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第1話 栗田ミキオ
二人の中学生が路地を駆けていく。
彼らの目的地は角を曲がってすぐ見える玩具店『おもちゃのカキヨ』、その隣にある「対戦スペース」と名付けられた古い家屋だ。
彼らの目的地は角を曲がってすぐ見える玩具店『おもちゃのカキヨ』、その隣にある「対戦スペース」と名付けられた古い家屋だ。
「今日も一番乗りだぜー!」
ひとりは、栗田ミキオ。
耳にかかるくらいの染め髪と赤いジャケットが印象的な少年だ。
耳にかかるくらいの染め髪と赤いジャケットが印象的な少年だ。
「おい、待てって。スペシャルな俺様が一番乗りだろ!」
もうひとりは、羽鳥炭酸。
巻き毛気味の髪の毛につり目の少年だ。
二人は対戦スペースに入るなり、一番手前のテーブル越しに向かい合うように座り、早速荷物からデッキケースを取り出す。
巻き毛気味の髪の毛につり目の少年だ。
二人は対戦スペースに入るなり、一番手前のテーブル越しに向かい合うように座り、早速荷物からデッキケースを取り出す。
「今日の俺様のデッキはひと味違うんだぜ?ミキオ」
羽鳥が自慢げにそう言いながら、デッキを10の束に分けてシャッフルする。
「なにがだよ?」
「見てのお楽しみだ」
「見てのお楽しみだ」
二人はシャッフルを終え、互いのデッキをカットし合う。
「「ジャンケン…」」
かけ声に合わせて突き出した拳は、ミキオがグーで、羽鳥がパー。
羽鳥の先攻だ。
羽鳥の先攻だ。
「先手必勝!緑基本Gをセット!」
「あ、テメェ。やっぱ緑デッキじゃねぇかよ!」
「あ、テメェ。やっぱ緑デッキじゃねぇかよ!」
ミキオは羽鳥が毎回のように使うイナクト主軸の緑単色を思い返して憤慨した。
別に期待していたわけではないが。
別に期待していたわけではないが。
「まぁいいか…オレのターン、茶基本Gをセット」
ミキオは後攻なのでカードを手札に加えた後、Gカードを場に出した。
「そういうミキオちゃんだっていつもの茶単MFだろ?ボル様はいるのかい?」
「いねーよ。ターン終了だ」
「俺様の第2ターン。特殊G、ガンダム調査隊をセットしてターン終了だ」
「いねーよ。ターン終了だ」
「俺様の第2ターン。特殊G、ガンダム調査隊をセットしてターン終了だ」
羽鳥は引いたカードをそのまま場に出した。
あっさり序盤を進行され、ミキオは頭の中からウィニーの可能性を消す。
いつもとは違う、という台詞に少し警戒したが、やはり気のせいだった、と。
あっさり序盤を進行され、ミキオは頭の中からウィニーの可能性を消す。
いつもとは違う、という台詞に少し警戒したが、やはり気のせいだった、と。
「オレのターン、ドロー…しゃあ!ボルジャーノン《15》を配備!」
資源コストを払い、ユニットを出すミキオ。続けて茶基本Gも場に出す。
「今引きかよ。まぁそんなユニット程度問題じゃねぇよ」
「言ってろ。ターンエンドだ」
「言ってろ。ターンエンドだ」
羽鳥は「ドロー!」と勢いよく口にしながらカードを引く。
「紫基本Gを配備…」
「紫…基本G!?」
「言っただろ?いつもと違うってなぁ!王留美を基本Gにセット、2ドロー。加えて10thレア、イナクト(デモカラー)を配備!」
「紫…基本G!?」
「言っただろ?いつもと違うってなぁ!王留美を基本Gにセット、2ドロー。加えて10thレア、イナクト(デモカラー)を配備!」
金色のフレームが付いたイナクトが、リロール状態で場に出る。
「ドローは王留美を使ってるが、ユニットはやっぱいつものイナクトじゃねぇか」などと思いながら、ミキオは許可を出す。
いや、許可もなにも彼の茶単デッキでは2Gでは阻害できないんだが。
「ドローは王留美を使ってるが、ユニットはやっぱいつものイナクトじゃねぇか」などと思いながら、ミキオは許可を出す。
いや、許可もなにも彼の茶単デッキでは2Gでは阻害できないんだが。
「だから毎回10thレア宣言いらんて」
「うるせぇやい。好きなんだから言わせろ。攻撃規定、イナクトを宇宙に出撃させる!」
「4点受けるぜ」
「うるせぇやい。好きなんだから言わせろ。攻撃規定、イナクトを宇宙に出撃させる!」
「4点受けるぜ」
羽鳥は頷いて、ターン終了を宣言した。
返しのターン、ミキオはボルジャーノンを解体して3G目を確保してターンを終えた。
返しのターン、ミキオはボルジャーノンを解体して3G目を確保してターンを終えた。
「対ガンダム調査隊を配備、オーバーフラッグをプレイ。さらにブースト宣言、ジンクス3(コーラサワー機)を配備!」
「…」
「…」
羽鳥は意気揚々とユニットを展開する。
交戦を条件にユニットコインを発生するオーバーフラッグと、自軍ユニットが場から離れるたびにジャンクヤードからカードを回収できるコーラジンクスだ。
交戦を条件にユニットコインを発生するオーバーフラッグと、自軍ユニットが場から離れるたびにジャンクヤードからカードを回収できるコーラジンクスだ。
「コーラジンクスは箔付き版じゃねぇんだな」
何気に指摘するミキオに、羽鳥は「今期は調子が悪くてまだ優勝できてないんだ」と返した。
「優勝なんかしたことあるのかよ?」とさらに聞き返そうとするミキオをさえぎり羽鳥は口を開く。
「優勝なんかしたことあるのかよ?」とさらに聞き返そうとするミキオをさえぎり羽鳥は口を開く。
「俺様は先攻。だからさっきは迷わずイナクトを攻撃させたけど、次はシャイニングガンダムが戦闘配備してくるパターンがあるからここは待ちだ」
「警戒かよ。らしくねぇ」
「警戒かよ。らしくねぇ」
ミキオは首を傾げながらカードを引く。
「ギンガナム軍を配備。そして、ローズガンダム(ローゼスハリケーン)を配備!」
「シャイニングガンダムじゃない!?」
「あぁ。このユニットなら耐久の低いおまえのユニットを容易に撃ち落とせるからな!」
「シャイニングガンダムじゃない!?」
「あぁ。このユニットなら耐久の低いおまえのユニットを容易に撃ち落とせるからな!」
ミキオはイナクトを指さしながらニヤリとしてターンを終えた。
「新しいカードって言っても、本質はローゼススクリーマーの時とぜんぜん変わってない。だから、この対策カードは効くはずだ…デュアルオペレーション、世界の歪み」
ミキオは出されたデュアルオペレーションのテキストを確認して「配備も狙えるのかよ」 とつぶやく。
「5枚目のGを配備、戦闘フェイズだ!」
「了解。来るのか?ジンクス」
「行くぜ、コーラジンクス!アリー・アル・サーシェスをセットしてな!」
「了解。来るのか?ジンクス」
「行くぜ、コーラジンクス!アリー・アル・サーシェスをセットしてな!」
羽鳥は手札からクイックのキャラをジンクスにセットする。相手が攻撃に出撃しなければペナルティを課すキャラだ。
「これはハリケーンを使っても意味がないな…6点受けるぜ」
「帰還ステップ規定前に、戦闘エリアのアリーは自分の効果でハンガーに。歪みで留美を廃棄してコイン。ターン終了」
「帰還ステップ規定前に、戦闘エリアのアリーは自分の効果でハンガーに。歪みで留美を廃棄してコイン。ターン終了」
コインの小気味良い音を聞きながら、ミキオは手札にカードを加えて「宝物没収をプレイ」と宣言した。
が、捨て山のカードを2枚手札に移した彼は、しばし考えるような素振りを見せる。
が、捨て山のカードを2枚手札に移した彼は、しばし考えるような素振りを見せる。
「しかたねぇ。ギンガナム軍起動、本国の下にカムバックを送って5G…一歩遅れたが、シャイニングガンダァム!」
ミキオは一息で言い切り、そのカードを場に出す。
「さらにディアナ帰還。ロール状態のギンガナム軍を除いた3枚のGで起動だ」
「相変わらずやっかいな回復量」
「相変わらずやっかいな回復量」
羽鳥は軽く舌打ちをして、カットインでハンガーにあるアリーをイナクトにセットした。
「さらに、シャイニングにドモン・カッシュ《EB2》をセットして準備完了」
「さぁ戦闘フェイズ。出撃しなけりゃ何か廃棄だ」
「呼ばれなくても行ってやるぜ…シャイニングガンダムをリングに!」
「さぁ戦闘フェイズ。出撃しなけりゃ何か廃棄だ」
「呼ばれなくても行ってやるぜ…シャイニングガンダムをリングに!」
交戦で羽鳥側のユニットのいろいろなテキストが起動しそうではあったが、ミキオは怯むことなくユニットを出撃させた。
「イナクトを防御に。交戦チェックでオーバーフラッグコインが発生だ」
「かまわねぇ、このまま勝負だ!」
「かまわねぇ、このまま勝負だ!」
ミキオはイナクトを指さす。格闘はアリーがセットされているから6と高いが、ドモンがセットされたシャイニングの耐久7には届かない。
「ダメージ判定ステップ」
「チッチッチッ、甘いよミキオちゃん。リングは決してさわれない場所じゃない…破壊!破壊!破壊工作をプレイ!」
「チッチッチッ、甘いよミキオちゃん。リングは決してさわれない場所じゃない…破壊!破壊!破壊工作をプレイ!」
初出:mixi (12月7日~12月8日掲載分)