「#36」(2010/04/14 (水) 14:34:50) の最新版変更点
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*#36 煉が俺に力
「で?俺にそいつを攻略するデッキを作れって?…おいおい、そんなの無茶な」
信一郎は背もたれに寄りかかりながら、こっちを見てやれやれという風に言った。
彼はあのカキヨさんの孫で、今は大学の研究室に籍を置いている。町のほうに住んでるため、『おもちゃのカキヨ』には滅多に顔を出さないし、学校も違うから、先輩って言うよりは友達感覚だ。
「俺はそういうの向いてない」
「あたいも。一と同じでそういうのは」
俺たちは口々に、無理だと言った。
信一郎は「貴重な昼休みなんだぜ?」と時計を見ながら、俺たちの話しを聞いてくれた。
「そうだな。序盤の安定性を欠くことはできない…かと言って、後半のダメージレースにも一応の回答が欲しい…か」
その時、煉は思いついたように「あ」と言って、荷物からデッキケースを取り出し、信一郎に差し出した。
片手に俺のデッキを持った信一郎は、もう一方の手でそれを受け取る。
「あたいのデッキから…カード使ってください!」
「じゃあお嬢さん、デッキ見させてもらうよ?」
妙な言い方で信一郎は煉のデッキを見る。
「お嬢さんの黒と…公旗の緑か…」そういいながら手を振り、信一郎は研究室に戻った。
「何あの言い方。”お嬢さん”だって!あたい一ともひとつふたつしか違わないのに、なんか子ども扱いされた気分!」
煉は頬を膨らませる。
確かに”お嬢さん”はいささかセンスないな。しかし、妙に耳につく言葉ではある。
「そうでもないさ。いい響きじゃないか”お嬢さん”て?」
「ほらー!バカにしてー!」
そして、”俺達”のデッキは完成した。
緑黒コントロール…二人でひとつの”終わりへの螺旋を断ち切る力”…。
「一が使いなよ」
煉はデッキを見てそう言った。
確かに二人分のデッキだから一人は大会に出られない。
「それでいいのか?」
「うん。菊池とも明日で決着だ。見せつけてやろうよ」
煉は俺の前を歩く。
土手の道は夕日に赤く染まっていた。
「煉」
「何?」
俺はこのタイミングだと思い、前々から言おうとしていた”あること”を言おうと、口を開いた。
「その…」
「その?」
煉は俺が言おうとすることを予測したのか、はにかんだように笑う。
…あえて言わせてもらおう!
「君は俺にとって…」
煉は歩くのをやめる。
俺もそれに合わせて止まる。
「…興味以上の対象だ!」
「…はぁ?」
煉は俺の言葉に”?”を出す。
「いや、だから…」
「好きっていいなよバーカ」
彼女ははにかみ笑いのまま俺の前をまた歩き出した。
…口が滑ったとしか言いようがない。
×××
大会の開始時間になったのだろうか、カキヨさんが空き家に来る。
ちなみにカキヨというのは本名ではなく、新垣よし子(本名)のアラ”ガキ ヨ”シコから取った高校時代のあだ名だそうだ。
「じゃ~始めるよ~」
カキヨさんが言った。俺は深呼吸をした後に「お願いします」と頭を下げた。隣に立って観戦する煉も深呼吸したのがわかった。
今日という日が来る日を、俺と煉はどれほど待ちわびたか!
…緑と黒の仇、討たせてもらうぞ!この黒緑で!
先攻の菊池は青基本Gを場に置いてターンを終了した。
「配備フェイズ、緑基本Gを出してターン終了」
「まだ来るのか、緑で…!」
菊池は少し驚いた。
緑中で奴に負けた回数を考えれば驚くのも当然か…しかし!
「悪いな。これしか知らないんでね!」
菊池が青いGを出してターンを終了するのを確認し、俺はドローする。
「緑Gを出して終了だ」
「ドロー、配備フェイズ赤基本Gを出して、終了だ」
やはり赤青中速か!
「リロールフェイズ、制圧作戦!赤基本Gを破壊する!」
「っ…通しだ。相変わらずこの引きは厄介だな」
しかし、菊池はまだ余裕だ。今までも俺の引きで最初のターンは制圧を撃ちつつ時間を稼げた…しかし、後半をつなぐことができないのだ。
菊池は今回もその”パターン”に漏れないと思っているな。
「ならば見せよう…。配備フェイズ、黒基本Gを配備!」
「黒!?」
菊池は始めて驚いた。
最初の動きから、完全にこっちが緑中だと思っていた証拠だ。
「ターン終了」
「ドロー…赤基本Gを出して密約」
「あぁ」
菊池はターンを終了した。
まだこちらの意図が読めずにいる…ならマストカウンターも読み違える可能性ありと見た!
「ドロー。配備フェイズ、黒基本Gを出して、ゲルググ高機動型(J・ライデン機)を配備」
「クイックを持つそのユニットを、わざわざ配備フェイズに出すということは…」
「あぁ。まったくもってその通りだ、J・ライデン《DB》をセットする。これでリロール!」
ライデンの効果でリロールするゲルググ。
俺のデッキのエース…高機動、6/2/4を誇る屈指のユニットだ!
「ここまではいつもの動き…。まだ油断できないな」
「油断もなにも、お前の今の国力ではまともに動けんさ!ゲルググを地球に出撃させる!」
つづく
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:
更新日:10.04.14
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*#36 煉が俺に力
「で?俺にそいつを攻略するデッキを作れって?…おいおい、そんなの無茶な」
信一郎は背もたれに寄りかかりながら、こっちを見てやれやれという風に言った。
彼はあのカキヨさんの孫で、今は大学の研究室に籍を置いている。町のほうに住んでるため、『おもちゃのカキヨ』には滅多に顔を出さないし、学校も違うから、先輩って言うよりは友達感覚だ。
「俺はそういうの向いてない」
「あたいも。一と同じでそういうのは」
俺たちは口々に、無理だと言った。
信一郎は「貴重な昼休みなんだぜ?」と時計を見ながら、俺たちの話しを聞いてくれた。
「そうだな。序盤の安定性を欠くことはできない…かと言って、後半のダメージレースにも一応の回答が欲しい…か」
その時、煉は思いついたように「あ」と言って、荷物からデッキケースを取り出し、信一郎に差し出した。
片手に俺のデッキを持った信一郎は、もう一方の手でそれを受け取る。
「あたいのデッキから…カード使ってください!」
「じゃあお嬢さん、デッキ見させてもらうよ?」
妙な言い方で信一郎は煉のデッキを見る。
「お嬢さんの黒と…公旗の緑か…」そういいながら手を振り、信一郎は研究室に戻った。
「何あの言い方。”お嬢さん”だって!あたい一ともひとつふたつしか違わないのに、なんか子ども扱いされた気分!」
煉は頬を膨らませる。
確かに”お嬢さん”はいささかセンスないな。しかし、妙に耳につく言葉ではある。
「そうでもないさ。いい響きじゃないか”お嬢さん”て?」
「ほらー!バカにしてー!」
そして、”俺達”のデッキは完成した。
緑黒コントロール…二人でひとつの”終わりへの螺旋を断ち切る力”…。
「一が使いなよ」
煉はデッキを見てそう言った。
確かに二人分のデッキだから一人は大会に出られない。
「それでいいのか?」
「うん。菊池とも明日で決着だ。見せつけてやろうよ」
煉は俺の前を歩く。
土手の道は夕日に赤く染まっていた。
「煉」
「何?」
俺はこのタイミングだと思い、前々から言おうとしていた”あること”を言おうと、口を開いた。
「その…」
「その?」
煉は俺が言おうとすることを予測したのか、はにかんだように笑う。
…あえて言わせてもらおう!
「君は俺にとって…」
煉は歩くのをやめる。
俺もそれに合わせて止まる。
「…興味以上の対象だ!」
「…はぁ?」
煉は俺の言葉に”?”を出す。
「いや、だから…」
「好きっていいなよバーカ」
彼女ははにかみ笑いのまま俺の前をまた歩き出した。
…口が滑ったとしか言いようがない。
×××
大会の開始時間になったのだろうか、カキヨさんが空き家に来る。
ちなみにカキヨというのは本名ではなく、新垣よし子(本名)のアラ”ガキ ヨ”シコから取った高校時代のあだ名だそうだ。
「じゃ~始めるよ~」
カキヨさんが言った。俺は深呼吸をした後に「お願いします」と頭を下げた。隣に立って観戦する煉も深呼吸したのがわかった。
今日という日が来る日を、俺と煉はどれほど待ちわびたか!
…緑と黒の仇、討たせてもらうぞ!この黒緑で!
先攻の菊池は青基本Gを場に置いてターンを終了した。
「配備フェイズ、緑基本Gを出してターン終了」
「まだ来るのか、緑で…!」
菊池は少し驚いた。
緑中で奴に負けた回数を考えれば驚くのも当然か…しかし!
「悪いな。これしか知らないんでね!」
菊池が青いGを出してターンを終了するのを確認し、俺はドローする。
「緑Gを出して終了だ」
「ドロー、配備フェイズ赤基本Gを出して、終了だ」
やはり赤青中速か!
「リロールフェイズ、制圧作戦!赤基本Gを破壊する!」
「っ…通しだ。相変わらずこの引きは厄介だな」
しかし、菊池はまだ余裕だ。今までも俺の引きで最初のターンは制圧を撃ちつつ時間を稼げた…しかし、後半をつなぐことができないのだ。
菊池は今回もその”パターン”に漏れないと思っているな。
「ならば見せよう…。配備フェイズ、黒基本Gを配備!」
「黒!?」
菊池は始めて驚いた。
最初の動きから、完全にこっちが緑中だと思っていた証拠だ。
「ターン終了」
「ドロー…赤基本Gを出して密約」
「あぁ」
菊池はターンを終了した。
まだこちらの意図が読めずにいる…ならマストカウンターも読み違える可能性ありと見た!
「ドロー。配備フェイズ、黒基本Gを出して、ゲルググ高機動型(J・ライデン機)を配備」
「クイックを持つそのユニットを、わざわざ配備フェイズに出すということは…」
「あぁ。まったくもってその通りだ、J・ライデン《DB》をセットする。これでリロール!」
ライデンの効果でリロールするゲルググ。
俺のデッキのエース…高機動、6/2/4を誇る屈指のユニットだ!
「ここまではいつもの動き…。まだ油断できないな」
「油断もなにも、お前の今の国力ではまともに動けんさ!ゲルググを地球に出撃させる!」
つづく
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.08.29
更新日:10.04.14
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