「#30」(2010/04/14 (水) 14:22:05) の最新版変更点
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*#30 色褪せない決着を
今できることは、相手に怯えることなんかじゃない!
…自分のデッキを信じてあげること!
「このカードで逆転よ!!フリーダムガンダム(ミーティア装備)!!」
「許可」
場に6国の白ユニットが出る。ジャンクは十分、それに手札もあるわ!
「攻撃ステップ、ミーティアを宇宙に出撃!何もないかしら?」
「…あぁ」
伊賀は少し怒った風に言った。
「防御ステップ、カットインがなければヴァーチェに6点、エクシアに5点!」
「許可」
これで、場を見る限り有利になったわ!まだなにかある?
「ターン終了…」
「いや、帰還ステップ。シンデレラ・フォウを使う」
このタイミングで!?
あたしは3枚の手札を表にする。Gとハイマット、そして青き清浄なる世界…。
「ふふっ…このターンでこちらのユニットを駆逐して、次のターンでゆっくり回復を決め込もうというわけでしたか…でも、残念ですね…調子に乗りすぎです。ハイマットを取り除きで」
「くっ…」
伊賀の言うとおりだ。ハイマット単騎では危ういから、まずはミーティアで様子を見ようとした…。
「本国はあと何枚です?相当少ないみたいですが…」
伊賀は、あからさまに笑いをこらえながら聞いた。
あたしは手早く確認して「8枚よ。そっちは?」と答える。
「10枚」
「そう…ターン終了!」
あたしは勢い良く宣言した。
伊賀はドローする。ここまで来たらイカサマは…!?
「…今、どこから引いてました?」
あたしは手札にカードを加えた伊賀に、すぐさま質問した。どう考えても手札は2枚増えてる…!
「本国ですが?」
「そう…ならいいわ。あたしはてっきり”捨て山からも”引いたんじゃないかと思ったわけ」
あたしは何気ない風に言った。
ドローされてしまったものは仕方がない。
「ははっ…まさか」
「まさかよねぇ?イカサマ野郎」
語尾を強調して言ったつもりだったが、伊賀は動じてないよう。
「清浄…どのタイミングで使うかわかりませんが…まずはこのカード!!」
伊賀はジ・オ(15)を出す。なるほど。このカードでミーティアをコントロールするってことね。
宇宙統べを警戒するなら、このタイミング!!
「青き清浄なる世界をカットインで使うわ!さぁ…カウンターある!?」
宇宙統べ以外のカウンターがあったら負けだ。
そのときは、決勝で誰かがこいつを倒してくれることを祈るしかない。
「…カウンターを警戒してたんだ。でも、生憎ないんだ。こちらの本国も少なかったから、喜んで回復させてもらうよ」
「半回復だけどね」
あたしは捨て山の半分を回復する。その枚数は11枚。
そして、奪われたミーティア。
「このターン、ミーティアで攻撃してもいいんだが…手札に戻られると厄介だから、このままターン終了だ。追加でユニット引けばゲームセットですしね」
「じゃ、あたしのターン!」
あたしはドローしようと本国に手をかける…また!
あたしは机を小さく叩いた。
「その本国にかけた手は何です?ジ・オってキャントリップ持ってたんでしたっけ?」
「”手が滑った”だけですよ…」
この人、何回指摘されようがイカサマを繰り返す気ね…。そして全部、「手が滑った」で言い訳…嫌な奴!嫌な奴!!
「ドロー…」
引いたカードはハッキング…。
デッキが、あたしにこいつを倒すキーカードを引けって言ってる。
「ハッキング!」
「許可」
3枚見る…。あたしは1枚を抜き出し、そのままプレイする!
「まだよ!中東国の支援!」
「サーチ、ドローの連鎖…やりますね」
2枚ドローして、あたしは口を開く。
「赤黒のコントロールと00ユニット、そしてイカサマ…今まで戦った相手でもっとも厄介だわ。伊賀、あんたが最強よ…でも、無敵じゃない!デスティニーガンダム(18)をプレイするわ!!」
「ここでだとぉ!?」
伊賀は棒読みで言った。
不安はない。絶対勝つんだ、運命のカードで!
「攻撃ステップ、地球にデスティニーを出撃!効果を使用、対象はミーティアとジ・オ!無作為にどちらかを破壊!」
ジ・オを破壊できればミーティアは戻る。
ミーティアを破壊でも相手の戦力は減る。
「お互いのカードだから、裏にして無作為ってわけにもいきませんね」
伊賀は、黒いスリーブに入ったジ・オと赤いスリーブに入ったミーティアを指した。
「…そうね」
「じゃあサイコロで決めませんか?」
伊賀はそう言って、デッキケースから黒いサイコロを出した。
「いいわ」
「じゃあ奇数がジ・オで、偶数がミーティアで」
そう言って、サイコロをあたしに渡す。
あたしはサイコロを転がした。
「あっ…」
サイコロが手を離れる瞬間、あたしは気付いてしまった…。サイコロは伊賀の所有物で、奇数がジ・オで偶数がミーティアというのも伊賀が決めた…まさか!!
サイコロは意外に転がり、配備エリアを抜け、戦闘エリアのデスティニーのカードの淵に当たって止まる…。
お願い…!!
「数字は…」
「1!」
あたしは大きくガッツポーズをとる。
「ミーティアは返してもらうわ!そして、このまま勝つ!」
「ば…バカな…このサイコロで奇数が出るはずが…」
伊賀が小さく言ったのを、あたしは聞き逃さなかった。
伊賀の顔を見る。あいつはしまったといわんばかりに目をそらす。
「デスティニーの攻撃力は7!」
「勝手にしろ…」
そう言って、伊賀は本国に7ダメージを受ける。
「…ふふっ、どうやら俺の勝ちらしいなぁ!」
突如、伊賀が声を上げる。
増えている手札。ダメージにまぎれてドローしたのね…でも、あたしはもう迷わない。
「またイカサマ…」
「…そうだ、イカサマだ。俺にはそれしかないからな!ジ・オ!このカードで、お前は自分自身のユニットによって負ける!!」
認めた。そして手札の切り札まで見せてきた…。
今までの冷静な感じとは、まったく違う口調。
「伊賀…積み重ねてきた経験やプレイングは、パワーカードをイカサマで振り回してただけのアンタには絶対に越えられないわ!その証拠を見せてあげる…」
あたしは静かに、そして強く言い放ち、手札からカードを出した。
これがあたしの最後の切り札!!
「終わらない明日へ!!」
「な…なんだと!中東で引いたカードが両方切り札ぁ!?」
あたしはGを6枚を取り除く。
「バカな…バカな…」
カウンターはないみたいだ…勝った!!
伊賀はゲーム中、何回も捨て山からドローしたり、規定の効果のドローを増やしたりしてたから、清浄なる世界での回復量が落ちた…。そのおかげであたしは追加ターン、ミーティアで伊賀の本国をを削り取らせてもらうわ、確実に。
「エ…エクシアはどうしたぁ!駆逐しろ!このガキのユニットを駆逐しろぉ…!!」
伊賀は取り乱しながら、7枚の捨て山をめくり始めた。
悲しい人…最後までイカサマで勝利を得ようなんて…。
「…そこまでだ、青年。君は負けたのさ」
公旗が捨て山をめくる伊賀の手をつかんだ。
「はなせぇ!俺は勝つんだ!勝たなければいけないんだぁー!!」
伊賀は、無理やり公旗の手を振りほどく。
その反動で、伊賀の本国と捨て山がばらばらと机と床に散らばる。
伊賀はあたしを睨みつけ、そしてうなだれた。
「伊賀…もうやめて…”勝ち”にそこまでの意味なんてないわ」
今まで勝ちにこだわってきたんだと、彼を見ればわかる…そのためのイカサマ。
でも、そんなの楽しくないよ…絶対に。だから言うわ。
「伊賀…もう、イカサマなんてやめて…」
伊賀はうなだれて動かない。場に流れる静寂に、藤野たちも手を止め静観している。
少しして伊賀は立ち上がり、フラフラと出口へ向かって歩き出した
「伊賀、イカサマなんて…」
くり返し言おうとしたとき、あたしの肩に公旗が手を乗せ、制する。
「彼のプライドは崩れた。もうイカサマどころか、ガンダムウォーもできないさ」
「それで…いいんでしょうか…?」
あたしは小さくそう言って、散らばったカードを集め始めた。
きれいごとかもしれない…でも、こんな後味悪い終わり方…あたしは御免だ!
あたしは集めた伊賀のカードを持って、奔る。
「イカサマなんかやめて、また勝負しに来なさいよ”あたしたち”は待ってるから」
ドアの近くまで歩いていた伊賀の手に、デッキを渡す。
伊賀はあたしに虚ろな目を向け、黙ってデッキを受け取ると、扉を開けて出て行った。
最後まで「イカサマはやめる」の一言は言わせることはできなかった…でも、あたしは信じる。信じようと思う。
「やれやれだな。彼も、お嬢さんも」
公旗が手を挙げる。信ちゃんがトーナメントの表のあたしの名前をひとつ上げたのが見えた。
藤野はガッツポーズをあたしに向ける。あたしは笑顔でそれに返した。
ありがとう皆…あたし、勝ったわ!!
×××
「では、決勝戦をはじめてください」
「「お願いします」」
信ちゃんが言ったのを合図に、あたしたちは頭を下げた。
「まさか藤野と決勝で当たるとはね…もちろんあたしが勝ちはもらうわよ?」
あたしは手札をチェックしながら言った。
「…京子」
「ん?」
「俺が勝って優勝できたら…俺と付き合わないか?」
その瞬間、あたしは固まる。どういうこと?
観戦していた公旗は腹を抱えて笑った。
「いや、ち、ちょっとまって!あ、あんた詩織のこと好きなんじゃ?」
「は?俺は昔からお前のこと…」
っ…。なんでこのタイミングなのよ!!
やだ…絶対顔赤くなってるし…。
「ば…バカ!そんな冗談であたしを揺さぶろうって魂胆ね!」
「は?マジで言ってんのに、なんだよそれ!」
「うるさい、うるさーい!あたしが勝つんだから!」
あたしは藤野を遮り、ゲームを始める。
何気ない日常。たぶんこれが一番大切なものなんだと思う、普段は気付かないけどね。
だからあたしは今日も前に進むわ。
あたしのガンダムウォーで!
おわり
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:
更新日:10.04.14
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*#30 色褪せない決着を
今できることは、相手に怯えることなんかじゃない!
…自分のデッキを信じてあげること!
「このカードで逆転よ!!フリーダムガンダム(ミーティア装備)!!」
「許可」
場に6国の白ユニットが出る。ジャンクは十分、それに手札もあるわ!
「攻撃ステップ、ミーティアを宇宙に出撃!何もないかしら?」
「…あぁ」
伊賀は少し怒った風に言った。
「防御ステップ、カットインがなければヴァーチェに6点、エクシアに5点!」
「許可」
これで、場を見る限り有利になったわ!まだなにかある?
「ターン終了…」
「いや、帰還ステップ。シンデレラ・フォウを使う」
このタイミングで!?
あたしは3枚の手札を表にする。Gとハイマット、そして青き清浄なる世界…。
「ふふっ…このターンでこちらのユニットを駆逐して、次のターンでゆっくり回復を決め込もうというわけでしたか…でも、残念ですね…調子に乗りすぎです。ハイマットを取り除きで」
「くっ…」
伊賀の言うとおりだ。ハイマット単騎では危ういから、まずはミーティアで様子を見ようとした…。
「本国はあと何枚です?相当少ないみたいですが…」
伊賀は、あからさまに笑いをこらえながら聞いた。
あたしは手早く確認して「8枚よ。そっちは?」と答える。
「10枚」
「そう…ターン終了!」
あたしは勢い良く宣言した。
伊賀はドローする。ここまで来たらイカサマは…!?
「…今、どこから引いてました?」
あたしは手札にカードを加えた伊賀に、すぐさま質問した。どう考えても手札は2枚増えてる…!
「本国ですが?」
「そう…ならいいわ。あたしはてっきり”捨て山からも”引いたんじゃないかと思ったわけ」
あたしは何気ない風に言った。
ドローされてしまったものは仕方がない。
「ははっ…まさか」
「まさかよねぇ?イカサマ野郎」
語尾を強調して言ったつもりだったが、伊賀は動じてないよう。
「清浄…どのタイミングで使うかわかりませんが…まずはこのカード!!」
伊賀はジ・オ(15)を出す。なるほど。このカードでミーティアをコントロールするってことね。
宇宙統べを警戒するなら、このタイミング!!
「青き清浄なる世界をカットインで使うわ!さぁ…カウンターある!?」
宇宙統べ以外のカウンターがあったら負けだ。
そのときは、決勝で誰かがこいつを倒してくれることを祈るしかない。
「…カウンターを警戒してたんだ。でも、生憎ないんだ。こちらの本国も少なかったから、喜んで回復させてもらうよ」
「半回復だけどね」
あたしは捨て山の半分を回復する。その枚数は11枚。
そして、奪われたミーティア。
「このターン、ミーティアで攻撃してもいいんだが…手札に戻られると厄介だから、このままターン終了だ。追加でユニット引けばゲームセットですしね」
「じゃ、あたしのターン!」
あたしはドローしようと本国に手をかける…また!
あたしは机を小さく叩いた。
「その本国にかけた手は何です?ジ・オってキャントリップ持ってたんでしたっけ?」
「”手が滑った”だけですよ…」
この人、何回指摘されようがイカサマを繰り返す気ね…。そして全部、「手が滑った」で言い訳…嫌な奴!嫌な奴!!
「ドロー…」
引いたカードはハッキング…。
デッキが、あたしにこいつを倒すキーカードを引けって言ってる。
「ハッキング!」
「許可」
3枚見る…。あたしは1枚を抜き出し、そのままプレイする!
「まだよ!中東国の支援!」
「サーチ、ドローの連鎖…やりますね」
2枚ドローして、あたしは口を開く。
「赤黒のコントロールと00ユニット、そしてイカサマ…今まで戦った相手でもっとも厄介だわ。伊賀、あんたが最強よ…でも、無敵じゃない!デスティニーガンダム(18)をプレイするわ!!」
「ここでだとぉ!?」
伊賀は棒読みで言った。
不安はない。絶対勝つんだ、運命のカードで!
「攻撃ステップ、地球にデスティニーを出撃!効果を使用、対象はミーティアとジ・オ!無作為にどちらかを破壊!」
ジ・オを破壊できればミーティアは戻る。
ミーティアを破壊でも相手の戦力は減る。
「お互いのカードだから、裏にして無作為ってわけにもいきませんね」
伊賀は、黒いスリーブに入ったジ・オと赤いスリーブに入ったミーティアを指した。
「…そうね」
「じゃあサイコロで決めませんか?」
伊賀はそう言って、デッキケースから黒いサイコロを出した。
「いいわ」
「じゃあ奇数がジ・オで、偶数がミーティアで」
そう言って、サイコロをあたしに渡す。
あたしはサイコロを転がした。
「あっ…」
サイコロが手を離れる瞬間、あたしは気付いてしまった…。サイコロは伊賀の所有物で、奇数がジ・オで偶数がミーティアというのも伊賀が決めた…まさか!!
サイコロは意外に転がり、配備エリアを抜け、戦闘エリアのデスティニーのカードの淵に当たって止まる…。
お願い…!!
「数字は…」
「1!」
あたしは大きくガッツポーズをとる。
「ミーティアは返してもらうわ!そして、このまま勝つ!」
「ば…バカな…このサイコロで奇数が出るはずが…」
伊賀が小さく言ったのを、あたしは聞き逃さなかった。
伊賀の顔を見る。あいつはしまったといわんばかりに目をそらす。
「デスティニーの攻撃力は7!」
「勝手にしろ…」
そう言って、伊賀は本国に7ダメージを受ける。
「…ふふっ、どうやら俺の勝ちらしいなぁ!」
突如、伊賀が声を上げる。
増えている手札。ダメージにまぎれてドローしたのね…でも、あたしはもう迷わない。
「またイカサマ…」
「…そうだ、イカサマだ。俺にはそれしかないからな!ジ・オ!このカードで、お前は自分自身のユニットによって負ける!!」
認めた。そして手札の切り札まで見せてきた…。
今までの冷静な感じとは、まったく違う口調。
「伊賀…積み重ねてきた経験やプレイングは、パワーカードをイカサマで振り回してただけのアンタには絶対に越えられないわ!その証拠を見せてあげる…」
あたしは静かに、そして強く言い放ち、手札からカードを出した。
これがあたしの最後の切り札!!
「終わらない明日へ!!」
「な…なんだと!中東で引いたカードが両方切り札ぁ!?」
あたしはGを6枚を取り除く。
「バカな…バカな…」
カウンターはないみたいだ…勝った!!
伊賀はゲーム中、何回も捨て山からドローしたり、規定の効果のドローを増やしたりしてたから、清浄なる世界での回復量が落ちた…。そのおかげであたしは追加ターン、ミーティアで伊賀の本国をを削り取らせてもらうわ、確実に。
「エ…エクシアはどうしたぁ!駆逐しろ!このガキのユニットを駆逐しろぉ…!!」
伊賀は取り乱しながら、7枚の捨て山をめくり始めた。
悲しい人…最後までイカサマで勝利を得ようなんて…。
「…そこまでだ、青年。君は負けたのさ」
公旗が捨て山をめくる伊賀の手をつかんだ。
「はなせぇ!俺は勝つんだ!勝たなければいけないんだぁー!!」
伊賀は、無理やり公旗の手を振りほどく。
その反動で、伊賀の本国と捨て山がばらばらと机と床に散らばる。
伊賀はあたしを睨みつけ、そしてうなだれた。
「伊賀…もうやめて…”勝ち”にそこまでの意味なんてないわ」
今まで勝ちにこだわってきたんだと、彼を見ればわかる…そのためのイカサマ。
でも、そんなの楽しくないよ…絶対に。だから言うわ。
「伊賀…もう、イカサマなんてやめて…」
伊賀はうなだれて動かない。場に流れる静寂に、藤野たちも手を止め静観している。
少しして伊賀は立ち上がり、フラフラと出口へ向かって歩き出した
「伊賀、イカサマなんて…」
くり返し言おうとしたとき、あたしの肩に公旗が手を乗せ、制する。
「彼のプライドは崩れた。もうイカサマどころか、ガンダムウォーもできないさ」
「それで…いいんでしょうか…?」
あたしは小さくそう言って、散らばったカードを集め始めた。
きれいごとかもしれない…でも、こんな後味悪い終わり方…あたしは御免だ!
あたしは集めた伊賀のカードを持って、奔る。
「イカサマなんかやめて、また勝負しに来なさいよ”あたしたち”は待ってるから」
ドアの近くまで歩いていた伊賀の手に、デッキを渡す。
伊賀はあたしに虚ろな目を向け、黙ってデッキを受け取ると、扉を開けて出て行った。
最後まで「イカサマはやめる」の一言は言わせることはできなかった…でも、あたしは信じる。信じようと思う。
「やれやれだな。彼も、お嬢さんも」
公旗が手を挙げる。信ちゃんがトーナメントの表のあたしの名前をひとつ上げたのが見えた。
藤野はガッツポーズをあたしに向ける。あたしは笑顔でそれに返した。
ありがとう皆…あたし、勝ったわ!!
×××
「では、決勝戦をはじめてください」
「「お願いします」」
信ちゃんが言ったのを合図に、あたしたちは頭を下げた。
「まさか藤野と決勝で当たるとはね…もちろんあたしが勝ちはもらうわよ?」
あたしは手札をチェックしながら言った。
「…京子」
「ん?」
「俺が勝って優勝できたら…俺と付き合わないか?」
その瞬間、あたしは固まる。どういうこと?
観戦していた公旗は腹を抱えて笑った。
「いや、ち、ちょっとまって!あ、あんた詩織のこと好きなんじゃ?」
「は?俺は昔からお前のこと…」
っ…。なんでこのタイミングなのよ!!
やだ…絶対顔赤くなってるし…。
「ば…バカ!そんな冗談であたしを揺さぶろうって魂胆ね!」
「は?マジで言ってんのに、なんだよそれ!」
「うるさい、うるさーい!あたしが勝つんだから!」
あたしは藤野を遮り、ゲームを始める。
何気ない日常。たぶんこれが一番大切なものなんだと思う、普段は気付かないけどね。
だからあたしは今日も前に進むわ。
あたしのガンダムウォーで!
おわり
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[[前へ>#29]] / [[SeasonTOP>あたしのガンダムウォーSeason1]]
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.06.30
更新日:10.04.14
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