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第4(10)話 ナツキ対姉さん



お互いにカットを終え、デッキを相手の眼前に戻す。
部屋の中央にあるテーブルは対戦するのにはちょうどいい大きさだ。
そこに姉さんとナツキが向き合うように座り、ミキオはナツキの後ろに陣取った。

「よーし、見ててね☆ミキオっ」

ナツキはそう言ってウインクした後、カードを6枚引く。
そして、その6枚を伏せる間もなく確認した。

「待て、待て、待て」

後ろで見ていたミキオが慌ててナツキを止める。

「じゃんけんで先攻後攻を決めて、手札チェックはそのあとね」

姉さんは諭すようにそう言い、右手を出した。

「そうなの?最初に言ってよ、もう」

ナツキもそう言って右手を出す。
テーブルの上に出される二つの拳。

じゃんけんは姉さんのチョキが勝った。

「あ、綺麗な色」

ナツキのパー、いや爪を見て姉さんが微笑んだ。
ミキオはノーコメントだった派手めのスカイブルーのマニキュアに、彼女はすぐに気付いた。

「褒めたってなにもでないよ」

ナツキは手を引っ込めてつれない口調でそう返す。
姉さんの指にちらりと目をやると、透明に近い薄桃色のマニキュアが目に入る。
マニキュアだけではなく、姉さんの化粧はナツキに比べると全体的に薄めだ。

ウチほどじゃないけど、素は悪くないんだからもっとバッチリ決めればいいのに。
などとナツキは勝手なことを考えた。

「じゃあ始めるね、配備フェイズ白基本Gを配備」

姉さんは「ターン終了よ」と、5枚になった手札を丁寧に見せる。

「じゃあウチのターン。青基本…」
「の前にドローだっつーの」
「うっ…ドロー」

ドローフェイズを忘れてカードを配備しようとするナツキに、ミキオは溜め息混じりに再び指摘をいれる。
ルールブックをあんなに読んでいたのにこれでは…先が思いやられる、と。

「気を取り直して、青基本Gを配備!ターン、エンド」

姉さんは頷いて、カードを手札に加えた。

「有力貴族を配備、ターン終了よ」
「ウチのターン!」

ナツキは勢い良くカードを引く。

「周辺警護をプレイ」

ナツキはそう言って、周辺警護を逆向きの状態で青基本Gの隣に置いた。
紛らわしい言い方のような気がする、とは思ったがミキオはひとまず指摘はしなかった。

「ターン、エンド」
「…あたしのターンね」

姉さんは少し間を空けてカードを手札に加える。
少し眉が動いたのがミキオにはわかった。

「…何もなければターン終了したいわ」
「え?」

ナツキはカードを引くなりそう宣言した彼女を見る。
困ったような笑みを返す姉さん。
最初の6枚には、国力2枚と3国力ドローコマンドである中東国の支援が含まれていたが、2ターン連続で国力要素を引くことが出来なかったのだ。

姉さんはそういうプレイヤーだ。結構、事故る。
だが、高揚したりやる気があるときの引きは、不思議とかなり冴えてる。デッキが彼女に同調しているように見えることさえあった。
引きが良くてテンションが上がっているだけかもしれないのだが、少なくともミキオは彼女には”そういう力”があるのかもしれないと感じていた。

「なーんだ、たいしたことないじゃん☆ウチはビシバシ行くよ!」

ナツキは得意になって歯を見せて笑う。
ドローで手札に加わった青Gを場に出し、政治特権をプレイした。

「お。なかなか…」

後ろからナツキの手札を見ていたミキオは、そう言って口に手を当てる。
もしかしたら姉さんには厳しい戦いになるかもしれないぞ、と。

「ウチは配備フェイズに、オペレーションカード、アナハイム・エレクトロニクスをプレイ!」
「了解。随分国力が離されちゃったわね…」

姉さんはうーんと小さく唸る。
実際に困っているのかはわからないが、片眉を上げて手札と睨めっこしている。

「1資源で青国力を発生…フルアーマーガンダムMk-2をプレーイ☆」

姉さんの瞼がピクリと動く。
表情には出さないが、厳しい状況になったと内心頭を抱える。

フルアーマーガンダムMk-2がロール状態の場合、姉さんの手札とハンガーにあるカードの合計国力は+1される。
「これでいいでしょ?」と振り返るナツキにミキオは頷いた。

「ロール状態じゃないとあんたの合計国力を上げられないんだから、攻撃!」

ナツキはフルアーマーMk-2をずいと前に出す。
姉さんは了解して本国を4枚捨て山に送った。

「ターン、エンド」

姉さんは「ドロー」と言って手札にカードを加える。
ナツキはカードを引けてる。姉さんは次も事故なら、即命取りになる。頼むから国力引けよ…。
そう考えて、やっぱオレは無意識に姉さんを応援しているなとミキオは苦笑した。

「配備フェイズ、歌姫の騎士団をプレイ」
「なんだ、引いちゃったか。オッケー」

姉さんはそれでターンを終える。
1ターン事故にアナハイムからの「フルアーマー遅延」は苦しいが、ここは1枚1枚確実に国力を伸ばすしかない。
姉さんはテーブルの下で左拳を握った。

「ウチのターン、配備フェイズ」

ナツキはそう宣言した。
前のターンまでは宣言なしに国力を配備していた彼女だが、姉さんのプレイを参考にしてかそう宣言した。

「基本Gに加えて1資源、アナハイム・エレクトロニクスが青国力を発生で、このカード!」

場に出たカードは、ライフルを正面に向けた一角獣のようなイラストが特徴的なユニット。
…ユニコーンガンダム《23》だ。
姉さんから貰ったカードでもなく、プレリュードスターターに入っているカードでもない。
「そんなのもいたんだ」と姉さんは意外そうに驚く。

「パックは少し買ってたんだからね、ナメないでよ?」

ナツキはまた変な威嚇をしてから、本国のカードをサーチする。
抜き出したカードが、箱として裏向きでユニコーンにセットされた。

「戦闘フェイズ。宇宙にフルアーマー、地球にユニコーンが攻撃!」

出撃したユニコーンを見て、姉さんは「箱を抱えて…攻撃?」と疑問を口にする。
考えるそぶりは見せながらも、手早く本国に8ダメージを受ける。

「ドロー。配備フェイズ、歌姫の騎士団を起動して4国力。中東国の支援をプレイ」

カトル・ラバーバ・ウィナー《EB3》を本国の下に送って国力を確保した姉さんは、手札からコマンドカードを出す。
初手から握っていたカードだが、事故やフルアーマーのテキストによって使うのがここまで遅れてしまったものだ。
手札に加わったカードから、さらにハッキングをプレイする姉さん。

「アストレイ・アウトフレーム(バックホーム)をプレイして、ターン終了」
「戦闘力…3?今更そんな小さいユニットなんかっ!」
「ナツキちゃんのリロールフェイズ、切り開く力をプレイしてもいいかしら?」

カードを引こうとしたナツキに、姉さんはカードをぴっと出す。
すらっと伸びた彼女の指は、「これ以上、主導権は握らせない」と断言しているようだった。
「国力が紫かぁ…」とナツキは小さく呟いたあと、「なら」と手札のカードを表にする。

「新しい青基本G!」

周辺警護がヴァリアブルで場にあるので、紫になっていない新しい青Gを出せば。
という意味らしいかったが、姉さんが申し訳なさそうに「うーんとね」と切り開く力をジャンクヤードから拾い上げ、見せた。

「切り開く力は『このターン』の効果だから、新しく出した国力もダメなんだよね…」
「なにそれ!?意味不明なんですけど!!」

憤慨するナツキ。俺ルール押し付けんな!と言わんばかりだ。
そんな彼女の肩をぽんと叩き、「姉さんの言う通りだ」と指摘するミキオ。

「そうなの?ミキオが言うなら間違いないね☆」

ナツキはパッと笑ってそう答え、「でも、国力がなくたって攻撃ぐらいは出来るもん!両面攻撃!」と言って、前のターンと同じようにユニットを出撃させた。
しかし、姉さんは先ほどのようにすぐには本国のカードに手をかけない。

「攻撃ステップ、規定後…」

姉さんはそう言って手札のカードを表にする。
逆転劇の開始を告げる笑みと共に。

「バックホームをアウトフレームDに換装。ブロックは出ないわ」
「じゃあ、8ダメージ受けてよね!」
「うん。ダメージが解決されたから、Dの効果でターン終了時にフルアーマーMk-2にスクープコイン」

アウトフレームDは――未だ箱を抱えた――ユニコーンと刺し違えられる戦闘値だが、しなかった。
ということは、やはり次ターンに確実に5国力を揃えたいということ。…あのユニットか?
ミキオはそう推測して、ため息をつく。

ナツキはブロッカーユニットを残していない。
フリーダムガンダム(ハイマット)での”攻撃による回復”が始まれば、ダメージレースでは圧倒的にナツキが不利だ。

「あたしのターン。配備フェイズ、白基本Gを出して…」

いつの間にか、少女マンガを片手にタンサンも対戦を見ていた。
ミキオと同じことを思ったわけではないが、ナツキの猛攻が終わりそうなことは雰囲気でわかった。

「ガンダムヘビアームズ改《23》をプレイ」
「って、はぁ!?」

姉さんが「満を持して登場♪」と言いながら出したユニットを見て、ミキオとタンサンは顔を見合わせた。


つづく


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txt:Y256

初出:mixi(10.03.08-09)
掲載日:10.03.09
更新日:10.04.01