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#98 性能限界です


「対象は本国、サーチ能力発動ゥ!…箱をセットッ!」

カウンターやバウンス…赤の得意のコントロールを駆使する詩織とガデッサ等のユニットのパワーで押し切ろうとする未来の対戦も中盤。
曰く、ヘチマ――ゾディ・アックをロールインで準備した詩織に対して、未来はユニコーンガンダムの”箱”からユーグ・クーロ。

「ぅーむ…」

あたしは対戦中の二人の邪魔にならないくらいの声で唸る。
ユーグ・クーロの戦闘値は3国キャラとしては並なんだけど、コマンドカウンターのテキストが赤にとっては厄介。
詩織はそれを確認して「なるほど」と言わんばかりに手をぽんと叩いた。

「なーに納得してんのよ、詩織」

あたしは詩織の肩を小突く。
相手の作戦に関心してる場合じゃないでしょうが。なにか策はあるわけ?

「ううん。あのカードでよかったよ、箱」

以外としっかりしたした返事に、あたしは「へ?」と思わず聞き返す。
関心してるように見えて、ある程度は想定内って事?

「さァ!出撃ターイムッ!」

未来が勢いよくユニットを準備する。
10点オーバーのこの攻撃が通れば、ほとんど積み状態。詩織、どう来る?

「攻撃規定前お願いします。第三の勢力、このカードで出撃前に皆寝てもらいたいです」
「ま…まずいッ!この時間稼ぎはまーずいッ!」

未来は「あ゛ァー」と呻いてターンを終了した。
配備エリアのユーグ・クーロはこれをカウンター出来ない。

あたしはクスクスと小さく笑う。
うわ、本当にゾディ・アックの出番来ちゃった…!

「ドロー、凌駕をプレイします」

詩織は、引いたばかりだろうカードをそのまま場に出す。
ロールオペレーションの定番、懐かしいカードだ。

「戦闘フェイズ、ゾディ・アックを宇宙に出撃させます」
「…また3点かい。みみっちい」

悪態をつきながらも、未来はしっかり本国のカード3枚を捨て山に送る。
問題は攻撃力の大きさじゃないことは、彼女だってわかってるはずだ。

「そして…範囲兵器で配備エリアのユニットを全部壊したいです」

詩織はきっぱりと言う。妙な説得力があるわね。
凌駕とゾディアック…この2枚のカードで、後続のユニット3枚も簡単に落とせる状況を作り出した詩織に今度はあたしが関心した。マジで。

3点ずつの本国ダメージでも、もしかしたら勝っちゃうかも。

「ターン終了です」
「いい気になるんじゃないよッ…ドローッ!!」

未来は苦い顔で「ターン終了」と宣言する。
詩織は返しのターンでもゾディ・アックを出撃させて3点。

「ターン終了です」
「アタシのターンだねッ…」

未来は心なしかゲンナリしてターンを開始する。
ブリッツクリークの話をしていたことからも、このデッキは中型ユニット主体の攻撃デッキ。
そんな攻撃一辺倒のデッキがここまでコントロールされちゃったら…もうね。

「…政治特権のプレイッ!」
「大丈夫です」

詩織が許可を出す。
2ドロー後、手札からカードを切る未来。
このデッキで何を引けば勝てるのか、あたしにはさっぱり想像がつかない。耐久が7以上のユニットなんて多分ないしね。

「アタシはこの雑魚をプレイッ!ガンダムデュナメェスッ!」

!?
この局面で威勢良くプレイするカードじゃないでしょ…。

「戦闘フェイズに入るッ!」
「はい。よろしければ、凌駕を使用してガンダムデュナメスをロールしたいです」
「…了解ッ」

未来は別段何かある様子もなく、デュナメスをロールした。
こうやって凌駕を消費させてどうにかなると?

「ターン終了だ」
「はい。私のターン、開始します」

あたしは小さく唸って場を見つめた。
政治特権で周辺警護を引いたなら、ユニットプレイ前に使っただろから、今の状況で未来が凌駕を攻略できないのは明白。
あとは絶え間なくユニットをプレイして凌駕と押し問答の戦術?

「戦闘フェイズに入りたいです」
「いいよ。どうせ3点なんだ。…来なッ」

未来は挑発気味の口調でそう言う。
詩織は「はい。では…」と言ってゾディ・アックを前に出す。

「3ダメージの後…帰還ステップ、そちらの配備エリアのユニットに範囲兵器を使用します」
「だよねッ!」

未来はそう言うと、目をカッと見開いて手札のカードを表にする。
ここなの?一体…。

「カットインでガンダムデュナメスにハサウェイ・ノア《22》をセット!」
「了解です。テキスト確認させていただいていいですか?」

…なるほど。
自慢げにそのカードを見せる未来と、それを確認する詩織の構図を見ながら、あたしはため息をついた。
ゾディ・アックで何度破壊しようが、ジャンクヤードのユニットとセットグループを形成して生き返るハサウェイは、ゾディ・アック1枚じゃどうしたって突破できない。

「ハサウェイがセットされたデュナメスが敵軍効果で場から離れるから、ハサウェイはジャンクヤードのガデッサにセットされて場に出るッ!」
「あ…はい」

詩織が効果を理解して、すこし考えてターン終了を宣言した。

「アタシのターンッ!さァさァさァ…その凌駕で何ターン抑えられるかなッ!?配備フェイズは特になし。戦闘フェイズに行くよッ!」
「凌駕でお願いします」

詩織は凌駕のコインを1枚端に避け、起動を宣言した。
これで残り1コイン。

だめだ…この状況だと積んだよ、詩織。
あたしは場を見てそう悟った。
次のターンは、防御ステップにガデッサでゾディ・アックが地球に落とされるのを警戒して攻撃ステップに範囲兵器を使っても、ジャンクからヴァーチェで出てきて通常防御で返り討ち。
凌駕を使えば3点が通ってゾディ・アックも落ちないけど、次の攻撃が防げず負け。

テキストをハサウェイで完封されて、戦闘値も3…どうしたってゾディ・アック1枚じゃ限界だ。
そして、やっぱり詩織本国の枚数が足りなすぎたわね。

「負けました」

大方あたしの予想通り、2ターン後に詩織はそう言って頭を下げた。

「惜しかったね。ハサウェイが癌すぎ~」
「うん…あれを無効にできなかったのがね」

詩織はけろっとして言った。
でも、最初の頃より随分上手くなったよ。
あたしはカードを片付ける詩織の横顔を見てそう思った。

「だね。仇は上位卓であたしがとるよ」
「うん、ガンバッテ。京ちゃん」

あたしたちは手とパチンと叩いた。




詩織のテーブルを離れ、あたしは他のテーブルを覗いて歩く。
武志が試合を終えたところに立ち会って賞賛を送ったあと、剣治のテールブルに向かう。
見た感じちょうど試合が終わったところのようだ。勝ったのは、あたしの次の相手は…?

「ガンダムだが、ガンダムにあらず…か。負けたよ」

公旗はため息をついて手札をテーブルにおいた。
お、剣治が勝ったんだ。

「剣治と戦える」というよりも、「剣治の向かい側に座れる」ということを想像してあたしの胸は高鳴る。
プレイヤー失格だわ。

「どうぞ、お嬢さん」と意味ありげに言って席を空けた公旗の顔を凝視しながら席に着く。

「なんです?」
「いや、顔に書いてあるさ」

公旗はクスリと笑い、その場を離れた。
なんかバカにされた気分なんですけど。

「ふむ。本田京子、今日も白デッキか?」

剣治があたしの顔をまっすぐ見て聞いた。
今日もガクランに白の鉢巻姿。最初に見たときは変な格好だと思ったけど、今ではそれも愛しかったりするかも。
うわっ…冷静に考えると相当キテるなあたし。

「もちろん。そういう剣治は赤黒アストレア?」
「フッ…無論だ。黒赤アストレア」

あたしはそんな押収をしながら、昨日の夜のちあきとの会話を思い出す。
向こうで信ちゃんが2回戦の組み合わせを読み上げているけど、すでに耳にはその声は届かない。


×××


「ちょっと…」

ぐっすり眠る詩織にイタズラしようとしてるちあきを見て、あたしは小声で注意する。
詩織の部屋の中央に敷かれた2枚の布団にあたしたち3人。
寝転んで話をしていたのは1時間も前で、詩織は耐えられずにすでに寝たし、ちあきの武勇伝もネタ切れたところ。

「いーじゃん。ほら、こんなポーズ起きてる時絶対やらないっしょ」
「あははっちあき天才。最高にキマってる」

あたしも「詩織眠り深いしいいよね~」といいながらイタズラに手を貸す。
よくもまあ、こんなに動かされても起きないわね。

「…んん。勇君…」

聞き逃しそうな小さな声――いや寝言――で詩織がそう言ったのを聞いて、あたしたちは静かに固まる。
『幸せそうな寝顔の詩織に似合わないポーズをとらせる遊び』も、どうやら終了のお知らせだ。
あたしたちはそれぞれもとの位置に戻り、横になる。

上がりきった妙なテンションと完全に冴えた目、それに不釣合いなくらい眠たい体。

あたしは天井の模様をしばらく眺めてから、大きく息を吸い込んだ。

決心。

「ちあき…さっきの話なんだけどね」
「はいよ」

ちあきは静かな声音で相槌を打つ。
さっきまで熱っぽくこの話題を話し続けてた彼女とは思えない落ち着き。

「あたし…頑張ってみようと思う。告白」
「期待しとく。京子ならやれるよ、なんてったってうちの娘だからね」

そう言ってちあきはあたしの頭をぐしゃぐしゃっとした。
けど、ちあきはそれ以上おちょくったりしなかった。


×××


2回戦が始まったみたい。
あたしたちも、お互いにデッキをカットのために差し出す。

…もしかしてタイミングは今?
誰かさんのパクリみたいな方法になっちゃうけど、今なのかも。

「剣治っ。あ、あたしが勝ったらさぁ…」

勢い良く切り出したものの、そこで口を噤む。
「あたしとつき合って」は喉につかえ、勢いは一瞬でなくなる。

「京子が勝ったら?」

剣治が聞き返しながら、カットを終えたあたしのデッキを差し出す。
あたしは、剣治のデッキを無意識にカットしまくってた事に気付き、あわてて返す。

「…ううん。なんでもない」
「そうか?」

あたしは剣治から見えない位置で自分の太股を叩いた。
なーにが”なんでもない”だ。意気地なし!

「うん。じゃんけんからいくよ」
「あぁ」

あたしは手を出した。


つづく


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初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:09.08.24
更新日:10.04.14