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第5(11)話 段違いの破壊力



「戦闘フェイズ、ヘビアームズ改に弾薬コインを3つ乗せるわ」

と姉さんは、――パッケージアートにインパルスガンダムが書かれたスターターを流用した――コインケースからコインを取り出す。
ガンダムヘビーアームズ改は交戦中となった場合に自軍弾薬コインを全て取り除き、交戦中の全ての敵軍ユニットに取り除いたコインと同じ値のダメージを与える効果を持ったユニットだ。
弾薬コインは自身のテキストで自軍攻撃ステップに3個乗せることが出来る。

「ミキオちゃん。これ、ネタデッ…」

コインが乗ったヘビーアームズを見て、「ネタデッキじゃないかよォ」と言おうとしたタンサンの口をミキオが口を手で塞ぐ。
手加減されてるとわかったら、ナツキの機嫌がこれ以上悪くなって面倒になるのは目に見えていた。

「出撃しないで、ターン終了よ」

姉さんは手札をチェックして、そう告げる。
ナツキのターンとなるが、彼女はヘビーアームズ改を見て難しい顔をしたままだ。

「配備フェイズ。ユニコーンガンダムの箱を使うよ!」

ナツキはユニコーンガンダムに裏向きでセットされたカードを表にする。
背景が黒く、一見どの勢力のカードかわかり難いカードだ。

「リゼル!このカードは場に出たら、本国の上7枚を見て仲間を呼べるの」
「了解よ」

ナツキは本国のカードをサーチして…1枚のユニットを場に出した。
ダメージを与える場所によって違う効果を発揮するコンビカード、Zガンダム&百式だ。

「3ダメージを交戦中の全員に与えるってことは…あれ?」

ナツキはヘビーアームズ改見をながら、ぶつぶつを勘定をする。

フルアーマーMk-2の防御力は5、ユニコーンとZ&百式は4。この3枚はダメージを受けても生き残ることが出来、ヘビーアームズ改とダメージの応酬が出来る。
だが、格闘、耐久共に3のリゼルは無理だ。
となると、先頭にアウトフレームDが来るとして、部隊戦闘力が9あればヘビーアームズ改まで破壊することが出来るはず。
部隊戦闘力9は、Zガンダム&百式、フルアーマー、ユニコーンで出撃すれば出せる。
こっち3枚とあっち2枚の交換だが、ヘビーアームズの弾薬コインが6になって防御も出来なくなるのはまずい。
ミキオがそんなことを考えてる間に、ナツキは「無理無理。戦ったら負けるじゃん!ターン、エンド」と宣言していた。

「あたしのターン、もらうわ」

姉さんは流れるように、6国力を置き、フリーダムガンダム&ジャスティスガンダムを配備した。
フリーダムガンダム(ハイマット)のように本国へダメージを与える必要がない回復ユニットだ。
「うわっ…でか!」とナツキは目を丸くする。
ユニットとしてのサイズも、6国力+PS装甲持ちであるが故に大きいのだ。

「さっきのターン怖気ずいたのが運の尽きね、戦闘フェイズ行くわよ?」
「なによそれ!」

姉さんは少し挑発気味に言って、ヘビーアームズ改にコインを3枚乗せた。
これでナツキのユニットは防御に出て交戦中瞬間破壊される。本国は守れない。

「攻撃ステップ規定で、宇宙にフリーダム&ジャスティスとヘビーアームズ改を出撃させるわ」
「…まだこっちには序盤の貯金があるもん。11ダメージくらい受けてやる!」

ナツキが捨て山にカードを移すのを確認して、姉さんもフリーダム&ジャスティスの効果で本国を11回復する。
お互いの本国は20枚前後…差はこの一撃で一気に縮まった。

「スクープコインをZ&百式に乗せて、ターン終了よ」

姉さんはユニットをロール状態で配備エリアに戻す。

終わったな。
ミキオはそう思って頭をかいた。
姉さんのユニットは3枚ともそのスペックを発揮できる状況なのに対して、ナツキのユニット4枚は、場に出るときに発動する効果持ちが2枚と、スクープコインでテキストがなくなったユニット2枚。
サイズでも負けている。
最初はいけると思ったんだが、やはり姉さんは盛り返してきた、さすがだ。と。

「うー…攻撃ステップ。宇宙にZ&百式、リゼルと地球にユニコーンガンダム、フルアーマーを出撃!」

ナツキはドローして唸ったかと思えば、開き直った全ユニット出撃を宣言した。ユニットが4枚戦闘エリアに出る。
姉さんはアウトレームDを出撃させるか悩むそぶりも見せずに本国のカードを捨て山に13枚移し、スクープコインをヘビーアームズ改に乗せた。

「ターン、エンド」
「あたしのターン。ドロー」

姉さんはカードを手札に加えながら、自分がこのゲームをやり始めたときの事を思い出す。

大振りな攻撃に、雑なプレイイング。
でも、戦闘エリアにこそ勝利があると信じて疑わなかった、あの頃を。
そうじゃない、それだけじゃあないと教えてくれた大人、先人たちの事を。

そして、今度は自分がこの子達にとっての”そういう存在”にならなくちゃいけないのかな、と。

「ヘビーアームズ改にさらに3弾薬。攻撃規定は、フリーダム&ジャスティスとDで行くわ」
「その攻撃は通らないんだから!一時休戦のカードをプレイ」

「あんたと休戦する気はないけどね」などと言ってナツキはターンを始める。
今の攻撃をかわしたことで姉さんの本国は回復できていない。
だが、防御にはあのヘビーアームズ改。

「あんたの本国、今何枚?」

ナツキは姉さんの本国を指差してそう聞いた。
ダメージレースに勝てないと悟ったか、なにか手段があるのか、彼女は落ち着いていた。

「11枚よ」
「ならいけるかも!…ユニコーンにキャラクターカード、バナージ・リンクスをセット!」
「…あ。なるほど、そういうキャラもあったっけ」

姉さんは反省する。
フルアーマーMk-2とZガンダム&百式にコインを乗せて満足していたが、さっきのスクープコインはユニコーンに乗せるべきだった、と。

「今度は、この薄い本国じゃなくて捨て山から箱を探すわ!」

ナツキは捨て山のカードをじっくり見て、長考。
何かの枚数を数えるそぶりも見て取れた。
そして、1枚のカードが裏向きで、ユニコーンにセットされる。

「今度は…なにかしら。見せてくれる?」
「もちろん!あんたをぎゃふんと言わせるカードは、これ!」

ナツキはセットされた箱を、間髪いれずに表にする。

「2枚目のリゼル!」
「…お?」

姉さんは眉をひそめた。またユニット?と言わんばかりの顔だ。
それを見てナツキは「あーら、お姉さん。説明が必要かしら?」と意地の悪い笑みを浮かべた。

「捨て山に3枚目…最後のリゼルはなかった。ってことは、残り8枚の本国の中にいるってこと!」

ナツキはそう言い放ち、本国の上を見る。目論見どおり、3枚目のリゼルが出すことができた。
このターン、バナージのプレイとそこからのリゼル2枚。ユニットは一気に6枚になり、戦力は整ったと言える。
ナツキは姉さんの残り本国11枚を見据えた。

「意外に伸びるわね」

姉さんは、意外そうに、しかし嬉しそうに微笑んだ。

宇宙エリアに出撃したのは、バナージがセットされたユニコーンガンダムと、リゼル2枚。
地球エリアに出撃したのは、Zガンダム&百式を先頭にフルアーマーMk-2とこれまたリゼル。
部隊戦闘力は共に10…姉さんの本国に致命傷を与えることができる値だ。

「…いいわ。こっちもちょっとばっかし頑張りますか」

向かってくる6枚のユニットに、まだ『負け』を宣言しない姉さん。
クイックを持ったユニットがあるのだろうか?とミキオは推測したが。
ウイングゼロやデュエル&バスター、デスサイズヘルがあるなら、すでに前のターンの攻撃に使ってこのゲームを終わらせていたはずだ。

「防御ステップ規定、宇宙にヘビーアームズ改を出撃。交戦中になったから、交戦中の全ての敵に9ダメージよ」

姉さんはヘビーアームズ改をユニコーンガンダムにつき合わせた。
と同時にコインをどけ、自動効果でダメージを与える。これで宇宙の部隊は全滅だ。

「バカみたいにコイン乗っけた割には、本国守れてないじゃん!」
「いいえ。ナツキちゃん、このカードは任務を全うするわ」

「え?」と返すナツキに、姉さんは手札のカードを表にした。
ミキオの予想通り、ユニットカードではなかい。

「コマンドカード、オペレーションメテオ。宇宙エリアにいるヘビーアームズ改に、大気圏突入の効果を使用するわ」
「タイキケントツニュウ?」
「ひらたく言えば、宇宙にいるユニットが地球に移るってこと」

こういうことね、と姉さんはヘビーアームズ改のカードを、今度はZ&百式の前につき合わせた。
それで状況を把握したナツキは「げっ!」と眉間にしわを寄せる。

部隊戦闘力が10あろうとも、強襲や速攻を持たない双方。残るのは『ヘビーアームズ改とZ&百式が相打ち』という事実だけだ。
ナツキに残されるのはフルアーマーMk-2とリゼル。
さすがに彼女も勝負が決まったのは痛いほどわかった。

「あたしのターンでいいかしら?」
「うがー!もうやめーっ!」

と言ってナツキはテーブル突っ伏し、カードが散らかる。
テーブルの上で互いのカードが混ざった様を見て姉さんは「あ゛ー」と呻いた。

「いい加減にしろよ、ナツキ」

見かねたミキオが突っ伏して喚くナツキをテーブルから離す。

「もう帰る!」
「言われなくても、おめーがこれ以上迷惑かけないように帰るっての」

ミキオはナツキを小突いて、「じゃあ姉さん、そろそろオレたち帰ります」と姉さんに言った。
彼女はばらばらになった二人分のカードを丁寧に集め、枚数を確認してナツキに返す。

「カードは大切にしてあげなさい」

姉さんは真顔でナツキの目を見て、言う。
ナツキはさすがにやりすぎたと思ったのか、大人しく「ごめんなさい」と小さな声で返した。

ミキオも「もう帰るぞ」とタンサンにも声をかける。
いつの間にか彼は観戦を止めて、また漫画を読んでいたのだ。

「お、おう」

と遅れて返事をしたものの、部屋を出るのは彼が一番早かった。
ナツキは来る時よりも増えた荷物を小さなバックに入れるのに手こずり、最後だ。

「お邪魔しました~」

タンサンがそう言って一番最初に姉さんの家を出る。
次にミキオ、最後にナツキが…ドアノブに手をかけて、振り返り姉さんを見る。
少しウェーブをかけた黒茶の髪に「大きい」というほどでもないが、自己主張はちゃんとしている胸、中肉というか女性らしい四肢。
つま先まで目線で追って「ミキオはこういうのが好きなのか」と思い、なんだか少し悔しくなる。

「何?」
「別に」

プイと顔を背けたナツキに、姉さんは「あのさ」と口を開く。

「若いんだからさ、そんなにメイク頑張らなくてもいいんじゃない?」

急になんだ、とナツキは再び姉さんの顔を見る。
彼女は「まぁ、あたしも高校入ったばっかりの時は結構気合入れてたけどね」と懐かしむように続ける。

「…忠告どうも、オバサン」

ナツキはきっと睨んでドアを閉める。
閉まったドアに姉さんはやれやれと息をつき、髪を解いた。


つづく


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txt:Y256

初出:mixi(10.03.10-11)
掲載日:10.03.11
更新日:10.04.01