ATAGUN@Wiki
#87
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#87 お昼休憩が肝心?
「ふー」
あたしは息を吐いてエスカレーター前のイスに座る。
2回戦が終わりお昼休みに入った会場は、心なしかCS大会中よりも人が少ない。
でも、ガンスリンガーの列はさっき見たときよりも長くなってる気がする。CS参加者がこの時間を活かして並んでるのかな…?
2回戦が終わりお昼休みに入った会場は、心なしかCS大会中よりも人が少ない。
でも、ガンスリンガーの列はさっき見たときよりも長くなってる気がする。CS参加者がこの時間を活かして並んでるのかな…?
「あ、京ちゃん」
声がするほうを見ると、詩織が手を振って階段を小走りで上がってくる。少し後ろから歩調を変えずに松岡。
「どしたの?まさか…わざわざこんなところまでイチャつきに来たとか?」
「ううん。ちょっと様子見に来たんだよ」
「ううん。ちょっと様子見に来たんだよ」
詩織は「ね」と言い、やっと階段を上り終わった松岡に振り返る。
なんだか最近詩織は元気いっぱいだ。
なんだか最近詩織は元気いっぱいだ。
「わざわざお前らの大会なんか見に来なくてもいいって俺は言ったんだけどよ」
「言ってない言ってない」
「言ってない言ってない」
そう言って笑う詩織に、松岡は頭をかいて会場のほうを見渡した。
いや、やっぱりノロケるために来たんでしょアンタら…。
いや、やっぱりノロケるために来たんでしょアンタら…。
「お、松岡勇。今日は来ないんじゃなかったのか」
剣治がそう言いながら、会場から抜け出してきた。
意識してないつもりだったけど、二度見しちゃった。
意識してないつもりだったけど、二度見しちゃった。
剣治の台詞に対して、松岡は「いいや。お前がきちんと黒を使ってるか見に来てやったのさ」と鼻で笑う。
「で?的場君とはどう?」
「は?」
「は?」
剣治が「フッ…お前に気にかけてもらうまでもない」と答えているのを尻目に、詩織がけろっとした顔で小声であたしにささやく。
「な、なんにもないって」
あたしはギクリとして一歩下がる。
「…てか何で知ってんのよ?さては…ちあきだな。あのお喋り」
「京ちゃん私には秘密にしてる気だったの?」
「京ちゃん私には秘密にしてる気だったの?」
詩織は少し怪訝顔で――でも見るからに面白がって――首をかしげる。
あたしは頭をグシャグシャッとして「う~ん」と唸ったあと、観念して口を開く。
あたしは頭をグシャグシャッとして「う~ん」と唸ったあと、観念して口を開く。
「そうじゃないケドさ。…なんて相談したら言いかわかんないじゃん」
「へ~京ちゃん意外にオクテ~」
「もー今日の詩織キャラ違う!」
「へ~京ちゃん意外にオクテ~」
「もー今日の詩織キャラ違う!」
あたしたちがそんな話をしてる間も、剣治と松岡は「報復行動理論」なる議論を繰り広げていた。
「なんだよ。カップル来てたんだ」
今度は武志。こいつは2回戦、ずいぶん長く戦ってたみたい。
で、対戦後も対戦相手といろいろ喋ってたのをさっき目撃した。
で、対戦後も対戦相手といろいろ喋ってたのをさっき目撃した。
「うん。京ちゃんの応援にね」
「へー。その京子は2回戦どうだったんだよ?」
「バッチリよ。ユニット戦で圧・倒!」
「へー。その京子は2回戦どうだったんだよ?」
「バッチリよ。ユニット戦で圧・倒!」
あたしは大きくガッツポーズをしてみせる。
実際、青赤00を相手にユニット戦で勝ってみせたのよ?
実際、青赤00を相手にユニット戦で勝ってみせたのよ?
「マジか~俺はまたも事故ったぜ。青事故。今日はマジでダメコース」
「そういう日もあるわよね」
「そういう日もあるわよね」
あたしは両手を挙げる。
「そういや公旗さんたちは?」
「お昼食べに行ったよ?わざわざそば屋だって。ちょっと遠いからパスって言っておいたわ」
「お昼食べに行ったよ?わざわざそば屋だって。ちょっと遠いからパスって言っておいたわ」
あたしは数分前のことを思い出しながら、武志の問いに答える。
なんでも公旗がそば好きだとかで、三人で2ブロック向こうのそば屋に行くという話だった。
なんでも公旗がそば好きだとかで、三人で2ブロック向こうのそば屋に行くという話だった。
信ちゃんと菊池さんの結果は聞かなかったけど、どうやら公旗は2回戦も勝ったらしい。
「そうかじゃあ俺たちはどうする?」
「そこらへんで済ませちゃおっか?」
「そこらへんで済ませちゃおっか?」
質問に質問で返すあたし。
でもまあ、こうやってなんだかんだ武志が方針を決めて動くのはいつものことだし。
でもまあ、こうやってなんだかんだ武志が方針を決めて動くのはいつものことだし。
「よーし、そうと決まったら急ごうぜ。昼休みは無限じゃないんだ!」
「いや、何を張り切ってるんですか?君は」
「いや、何を張り切ってるんですか?君は」
小走りで階段に向かう武志に軽く突っ込むあたし。
視界の端で剣治が松岡に手を振って会場のほうに戻るのが見えた。
視界の端で剣治が松岡に手を振って会場のほうに戻るのが見えた。
あ゛。てっきり一緒に行くのかと思ってた。
そういや、この4人でつるんでるときってあんまり剣治は深く突っ込んでこないわね。
…遠慮してるのかな?
そういや、この4人でつるんでるときってあんまり剣治は深く突っ込んでこないわね。
…遠慮してるのかな?
「ホラ、京ちゃん」
詩織があたしの服の裾を引っ張る。
何?追いかけろって意味?
何?追いかけろって意味?
階段を降り始めた武志を追うように、松岡も階段の手すりをつかむ。
そこで目配せする詩織と松岡。
そこで目配せする詩織と松岡。
「おいてくぜ?詩織」
「おいてって、勇君」
「おいてって、勇君」
詩織は「すぐに追いつくから」と続けてクスリと笑った。
そう言えば、この二人。付き合ってもう1年なのよね。
ずっと間近で見てきたせいか、次第に二人の関係も変化してきてるのがあたしにもわかる。
なんていうの?二人の間に余計な気遣いがなくなった雰囲気。
たぶん…うらやましい。
ずっと間近で見てきたせいか、次第に二人の関係も変化してきてるのがあたしにもわかる。
なんていうの?二人の間に余計な気遣いがなくなった雰囲気。
たぶん…うらやましい。
「ホラ、京ちゃん」
詩織がもう一度服の裾を引っ張る。
剣治の後姿は見る見る小さくなっていく。
剣治の後姿は見る見る小さくなっていく。
「えー…でも」
あたしは少しどもったあと、意を決して「ありがと」と言って剣治の背中を追って奔る。
「剣治ー!」
声が届く距離まで来て、あたしは名前を呼んだ。
自分が思ってたよりも大きい声だったみたいで、近くの人が振り向いた。
自分が思ってたよりも大きい声だったみたいで、近くの人が振り向いた。
「どうした?本田京子」
「あ、うん。えーと…お昼ご飯。一緒に食べ行かない?」
「あ、うん。えーと…お昼ご飯。一緒に食べ行かない?」
たったこれだけ言うだけなのに、何アガってんだろあたし。
剣治は少し意外そうな顔。
剣治は少し意外そうな顔。
「金田さんたちは、昼も食べないでガンスリに並ぶと言っていたからな。フッ…いいだろう」
剣治はガンスリのほうをチラリと見てそう言った。
YES!YES!
あたしは内心で何度もガッツポーズを取る。
YES!YES!
あたしは内心で何度もガッツポーズを取る。
「じゃ、行きましょ」
あたしたちは会場を抜け、階段を下りる。
詩織たちはガラス張りの正面ドアの外だろう。
詩織たちはガラス張りの正面ドアの外だろう。
「何かうれしいことでもあったのか?」
あたしの後ろを歩いていた剣治が不意にそう言う。
「ん?なんで?」
「いや、さっきから顔がニヤけてるからな」
「ふふっ…なんでもない」
「いや、さっきから顔がニヤけてるからな」
「ふふっ…なんでもない」
あたしは「剣治のおかげだよ」と小声で言いながら、正面ドアを押した。
で、お昼ごはん食べるときも色々あったんだけど、それはまた別の話。
あっという間にお昼休みは終わり3回戦の召集アナウンスがかかる頃には、あたしたちは再び会場に戻ってきた。
あっという間にお昼休みは終わり3回戦の召集アナウンスがかかる頃には、あたしたちは再び会場に戻ってきた。
つづく
txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.07.11
更新日:10.04.14
掲載日:09.07.11
更新日:10.04.14