いで片付けたのか、部屋の隅に雑誌が山になっていた。
 
 「うちの高校あんまり厳しくないけど、その髪の色どうよ?」
 
 扉を閉めた姉さんがミキオの金髪を指して言った。 
 いつの間にか手にはおぼんを持っており、お茶の入ったグラスが4つ載っていた。
 
 「指導の先生と対決してやりますよ」
 
 姉さんは「そ」と言って、おぼんをテーブルの上に置いた。
 
 「さてと、本題ね。こっちで余ってたプレスタのハーフは、青2つと黒1つなんだけど…どうする?」
 
 ガンダムTR-6[ウーンドウォート・ラー]とフルアーマーガンダムMk-2をそれぞれ表にした束がテーブルに出される。
 
 「じゃあその青セット2つ貰ってあげる」
 
 ナツキが「はい、白セット」といいながら荷物からカードを取り出す。 
 これで青セットが3つ。十分な枚数のカードが揃った。 ウチの色は青で決定だね。 
 ナツキはそう考えて少しほっとした。少なくとも白デッキを使わずにすむのだから。
 
 「そうだ、これもあげるわ」
 
 と姉さんはおもむろにデッキケースを渡した。 
 ナツキがケースからカードを取り出し、ぱらぱらと確認する。それを横から覗くミキオ。 
 政治特権に急ごしらえ…基礎カードばかりだった。
 
 「姉さん、これ…」 
 「タケシのとこから持ってきといたから、使って」
 
 タケシ先輩のところから”搾取”してきたのか…とミキオは苦笑した。 
 聞きなれない名前に首をかしげているナツキに、タンサンが「タケシってのは姉さんの幼馴染でカレシ」と小さい声で補足した。
 
 「でも、姉さん…いいっすよ、こんなにあげたらこいつ自分で集める気なくしますし」
 
 ミキオはカードを全部見終わる前にナツキからデッキケースごと取り上げて、テーブルの上に戻す。 
 戻されたデッキケースを見つめ、姉さんは納得したように「ちゃんと彼女のこと考えてあげてんだ」と言った。 
 ミキオからすれば「タケシ先輩に申し訳ねぇな」くらいの気持ちだったのだが、姉さんの言った「彼女」が気になった。
 
 「いや、カノジョじゃ…」 
 「お似合いよ?」
 
 姉さんはクスクスと笑って「でも、あげる」とデッキケースを再びナツキに渡す。 
 ぽんと手渡されたデッキケースを、今度はしげしげと見つめるナツキ。 
 素直に「ありがとう」と言いそうになったが、言葉を飲み込んで顔を上げる。
 
 「あんたに言われなくても、ウチとミキオはお似合いなんだってば!」 
 「ちょっとまて!オレは姉さんのおっぱいのが…」 
 「うがー!ミキオのばかー!!」 
 「そうだぜミキオちゃん、おっぱいのおっきい女はバカって言うだろ?」
 
 3人が口々に言う。 
 それを見ながら、姉さんはお茶を飲み「夕飯は何を作ろうか」などと考えていた。
 
 「こうなったら、どっちが強いか決めればいいじゃんよ~!」
 
 あーだこーだ言い合った末、タンサンがそう言った。 
 部屋の中が静まり返る。
 
 「あたしと…ナツキちゃんで?」
 
 姉さんは意表を突かれて自分を指差す。
 
 「オレが両方のを揉んで決めるってのは?」 
 「っ…あんたが触りたいだけでしょ」
 
 鈍い音。 
 胸を揉むポーズをするミキオに、間髪入れずに姉さん鉄拳が飛ぶ。
 
 「ウチのはいつでも触っていいんだよ?」
 
 頭を抱えて痛がるミキオに、今度はナツキが上目使いでそう言い寄る。 
 胸を強調するようなポーズだったが、残念ながら強調するほどのバストサイズはなかった。
 
 「やっぱ、おめーのはいいや」 
 「うがー!!」
 
 タンサンは輪から離れ、本棚の漫画本を読みだした。 
 ミキオとナツキの問答にはもう慣れたといわんばかりの態度。
 
 姉さんはふうと息をついて、空になったグラスを下げてテーブルを拭く。
 
 「1回だけよ?」
 
 姉さんの言葉に、言い合いをしていた2人は顔を見合わせる。
 
 「今デッキ作るからまってなさいよ!」
 
 姉さんにキツイ視線を向けた後、すぐにミキオに向き直り「教えて☆」とウインクしてみせるナツキ。 
 ミキオのアドバイスを元に、姉さんから受け取った束とプレリュードスターターのカードからデッキを作ることになった。
 
 タンサンは3人に桃色の背表紙を向け、黙々と漫画を読み続けている。 
 姉さんは彼に、「少女マンガだけど、面白い?」と伺うように聞いた。
 
 「おれっち的にはこういうのもアリだね」 
 「ふぅん。あ、羽鳥にはこれがあったわ」
 
 姉さんは思い出したように『Shop Championship』の箔が押されたジンクス3(コーラサワー機)を3枚差し出す。 
 タンサンはあざっす、あざっす!と頭を振った。
 
 「やるわよ!」
 
 ナツキがカードの束を手にそう叫ぶ。 
 随分簡単に出来たんだな、と少し姉さんは心配になった。が、本人がそう言うのだからお節介はやめだと考え直し、「じゃあ、やりますか」と手首にしてあったゴムで髪を結った。
 
 ベランダに雨音が響く。どうやら降り始めたようだ。
 
 
 つづく
 
 ----
-[[前へ>M8]]/[[次へ>M10]]
+[[前へ>M8]] / [[第2期TOP>MIKIO2]] / [[次へ>M10]]
+----
+
+txt:Y256
+
+初出:mixi(10.03.04-05)
+掲載日:10.03.05
+更新日:10.04.01
+
 ----