「M40」(2010/06/17 (木) 22:23:19) の最新版変更点
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「ウチの負けだね」
「君がガンダムだからかな」
名称に『ガンダム』が付いているカードを使っているようでは、私には勝てない。
そう言うかのように笑い、ハタドーはカードを片付け始めた。
「ガンダムウォーってゲームなんだから、ガンダム使って当然じゃん」
なによ、とナツキは変な目でハタドーを見ながらスコアシートを差し出す。
隣の席で対戦していた谷本も、ナツキたちより少し前に決着が付いたようで、スコアシートに結果を書き込んでいた。
「勝った?」
デッキケースにカードを入れたナツキは、谷本にそう聞く。
自分の対戦に集中していたため、谷本の場は一度も確認していなかった。
「負けたよ。射勢ちゃんも…負け?」
ナツキの少し気落ちした雰囲気から察したのだろう、谷本はそう言い「相手があのミスター・ハタドーなら仕方ないか」と慰めた。
谷本の言葉が引っかかったナツキは「”あの”って?」と彼の顔を見る。
「ほぼ毎回入賞してるんだよ。あの人は」
「ふーん。あの鉢巻君にしろハタドーにしろ、人は見かけによらないってことだね☆」
「だから声が大きいって」
*第34(40)話 正午過ぎ
2回戦終了がアナウンスされたのは、それから少ししてのことだった。
ここから3回戦開始までの時間は昼休みとなる。
昼飯を食べる暇も惜しんでガンスリンガーに並ぶ者、この期を逃さずトレードに勤しむ者。
それらを横目に、ナツキは会場を出る。
3人は入り口の脇にある『GT地方予選大会』と書かれた看板の横で待ち合わせていたのだった。
「お待たせ~☆」
看板の脇で待っていた2人に駆け寄るナツキ。
それに気付いたタンサンは「おっす」と手を上げたが、ミキオは彼女に気付いていない様子で男と話をしている。
白いYシャツに黒いスーツを着て、短めに切りそろえた髪の毛をした男だ。
「トレード?」
「いや、なんか人探しらしい」
覗き込むようにミキオと男のほうを見ながら聞くナツキに、タンサンはそう答える。
なんだそれ。という顔のナツキに、彼は「わざわざ写真まで見せてさ」とも付け加えた。
男はミキオから少し話を聞くと、会場内へと歩いていった。
「お昼にしようよ!お昼☆」
12時過ぎを指す短針を見ながら「どこで食べる?」と2人の顔を見るタンサン。
伊達駅前だけあって、近くにはファーストフード店が点在している。
「そうだ!あそこ行こうよ、花京院に新しくできたやつ」
ナツキは思い出したようにそう言うと、訳も無くミキオの手をとった。
駅を挟んで反対側にある店を提案する彼女に、ミキオは「時間内に帰ってこれなくなるのが目に見えてるから無理」と諭した。
結局、路地を一本入った大手牛丼チェーン店に決めた。
「そう言えば、真理さんは?」
カウンターの席に座り注文を終えたところで、タンサンが「あ」と口にする。
朝会場まで送ってもらってから、ミキオもタンサンも彼女の姿を見ていない。
「家の仕事もあるから、地方予選にはエントリーしなかったって。午前中だけガンスリンガーに出てみるって言ってた~」
ナツキは箸を割りながらそう言った。
真理さんも大変だな。と頷くミキオに「あ、帰りはちゃんと迎えに来てくれるって」とウインクするナツキ。
そこで注文の品が出てくる。
カレーライスと味噌汁と生卵が付いた牛丼が――大盛りと並盛りの――二つ。
ミキオは早速卵を割り、箸で混ぜる
「えー!ミキオ白身いれるんだ…」
ナツキがぎょっとする。
なぜか拒否反応を示す彼女に、「当たり前だろ」と眉をひそめるミキオ。
「白身って『デュル』ってなるじゃん」
「その擬音はやめろよ。キモイ」
「だってそうじゃん」とナツキは言い、自分の卵を割る。
器用に殻の中に白身だけが残るよに割り、黄身だけを小皿に出した。
「上手いな…でも白身ないとベタベタしね?」
「しないもん」
そう言って箸で混ぜるナツキ。
言い合う2人の横で、タンサンが「どっちが正解って訳でもないっしょ」と言った。
「卵で思い出したんだけど、『TKG』って略し方おかしいよね」
麦茶が入ったコップをテーブルに置き、タンサンはそう言った。
ナツキが手を止め、「なにそれ?」と彼を見る。
「Tamago Kake Gohanの頭文字だろ。前にどっかで見た」
ミキオは箸を動かしながらそう言った。
×××
伊達総合会館に戻った3人は、開始時間まで会場内を見て回ることにした。
新製品のポスターを見ながら「次もMFのアドバンスレアきたー!」とか言うミキオ。
その時、進行役が出てきてマイクのスイッチを入れる。
「シード権選手の入場です。拍手でお迎えください!」
不意に会場内にかかっていた曲がガラリと変わり、入り口から20余名のプレイヤーが列を成して入場してくる。
ショップでの活躍が認められたプレイヤーたち。ミキオはそれを見据え、グッと拳を握った。
「ショップでの成績がどうだってんだ。端からブッ倒してやるぜ!!」
シード権選手の入場が終わったところで、3回戦の対戦組み合わせが貼り出される。
参加者が増えたため、組み合わせ表の紙が午前中より1枚多い。
「1勝1敗のおれっちはこの回、シード権選手と当たらないだろうからマッタリやるよ~」
「あぁ、負けんなよ」
ミキオの台詞に二つ言葉で返し、タンサンはデッキケースを片手に指定されたテーブルに向かう。
並べられた机郡の真ん中あたりの席だ。
ここまで2戦。1回戦はボロ負けで、2回戦は辛勝。本番に限って調子は良くない。
でも、おれっちだって今日のためにやれることはやってきた。
タンサンはデッキケースを握りなおし、椅子を引いた。
つづく
「ウチの負けだね」
「君がガンダムだからかな」
名称に『ガンダム』が付いているカードを使っているようでは、私には勝てない。
そう言うかのように笑い、ハタドーはカードを片付け始めた。
「ガンダムウォーってゲームなんだから、ガンダム使って当然じゃん」
なによ、とナツキは変な目でハタドーを見ながらスコアシートを差し出す。
隣の席で対戦していた谷本も、ナツキたちより少し前に決着が付いたようで、スコアシートに結果を書き込んでいた。
「勝った?」
デッキケースにカードを入れたナツキは、谷本にそう聞く。
自分の対戦に集中していたため、谷本の場は一度も確認していなかった。
「負けたよ。射勢ちゃんも…負け?」
ナツキの少し気落ちした雰囲気から察したのだろう、谷本はそう言い「相手があのミスター・ハタドーなら仕方ないか」と慰めた。
谷本の言葉が引っかかったナツキは「”あの”って?」と彼の顔を見る。
「ほぼ毎回入賞してるんだよ。あの人は」
「ふーん。あの鉢巻君にしろハタドーにしろ、人は見かけによらないってことだね☆」
「だから声が大きいって」
*第34(40)話 正午過ぎ
2回戦終了がアナウンスされたのは、それから少ししてのことだった。
ここから3回戦開始までの時間は昼休みとなる。
昼飯を食べる暇も惜しんでガンスリンガーに並ぶ者、この期を逃さずトレードに勤しむ者。
それらを横目に、ナツキは会場を出る。
3人は入り口の脇にある『GT地方予選大会』と書かれた看板の横で待ち合わせていたのだった。
「お待たせ~☆」
看板の脇で待っていた2人に駆け寄るナツキ。
それに気付いたタンサンは「おっす」と手を上げたが、ミキオは彼女に気付いていない様子で男と話をしている。
白いYシャツに黒いスーツを着て、短めに切りそろえた髪の毛をした男だ。
「トレード?」
「いや、なんか人探しらしい」
覗き込むようにミキオと男のほうを見ながら聞くナツキに、タンサンはそう答える。
なんだそれ。という顔のナツキに、彼は「わざわざ写真まで見せてさ」とも付け加えた。
男はミキオから少し話を聞くと、会場内へと歩いていった。
「お昼にしようよ!お昼☆」
12時過ぎを指す短針を見ながら「どこで食べる?」と2人の顔を見るタンサン。
伊達駅前だけあって、近くにはファーストフード店が点在している。
「そうだ!あそこ行こうよ、花京院に新しくできたやつ」
ナツキは思い出したようにそう言うと、訳も無くミキオの手をとった。
駅を挟んで反対側にある店を提案する彼女に、ミキオは「時間内に帰ってこれなくなるのが目に見えてるから無理」と諭した。
結局、路地を一本入った大手牛丼チェーン店に決めた。
「そう言えば、真理さんは?」
カウンターの席に座り注文を終えたところで、タンサンが「あ」と口にする。
朝会場まで送ってもらってから、ミキオもタンサンも彼女の姿を見ていない。
「家の仕事もあるから、地方予選にはエントリーしなかったって。午前中だけガンスリンガーに出てみるって言ってた~」
ナツキは箸を割りながらそう言った。
真理さんも大変だな。と頷くミキオに「あ、帰りはちゃんと迎えに来てくれるって」とウインクするナツキ。
そこで注文の品が出てくる。
カレーライスと味噌汁と生卵が付いた牛丼が――大盛りと並盛りの――二つ。
ミキオは早速卵を割り、箸で混ぜる
「えー!ミキオ白身いれるんだ…」
ナツキがぎょっとする。
なぜか拒否反応を示す彼女に、「当たり前だろ」と眉をひそめるミキオ。
「白身って『デュル』ってなるじゃん」
「その擬音はやめろよ。キモイ」
「だってそうじゃん」とナツキは言い、自分の卵を割る。
器用に殻の中に白身だけが残るよに割り、黄身だけを小皿に出した。
「上手いな…でも白身ないとベタベタしね?」
「しないもん」
そう言って箸で混ぜるナツキ。
言い合う2人の横で、タンサンが「どっちが正解って訳でもないっしょ」と言った。
「卵で思い出したんだけど、『TKG』って略し方おかしいよね」
麦茶が入ったコップをテーブルに置き、タンサンはそう言った。
ナツキが手を止め、「なにそれ?」と彼を見る。
「Tamago Kake Gohanの頭文字だろ。前にどっかで見た」
ミキオは箸を動かしながらそう言った。
×××
伊達総合会館に戻った3人は、開始時間まで会場内を見て回ることにした。
新製品のポスターを見ながら「次もMFのアドバンスレアきたー!」とか言うミキオ。
その時、進行役が出てきてマイクのスイッチを入れる。
「シード権選手の入場です。拍手でお迎えください!」
不意に会場内にかかっていた曲がガラリと変わり、入り口から20余名のプレイヤーが列を成して入場してくる。
ショップでの活躍が認められたプレイヤーたち。ミキオはそれを見据え、グッと拳を握った。
「ショップでの成績がどうだってんだ。端からブッ倒してやるぜ!!」
シード権選手の入場が終わったところで、3回戦の対戦組み合わせが貼り出される。
参加者が増えたため、組み合わせ表の紙が午前中より1枚多い。
「1勝1敗のおれっちはこの回、シード権選手と当たらないだろうからマッタリやるよ~」
「あぁ、負けんなよ」
ミキオの台詞に二つ言葉で返し、タンサンはデッキケースを片手に指定されたテーブルに向かう。
並べられた机郡の真ん中あたりの席だ。
ここまで2戦。1回戦はボロ負けで、2回戦は辛勝。本番に限って調子は良くない。
でも、おれっちだって今日のためにやれることはやってきた。
タンサンはデッキケースを握りなおし、椅子を引いた。
つづく
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txt:Y256
初出:mixi(10.06.17)
掲載日:10.06.17
更新日:10.06.17
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