「M54」(2010/08/01 (日) 10:30:30) の最新版変更点
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僅か数秒の出来事に、晴田 員は絶句する。
彼の向かい側に座った対戦相手の少女が、黙って、ゆっくりと、まばたきをすると…次の瞬間に彼女の黒い瞳には、先ほどまでは無かった”勝利の可能性”が灯っていたのだ。
「ウチは、あんたなんかよりずっとずーっと強い白プレイヤーを知ってる。だから、あんたなんかに負けてらんない!」
ナツキは手札のカードを1枚抜き出しながらそう思う。
完全に表になるまで、晴田にはそのカードが何なのか全く解らなかった。
その実体は青のカード…。
「ユニコーンガンダムに…NT-Dっ!!」
強力なレアなどではない。
しかし、力強い1枚…NT-Dのカード。
「なん…だと?」
*第48(54)話 ナツキの戦い方
長い髪を弄る晴田の指が止まる。
NT-Dはニュータイプであるキャラクターがいることを条件にプレイできるコマンドカードで、ユニット1枚に+3/+3/+3の戦闘修正と速攻、強襲を与える効果。
シーブックはプレイの条件だけではなく、アルヴァトーレの効果を受けることなく強化されたユニットをそのまま交戦に活かす役割も果たしていた。
「ディアゴのほうに防御っ!」
アカツキ(オオワシ装備)の効果で与えられたダメージを無視し、ナツキはユニコーンを移す。
効果への高い耐性を持つアカツキシリーズのユニットであっても、速攻9打点の攻撃を防ぐ手立ては無い。
「ふ…ん、ダメージ判定ステップでいいだろう」
ディアゴはアカツキ共々ジャンクヤードに移り、宇宙の部隊…ガンダムMk-II(エル機)とアルヴァトーレの攻撃だけが通った。
ナツキの反撃を予感させる攻勢。
しかし、攻撃の勢いに反して、彼女の本国はこの一撃で数枚まで減る。無くなるよりはマシだが、その枚数はほんの僅かだ。
「ウチのターン!」
ナツキの細い指がカードを引く。
まず起動したのは、ホワイトベース隊の効果。
これで彼女は、――1回ごとに資源のかかる――アンマンに頼らない安定した5国力をようやく手にすることとなった。
「抱擁をプレイするよ☆」
「許可」
「15枚回復ー」
ナツキはぺちぺちと本国を増やす。その枚数は18。
「ユニコーンガンダムを宇宙に出撃させるよ」
「6ダメージだ」
「ターン、エンド」
ディアゴが無い相手には、一回の攻撃で18枚の本国を削りきる余力がある訳ない。
ナツキはユニットを帰還させながら、そう高をくくる。
「ドロー!…小娘ぇ!私が”最初にパックをまわすことの出来る者”になるぞっ!!」
引いたカードを見るなり、晴田は小さく笑ってナツキに向き直る。
表にされたカードは、白勢力のユニットだったが何か異質な雰囲気を持ったカードだ。
「ナイトガンダムっ!」
一見、3/1/3という戦闘力で評価してしまいそうになるカード。
だが、その真価は…ユニットの枚数だけ戦闘修正を”ばら撒く”テキストにある。
そう言う意味ではディアゴよりも危険なカードなのだ。
「つまり、3枚のユニットで容易に18ダメージが出せる!」
「…ここだね☆カットイン!」
ナツキは『戦闘配備』の文字を目でなぞり、手札のカードと見比べる。
真理のようなカウンターカードは無い。だから、フルアーマーガンダムMk-IIやパワーハラスメント…そしてこのカードで相手を邪魔する。自分の勢いを殺させないために。
それが彼女の戦い方。
「タイムラグ」
このカードは、プレイされた敵軍ユニットを強制的にロール状態で場に出すコマンドカード。
場に出たときに起動する効果を不発させられる他、戦闘配備を阻害する効果だ。
「これでウチはこのターン死なないハズ」
「何ィ!?うおお…アルヴァトーレだけが攻撃だ!」
ガンダムMk-IIを配備エリアに残し、出撃するアルヴァトーレ。
ナツキは回復したばかりの本国を手に取った。
「ターン終了だ」
「厳しいね。ドロー…」
手札に加わったのは、場にあるのと同じカード。しかし、それは待ち望んだカードと同等の意味を持つカードでもある。
ナツキはそれを手札には加えない。配備フェイズを告げながら、ナツキは捨て山を見た。
「2枚目のユニコーンガンダム!」
箱を探すために彼女が手に取ったのは、もちろん捨て山。
探していたカードは、捨て山の一番下にあった。どうやら、相手の最初の一撃ではなく自分で支払った資源で落ちてしまっていたらしい。
ナツキは苦笑いしながらも、そのカードを箱としてセットする。
「戦闘フェイズ、お待ちかねっ!デストロイモード!!」
換装でシーブックがセットされていたユニコーンガンダムが換わる。
防御に残っていたガンダムMk-IIが、予定通り破壊された。
「ターン、エンド」
「ナイトガンダムが起動すればまだ追いつける本国差!」
晴田はカードを手札に加えナイトガンダムを手に取る。
「攻撃前に粒子コインを補充し出撃!ユニコーンとアンマンを始末する」
「シーブックのデストロイモードを換装。箱は捨て山からね☆」
無防備なユニット2枚が、移された粒子コインの修正で破壊される。
相手の部隊はナイトガンダムを擁するため、一撃でナツキの本国を0にすることが出来るダメージを出すことが可能だ。
「ユニコーンガンダムの換装が起動した今、打点だけのその攻撃はもう通らない。箱…勇猛果敢をプレイ!」
アルヴァトーレのカードを指差すナツキ。
ハタドーとの戦いでも見せた移動カードとの組み合わせに、晴田の部隊が崩れる。
「カットインでナイトガンダムのテキストを使用…しない」
「シーブックのユニコーンで防御!」
ナイトガンダムはカットインでテキストを使ってもシーブックのユニコーンガンダムとは勝負にならない。
晴田は諦めたようにダメージ判定ステップ規定を宣言した。
ユニコーンガンダムが帰還し、ナツキにターンがまわる。
「デストロイモードを攻撃に!」
―その攻撃はもう通らない。
彼女の言葉通り、その後ナツキが晴田の本国を0にするまで、晴田の攻撃が通ることは無かった。
「お見事でした姫様」
黙って対戦を見届けた真理は、そこでナツキに声をかける。
いつもは感情を殺したような表情をしている彼女だったが、このときばかりは口元が緩んでいた。
「あ、真理ー!見ててくれたんだ!」
彼女の顔を見るなり、ナツキはぱっと笑った。
つづく
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※この物語は架空のものであり、実在の人物・団体・地名等とは一切関係ありません。
Txt:Y256 初出:mixi(7月29日掲載分)
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僅か数秒の出来事に、晴田 員は絶句する。
彼の向かい側に座った対戦相手の少女が、黙って、ゆっくりと、まばたきをすると…次の瞬間に彼女の黒い瞳には、先ほどまでは無かった”勝利の可能性”が灯っていたのだ。
「ウチは、あんたなんかよりずっとずーっと強い白プレイヤーを知ってる。だから、あんたなんかに負けてらんない!」
ナツキは手札のカードを1枚抜き出しながらそう思う。
完全に表になるまで、晴田にはそのカードが何なのか全く解らなかった。
その実体は青のカード…。
「ユニコーンガンダムに…NT-Dっ!!」
強力なレアなどではない。
しかし、力強い1枚…NT-Dのカード。
「なん…だと?」
*第48(54)話 ナツキの戦い方
長い髪を弄る晴田の指が止まる。
NT-Dはニュータイプであるキャラクターがいることを条件にプレイできるコマンドカードで、ユニット1枚に+3/+3/+3の戦闘修正と速攻、強襲を与える効果。
シーブックはプレイの条件だけではなく、アルヴァトーレの効果を受けることなく強化されたユニットをそのまま交戦に活かす役割も果たしていた。
「ディアゴのほうに防御っ!」
アカツキ(オオワシ装備)の効果で与えられたダメージを無視し、ナツキはユニコーンを移す。
効果への高い耐性を持つアカツキシリーズのユニットであっても、速攻9打点の攻撃を防ぐ手立ては無い。
「ふ…ん、ダメージ判定ステップでいいだろう」
ディアゴはアカツキ共々ジャンクヤードに移り、宇宙の部隊…ガンダムMk-II(エル機)とアルヴァトーレの攻撃だけが通った。
ナツキの反撃を予感させる攻勢。
しかし、攻撃の勢いに反して、彼女の本国はこの一撃で数枚まで減る。無くなるよりはマシだが、その枚数はほんの僅かだ。
「ウチのターン!」
ナツキの細い指がカードを引く。
まず起動したのは、ホワイトベース隊の効果。
これで彼女は、――1回ごとに資源のかかる――アンマンに頼らない安定した5国力をようやく手にすることとなった。
「抱擁をプレイするよ☆」
「許可」
「15枚回復ー」
ナツキはぺちぺちと本国を増やす。その枚数は18。
「ユニコーンガンダムを宇宙に出撃させるよ」
「6ダメージだ」
「ターン、エンド」
ディアゴが無い相手には、一回の攻撃で18枚の本国を削りきる余力がある訳ない。
ナツキはユニットを帰還させながら、そう高をくくる。
「ドロー!…小娘ぇ!私が”最初にパックをまわすことの出来る者”になるぞっ!!」
引いたカードを見るなり、晴田は小さく笑ってナツキに向き直る。
表にされたカードは、白勢力のユニットだったが何か異質な雰囲気を持ったカードだ。
「ナイトガンダムっ!」
一見、3/1/3という戦闘力で評価してしまいそうになるカード。
だが、その真価は…ユニットの枚数だけ戦闘修正を”ばら撒く”テキストにある。
そう言う意味ではディアゴよりも危険なカードなのだ。
「つまり、3枚のユニットで容易に18ダメージが出せる!」
「…ここだね☆カットイン!」
ナツキは『戦闘配備』の文字を目でなぞり、手札のカードと見比べる。
真理のようなカウンターカードは無い。だから、フルアーマーガンダムMk-IIやパワーハラスメント…そしてこのカードで相手を邪魔する。自分の勢いを殺させないために。
それが彼女の戦い方。
「タイムラグ」
このカードは、プレイされた敵軍ユニットを強制的にロール状態で場に出すコマンドカード。
場に出たときに起動する効果を不発させられる他、戦闘配備を阻害する効果だ。
「これでウチはこのターン死なないハズ」
「何ィ!?うおお…アルヴァトーレだけが攻撃だ!」
ガンダムMk-IIを配備エリアに残し、出撃するアルヴァトーレ。
ナツキは回復したばかりの本国を手に取った。
「ターン終了だ」
「厳しいね。ドロー…」
手札に加わったのは、場にあるのと同じカード。しかし、それは待ち望んだカードと同等の意味を持つカードでもある。
ナツキはそれを手札には加えない。配備フェイズを告げながら、ナツキは捨て山を見た。
「2枚目のユニコーンガンダム!」
箱を探すために彼女が手に取ったのは、もちろん捨て山。
探していたカードは、捨て山の一番下にあった。どうやら、相手の最初の一撃ではなく自分で支払った資源で落ちてしまっていたらしい。
ナツキは苦笑いしながらも、そのカードを箱としてセットする。
「戦闘フェイズ、お待ちかねっ!デストロイモード!!」
換装でシーブックがセットされていたユニコーンガンダムが換わる。
防御に残っていたガンダムMk-IIが、予定通り破壊された。
「ターン、エンド」
「ナイトガンダムが起動すればまだ追いつける本国差!」
晴田はカードを手札に加えナイトガンダムを手に取る。
「攻撃前に粒子コインを補充し出撃!ユニコーンとアンマンを始末する」
「シーブックのデストロイモードを換装。箱は捨て山からね☆」
無防備なユニット2枚が、移された粒子コインの修正で破壊される。
相手の部隊はナイトガンダムを擁するため、一撃でナツキの本国を0にすることが出来るダメージを出すことが可能だ。
「ユニコーンガンダムの換装が起動した今、打点だけのその攻撃はもう通らない。箱…勇猛果敢をプレイ!」
アルヴァトーレのカードを指差すナツキ。
ハタドーとの戦いでも見せた移動カードとの組み合わせに、晴田の部隊が崩れる。
「カットインでナイトガンダムのテキストを使用…しない」
「シーブックのユニコーンで防御!」
ナイトガンダムはカットインでテキストを使ってもシーブックのユニコーンガンダムとは勝負にならない。
晴田は諦めたようにダメージ判定ステップ規定を宣言した。
ユニコーンガンダムが帰還し、ナツキにターンがまわる。
「デストロイモードを攻撃に!」
―その攻撃はもう通らない。
彼女の言葉通り、その後ナツキが晴田の本国を0にするまで、晴田の攻撃が通ることは無かった。
「お見事でした姫様」
黙って対戦を見届けた真理は、そこでナツキに声をかける。
いつもは感情を殺したような表情をしている彼女だったが、このときばかりは口元が緩んでいた。
「あ、真理ー!見ててくれたんだ!」
彼女の顔を見るなり、ナツキはぱっと笑った。
つづく
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txt:Y256
初出:mixi(10.07.29)
掲載日:10.07.29
更新日:10.08.01
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