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#72 詩織の理由は


「…コスモ・バビロンを配備したいです」
「了解じゃ…って、なんと?」
「コスモ・バビロンです…あ、読み方違いましたか?」

詩織は「あれ?」という顔でカードの名称をもう一度確認する。
いや、それ名前カタカナだから間違いませんて。

あたしはツッコミを入れつつ、そのオペレーションを見た。

「ふむ。司令部ではなくそれを使ってくるということは、何か理由があるのか…ともかく了解じゃ」

詩織は何事もなかったかのように捨て山を本国の下に移す。
バビロン使う理由って何よ?

「モルゲンレーテを使ってハンガーに作戦の看破を」

詩織はテーブルの脇に看破を表向きで置いた。
どうやらそこがハンガーという意味らしい。

「なんじゃ…カウンターを表にしては…」
「手札だと危ないんです」

詩織は小さくそう言った。

「最後はこれです。鋼鉄の七人」
「!?」

カウンターなどあるはずもない田代は黙って成り行きを見守る。
詩織の場には、ギリバーゼ、+3されたギラドーガ、ラカンドライセン、レウルーラがある。
確かに鋼鉄でキャラを呼べば、いきなり打点は上がる。

…でも抱擁使われた後で、一撃で本国を落とせるわけはない。
それに詩織のユニットじゃ高機動はブロックできないし、次のターンから特殊兵装のテキストで防御される。

万事休すかな。

あたしは本国をすべて見ながらキャラを探す詩織の横顔を見ながらそう思った。

「はい、ありました。量産型クァバーゼにカロッゾさん《17》」

詩織はキャラクターを1枚1枚ユニットにセットする。

「ギラドーガにギリさん《21》」
「ほう…赤フルキャストというわけか」

田代は関心したように頷く。
逆に言うと、さっきあたしがしたような計算をして勝ちを悟っての頷きか。

「最後は、ドライセンにドレルさん《7》」


…!?
あたしと田代は固まり、じゅんだけが「なに?なにしたのさ?」とあたしに小声で話しかけていた。

「以上です。カットお願いします」

詩織は恥ずかしそうに笑うと、残りの本国を田代に手渡す。

「「鋼鉄ドレルーラ?」」

我に帰ったあたしと田代は、同時に詩織に言った。

「え?」

詩織はキョトンとしてあたしを見る。
ガンダム《20》からの鋼鉄の七人とかなら話には聞いてるけど…今になってドレルーラねぇ。

「ううん。珍しいの入ってるなと思って」
「そう?ほぼ確実にドレルさん持ってこれるから強いと思うんだけどな」


詩織はそう言って、また田代に向き直り「出撃していいですか?」と言った。
じゅんは、ドレルのテキストがまだ気になるようで覗き込んでる。

「あれでユニット廃棄したら、追加ターンで攻めるユニットいなくなっちゃうんじゃないの?」

じゅんがあたしにヒソヒソと話す。

「あー。あれはね、レウルーラでユニットコインを出せるから、それをコストにドレルを起動するの。んで補給して追加ターン攻撃。みたいな」
「なるほど…」

頷くじゅん。
詩織は宇宙にドレルのドライセン、ギリバーゼ、レウルーラを、地球にギラドーガを出撃させたみたいだ。

「ううむ…困ったのう。もしかすると削りきられる…かの?」

本国を数えずに田代は言い、手札を1枚取った。
…ああ。そういやまだ使ってなかったのね。

「手札に戻っていた1枚目のハミングバードじゃ。ドレル側を防御」
「はい。交戦になったのでテキストをどうぞ」

詩織は冷静だ。よく見ればダミーコインはドレルの部隊の先頭に3個だしてる…ハミングバードからのディープストライカーでドレルが帰還ステップまで生き残れないことを警戒してだ。
宇宙の部隊、地球の部隊共に、部隊戦闘力は8。どっちを守っても8点は通る。

そして補給されたドライセンとギリバーゼ、エンド時にカロッゾの効果で出たバグコインで追加ターンの打点も6+7で13出せる。

「特徴:Bstはなし。このままダメージの応酬じゃな。8点は通す」

そう言って田代はハミングバードをジャンクに送る。

「はい。補給適応して帰還ステップ。ドレルさんのテキストで ダミーコインを廃棄。私の戦闘フェイズを開始します」

ターン終了を宣言し、詩織はバグコインをだす。

「残り本国はいくらでしょうか?」

詩織は少し難しい顔をして聞いた。
今更かい…。

「15じゃ」
「ありがとうございます。…地球に量産型クァバーゼ、宇宙にドライセンとコインで出撃したいです」
「了解じゃ。この攻撃は全て通る」

田代は本国を13枚捨て山に送り、詩織は「ターン終了です」と言った。

「久しぶりのワシのターン…なんと!」

田代は引いたカードを見て目を見開いた。

「理由はわからんが…わからんが、しかし!」

田代はブツブツつぶやく。
…なんなのよ?

「だが状況はワシに”勝て”と言っておる…」
「どうぞ」

詩織はそう言って微笑む。
それに促されるように、田代は手札からカードを1枚出した。
…あ。

「さ、三段構えをプレイしたいのじゃが」

しばしの沈黙。

「あ」
「はい」

詩織は小さく肩をすくめて「私の負けですね」と言った。
ってオイオイオイオイ!プリベント付きのオペ割1枚で終わったよ。

「Gが1枚多くてもダメなんですよね、そのカード」

詩織はカードを片付けながら三段構えのことを言う。
たしかに看破1枚じゃ、ジャンクからテキストでバビロンを破壊されちゃうもんね。
…って論点はそこじゃないんじゃない?

「…なんで司令部ではなくバビロンなんぞ使っているんじゃ?よければ仕掛けを見せてくれないかの?」
「仕掛け…ですか?」

未だ思案顔の田代が口を開く。
そう!それよ。

詩織は首をかしげる。

「何で司令部じゃないのかってこと」

あたしは椅子を戻しながら補足する。
司令部は完全とは言えないものの、デメリットの差を考えても、バビロンとは比べ物にならない使い勝手だ。それなのに、わざわざバビロンで敗北条件増やさなくたって…。

「あ、なるほど。私…持ってないんだよ、司令部の移送。勇君もないって」
「…それだけじゃと?」
「はい。それだけです」

田代はそこで笑った。理由がやっとわかったと言いたげに。

「おい、根基君」

唐突に田代はカウンターのほうに大声で叫んだ。
カウンター方から眼鏡をかけた店員さんらしき人が出てくる。見た感じバイトかな。

「この女子(おなご)に司令部を2枚出してあげてくれ」

店員は「は、はい」と言ってシングルのバインダーからカードを探す。
なんだ。これ。

「あのー」
「ワシから進呈しよう。司令部を」

詩織が「?」を出しているのを見て、田代はやっと説明した。

「いえ、そんな。悪いです」
「気にすることはない。どうせワシの店の商品じゃ」

田代はワハハと笑い、対戦スペースにやって来たバイトさんから司令部を受け取り、そのまま詩織に渡す。

…”ワシの店”ですって?今そう聞こえたけど。

「あなたが…店長さん?」

あたしは思いっきりいぶかしげな顔で質問する。
いや。そう見えないとか失礼な理由じゃ決して…。

「そうじゃが…言ってなかったかの?」
「あ…マジで」

あたしはぽかんとしてじゅんのほうを見る。
一言もそんなこと言わなかったから、てっきりただの常連かと。

「おっと…時間じゃ。それではワシは用事があるから失礼しようかの」

田代は立ち上がった。
じゅんも「じゃあ僕も帰ろうかな」と荷物を取りに行く。

「じゃあ、あたしたちも行こっか」
「そうだね」

詩織はデッキケースを片付ける。


×××


「でもさーあれが司令部だったら勝ってたよねー」

あたしはストローの袋を取りつつ言う。

詩織が言うとおり時間をはずして正解だ。サイ○リヤの店内はあたしたちと数人の客しかいない。

「そんなことないよ。それ言ったら補充要員カウンターできなかったら負けてたよ?」
「うーん。そんなもんかね。なんか違うような」

あたしは指でもてあそんでいたストローの袋を置いて、髪をグシャグシャっとする。

「ま、いっか。なにかデザート食べる?」
「え?京ちゃんまだ食べるの?」


つづく


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初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.04.28
更新日:10.04.14