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「で?勝っちゃったわけ?」

ちあきはあたしの机で、ノート上の手を休めずにそう言った。

「…うん。だってあいつの1積みデッキ、ヘボすぎなんだもん!」

あたしは、ベッドに横になりながら言った。
ここはあたしの部屋。テストまで一週間をきった今日は、ちあきと勉強…。

「それ、空気読まなさすぎじゃない?だって藤野は、勝ってあんたと付き合いたいって言ったわけでしょ?それって立派な告白じゃん」
「やっぱそうなるよねぇ…」

あたしはため息をついた。
伊賀に勝って決勝に進んだあたしの相手は藤野。んで、あいつはなぜかそのタイミングで「俺が勝って優勝できたら…俺と付き合わないか?」とか言い出したわけ。

「あいつは詩織のことが好きなんだと思ってたのに」
「また何故?」

ちあきはそこであたしのほうを見た。

「そりゃ…なんかわかんないけど、そう思ったの!」
「ふーん。あんたはどうなのよ?」

あたしは…正直、そんなこと考えたことなかった。松岡も藤野も”友達”だと思ってた。
でも、藤野…あんたはちがかったんだね。鈍感でゴメン。

「そりゃ…対戦中は考えたわよ?藤野と付き合ったらどうなるのかなぁ…って」
「で?」
「考えてたら、もう勝ち決定ってとこまで藤野の本国が減ってたわけ」

あたしは参ったという風に手を挙げた。

「本国?…まあいいや。本当はそこで負けるべきだったんじゃないの?」
「えー…嫌よ。わざと負けたらなんか恥ずかしいじゃん。それにね、あたしあいつのこと友達としか思ってないし」
「なら最初からそう言いなさいよ。そういう中途半端だからロクに彼氏もできないのよ?京子は」

真理かも…。
付き合い長いだけあって、痛いところ付いてくるなぁ…。

「きっとあたしにはそういうのまだ早いんだよ!」

言い返したあたしに、ちあきは笑った。
何が可笑しい!!

「いやね。”そういうの”ってどういうのよ?」
「もー!ちあきのバカー!」
「お、赤くなってる②」

あたしはベッドの上で足をバタバタさせた。

「てか、恋バナもいいけどさぁ…そろそろあんた勉強しなよ。次も数学で赤取ったら、母さん怒るよ!」
「だれが母さんじゃー!!」

あたしは枕を投げた。
確かにそろそろ数学を勉強しないとまずい…。

×××

「はい、答案を集めます」

担当の先生が、終業のベルと同時に言った。
終わった…赤は脱したかな。

「どうだったよ?いっちー」
「全然余裕。本田は?」

いっちーは天然パーマ気味の髪を触りながら、あたしに聞き返した。

「微妙…」
「はは…じゃ」

そう言っていっちーは教室を出た。
今日の分のテストは終わったから、あたしも帰ろうかな。
あたしは荷物をまとめて教室を出る。

「あ、京ちゃん」

出たとこで詩織たちに遭遇…。
無論、”たち”ってのは隣の松岡だけど。

「あーお揃いでー。どうも」

あたしは棒読み返事を返す。

「どうしたの?」
「どうせ数学だろ」

松岡が詩織に言った。
お前らもテスト期間ぐらい、いちゃつくのやめろ!

「詩織はいいけどさぁ、松岡テスト大丈夫なの?」
「余裕だぜ。詩織んちで勉強してるからな」

意外としっかりしてんね…詩織はいい奥さんになるわ。
…何?早すぎ?

「じゃあね。末永くお幸せに~」

あたしは手を振って階段を下りる。詩織が「京ちゃん、大げさだって」と言った。
駐輪場で自転車に乗って、学校の前の坂を下る。今日は立ち乗りしたい気分だけど、ハーパン履いてないことを思い出してやめた。

空は晴れ、日差しが眩しい。

「京子ー」

帰り道、ローソンの前であたしを呼ぶ声がした。見ると、ローソンの前で買い食いしてる藤野が手を振っていた。
そういや、大会の後すぐテスト期間に入っちゃって、まともに話してなかったなぁ。
あたしは自転車を降りてローソンの駐車場に入る。

「何ー?ずいぶん余裕そうじゃない?」
「日本史が終われば、あとは俺の天下だぜ!」

藤野は袋から焼き鳥を出し、どうやらあたしにくれるらしく差し出している。

「ふーん、何が天下よ。あ、どうも♪」
「京子…」

自転車を停め、あたしは藤野から串をもらう。
ってこの藤野の口調は、あの”告白”のときと同じ雰囲気。
…しまった!餌で釣られた!!

「俺、負けたけどさぁ、付き合わ…」
「うーん、無理!」

あたしの即答。決めた!あたしにはこういうのは向いてない!
だってドキドキするし、口が回らなくなるんだよ?

「即答すぎだろ!」
「だってあんたは”友達”なの!それ以上でも以下でもないわ♪」

藤野はがっかりはしてなかった。藤野がこういうやつで良かった。
険悪になるのだけは嫌だからね。

「さ、じゃあ今日は武志の家で勉強しようかな~」
「…は?」

あたしが下の名前で呼んだのを気付いたらしい。
ちょっとした出来心で試してみたけど、悪くないかも。
あたしは自転車を押して道路に戻る。

「早くしないとおいてくよ?」

武志はあたしの後に続いて自転車を押した。


おわり



作者から
Season1のエピローグ的な話。
「綺麗に終わった」と感想を寄せていただいたSeason1のラストにオチをつけた形になり…なんというかこう、ブチ壊しですよね(汗