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府釜市の中心に位置する商店街を一本脇道に入ったところにある、玩具店『おもちゃのカキヨ』。
その隣に「対戦スペース」と名付けられた古い家屋がある。
木造建築の古い建物で、ガラス張りの入り口からはテーブルが4卓が覗いていた。
その隣に「対戦スペース」と名付けられた古い家屋がある。
木造建築の古い建物で、ガラス張りの入り口からはテーブルが4卓が覗いていた。
そして、一番端のテーブルに子供が3人。
これは、M県府釜市に住むガンダムウォープレイヤーの少年・栗田ミキオとその仲間たちの話である。
これは、M県府釜市に住むガンダムウォープレイヤーの少年・栗田ミキオとその仲間たちの話である。
第1(7)話 前兆の箱
ユニコーンガンダムのイラストを正面に据えた、文庫本サイズの箱。
ガンダムウォー24弾『宇宙を駆逐する光』のプレリュードスターターだ。
ガンダムウォー24弾『宇宙を駆逐する光』のプレリュードスターターだ。
そのパッケージを、桃色のマニキュアが施された指が器用に開ける。
中身をさらっと確認して、指の主である射勢ナツキは眉をピクリと動かした。
中身をさらっと確認して、指の主である射勢ナツキは眉をピクリと動かした。
「やっぱり白にしろよ。デッキ」
ナツキの手元を覗き込み、諭すように栗田ミキオが言った。
耳にかかるくらいの長さの金髪に赤いジャケットの少年だ。
「ミキオちゃんの白基本カードも貰っちゃってさ」と続けたのは彼の隣に座った巻き毛の茶髪、羽鳥タンサン。
ナツキは二人の顔をチラッと見てから、開けたばかりの『茶&白』セットと『青&白』セットを睨んだ。
耳にかかるくらいの長さの金髪に赤いジャケットの少年だ。
「ミキオちゃんの白基本カードも貰っちゃってさ」と続けたのは彼の隣に座った巻き毛の茶髪、羽鳥タンサン。
ナツキは二人の顔をチラッと見てから、開けたばかりの『茶&白』セットと『青&白』セットを睨んだ。
プレリュードスターターは、『青&黒』『緑&赤』『茶&白』『青&白』『緑&黒』『赤&茶』のいずれかのセットがランダムが入っており、特定の色のカードがまとめて手に入る仕様になっていた。
ガンダムウォーのパックを買い始めたばかりのナツキが本格的にデッキを組むにはちょうどいい製品だろうとミキオは考えていた。が、16才の財力では悲しいかな『好みの色が出るまで買う』などといった芸当は無理だった。
ガンダムウォーのパックを買い始めたばかりのナツキが本格的にデッキを組むにはちょうどいい製品だろうとミキオは考えていた。が、16才の財力では悲しいかな『好みの色が出るまで買う』などといった芸当は無理だった。
「白”だけは”ヤダもん」
ナツキは口を尖らせ、首を振る。
その動きに合わせて二つ結びにした黒髪が小さく揺れる。
その動きに合わせて二つ結びにした黒髪が小さく揺れる。
彼女が頑なに白という勢力を拒否する理由は、ミキオの師匠の存在が大きかった。
ミキオの師匠、通称『姉さん』は彼らより3つ年上の女性で白デッキを好んで使用するプレイヤーだ。
ナツキは、その『姉さん』を恋敵として一方的に敵視していた。
ミキオの師匠、通称『姉さん』は彼らより3つ年上の女性で白デッキを好んで使用するプレイヤーだ。
ナツキは、その『姉さん』を恋敵として一方的に敵視していた。
「ワガママ言うなよ」
「だってあいつの真似してるみたいじゃん」
「6つしか勢力ないのに真似もクソもあるか」
「だってあいつの真似してるみたいじゃん」
「6つしか勢力ないのに真似もクソもあるか」
ミキオとタンサンもプレリュードスターターを2つずつ購入し、それぞれ『茶&白』セットと『緑&黒』セット、『緑&赤』セットと『赤&茶』セットを引き当てていた。
茶単MFを愛用するミキオと、緑や黒を集めているタンサン。互いの色が出た場合、交換することで目当てのセットを揃える約束をしていた。
茶単MFを愛用するミキオと、緑や黒を集めているタンサン。互いの色が出た場合、交換することで目当てのセットを揃える約束をしていた。
「んじゃあ、姉さんに相談してみるか?白以外のセット余ってるかもしれないし」
ふくれっ面のナツキに、ミキオが仕方なくそう言った。
彼は3人の中で一番面倒見がいい。
「ミキオちゃんは4月生まれだからしっかりしてる」と前にタンサンが言ったことがあったが、本人は「そういう問題じゃないだろ」と一蹴したのだった。
彼は3人の中で一番面倒見がいい。
「ミキオちゃんは4月生まれだからしっかりしてる」と前にタンサンが言ったことがあったが、本人は「そういう問題じゃないだろ」と一蹴したのだった。
「い…いいよ。あいつに頼むとかありえないし」
ナツキはごにょごにょとそう言って首に下げた白いヘッドホンを弄ぶ。
正月に買ったお気に入りで、彼女は暇さえあればそれで曲を聴いていた。
正月に買ったお気に入りで、彼女は暇さえあればそれで曲を聴いていた。
ナツキは口では「ありえない」と言っているが、内心では良いアイディアだと思っている。
そう解釈したのか、ミキオはケータイを開き、姉さん宛てのメールを作り始める。
そう解釈したのか、ミキオはケータイを開き、姉さん宛てのメールを作り始める。
「いいってば」
「じゃあ白使うのかよ?」
「う…それはもっとヤダ…」
「じゃあ白使うのかよ?」
「う…それはもっとヤダ…」
言葉に詰まるナツキに、ミキオはため息をついて送信ボタンを押した。
「ミキオちゃんミキオちゃん」
タンサンがミキオの肩を叩く。
ミキオとナツキの問答を横に、ずっとカードをいじっていたらしい。
彼はこういうところがちゃっかりしていた。
ミキオとナツキの問答を横に、ずっとカードをいじっていたらしい。
彼はこういうところがちゃっかりしていた。
「なんだよ?」
「新しいデッキ作った!勝負しようぜ~!」
「新しいデッキ作った!勝負しようぜ~!」
「ジャジャーン」と効果音を口にしながら、新カードであるスローネヴァラヌスをトップにしたデッキを見せるタンサン。
「てめーだけ新しいデッキ作ってんなよ…オレも新しいカード使うからちょっと待てよ」
「”ユニットになったジジイ”なんか使うの?いーからやろうぜぇ~」
「”ユニットになったジジイ”なんか使うの?いーからやろうぜぇ~」
プレリュードスターターのカード束の中から何枚かを選ぶミキオ。
タンサンはさっそくシャッフルを開始した。
自分を放っておいて対戦を始めてしまった二人にナツキは少し不服そうだったが、堪えてルールブックを開いた。
カードの件は姉さんの返信待ちであるし、なにより対戦するにはルールを今以上にきちんと覚えなければいけない。
そんなわけで、彼女は二人に追いつくべくルールブック上の聞きなれない単語との格闘を開始した。
タンサンはさっそくシャッフルを開始した。
自分を放っておいて対戦を始めてしまった二人にナツキは少し不服そうだったが、堪えてルールブックを開いた。
カードの件は姉さんの返信待ちであるし、なにより対戦するにはルールを今以上にきちんと覚えなければいけない。
そんなわけで、彼女は二人に追いつくべくルールブック上の聞きなれない単語との格闘を開始した。
「こんなもんか」
新しいカードを入れ終えたミキオもデッキをシャッフルし始める。
その時姉さんから返信が来たらしく、携帯が振動した。
『じゃあ、明日あたしんちに来なよ』
ナツキのメールと違いゴテゴテしてはいないが、語尾に電球のマークがつけられたメールは姉さんらしいな。
と思いながら、ミキオは『サンキューっス』と手早く返信して携帯を閉じた。
その時姉さんから返信が来たらしく、携帯が振動した。
『じゃあ、明日あたしんちに来なよ』
ナツキのメールと違いゴテゴテしてはいないが、語尾に電球のマークがつけられたメールは姉さんらしいな。
と思いながら、ミキオは『サンキューっス』と手早く返信して携帯を閉じた。
「へへっ、ギッタンギッタンにしてやんよ!」
タンサンがカードをシャッフルしながらいつもの台詞を吐いた。
つづく
txt:Y256
初出:mixi(10.03.01)
掲載日:10.03.01
更新日:10.04.01
掲載日:10.03.01
更新日:10.04.01