「M37」(2010/06/08 (火) 23:33:24) の最新版変更点
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GT7都市地方予選大会[伊達大会]―。
「上位を目指す者」「景品狙いの者」「楽しむ者」…様々な思惑を持った200名余りのプレイヤーが、ここ伊達総合会館に集った。
私、佐木ハルキもその一人だ。
1回戦目の対戦組み合わせが発表され、支持された席に着き対戦相手を待つ。
現れた対戦相手は、私より少し年下の少年だ。赤いジャケットを羽織り、髪は金に染め上げられている。
少し柄が悪そうだが、まあいい。
「おねがいしまーす」
私は会釈をしてデッキをケースから取り出す。少年も「よっし、ガンバッか」とデッキを取り出す。
…運が悪かったですね。1回戦の相手が私とは。
相手のスコアシートには「栗田ミキオ」と名前があった。
*第31(37)話 バーサーカーさん
「シャイニングガンダムがリング!」
対戦相手…栗田はそう言って、プレイシートの「戦闘エリア」と書かれた場所にユニットを移動させた。
場のカードは、あちらは4枚のGにシャイニング、こちらは3枚のGにボルジャーノン。
しくじりましたね…。
手札にはノーベルガンダム(バーサーカーモード)とアレンビー・ビアズリー《23》が揃っているというのに、ボルジャーノンがいるせいでリングのハンデスを受けてしまいます。
こんなことなら、欲を張って攻撃せずに解体を宣言すべきでした。
「手札を廃棄…」
「これだ!」
栗田は私の手札からカードを1枚…綺麗にノーベルガンダムを廃棄した。
私は思わず唸る。
「なんだ、バーサーカーか」
栗田はつまらなそうにそう言いながら、ユニットを帰還させてターンを終了した。
なんですか?そのバーサーカーさんを馬鹿にした物言いはっ!
私はカードを引きながら、――手札を確認している――栗田を睨む。
「配備フェイズ、ボルジャーノンを解体」
私はデッキケースからコインを出し、ボルジャーノンに乗せた。
バーサーカーさんをバカにしていますが…今のMFデッキは、バーサーカーさん以外生き残れないと考えるのが普通。
君のデッキもシャイニング(笑)なんか採用してるじゃないですか。
「戦場の鈴音をプレイ…」
ハンデスで落とされなかった手札の4国力ドローカードをプレイする。ハンガーに2枚カードを引くことができる。
移ったカードは…破滅の終幕とノーベルガンダム(バーサーカーモード)ッ!!
私の引きキター!!見晒せ、我がMFの力ぁ!!
「バーサーカーさんを配備、さらに手札からアレンビー・ビアズリー《23》をセット」
「…いい引きしてるぜ」
次々と構築される私の場に、栗田はそれだけ言って再び手札に視線を落とす。
この一撃でゲームの流れは決まる!
「攻撃ステップ。バーサーカーさんをリングに出撃させます」
「防御は出ないぜ…まぁロール状態だしな」
「ハンデスで、このカードを落とします」
栗田の手札のカード…その一番端のカードを指定する。
表になったそれは、ガンダムシュピーゲル(シュツルム・ウント・ドランク)…おそらく次のターンに配備する予定だった主力だろう。
先ほどの報復です!ざまーみろ!
「ッ…本国に14点通しだ」
一気に捨て山と本国が同じくらいの枚数になりましたね…。
私はターンを終了した。
「ドロー…ギンガナム軍を配備して、戦闘フェイズ」
「いいでしょう。ですが、この状況では…」
「シャイニングがリング!」
私の言葉を聞き終わらないうちに、栗田はユニットを移動させた。
追加ユニットはなし。やはりシュピーゲルを落とされたのが痛手となったのでしょうね、ふふ…。
「防御は出ません。しかし、もはや場に成立したこのグループが全て…ハンデスなど何の意味も無い」
「…。ハンガーの破滅の終幕を指定。廃棄してくれ」
栗田は一瞬口元をゆるめ、ハンガーのカードを指定する。
さっきから表情の読めない子ですね…無愛想とは少し違うようですが、この「落ち着いた感じ」はすこし癇に障ります。
「3点通しますよ」
栗田はターンを終え、私はカードを引く。
本国への14ダメージが痛いわけが無い…こちらの猛攻に少しは驚きなさい!
「攻撃ステップ。バーサーカーさんをリングに出撃させます」
「シャイニングガンダムを、換装でゴッドガンダムに。防御に出撃だ」
栗田は用意していた手札のカードを動かし、すぐさまバーサーカーさんの向かい側に移動させた。
なるほど…ダメージを軽減しようと言うわけか。
このターン中にゲームを決めることはできませんね…まぁ、どの道あと1ターンあれば済む話。
もう相手が何を使おうが、この本国差は1ターンでは縮まりません。つまり、この勝ちは揺るがないということ!
なにせ、お互い茶単デッキ…対応力の低さでは知れた事。
「いや、オレはこのターン攻めるぜ!」
栗田は今度ははっきりと口元に笑みを浮かべ、宝物没収をプレイした。
手札にカードが2枚移る。…ん?
「配備フェイズ…共闘戦線を配備!」
「…え…はい」
なぁにぃ!?
私は内心悲鳴を上げた。
共闘戦線…手札をコストに、茶の指定国力を持つ敵軍ユニットを1ターン借りるオペレーション。
その手がありましたか…忘れていました。というか、持ってませんし。
「手札を切って、そっちのバーサーカー”さん”を借りるぜッ!」
私は一瞬固まるが、すぐに栗田にバーサーカーさんのセットグループを手渡す。
14点打点の矛先は今度は私の本国などと…くそ!
だ…だが、私の本国は幸いまだ枚数に余裕がある。本国さえあれば1撃で逆転は可能だ。
明鏡止水を引くか、身勝手な懇願でもいいぞ。
「いや、そこまで続かねぇよ。ゲームは」
「…?」
栗田は自分の配備エリアに移ったバーサーカーさんを見ながらそう言った。
内心を見透かされたようで気持ちが悪い。
「残り本国は?」
「20と…6枚です」
「よし、いける!出土品でジャンクヤードからウント・ドランクを回収し、プレイ!」
私は固まる。
茶単デッキではこれは防げない。
「ドモン・カッシュ《EB2》をセットして、戦闘フェイズ」
栗田はバーサーカーさんをリング、ウント・ドランクを地球に出撃させた。
14点と8点…本国はギリギリ残る。自然に時間を稼ぎ、時間切れを狙うか?いや、まだ時間は有り余って…。
「ダメージ判定ステップまで…いいか?」
「!」
私は栗田の自信満々の表情を見て絶句する。
このガキ…このチャンスを最大に生かせる手札を…?
ま…。
「ま…まさか明鏡止水”も”ですかぁ!?」
「YES!YES!YES!…明鏡止水!!これでウント・ドランクはさらに戦闘力が伸びる!」
頭の中で再び戦闘力の計算が行われる。
が、答えは出ない。出したくないぃー!
「おら、ぴったり26点だぜッ」
G以外のカードが無かった場から、わずか1アタックでだとぉー!?
私は、0になる予定の本国を手に取る気すら起きなかった。
「なかなかどうして…バーサーカーも悪くねぇな」
×××
ミキオはスコアシートを記入し、相手に確認してもらう。
1回戦の相手は”物静かな”青年。ミラーマッチは経験不足だが、それは相手も同じだったようでいい勝負ができた。
「お疲れ☆」
ナツキがテーブルの向こうから現れる。
跳ねるような足取りで来る彼女に、ミキオは「おぅ」と手を上げる。
「早いな。どうだった?」
「うん、相手が事故してくれた☆」
「してくれたってなぁ…まぁ結果オーライか。オレも勝ったぜ」
まずは1勝!
と、ミキオはデッキケースを手に立ち上がった。
つづく
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※この物語は架空のものであり、実在の人物・団体・地名等とは一切関係ありません。
Txt:Y256 初出:mixi(6月8日掲載分)
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GT7都市地方予選大会[伊達大会]―。
「上位を目指す者」「景品狙いの者」「楽しむ者」…様々な思惑を持った200名余りのプレイヤーが、ここ伊達総合会館に集った。
私、佐木ハルキもその一人だ。
1回戦目の対戦組み合わせが発表され、支持された席に着き対戦相手を待つ。
現れた対戦相手は、私より少し年下の少年だ。赤いジャケットを羽織り、髪は金に染め上げられている。
少し柄が悪そうだが、まあいい。
「おねがいしまーす」
私は会釈をしてデッキをケースから取り出す。少年も「よっし、ガンバッか」とデッキを取り出す。
…運が悪かったですね。1回戦の相手が私とは。
相手のスコアシートには「栗田ミキオ」と名前があった。
*第31(37)話 バーサーカーさん
「シャイニングガンダムがリング!」
対戦相手…栗田はそう言って、プレイシートの「戦闘エリア」と書かれた場所にユニットを移動させた。
場のカードは、あちらは4枚のGにシャイニング、こちらは3枚のGにボルジャーノン。
しくじりましたね…。
手札にはノーベルガンダム(バーサーカーモード)とアレンビー・ビアズリー《23》が揃っているというのに、ボルジャーノンがいるせいでリングのハンデスを受けてしまいます。
こんなことなら、欲を張って攻撃せずに解体を宣言すべきでした。
「手札を廃棄…」
「これだ!」
栗田は私の手札からカードを1枚…綺麗にノーベルガンダムを廃棄した。
私は思わず唸る。
「なんだ、バーサーカーか」
栗田はつまらなそうにそう言いながら、ユニットを帰還させてターンを終了した。
なんですか?そのバーサーカーさんを馬鹿にした物言いはっ!
私はカードを引きながら、――手札を確認している――栗田を睨む。
「配備フェイズ、ボルジャーノンを解体」
私はデッキケースからコインを出し、ボルジャーノンに乗せた。
バーサーカーさんをバカにしていますが…今のMFデッキは、バーサーカーさん以外生き残れないと考えるのが普通。
君のデッキもシャイニング(笑)なんか採用してるじゃないですか。
「戦場の鈴音をプレイ…」
ハンデスで落とされなかった手札の4国力ドローカードをプレイする。ハンガーに2枚カードを引くことができる。
移ったカードは…破滅の終幕とノーベルガンダム(バーサーカーモード)ッ!!
私の引きキター!!見晒せ、我がMFの力ぁ!!
「バーサーカーさんを配備、さらに手札からアレンビー・ビアズリー《23》をセット」
「…いい引きしてるぜ」
次々と構築される私の場に、栗田はそれだけ言って再び手札に視線を落とす。
この一撃でゲームの流れは決まる!
「攻撃ステップ。バーサーカーさんをリングに出撃させます」
「防御は出ないぜ…まぁロール状態だしな」
「ハンデスで、このカードを落とします」
栗田の手札のカード…その一番端のカードを指定する。
表になったそれは、ガンダムシュピーゲル(シュツルム・ウント・ドランク)…おそらく次のターンに配備する予定だった主力だろう。
先ほどの報復です!ざまーみろ!
「ッ…本国に14点通しだ」
一気に捨て山と本国が同じくらいの枚数になりましたね…。
私はターンを終了した。
「ドロー…ギンガナム軍を配備して、戦闘フェイズ」
「いいでしょう。ですが、この状況では…」
「シャイニングがリング!」
私の言葉を聞き終わらないうちに、栗田はユニットを移動させた。
追加ユニットはなし。やはりシュピーゲルを落とされたのが痛手となったのでしょうね、ふふ…。
「防御は出ません。しかし、もはや場に成立したこのグループが全て…ハンデスなど何の意味も無い」
「…。ハンガーの破滅の終幕を指定。廃棄してくれ」
栗田は一瞬口元をゆるめ、ハンガーのカードを指定する。
さっきから表情の読めない子ですね…無愛想とは少し違うようですが、この「落ち着いた感じ」はすこし癇に障ります。
「3点通しますよ」
栗田はターンを終え、私はカードを引く。
本国への14ダメージが痛いわけが無い…こちらの猛攻に少しは驚きなさい!
「攻撃ステップ。バーサーカーさんをリングに出撃させます」
「シャイニングガンダムを、換装でゴッドガンダムに。防御に出撃だ」
栗田は用意していた手札のカードを動かし、すぐさまバーサーカーさんの向かい側に移動させた。
なるほど…ダメージを軽減しようと言うわけか。
このターン中にゲームを決めることはできませんね…まぁ、どの道あと1ターンあれば済む話。
もう相手が何を使おうが、この本国差は1ターンでは縮まりません。つまり、この勝ちは揺るがないということ!
なにせ、お互い茶単デッキ…対応力の低さでは知れた事。
「いや、オレはこのターン攻めるぜ!」
栗田は今度ははっきりと口元に笑みを浮かべ、宝物没収をプレイした。
手札にカードが2枚移る。…ん?
「配備フェイズ…共闘戦線を配備!」
「…え…はい」
なぁにぃ!?
私は内心悲鳴を上げた。
共闘戦線…手札をコストに、茶の指定国力を持つ敵軍ユニットを1ターン借りるオペレーション。
その手がありましたか…忘れていました。というか、持ってませんし。
「手札を切って、そっちのバーサーカー”さん”を借りるぜッ!」
私は一瞬固まるが、すぐに栗田にバーサーカーさんのセットグループを手渡す。
14点打点の矛先は今度は私の本国などと…くそ!
だ…だが、私の本国は幸いまだ枚数に余裕がある。本国さえあれば1撃で逆転は可能だ。
明鏡止水を引くか、身勝手な懇願でもいいぞ。
「いや、そこまで続かねぇよ。ゲームは」
「…?」
栗田は自分の配備エリアに移ったバーサーカーさんを見ながらそう言った。
内心を見透かされたようで気持ちが悪い。
「残り本国は?」
「20と…6枚です」
「よし、いける!出土品でジャンクヤードからウント・ドランクを回収し、プレイ!」
私は固まる。
茶単デッキではこれは防げない。
「ドモン・カッシュ《EB2》をセットして、戦闘フェイズ」
栗田はバーサーカーさんをリング、ウント・ドランクを地球に出撃させた。
14点と8点…本国はギリギリ残る。自然に時間を稼ぎ、時間切れを狙うか?いや、まだ時間は有り余って…。
「ダメージ判定ステップまで…いいか?」
「!」
私は栗田の自信満々の表情を見て絶句する。
このガキ…このチャンスを最大に生かせる手札を…?
ま…。
「ま…まさか明鏡止水”も”ですかぁ!?」
「YES!YES!YES!…明鏡止水!!これでウント・ドランクはさらに戦闘力が伸びる!」
頭の中で再び戦闘力の計算が行われる。
が、答えは出ない。出したくないぃー!
「おら、ぴったり26点だぜッ」
G以外のカードが無かった場から、わずか1アタックでだとぉー!?
私は、0になる予定の本国を手に取る気すら起きなかった。
「なかなかどうして…バーサーカーも悪くねぇな」
×××
ミキオはスコアシートを記入し、相手に確認してもらう。
1回戦の相手は”物静かな”青年。ミラーマッチは経験不足だが、それは相手も同じだったようでいい勝負ができた。
「お疲れ☆」
ナツキがテーブルの向こうから現れる。
跳ねるような足取りで来る彼女に、ミキオは「おぅ」と手を上げる。
「早いな。どうだった?」
「うん、相手が事故してくれた☆」
「してくれたってなぁ…まぁ結果オーライか。オレも勝ったぜ」
まずは1勝!
と、ミキオはデッキケースを手に立ち上がった。
つづく
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txt:Y256
初出:mixi(10.06.08)
掲載日:10.06.08
更新日:10.06.08
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