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#73 誰かが捨てたモノ


夕日が空き家のガラス戸から差し込む。

あたしは少し長めになってきた髪の毛を指でクルクルと巻きながら、今日誰かが言ってた「男子は髪が伸びるのが早いほどエロい、女子は髪が伸びるのが遅いほどエロい」とかいう話のことを考えて、クスリと笑った。
そんなんどこに根拠があるってのよ?

「そういえばさ、もうすぐタクスタ発売じゃん?今回は買うんだよな?」

武志は、カットしたデッキを公旗に返しながら、思い出したようにあたしに言った。今日は空き家にはこの3人。

タクスタ発売かぁ。もうそんな時期なのよね…。『武神降臨』が発売されてからあんまり経ってないように感じるけど、忙しかっただけかも。

「当然。去年のと違って白があるからね」
「だよな。青のカードトレードしてくれよ?俺は『破壊と再生の剣』のほうしか買わないから」

武志はそう言ってからからと笑う。
それが狙いかい。まあ青のカードは使わないからいいけど。
松岡もポスターの『黒の新破壊カード』がどうとか言ってたけど、黒赤の構築済みだから詩織と半分にでもすればいいのに。

「はいはい。タクスタ大会に出た後ならね」

あたしは髪を巻いていた指を離し、背伸びをした。

「公旗さんは今年は買わないんですか?タクスタ?」
「あぁ、無論だ。緑の『み』の字もないスターターなど、興味はない」

だろうと思った…。
公旗は緑の基本Gを出してターン終了を宣言した。

あたしの位置からは、さっきからチラチラと公旗の手札が見える。
あのアプサラス3《10》はいったい何に使うんだろ…?

あたしは公旗を少し呆れた目で見ながら立ち上がり、トイレに向かった。
空き家のトイレは一番奥にあって、「といれ」と書いてある古い木製の扉の向こうだ。

古い銀色の鍵が「ギチ」と音を立てて動く。

水を流しながらしゃがみこんだあたしは、ゴミ箱をふと見る。
…中には、くの字に折り曲げられたカードの束が捨てられていた。

買った人がレアを抜いて捨てたのかな?ガンダムウォーのカードじゃないけど、すごくイラッと来た。






あたしは水を流し、トイレの扉を開ける。
スゲー嫌なもん見た。

「どうした?間に合わなかったか?」

急に不機嫌になったあたしを武志が冷やかす。

「ばーか。カードが捨ててあったの」
「…お前そういうの嫌いだもんな」
「うん」

あたしはそっけなく答えてから元の位置に座る。
冷やかしじゃなくて和ませようとしただけだってことくらいわかってる。

「あんた”そっち系”の趣味あったの?」

あたしは気を取り直して、武志の冗談に返す。
どう考えても返すタイミング遅いけどね。
武志は笑って「ねーよ」と言った。

「今少年と話していたところなんだが、お嬢さんは今年は地区予選に出るのかな?」

少し間を空けて公旗が口を開いた。
手札にもうアプサラス3はない…と思ったら場に出ていた。

「地区予選…ですか?」

あたしはきょとんと聞き返す。

「ああ。伊達CSだ」

公旗は少し説明を加えた。
年二回、ガンダムウォーの地区予選と本選が行われ、半期ごとに全国1位を決めるらしい。

去年も確かそんな話があったけど、アーチェリーの試合があったから断ったはずだ。

「確かその日は大丈夫です」

あたしは公旗が言った日付あたりの日程を思い出しながら答える。

「では決まりだな。と、アプサラス3のテキストで本国に14ダメージだ、少年」

公旗が2回うなずき、武志のほうを向き直って手札を捨てた。


「あー!なんかやる気出てきたかも!」

あたしは少し大きめの声を出す。
唐突に言ったあたしに、本国のカードを全部捨て山に送り終わった武志が「はァ?」と言った。

「武志負けたんでしょ?ホラ、次はあたしの番よ」

あたしはカバンからデッキケースをだして机に置いた。
伊達の予選大会。いけるところまで行ってやるわ!

「白デッキ。…望むところだ」

公旗はアプサラスをデッキの束に戻しながら不適に微笑んだ。


つづく


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初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.05.12
更新日:10.04.14