「#55」(2010/04/14 (水) 14:42:47) の最新版変更点
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*#55 舞台はここに整う
前回までの「あたしのガンダムウォー」
あたしは、煉さんの「楽しめれば勝ち負けなど関係ない」という考え方を押し付けられて大迷惑。
で…先に進むためには、煉さんを打倒いなければいけないと決意したわけ。
これは、あたしが”あたしのガンダムウォー”をしていくための戦い。
×××
自転車のスタンドを立て、あたしは空き家の前に立つ。
”自分は今日のために”ここまで頑張れた。さあ行くよ。
自分にそう言い聞かせて、あたしはドアに手をかける。
「おはよー」
外はすごい寒かったけど、空き家の中は”なんとか”大丈夫なくらいの気温だった。
見ると、天井の隅に古い暖房機があり低い音を立てていた。
「お、京子」
一番に声を上げたのは武志。
昨日、「事情は大会の時に話す」と言ったものの、何を話せばいいかわからない。
とりあえず、あたしは武志たちがいるテーブルに向かう。
「半月ぶりか?本田」
テーブルに向かう途中、煉さがあたしに声をかける。
あたしは思わず固まる。緊張じゃない…なんていえばいいんだろう?敵愾心?
「そうですかね?まぁ、ここに来るの温泉以来だからそうかもしれません」
あたしはそう言って、テーブルに進む。
この数週間。あたしは煉さんを乗り越えるための準備をしてきた。
事実はそうだけど、それを一から武志に説明するのはあたしとしても面倒なんだよね…。
「どうしたの?京ちゃん」
詩織が少し心配そうな顔であたしを見た。
手には4、5枚のカードが握られてる。松岡と対戦中みたいだ。
「ううん。なんでもない。今日は大会出るの?」
「うん、そうしようかな」
詩織は左手で小さくガッツポーズを出して見せる。
ふーん、結構自信ついたのかな?松岡のおかげ?
「あ、そうだ京子。女神2買ったか?」
武志が口を開く。
あたしは少し身構えたけど、無駄だったみたい。詮索するのは忘れたのかな?
女神2?あぁ。女ばっかのパックか…多少は買ったけど。
「少しね。武志は?」
「俺?あんまり買ってないぜ?00ユニットがナドレだけだしなぁ~」
武志は不満そうな声を漏らす。
ナドレ、そんなに悪くなくない?…あ、武志のデッキ的には別にいらないカードかもだけど。
なるほどと考えていると、空き家に信ちゃんが来る。
あれ?もうそんな時間か…さて、今日は本気で煉さんを倒しにいくわ。
「今日は2、4、6…」
信ちゃんは空き家の中の参加者の人数を数える。
町のほうの大会とかぶってるから今日は参加者が少なめね。
そんなことを考えていると、突如空き家の壁に何かがぶつかった音がする。
ドゴンとかドギャンとかそんな擬音が似合いそうな破壊音。
「…何?」
「さあ」
あたしたちは顔を見合わせる。
事故にしては小さな音だけど…?
「イテテ…ちょっと減速が足りなかったぜ…」
そう言いながら空き家のドアを開けたのは、栗田とその連れらしき少年だった。
少年は栗田と同じくらいの年に見える。
「まだ大会間に合います?」
「大丈夫だよ。それより君、大丈夫かい?」
頭をさすりながら受付に歩み寄る少年に、信ちゃんは優しい声をかけた。
「大丈夫!」
そう言いながら受付をする少年を見て、あたしは栗田に声をかける。
「見ない顔だけど、あんたの友達?」
「そんなもんっす。大会出てみたいって言うもんで」
栗田はやれやれという風に手を挙げる。
「ふーん。今日はあんたは出ないわけ?」
「今日は遠慮しときます」
なんだか、いつもより落ち着いた感じ。いつもはウルサイのに…。
「はい、じゃあ対戦表はこの通りに…」
信ちゃんが対戦表を貼り出す。
あたしは自分の名前を確認して、その次に煉さんの名前を確認した。
…2回戦で当たる。
「…おし」
あたしは小さくつぶやいて、テーブルに着く。
1回戦の対戦相手は…さっき栗田が連れてきたって少年だ。初大会って言ったっけ?
栗田が、観戦しようとあたしたちのテーブルの脇に立っていた。
「やっとこのデッキケースに、フリプレ以外の勝星が付けられるぜ」
なぜか自信満々にデッキケースを出す少年。そこにはシールだろうか、金色の星マークが20くらい付けられていた。
あたしは見るからに怪しげなそのデッキケースを見て、怪訝そうな顔で栗田の顔を見る。
「何、あれ?」
「あれは…あいつが勝つたびに貼ったシールです…」
栗田もため息まじりで答える。どこかこのテンションに疲れたような雰囲気。
「俺は羽鳥炭酸!よろしく」
少年…羽鳥は威勢よくそう言った。
「こちらこそよろしく。本田京子よ」
「…あれ?俺の名前聞いて驚かないんだ?」
「え?」
あたしは予期せぬ反応に、ぽかんと口を開ける。
今の驚かなきゃいけないところあった??
「えっと…どこら辺に驚けばいいのかな?」
あたしは年下のガキを扱うような口調で言う。
対戦前からペース乱れるなぁ…もしかして作戦?
「何ッ!?本当に俺を知らない!?”府釜中のエース、羽鳥炭酸”を知らないとはあんたもぐりだな?」
なにがもぐりよ…。大会初参加のエースなんて聞いたことないわ。
栗田が元気なかったのは、きっとこいつの扱いに疲れたからに違いない。あたしは静かに確信を得た。
「と…とりあえずカットいいかな?」
あたしはデッキを差し出す。
こんなのさっさと片付けて、煉さんとの戦いに備えよう…そうしよう。
「いいぜ、じゃんけんだ!」
「はいはい」
勝ったのはあたし。
マリガンなしでゲームスタートだ!
「配備フェイズ、白基本Gを配備でターン終了」
あたしは宣言した。
さあ、相手に不足はあるけど…あたしの新しいデッキの披露よ!
内心バシッと決めるあたしの気など知らず、羽鳥は緑基本Gを出した。
「そうかい…俺を知らない。ならじっくり教えてやるぜ!俺はフリプレでも負け知らずのスペシャル様なんだよーッ!!」
つづく
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txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:
更新日:10.04.14
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*#55 舞台はここに整う
前回までの「あたしのガンダムウォー」
あたしは、煉さんの「楽しめれば勝ち負けなど関係ない」という考え方を押し付けられて大迷惑。
で…先に進むためには、煉さんを打倒いなければいけないと決意したわけ。
これは、あたしが”あたしのガンダムウォー”をしていくための戦い。
×××
自転車のスタンドを立て、あたしは空き家の前に立つ。
”自分は今日のために”ここまで頑張れた。さあ行くよ。
自分にそう言い聞かせて、あたしはドアに手をかける。
「おはよー」
外はすごい寒かったけど、空き家の中は”なんとか”大丈夫なくらいの気温だった。
見ると、天井の隅に古い暖房機があり低い音を立てていた。
「お、京子」
一番に声を上げたのは武志。
昨日、「事情は大会の時に話す」と言ったものの、何を話せばいいかわからない。
とりあえず、あたしは武志たちがいるテーブルに向かう。
「半月ぶりか?本田」
テーブルに向かう途中、煉さがあたしに声をかける。
あたしは思わず固まる。緊張じゃない…なんていえばいいんだろう?敵愾心?
「そうですかね?まぁ、ここに来るの温泉以来だからそうかもしれません」
あたしはそう言って、テーブルに進む。
この数週間。あたしは煉さんを乗り越えるための準備をしてきた。
事実はそうだけど、それを一から武志に説明するのはあたしとしても面倒なんだよね…。
「どうしたの?京ちゃん」
詩織が少し心配そうな顔であたしを見た。
手には4、5枚のカードが握られてる。松岡と対戦中みたいだ。
「ううん。なんでもない。今日は大会出るの?」
「うん、そうしようかな」
詩織は左手で小さくガッツポーズを出して見せる。
ふーん、結構自信ついたのかな?松岡のおかげ?
「あ、そうだ京子。女神2買ったか?」
武志が口を開く。
あたしは少し身構えたけど、無駄だったみたい。詮索するのは忘れたのかな?
女神2?あぁ。女ばっかのパックか…多少は買ったけど。
「少しね。武志は?」
「俺?あんまり買ってないぜ?00ユニットがナドレだけだしなぁ~」
武志は不満そうな声を漏らす。
ナドレ、そんなに悪くなくない?…あ、武志のデッキ的には別にいらないカードかもだけど。
なるほどと考えていると、空き家に信ちゃんが来る。
あれ?もうそんな時間か…さて、今日は本気で煉さんを倒しにいくわ。
「今日は2、4、6…」
信ちゃんは空き家の中の参加者の人数を数える。
町のほうの大会とかぶってるから今日は参加者が少なめね。
そんなことを考えていると、突如空き家の壁に何かがぶつかった音がする。
ドゴンとかドギャンとかそんな擬音が似合いそうな破壊音。
「…何?」
「さあ」
あたしたちは顔を見合わせる。
事故にしては小さな音だけど…?
「イテテ…ちょっと減速が足りなかったぜ…」
そう言いながら空き家のドアを開けたのは、栗田とその連れらしき少年だった。
少年は栗田と同じくらいの年に見える。
「まだ大会間に合います?」
「大丈夫だよ。それより君、大丈夫かい?」
頭をさすりながら受付に歩み寄る少年に、信ちゃんは優しい声をかけた。
「大丈夫!」
そう言いながら受付をする少年を見て、あたしは栗田に声をかける。
「見ない顔だけど、あんたの友達?」
「そんなもんっす。大会出てみたいって言うもんで」
栗田はやれやれという風に手を挙げる。
「ふーん。今日はあんたは出ないわけ?」
「今日は遠慮しときます」
なんだか、いつもより落ち着いた感じ。いつもはウルサイのに…。
「はい、じゃあ対戦表はこの通りに…」
信ちゃんが対戦表を貼り出す。
あたしは自分の名前を確認して、その次に煉さんの名前を確認した。
…2回戦で当たる。
「…おし」
あたしは小さくつぶやいて、テーブルに着く。
1回戦の対戦相手は…さっき栗田が連れてきたって少年だ。初大会って言ったっけ?
栗田が、観戦しようとあたしたちのテーブルの脇に立っていた。
「やっとこのデッキケースに、フリプレ以外の勝星が付けられるぜ」
なぜか自信満々にデッキケースを出す少年。そこにはシールだろうか、金色の星マークが20くらい付けられていた。
あたしは見るからに怪しげなそのデッキケースを見て、怪訝そうな顔で栗田の顔を見る。
「何、あれ?」
「あれは…あいつが勝つたびに貼ったシールです…」
栗田もため息まじりで答える。どこかこのテンションに疲れたような雰囲気。
「俺は羽鳥炭酸!よろしく」
少年…羽鳥は威勢よくそう言った。
「こちらこそよろしく。本田京子よ」
「…あれ?俺の名前聞いて驚かないんだ?」
「え?」
あたしは予期せぬ反応に、ぽかんと口を開ける。
今の驚かなきゃいけないところあった??
「えっと…どこら辺に驚けばいいのかな?」
あたしは年下のガキを扱うような口調で言う。
対戦前からペース乱れるなぁ…もしかして作戦?
「何ッ!?本当に俺を知らない!?”府釜中のエース、羽鳥炭酸”を知らないとはあんたもぐりだな?」
なにがもぐりよ…。大会初参加のエースなんて聞いたことないわ。
栗田が元気なかったのは、きっとこいつの扱いに疲れたからに違いない。あたしは静かに確信を得た。
「と…とりあえずカットいいかな?」
あたしはデッキを差し出す。
こんなのさっさと片付けて、煉さんとの戦いに備えよう…そうしよう。
「いいぜ、じゃんけんだ!」
「はいはい」
勝ったのはあたし。
マリガンなしでゲームスタートだ!
「配備フェイズ、白基本Gを配備でターン終了」
あたしは宣言した。
さあ、相手に不足はあるけど…あたしの新しいデッキの披露よ!
内心バシッと決めるあたしの気など知らず、羽鳥は緑基本Gを出した。
「そうかい…俺を知らない。ならじっくり教えてやるぜ!俺はフリプレでも負け知らずのスペシャル様なんだよーッ!!」
つづく
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初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.12.03
更新日:10.04.14
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