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#65 テーブル越しの奴


「白は大型ユニットでの制圧が得意…ならば見せてやろう。攻撃ステップ規定前!」
「…?」
「異なる時を刻む物語!4以上の合計国力を持つユニットを持ち主の手札に戻す!」

剣治のユニットは全部3国…対してあたしのユニットは4国と5国…しまった!

「…わかったわ」
「ユニットは大きければいいわけじゃないぜ」

剣治はエラそうに言った。
じゃあそのコインいっぱい乗ったアストレアはなんだっての。
剣治はさらに手札のカードと睨めっこ。まだ何かあるわけ?

「さらに、X=6で報道された戦争!巻き返す暇は与えはしない。手札リセットだ」
「な…」

ユニット2枚が戻り、枚数が6枚にもなった手札を確認してたあたしは固まる。

「フッ…まぁこんなものか」
「どんなもんよ?カットイン、託された命運!合計1の報道をカウンターするわ!」

あたしは手札からカウンターを出す。
報道みたいに機動力のあるコマンドは、返答やフューリーじゃ返しのターンに撃たれるから効果が薄いからね。
それに合計国力1のコマンドをカウンターするんだから資源は1。もとのこのカードの資源1と合わせても2。

「あーあ。資源6も払っちゃってご苦労ね♪」
「チッ…ターン終了」

剣治はアストレアを出撃させずに終了を宣言した。
あれ…?

「出撃しなくていいの?チャンスなのに」
「ああ…最高評議会からの今引きハイマットだと本国差が厳しいからな」

剣治は今しがた資源6を払った自分の本国をつついた。
それでも序盤ダメージを受け、さらにユニットの高資源を払ったあたしの本国よりはずいぶん厚いけど。

「あら、案外チキンなのね」
「慎重と言って欲しい。それに、次のターンからアブルホールがクロックを刻む!」
「そのアブルホールが安全かどうかはお楽しみだけどね」

あたしは意味ありげにそう言いつつ、ターンを始めた。
最高評議会を起動し巻き返しを図れるカードを探す。

「配備フェイズ、歌姫の騎士団を起動。白基本Gを本国の下に送りコインを1枚乗せるわ」
「あぁ。今の内に本国を1枚でも増やしておくんだな」

あたしはランチャーストライクを配備する。
どう行動するにもこれがなければ始まらない。すでにアストレアが大きすぎる…。

「ターン終了よ」
「フンッ…強気に出た割には数ターン前と同じ挙動。俺は行かせてもらうぜ!」

ターンを開始しつつそう言った。
あんたこそ2点クロック程度で強気にならなくても。

「配備フェイズ、黒基本G」
「アストレアにコイン」

もう何度目かわからない口応酬をくり返し、剣治は攻撃ステップを宣言した。

「宇宙エリアにアブルホールを出撃させる」
「受けるわ」

あたしは本国を2枚捨て山に送る。

「残り本国…聞いていいか?」
「だーめ」

と言いつつあたしは薄い本国を数える。…14枚だ。

「了解。ターン終了」
「あたしのターン、最高評議会を起動して規定ドロー」

来た。
でも、すでに本国がこの枚数。アストレアを突破してさらにとなると…。

「配備フェイズ。フリーダム(ハイマットモード)をプレイ!攻撃ステップに入るわ!」
「遅すぎるくらいだぜ。回復はこの”正義の女神”アストレアが阻ませてもらう」

剣治は、イラストが見えなくなるほどコインが乗ったアストレアのカードに手をかける。

「いいえ!ここは意地でも回復させてもらうわ!ヴォワチュール・リュミエールのカードをプレイ」
「ユニット追加かっ…」
「フリーダムガンダム《EB2》を効果で場に!宇宙にハイマット、地球にフリーダムを出撃させるわ!」

あたしはユニットを一斉に出撃させる。

「…ヴォワチュールの効果で出たユニットはコマンドの効果の対象にならない。か」
「…ええ」

あたしは剣治が確認するように口走ったのを聞き、身構える。
そういえばここまで破壊コマンドを見てない。ザンネック・キャノン?狂乱の女戦士?

「ハイマット側にアストレアを防御に出撃させる」
「…オッケー。防御ステップ規定後、ランチャーストライクでアストレアの防御力を-3したいわ」
「ああ。こっちは特に何もないぜ」

アストレアの耐久はハイマットの射程内!

「じゃあこのまま相打ちで行きたいわ!」
「仕方がない…この6点はやる」

剣治は6点ダメージ、あたしは6点本国を回復する。
本国差は縮まったし、多少の犠牲は出たけど…アストレアも排除できた。このままなら行ける!

「ターン終了よ」

剣治はターンを開始する。
また自信満々の2点?

「配備フェイズ、ヤザン・ゲーブル《EB2》をアブルホールに。これで高機動4点のアタッカー!」
「…うっ」

あたしは思わず言葉に詰まる。
4点ずつダメージを受けると…間に合わないかも。

「攻撃ステップ規定、宇宙エリアにアブルホールを出撃!」
「…4点受けるわ」

残り13枚。

「剣治。残り本国は?」
「15枚だ」
「オーケー。なんとかなりそうだわ!」

しかし、あたしは最高評議会起動後にドローした直後、ターンの終了を宣言する。
今ランチャーストライクが殴りに行っても、本国差的に完全に無駄。何かユニットがこないことには…。
4点で本国上が綺麗になくなる次のターンに賭けるしかないわね。

「”何とかなりそう”じゃなかったのか?まあいい。ドローする」

剣治は悩むことなくアブルホールに手をかけた。
このターンも4点…残り8枚の本国。

「ターン終了だ」

あたしはターンをもらう。
最高評議会を起動カードを切り替えて…うん!さすがあたしのデッキ。持ち主(あたし)の要望にはしっかり答えてくれるわ!

「規定の効果でドローして配備フェイズ!」
「ちょっと待ちな!キーカードを引いたのが見え見えだ…ドロー規定後。ティターンズ結成!」

なるほど。ここでユニットプレイからの総攻撃は予想済みか。
打点は伸びないけど、仕方がない。

「カットイン、デュエルガンダム《21》をプレイするわ!」
「…っ。戦力は許したか。しかしこちらの本国は9点では落ちない!」
「そうね」

あたしは配備フェイズは「何も出さない」と宣言する。
デュエルだけ出撃で、次のターンを受け流して返しの9点で勝ちまでいけるかしら?

「攻撃ステップ規定の効果。デュエルガンダムを宇宙に出撃!」
「問題ない。5点受けるぞ」

剣治は、どうということはないと言いたげな顔で本国を1枚1枚捨て山に送る。

「ふぅん、なかなか余裕ね。そろそろブロッカー用意しないとアブナイかもよ?♪ターン終了」
「ブロッカー?残り本国5枚の相手にブロッカーが必要なのか。知らなかった」

あたしは挑戦的に笑いながらデュエルを手札に戻す。
そうよ。あたしの本国まだ5枚もあるのよ。デュエルをプレイするには十分!

その時、武志が視界の端でガッツポーズをしたのがわかった。
勝ったの?ならあたしも負けてらんないわね。

「ドロー。このターンで決める」

ドローしたカードを見るか見ないかのタイミングで剣治はそう言った。
まあそうね…何もなければ普通に攻撃に出るだけで、あたしの本国は1。次のターンのドローで負けだわ。

でもね!手札にはエールストライクガンダム《20》!
換装からの防御で一方的に交戦で勝利できるわ。それから本国を削れば問題なんてない!残りの本国を削りきるのも余裕よ♪

「攻撃ステップ規定、アブルホールを宇宙に」

来た!

「ええ。ヤザンはテキストの宣言が不可能になるだけ。行かせてもらうわ、換装でエールストライク!」
「…?」
「このカードは高機動を持つPSユニット!」

あたしは確認を取り、エールストライクを防御に出撃させる。

「ほーら、何もないとこのまま討ち取られちゃうわよ~」

あたしは意地悪い声を出す。
でも、どちらにしろこのダメージ判定ステップに破壊コマンドとかでエールを破壊したとしても本国に攻撃は通らない。
返しで本国を削りきって勝ちだ!

「フッ…その位予想できないカードじゃないぜ」
「あっそ。防御ステップ中にこの子をどうにかできるんならやってみなさいよ♪」

少し言い過ぎたかも。仮にも初対面だってのを忘れてた…。

「そいつをどうにかする…だと?君とは考え方のベクトルが違うようだ。ダメージ判定ステップ!」
「…ベクトル?」

ま、いっか。相手だって初対面なのにこのあり様だし。今更よね。

「このゲームはユニットをどうにかするんじゃなく、本国を削れば勝ちなんだ。ダメージ判定ステップ、モニター越しの対面!」
「あ」
「アブルホールの部隊が京子の本国に、エールストライクの部隊が俺の本国に規定の戦闘ダメージを与えるッ!これで君の本国は1枚に。俺の本国は5点程度平気に受けれるさ」

剣治は本国を軽くスライドさせ言った。
なるほど…これならブロックも関係なしに本国を。か。

「やるわね…でも、考え方ベクトルは同じみたいよ?」
「なんだと?」
「だーかーらー、本国を削るのが一番の勝ち筋なんだってトコ!」

あたしは手札からカードを1枚抜き出す。
次のターンにと思ってたけど、そっちがその気ならこっちもここが決戦!

「正義の行方!これでエールストライクを+4+4+4!!このままあんたの本国を貫かせてもらうわ!」
「くっ…9点だと!?」

思わぬ打点の伸びに剣治がひるむ。

…あれ?あっちの本国何枚だっけ?
あたしもさっきまで計算してた剣治の本国をど忘れして黙る。

「「規定の効果!」」

どちらが本国の枚数を聞くこともなくそう言った。
数えても無駄だしね。剣治の本国が1枚でも残ればあたしのドロー負け。逆に0に出来ればあたしの勝ち!


×××


「うむ…あと1ターン待って防御時にモニターを撃てば最悪相打ちだった…か?」
「え?でも、逆にそれだとエールとデュエルの両面パンチだから相打ちにしかなんなくない?完全に正義の行方からの奇襲勝ちなんだってば」
「うーむ…」

0になった自分の本国と1枚だけ残ったあたしの本国を見比べながら考察する剣治にあたしは言った。
外の風はますます強くなってるみたいで、空き缶がガラガラと転がっていくのがガラス戸の向こうに見えた。

「お、京子勝ったの?」

武志があたしのいるテーブルに手をつき、決着のついた場から何かを読み取ろうとする。
金ジャケの彼もこっちのテーブルに来て剣治に何か言っていた。

「まあね。白にユニットパワーで勝とうなんて10年早いのよ♪」
「おい、OOPのユニットをバカにしたな?リベンジだ!リベンジ!」

あたしのコメントを聞いて剣治が声を荒げる。
失言だ…つい調子に乗るとこういうこと言っちゃうんだよね…。
あたしは軽く反省しつつ、口を開こうとした。

「えー、今度は対戦相手変えようぜ?」

武志が提案する。
…は?まだ続けるの?

「フッ…いいだろう。君のダブルオーとも戦いたかったところだ」

剣治はそう言って笑う。
てか「フッ」て言いすぎでしょ。鼻で笑ってるって言うか口で言っちゃってるし…。

「では、私はあなたとですね?キョーコさん。私は名前の通り…」

それぞれ言いたいことを言い合ってる中…あたしのお腹がなる。

静まり返る3人。

「あーもう!お腹減ったの!解る!?」

あたしは恥ずかしいやら腹立たしいやらで、両手を挙げて降参のポーズを取る。

「はい、今日は終了!あたしはお昼ご飯、あんたたちはフリプレでめでたしめでたしー」
「ちょ…」

ぽかんとしてる3人を尻目に、あたしは神業的速さで荷物をまとめると空き家のドアを開けた。
空き家の前に止めたあたしの自転車は強風で倒れていた。クソ。

「お元気で~」

ガタンと扉を閉め、あたしは自転車を起す。あーカゴ曲がってるし!
荷物をカゴに入れてスタンドを倒す。

「待てよ、京子」

武志も荷物をまとめて空き家を出てくる。
ちゃんと空き家に残ってるあの二人に頭を下げて、だ。

「なんだ、まだフリプレしてれば良かったのに」
「バーカ。俺も腹減ったに決まってんじゃん」

武志は荷物のチャックを閉めながらしらっと言った。

「どっか食べに行く?」
「そうだな。あ、今日チャリじゃねーから荷台借りるぜ」
「あんたこそバカね。”か弱い女の子”が後ろって相場が決まってんでしょうが」

あたしは自転車のスタンドを再び立て、サドルを指差した。
ぶっちゃけ、お腹減ったからお店まで自転車こぐ気力もないわ。

「お、サンキュー」

武志がスタンドを倒し…荷台に乗ろうとしたあたしを残したままペダルをこぎだした。
はぁ!?

「バカー!乗せてけー!」
「いやいやー。乗せるような”か弱い女子”ここにいないじゃーん」

離れていく自転車を追って走るあたしに、武志は笑いながら言った。


つづく


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txt:Y256

初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.03.31
更新日:10.04.14