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#71 恫喝は容易く


「では、ハミングバード、補充要員に続き、さらにカットインじゃ!」
「?」

田代は、詩織にカットインの意思が無いと見ると、もう1枚の手札を表にした。
…?

「恫・喝!」

突如田代がすごむ。
なにが「どぉう・かぁつ」よ…いや、待って!?

「あ」

詩織も動きを理解したようで声を上げた。
恫喝で奪われたディープストライカー含め全てのカードを戻して、次に補充要員で手札に戻ったディープストライカーを本国に。そしてハミングバードのみが場に出る…。
ハミングバードが出撃した時点で、本国トップからディープストライカーが登場で8点クロックが完成…。

「理解したかの?1枚1枚のカットに意味はなくとも、全てが通ったときに初めてゲームは動く」

田代は、再びGが4枚並ぶ前に詩織の本国がなくなることを確信し、鼻を鳴らした。

「あ、あの~…」

国力と場のカードをひとまとめにして、手札に移そうとする田代に、詩織が声をかける。

「ん?なんじゃ?」
「恫喝にカットインします」
「お?」

詩織は「じゃあ」と言わんばかりにコマンドをだす。

「もみ消し。対象は2国以下の合計国力を持った補充要員で」

田代は唖然として詩織を見る。
なるほど。さっきは補充要員を軽視するように見せたからカウンターを撃たなかっただけで、この状況なら普通に補充要員が要だとわかる。

「よかろう。補充要員が解決された後、恫喝→ハミングのみ通るぞい」
「はい」

二人はお互いにカードを束にして手札に戻す。
最後に詩織が丁寧にディープストライカーを返した。

「では、場に唯一残ったハミングバードが攻撃に出撃じゃ!」
「どうぞ」

出撃時の効果で、本国を見る…案外ここが勝負ね。
本国5枚の中にディープストライカーがあれば、本来狙ったとおりのコンボが成立して終了しかねない。

「なし…じゃ。とりあえず特殊兵装をつかう。資源1」
「わかりました。攻撃は0でいいですか?」

詩織はほっとして聞く。
田代はコクリと頷き、ハミングバードを帰還させた。兵装は見つからないみたい。

「ワシは自分のターンの終了時に手札を切るぞ」
「はい。…私もですか?」

詩織は半分こっちに向き直りながら聞く。

「…いや、おぬしはいい。手札の調整は自分のターン終了時だけだからの」
「ありがとうございます」

田代の声音は「こいつ初心者?」みたいな響きだ。
詩織はニコッと笑ってターンを開始した。
何をドローしたにしろ、赤基本と内部調査は確定だ。最初からやり直しの雰囲気。

「何?恫喝通っちゃったの?」

じゅんがカウンターから戻ってきた。
手には変革の叛旗が3パック。

「まあね」

あたしは対戦してる二人に聞こえない程度の声で答える。
このデッキを知ってたんだ。まあ身内のだしね。

「そういや、”伊達勢”って何人くらいいるの?」

あたしはヒソヒソと続ける。
都会なんだから結構いるんだろうか?毎回大会は大人数で忙しそうね…。

「うーん…どっからが伊達勢なのか僕にもわかんない。実際にそう名乗ってるの田代さんとか数人だし。おねえちゃんたちはその…府釜勢なの?」
「いんや。今日はじめてその単語聞いたわよ」

あたしは苦笑して答える。
なんだ。ちゃんとした派閥があるのかと思って少し驚いたけど、案外なあなあじゃんね。
信ちゃんや公旗が伊達勢云々を自称するとは考えづらいし…いや撤回。公旗なら「私は府釜勢力緑代表」とかほざきそうだわ。

「あ、動いたね。詩織さん側」

じゅんが二人のほうを指差して小声で言った。
そういや振り出しに戻ったって言っても、まだ対戦は続いてたんだったわね。

「戦闘フェイズに行きたいです」
「了解じゃ。ドライセンは捨てられてないからの」
「はい。地球にドライセンを出して、宇宙にはにはギラドーガとレウルーラ《7》が出撃します」

詩織の場は4枚のGと内部調査、3枚のユニットが展開済み。
完全に再展開されたわね。
対して田代側は青4Gとロールのハミングバード。その本国が何ターン持つかしら?

「この打点は全て受ける」

11点は大きい。これを全て受けて、次のターン本国からディープストライカーを出せたとしても手遅れな雰囲気だ。
終わったわね。恫喝が普通に通ったときはどうなるかと思ったけど、運がなかったわね、田代。

「ワシのターン、ドロー。5枚目の青基本Gを配備して、このカード」

田代はそう言って、手札から抱擁を出す。
15点回復のコマンド。最近見ないけど、威力は十分あるんだよね。

「回復して、攻撃ステップ」

意気揚々とハミングバードと宇宙に出撃させる。
本国を5枚サーチ。登場するユニットはなし。でも、田代はめげない。

「ここからが本番!特殊兵装を使う。捨て山対象!」

なるほど。本国トップにハミングバードの兵装であるブースターユニットを発見したのかな?

「ブースターユニットを装着!さらに防御ステップの効果!」
「はい」

…ああ。そういや手札にはあるんだよね、ディープストライカー。
そして、この兵装は5国あれば防御ステップに自身を廃棄することで、ハンドかハンガーからBstを出せるテキストを持つ。
詩織もそれは覚えてる。防ぐ手立てもないわけで。

「ディープストライカーを部隊の先頭に!これで高機動8点」
「また出ちゃいましたね…8点受けます」

詩織は特に焦るわけでもなく、本国のカードを8枚捨て山に送る。
残り本国は…あたしの目算で5枚前後。あらま。次のターンにディープストライカーのテキストが起動する以前に本国がなくなるわね。

「ターン終了じゃ」
「はい。私のターン開始します」

詩織は内部調査を寝せて「上で」と言いつつドローした。
手札のカードを見て少し眉をひそめる。順番でも考えるかのように。

「まず、モルゲンレーテをプレイしてクァバーゼ(ギリ機)《21》をプレイ」
「了解じゃ」

5枚目のG、モルゲンレーテを出してからクァバーゼを出す詩織。
早すぎじゃない?
ギラドーガを指差して「このユニットが+3で」と言い、詩織は次の手札に手をかけた。
まあどうせ防御に出撃できないんだからここで攻撃に使おうってことかしら?

「…コスモ・バビロンを配備したいです」
「了解じゃ…って、なんと?」
「コスモ・バビロンです…あ、読み方違いましたか?」

詩織は「あれ?」という顔でカードの名称をもう一度確認する。
いや、それ名前カタカナだから間違いませんて。

あたしはツッコミを入れつつ、そのオペレーションを見た。
マジでコスモ・バビロン《7》だ。歴史の教科書に載るレベルの古いカード…。

「ふむ。司令部ではなくそれを使ってくるということは、何か理由があるのか…ともかく了解じゃ」

詩織は何事もなかったかのように捨て山を本国の下に移す。
バビロン使う理由って何よ?

「モルゲンレーテを使ってハンガーに作戦の看破を」

詩織はテーブルの脇に看破を表向きで置いた。
どうやらそこがハンガーという意味らしい。

「なんじゃ…カウンターを表にしては…」
「手札だと危ないんです」

詩織は小さくそう言った。

「最後はこれです。鋼鉄の七人」
「!?」

カウンターなどあるはずもない田代は黙って成り行きを見守る。
詩織の場には、ギリバーゼ、+3されたギラドーガ、ラカンドライセン、レウルーラがある。
確かに鋼鉄でキャラを呼べば、いきなり打点は上がる。

…でも抱擁使われた後で、一撃で本国を落とせるわけはない。
それに詩織のユニットじゃ高機動はブロックできないし、次のターンから特殊兵装のテキストで防御される。

万事休すかな。

あたしは本国をすべて見ながらキャラを探す詩織の横顔を見ながらそう思った。

「はい、ありました。クァバーゼにカロッゾさん《17》」

詩織はキャラクターを1枚1枚ユニットにセットする。

「ギラドーガにギリさん《21》」
「ほう…赤フルキャストというわけか」

田代は関心したように頷く。
逆に言うと、さっきあたしがしたような計算をして勝ちを悟っての頷きか。

「最後は、ドライセンにドレルさん《7》」


…!?
あたしと田代は固まり、じゅんだけが「なに?なにしたのさ?」とあたしに小声で話しかけていた。

「以上です。カットお願いします」

詩織は恥ずかしそうに笑うと、残りの本国を田代に手渡す。

「「鋼鉄ドレルーラ?」」

我に返ったあたしと田代は、同時に詩織に言った。


つづく


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初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.04.24
更新日:10.04.14