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#70 ブースターが来る


あたしはビシッと指を立て、向かい側に座った『ワシ』を指差した。
それに気付いた『ワシ』は顔を上げる。

「うちの古田詩織が代わりに相手よ!」
「え~」

詩織は困ったような顔であたしを見る。
でも、この顔はそこまで嫌がってない。「しかたないね」の顔。

さー行きなさい!詩織!
あたしは隣のテーブルの椅子を引き寄せて座る。

「お願いします」

礼儀正しく頭を下げる詩織。

カットが終わり、お互いマリガンチェックが終わって『ワシ』が青基本Gを出した。
どうやらあたしが椅子を持ってくる間にじゃんけんは終わってたみたい。

「北極基地をプレイするぞい」
「はい」

『ワシ』は手札をもう一枚表にする。拠点型ね。
にしても『ワシ』の外見と喋り方がかなり違和感あるわ。

「ターン終了して北極ドロー」
「はい。私のターン始めます」

詩織は、本国のカードを1枚引いて、迷うことなく手札からGを出す。
言っていた通りの赤G。

今更断言する必要もないけど、赤はコントロールの色。
マストカウンターとかがわからないんじゃない。現にカンフリなら使ったことあるし。
でもユニットパワーがないのは不安になるから嫌。赤単色を好きになれないところはそこなんだよ。白かぶれとか言われそうだけど。

「1コスト。ガザC《15》をプレイします」
「ほう…ガザCとな?」

詩織はコクリと頷く。
格闘2と解体のテキストを持った、禁忌の胎動収録の1国ユニット。

「ターン終了です」

詩織は、宣言しながら手札をテーブルに置いた。

「おぬしらどこから来たんじゃ?見ない顔だが」

『ワシ』はドローしながら、対面の詩織とあたしの顔を見てそう言った。
あたしは入り口のほうを指差して「府釜です。フガマ」と返す。

「府釜!」

『ワシ』はあたしの言葉を聞くなり、合点がいったというように手をポンと叩いた。
あまりに突然の反応に、詩織の肩がビクリとなる。

「そうすると、府釜勢に新しく加わったとかいう女子はおぬしらか!」

なんだか嬉しそうに笑う『ワシ』
…はて?府釜勢なるものにあたしは入った記憶なんかないけど。
詩織も困惑顔であたしを振り返る。

「信一郎め、やりおるわい」
「あのー…失礼ですがあんたは何者ですか?」

勝手に喜んでいる『ワシ』に、あたしはうんざり気味に声をかける。
『ワシ』は「お、自己紹介が、まだだったかの?」と言って立ち上がる。

「ワシは伊達勢・田代橋男じゃ」

偉そうに言う『ワシ』こと田代。
今度はあたしが手をポンと叩く。

「毎年信ちゃん達とブードラしてた」

あたしは温泉でブードラをすることになった件を思い出して言った。
曖昧な記憶の中から信ちゃんが言っていた「別のグループ」の話を思い出す。
(Season2 #45 参照)

「おお、去年はちと野暮用でな」

田代は嬉しそうに続けた。

「なるほど…そっか。世の中は案外狭いわね…あたしは本田京子」
「古田詩織です」

あたし達は改めて田代に名乗る。
田代はそれで区切りと言わんばかりに、再び手札を見る。

「府釜勢か…負けてられんの。青基本Gを出してターン終了じゃ」
「私のターン始めます。配備フェイズ。赤基本Gをプレイして、このカードも配備」

詩織は2枚目の赤基本をきれいに並べてから内部調査を出した。
この内部調査は大きいかもね。

「攻撃ステップ、ガザCを宇宙に出撃させたいです」
「了解じゃ。こちらは何もない」

田代は手札を置いて、本国の上のカード2枚を捨て山に送った。
返しのターンも青の基本G1枚を出しただけで、田代はターンを終了し、再び詩織のターンになる。

なかなかテンポ良く進むね…。つか田代のデッキは何だろ?青中?

「黒の部隊を配備して、ギラドーガこのカードをプレイします」
「了解じゃ」

詩織はまたガザを宇宙に出撃させて本国にダメージを与えた。

「ターン終了です」
「ワシのターン、ドロー」

田代は「よしよし」と言いながら戦いに戻る理由をヴァリアブルで出す。
青3、黒1が発生だけど…?

「配備フェイズはこれで終了じゃ。攻撃ステップ!」

身構える詩織。

「シロッコの眼。さて、手札を見せてもらおうかの」
「…カットインお願いします」
「ふむ」

詩織は動じず、手札を1枚表にする。…作戦の看破《1》だ。
田代は「持っておったか。なかなかやるのう」とか言ってシロッコの眼を廃棄する。

「ターン終了じゃ」
「はい」

詩織はユニットを起しながらターンを開始する。
田代のデッキは遅いわね…それとも色事故かなにか?

「配備フェイズ、密約をプレイ。対象は私で」
「おお。最近は対象を言わん奴が多いからの。良い心がけじゃ」

ふむふむと頷く田代。
確かに武志とかが密約プレイするときって、相手を指定するとき以外対象の宣言なんかしないわね…。
詩織は、意味がわからないというように首をかしげながら2ドローする。

「ガザCを解体。ノーティラスをプレイします」

お目当てのGを引けなかったのか、詩織はガザに解体コインを乗せる。
でも4点も本国打点出せたんだからガザは序盤の役割は果たしてるし、上手く回ってるといって差し支えないレベルね。

「攻撃ステップ、宇宙にギラドーガとノーティラスを出撃。そして…」
「…?」

赤中がこのタイミングにすることは…あれしかないわね。

「ドライセン(ラカン機)を地球に」
「ドライセンの初動時の破壊力を拠点突破にあてるとは…なかなか思い切りがいい。防御ステップじゃ」

田代はああだこうだ言いつつ、北極基地を防御に出す。
本国には宇宙エリアから7点が与えられた。

「ターン終了です」

田代はドローして手札と睨めっこ。
そろそろ動くかしら?

「配備フェイズ、王留美を基本Gに。2ドローじゃ」
「はい」
「5枚目の基本Gを出し…さあ行くぞい!」

ドロー直後に田代は手札からカードを出す。
あれは…?

「ZプラスC1Bst型。通称”ハミングバード”!」
「テキストいいですか?」

詩織は興味津々でテキストを覗き込む。
確か、出撃時や交戦時に本国の上からBstのユニットを引っ張り出す飛行機…。Bstデッキ決定ね。

「出撃いいかの?」
「はい。どうぞ」

詩織はさらっと許可する。
「では」と言い田代はハミングバードを出撃させる。

「効果起動!本国5をサーチし…Sガンダム(ディープ・ストライカー)を部隊の先頭にだそうか」
「…え?」

詩織はぽかんとして聞き返す。
どうやらアレの存在と知らなかったみたい。確かに効果見ただけじゃわからないもんね。

「あれも特徴:Bstなわけ」
「そうなんだ。おっきいね…」

あたしは中腰で詩織に耳打ちする。
どうやらこの8点を防ぐ手立てはないみたい。
詩織はおとなしく本国に8点を受け、難しい顔でじっと田代のほうを見る。
…何?

「帰還するぞ?」
「あ、はい…」
「どうしたの?」

あたしは不審思って詩織の肩をとんとんとする。

「ううん。あのガンダムの効果はこないのかなって」
「ああそれなら起動コストが6国必要だからこのターンは大丈夫」

あたしは小さくガッツポーズをして言う。
なるほど、確かに部隊戦闘力8だから8点振り分け。耐久性の低い赤中には死亡宣告も同然ね。
そこまで考えて、あたしはあと1ターンでそれが現実になることを思い出し、デッキを持って来ればよかったと後悔する。
白ならあんなんサイズで圧倒できるのに!

「ターン終了じゃ」
「私のターン、ドローして…サラサ再臨をプレイします」

対抗手段が引ければまだ行けるってわけよね。

「転向。このカードをディープストライカーにセットします」
「!?信号弾あたりを用意すると思ったが…やりおったの」

田代は顎に手をあてて唸る。
うは。ザマミロ。せっかく引っ張り出したのに残念でした!
行け行け!詩織!

「攻撃ステップ、宇宙にギラドーガ、とノーティラス。地球にドライセンを出撃させます」
「くぬぅ…了解じゃ。10点でいいかの」
「はい」

心なしか詩織の背中は「エッヘン!どうだ!」と語っているように見えた。

「ワシのターン…政治特権!まだまだワシのブースター部隊はあるぞい」

そう言いつつ、田代は青基本Gを切る。
そんなこと言ったって10点クロックと奪われたディープストライカーの猛攻は辛いでしょうに…。

「攻撃ステップに入る!」
「はい。どうぞ」

田代は詩織の顔をうかがうように手札を握る。

「2枚目のハミングバードッ」
「…はい」

詩織のカットインはナシ。

「では、自分でカットインさせて貰おうかの。補充要員!」
「えっと…テキストは」
「1ドローして手札1枚を本国の上か下に移す”だけ”じゃ」

詩織はそれを聞いて許可を出す。
でもあたしには田代の「だけ」って表現が気になった。

「では、さらにカットイン!」
「?」

何枚持ってんのよ?
いや、むしろ何を…?

「恫・喝」

突如田代がすごむ。
あたしはその顔に噴出した。なにが「どぉう・かぁつ」よ…。

いや…待って。

「あ」

詩織も動きを理解したようで声を上げた。
恫喝で奪われたディープストライカー含め全てのカードを戻して、次に補充要員で手札に戻ったディープストライカーを本国に。そしてハミングバードのみが場に出る…。
出撃した時点で本国トップからディープストライカーが登場で8点クロックが完成…。

「理解したかの?1枚1枚のカットに意味はなくとも、全てが通ったときに初めてゲームは動く」

田代は再びGが4枚並ぶ前に詩織の本国がなくなることを確信し、鼻を鳴らした。


つづく


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txt:Y256

初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.04.23
更新日:10.04.14