「#6」(2010/04/14 (水) 14:13:08) の最新版変更点
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*#6 木曜の放課後
「おじゃましまーす」
あたしは玄関で靴を脱ぎ、藤野の家に入る。木曜日は部活もなく、毎週放課後に3人のうちの誰かの家で遊んでいた。
「いらっしゃい、京子ちゃん。あら?今日は松岡くんはいないの?」
リビングの扉が開き、藤野のお母さんが顔を出す。高校生の息子がいるとは思えないくらい若く、昔からぜんぜん変わらない。
「あぁ、あいつは今日は補習。こないだの英語の小テストの点が悪かったからさ」
あたしの前にいた藤野が答える。松岡は英語が苦手だからね~。
あたしは別に苦手ってほどじゃない。「I am Kyoko Honda」くらいは言えるし。
「あらそう。ゆっくりしていってね~」
そう言って藤野母はまたリビングに戻る。
それを見届けて、あたしたちは階段を登って2階の藤野の部屋に入った。入ってすぐのところに机があり、窓際にベッドがある。机の上には教科書とノート、組み立て途中のガンプラが置いてあった。
藤野は上着を脱ぎ、イスにかける。
「あ、そうだ。昨日考えたんだけど、相手のユニットにカズィセットしてヴァル・ヴァロ(8th)の代替コスト払うってのどうよ?」
あたしは、床に散乱していたカードの束を整えながら言った。昨日お風呂に入りながら考えたコンボだ。
「は?それなんかメリットあるのかよ?相手ロールさせても、ヴァル・ヴァロはロールインだしよ?」
「それだけやれればよくない?ハンデスもあるし」
…でも微妙か。あたしは鞄からデッキケースとコンビニの袋を取り出す。ヴァル・ヴァロは…保留ね。
「松岡来るかなぁ?」
デッキのカードを10枚づつにわけながらあたしは言った。藤野はデッキを出しながら、「どうだろうな。今日は長そうだったぞ?」と言った。
「そっか。さぁやるよ!」
あたしはデッキをシャッフルし終わり、じゃんけんしようと左手を出す。
「ん?あぁ。ボコボコにしてやるぜ!」
藤野はそう言って右手を出す。じゃんけんはグーを出したあたしの勝ち。今回は最初からグーを出そうと考えてたからね。
×××
「赤基本G出して、ガンダムヴァーチェプレイ。地球にアタックしていいか?」
「ダメ。あたしまだ国力2枚しかないし!」
すでに藤野の国力は5枚並んでいたが、先攻であるあたしの場には白基本Gが2枚だけ、つまりG事故。
「なんでだよー。まあいいや、あと1ターン待ってやるよ」
藤野はヴァーチェを配備エリアに戻す。あたしはそれを見てドローする。…Gじゃない
「ターン終了…」
「何だよやっぱ1ターン待っても変わらないじゃんか!いくぜ!」
藤野はキュリオスも配備し、宇宙と地球に出撃した。あー。ゲームにならない!
「投了!投了!てか、G事故だから今の実力じゃないし」
思わず口から出た負け惜しみ…。
「んなの負け惜しみじゃねぇかよ。運も実力の内って言うだろ?」
「あー、うるさいうるさーい!ベッドの下のエロ本のこと詩織に言っちゃおっかな~」
あたしはベッドの下のダンボールを指差す。古田詩織はあたしと同じアーチェリー部の女子で、あたしの推測では藤野が好きな子。
「な、なんでそうなるんだよ!つかあれエロ本じゃねぇし!」
「じゃ見せなさいよ!」
「無理!」
年頃の男子なんだから別に変だとかは思わないけど、そこまで固執して隠す必要があるのかねぇ…。
「そうだ、これ見ろよ!京子」
藤野は話を逸らそうとして、1枚の紙を机の引き出しから出し見せてくる。そこにはパソコンでプリントアウトしたのか、カードショップの地図が載っていた。
「今度、3人でここの大会でないか?」
「いいけど、『カキヨ』じゃ駄目なわけ?」
見事に話を逸らされたあたしは、そう言いながら地図の住所を見る。ってこれ電車で6駅も向こうの町じゃない!
「いや、大きいカードショップ一回行ってみたくないか?シングルカードとかも置いてるって書いてあるし…」
「うーん…。ま、いっか」
あたしは少し考えたけど、町で買い物もしたいからOKした。
「じゃ日曜の朝9時に駅集合な」
「わかった。あ、ちゃんと松岡にも言っといてよね。また前日に誘わないこと」
あたしは藤野を指差す。あたしは話が一段落したところで時計を見る。時計の針は6時を指す直前だ。
「あたしそろそろ帰ろうかなぁ。今日の晩ご飯、あたしの当番だし」
「おう」
あたしはそう言ってデッキをケースに戻す。あたしの家はあたしと、親父の二人家族。あたしが小学生のときに、母さんは親父と気が合わないとかで出て行った。気が合わないなら結婚なんかしなきゃいいのに…。
親父は酒癖が悪いとかそういうんじゃない、単におっとりしてるだけ。まぁ母さんはそこに嫌気がさしたみたいだけど…。
階段を降りて、玄関で靴を履こうとしたあたしを見て、リビングから藤野母が出てくる。
「あら、もう帰るの?」
「あ、はい」
「武志ー!!」
藤野母は突然階段の下から藤野を呼ぶ。藤野は「なんだよ?」と言って階段の上から顔を出す。
「なんだよ?じゃなくて京子ちゃんを家まで送ってきなさい」
「あ、いいですよ。一人で帰れますから」
大げさだなぁ…あたしは軽く断る。でも多分藤野母は引かないだろうな。
「最近危ない事件増えてるでしょ?だから送らせて。うちのだったらいくらでも貸し出せるから」
そういって藤野母は藤野の背中を押す。藤野は嫌そうな顔で「わかったよ」と言って靴を履く。
「おじゃましましたー」
あたしたちは藤野家を出る。外は薄暗く、ちょっと寒い。そうだ、松岡はもう補習終わったかなぁ?
つづく
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:
更新日:10.04.14
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*#6 木曜の放課後
「おじゃましまーす」
あたしは玄関で靴を脱ぎ、藤野の家に入る。木曜日は部活もなく、毎週放課後に3人のうちの誰かの家で遊んでいた。
「いらっしゃい、京子ちゃん。あら?今日は松岡くんはいないの?」
リビングの扉が開き、藤野のお母さんが顔を出す。高校生の息子がいるとは思えないくらい若く、昔からぜんぜん変わらない。
「あぁ、あいつは今日は補習。こないだの英語の小テストの点が悪かったからさ」
あたしの前にいた藤野が答える。松岡は英語が苦手だからね~。
あたしは別に苦手ってほどじゃない。「I am Kyoko Honda」くらいは言えるし。
「あらそう。ゆっくりしていってね~」
そう言って藤野母はまたリビングに戻る。
それを見届けて、あたしたちは階段を登って2階の藤野の部屋に入った。入ってすぐのところに机があり、窓際にベッドがある。机の上には教科書とノート、組み立て途中のガンプラが置いてあった。
藤野は上着を脱ぎ、イスにかける。
「あ、そうだ。昨日考えたんだけど、相手のユニットにカズィセットしてヴァル・ヴァロ(8th)の代替コスト払うってのどうよ?」
あたしは、床に散乱していたカードの束を整えながら言った。昨日お風呂に入りながら考えたコンボだ。
「は?それなんかメリットあるのかよ?相手ロールさせても、ヴァル・ヴァロはロールインだしよ?」
「それだけやれればよくない?ハンデスもあるし」
…でも微妙か。あたしは鞄からデッキケースとコンビニの袋を取り出す。ヴァル・ヴァロは…保留ね。
「松岡来るかなぁ?」
デッキのカードを10枚づつにわけながらあたしは言った。藤野はデッキを出しながら、「どうだろうな。今日は長そうだったぞ?」と言った。
「そっか。さぁやるよ!」
あたしはデッキをシャッフルし終わり、じゃんけんしようと左手を出す。
「ん?あぁ。ボコボコにしてやるぜ!」
藤野はそう言って右手を出す。じゃんけんはグーを出したあたしの勝ち。今回は最初からグーを出そうと考えてたからね。
×××
「赤基本G出して、ガンダムヴァーチェプレイ。地球にアタックしていいか?」
「ダメ。あたしまだ国力2枚しかないし!」
すでに藤野の国力は5枚並んでいたが、先攻であるあたしの場には白基本Gが2枚だけ、つまりG事故。
「なんでだよー。まあいいや、あと1ターン待ってやるよ」
藤野はヴァーチェを配備エリアに戻す。あたしはそれを見てドローする。…Gじゃない
「ターン終了…」
「何だよやっぱ1ターン待っても変わらないじゃんか!いくぜ!」
藤野はキュリオスも配備し、宇宙と地球に出撃した。あー。ゲームにならない!
「投了!投了!てか、G事故だから今の実力じゃないし」
思わず口から出た負け惜しみ…。
「んなの負け惜しみじゃねぇかよ。運も実力の内って言うだろ?」
「あー、うるさいうるさーい!ベッドの下のエロ本のこと詩織に言っちゃおっかな~」
あたしはベッドの下のダンボールを指差す。古田詩織はあたしと同じアーチェリー部の女子で、あたしの推測では藤野が好きな子。
「な、なんでそうなるんだよ!つかあれエロ本じゃねぇし!」
「じゃ見せなさいよ!」
「無理!」
年頃の男子なんだから別に変だとかは思わないけど、そこまで固執して隠す必要があるのかねぇ…。
「そうだ、これ見ろよ!京子」
藤野は話を逸らそうとして、1枚の紙を机の引き出しから出し見せてくる。そこにはパソコンでプリントアウトしたのか、カードショップの地図が載っていた。
「今度、3人でここの大会でないか?」
「いいけど、『カキヨ』じゃ駄目なわけ?」
見事に話を逸らされたあたしは、そう言いながら地図の住所を見る。ってこれ電車で6駅も向こうの町じゃない!
「いや、大きいカードショップ一回行ってみたくないか?シングルカードとかも置いてるって書いてあるし…」
「うーん…。ま、いっか」
あたしは少し考えたけど、町で買い物もしたいからOKした。
「じゃ日曜の朝9時に駅集合な」
「わかった。あ、ちゃんと松岡にも言っといてよね。また前日に誘わないこと」
あたしは藤野を指差す。あたしは話が一段落したところで時計を見る。時計の針は6時を指す直前だ。
「あたしそろそろ帰ろうかなぁ。今日の晩ご飯、あたしの当番だし」
「おう」
あたしはそう言ってデッキをケースに戻す。あたしの家はあたしと、親父の二人家族。あたしが小学生のときに、母さんは親父と気が合わないとかで出て行った。気が合わないなら結婚なんかしなきゃいいのに…。
親父は酒癖が悪いとかそういうんじゃない、単におっとりしてるだけ。まぁ母さんはそこに嫌気がさしたみたいだけど…。
階段を降りて、玄関で靴を履こうとしたあたしを見て、リビングから藤野母が出てくる。
「あら、もう帰るの?」
「あ、はい」
「武志ー!!」
藤野母は突然階段の下から藤野を呼ぶ。藤野は「なんだよ?」と言って階段の上から顔を出す。
「なんだよ?じゃなくて京子ちゃんを家まで送ってきなさい」
「あ、いいですよ。一人で帰れますから」
大げさだなぁ…あたしは軽く断る。でも多分藤野母は引かないだろうな。
「最近危ない事件増えてるでしょ?だから送らせて。うちのだったらいくらでも貸し出せるから」
そういって藤野母は藤野の背中を押す。藤野は嫌そうな顔で「わかったよ」と言って靴を履く。
「おじゃましましたー」
あたしたちは藤野家を出る。外は薄暗く、ちょっと寒い。そうだ、松岡はもう補習終わったかなぁ?
つづく
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.05.22
更新日:10.04.14
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