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「ホント計画性無いよな」

ミキオは眉間にしわをつくり、隣に座ったタンサンを見た。
遠征に行こうと決まったものの、その週はカキヨの大会が無いどころか、電車で行けるような大会はなかったのだ。

あるのは、近くに駅の無いショッピングセンターにあるゲームショップの大会。
ふたりは諦めかけたのだが、ナツキは「行くって決めたら行くの!」と駄々をこねた。

「車じゃなきゃいけないんだぞ?」
「車があればいいんでしょ?じゃあ送ってもらえばいいじゃん」

そういうわけで三人は今、射勢家の車でそのショッピングセンターに向かっているところだった。

「それにしても、ナッちゃんちってガチで金持ちだったんだ」

タンサンがヒソヒソとミキオに言う。
それはミキオも感じていた。彼は車には詳しくないが、今自分たちが乗っているのは「高級車」といわれる部類の車だということぐらいはわかった。
しかも運転手つきだ。

「なにヒソヒソやってんのよ」

助手席に座ったナツキが、振り返って笑顔を向けた。
ミキオは「何でもねーよ」窓の外を見る。
昼下がりの道。ベビーカーを押して歩いている人が目に留まった。

「姫様。シートベルトをお締め下さい」

運転手の女がちらりとナツキを見てそう言う。
20代くらいの女性で、長い赤茶毛は肩くらいで1つに結ばれていた。
ナツキの話だと、射勢家の使用人らしい。

「いーじゃん。真理のケチ」
「そういう問題ではありません」

ナツキは不服そうにしながらもシートベルトを締めた。
いやに聞き分けがいいな、とミキオは首をかしげた。


第7(13)話 狙い撃ち



車で送ってもらったせいか、大会開始時間に余裕を持って到着することが出来た。
目的のゲームショップはショッピングセンターの2階の一番奥にある。

「ガンダムウォーの大会出たいんですけど」

いろんなカードパックやゲームソフトが並ぶ店内。カウンターまで進んだ3人はそう聞く。
店員は参加用紙を持ってきて「では、こちらの紙に名前をどうぞ」と差し出した。
コピーした紙に枠が並んだスコアシートだった。

三人は出された紙に名前を書き、参加費を出す。

「参加パックはどれにしますか」

と店員はショウウインドウの扉をスライドさせ、見せる。どうやら参加費でパックがもらえるらしい。
品揃えは悪くなく、武神降臨を除けば最近の製品はそろっていた。
「宇宙を駆逐する光で」と3人の声が重なる。新しいことはいいことだ。

「うわ…ウチまたリゼルだ。こっちのバージョンもう4枚もあるのに」
「ご愁傷。おれっちは…ガンダムラジエル」

今度はミキオが「ご愁傷様」と言って自分のパックを明けた。
茶色のカードだ。使えるかどうかはわからない。
が、茶色である以上、使ってやる義務もあるような気がした。

「ミキオちゃんなに出た??」
「教えねーよ」
「うがー!教えなさい!ミキオー!」

3人が問答をしていると、置くのテーブルのほうから常連らしい青年が声をかける。
「1回戦は13:10分から始めますが大丈夫ですかー?」と。

ミキオたちも奥のデュエルスペースに移動する。
そこにはすでに人が集まっており、3人を含めて12人のプレイヤーらしき人がいた。

「それでは今から1回戦の対戦を発表していきます」

裏側にしたスコアシートから、2枚ずつ組にしてテーブルにおいていく青年。
どうやらこの大会を切り盛りしてくれるらしい。
お店のひとは何してるのかしら、とナツキは思った。

「へっへ。おれっちの報復ジンクスが今日も大活躍だぜ」
「オレに当たらないように祈ってな」

ミキオとタンサンは口々にそう言いながら、自分のスコアシートを探す。
どうやら3人とも自分のスコアシートを見つけたようで、席に着く。

「僕は塚木ジュン。よろしくね」

ミキオの向かい側に座ったちょっと太めの少年がそう言ってデッキをケースから出した。
年は同じくらいだろうか、望むところだ。とミキオ。

「栗田ミキオだ。よろしく」

ミキオもデッキケースからデッキを出し、参加パックから出たカードをデッキに入れる。
シャッフルしながらあたりを見渡す。参加者は偶数で不戦勝はなし。
さっきの”進行係”の青年もテーブルについていた。

「それでは第1回戦始めてください」

全員がシャッフルを終えたのを確認して、合図と共にお互いに頭を下げて「お願いします」と言う。
ナツキもタンサンもちゃんと礼儀正しくしてるだろうか、と少し心配しながらミキオは右手を出す。
じゃんけんに勝ち、先攻だ。

「茶基本Gを配備。禁忌の胎動のボルジャーノンを配備」

そう言いながらユニットをプレイする。
そのカードはスリーブ越しにもわかるほど傷だらけだった。

ミキオがガンダムウォーを始めたのは、近所の兄貴分の影響だった。
そのときに貰った最初の茶色ユニットがこのボルジャーノン。
破壊力やサイズは決して大きくないが、一番息が長く磐石なユニット。とミキオの信頼は厚い。

「了解」
「ターンエンドだ」

ジュンはカードを手札に加える。
さて、色は?とミキオは見据える。

「ホワイトベース隊を配備」
「青か」
「うん。あとはこのユニット、ボール改修型」

ターン終了を告げ、ボールの効果でカードを引くジュン。
ボルジャーノンと違い、格闘力が無いので攻撃には使えない。

「オレのターン、ドロー。配備フェイズに茶基本Gを配備」

ミキオはボルジャーノンで2ダメージを与え、ターンを終える。
返しのターン、ジュンは青基本Gをプレイしただけでターンを終えた。

「配備フェイズ、3枚目の茶基本Gを配備して…このカード」

ミキオは今引いたばかりのカードを表にした。
今日の参加パックのカード…よもやこんなに早く試すことが出来るとは。

「ゴッドガンダム&ドモン!ACEカードだ」
「へー!茶色のACEかぁ」

ジュンはまじまじとテキストを確認して了承する。
24弾のACEカードはドローと地形適正付与、そして色別の第3効果を持ったカードだ。
ミキオの場はまだ3枚のGとボルジャーノンしかない為、ドローのテキストしか起動できないが、それでも十分強力だった。
茶色という勢力が、簡単に本国からカードを引くことが出来ること自体稀だからだ。

「このターンもボルジャーノンで攻撃だ!」
「受けるよ…2点」

ミキオはジュンが捨て山にカードを移したのを確認し、ターンを終える。

「ドロー…お」

ジュンは引いたカードを見て「ラッキー」と言って、そのまま場に出す。
紫基本Gだ。カードのデザインから新弾プレリュードスターターのものだとわかる。

「…!?」

青紫デッキ…だろうか?とミキオは口に手を当てながら考える。
紫基本Gという存在はある種の異端的存在で、ガンダムウォーが発売から10年経過した頃に唐突に出てきた7色目の基本Gだ。
その特性上、片方の指定が紫のデュアルカードの存在に直結するカードでもある。

「アムロ・レイ《19》をボールにセット」

続けてジュンはキャラクターをプレイする。
本国の上4枚をサーチして、ユニットを戦闘エリアに出せるキャラクターだ。
出したターンは出撃できないが、ボールなら問題ないということだろう。とミキオは推察した。

「ユニットのプレイないんだよね~。戦闘フェズ」
「おう」
「本国をサーチして…いた!GNアーチャーを宇宙エリアに出して、アムロをセット!」

合計国力3のデュアルユニットだ。その戦闘力は、5国力の単色指定を持つユニットに匹敵する。
思ってたよりも…早い。

「本国に6ダメージだ。それと…そのボルジャーノンを狙い撃つよっ!」
「了解」

GNアーチャーのダメージ効果はエリアを問わない。
ボルジャーノンは3ダメージを受け破壊状態となり、ジャンクヤードに落ちる。

「ターン終了」

ミキオはターンを貰い、カードを手札に加える。

「ソロモン海域をプレイ」
「…ピンポイントで来るなぁ」

高機動を打ち消す効果を持った特殊Gの配備に、ジュンはまいったと頭をかく。
しかし余裕は消えない。高機動が消えたとしても依然高い性能だからだ。

「ニュータイプの排除を配備、起動させるぜ。ゴッドガンダムを廃棄して、ハンガーに…シャイニングガンダム《16》!」

指を差したイラストのカード。
配備エリアでは破壊されないテキストを持ったMFだ。

「即座に配備、シャイニングガンダァム!」
「リロールインにそのテキストは厄介かな」
「戦闘フェイズ、ガンダムファイトを申し込むッ!リング!!」

ミキオはびしりと戦闘エリアを指差し、シャイニングガンダムを前に出す。
相手はリングのハンデス効果を嫌がってボールを生贄にするはずだ。

「ボールでブロック。こういうときにも役に立つ」
「撃破。ターンエンドだ」

ミキオはシャイニングガンダムを配備エリアに帰還させた。
ジュンはターンを開始して、カードを引く。

「2枚目の紫基本Gを配備」

ジュンは紫が2枚目であることを強調した。
わざとなのか、無意識なのかはミキオにはわからなかったが、青2紫2で配備できるカードがあることは予想がついた。

「続いて、ガンダムデュナメスを配備」

出撃時に自動で本国かユニットにダメージを与えるデュアルユニットだ。
ユニットの性能、枚数共に圧倒しているからか、ジュン表情には余裕がある。

「危険な任務も配備しておくよ」

ジュンはオペレーションカードを出す。
ロール宣言と手札1枚でオペレーションを破壊できるカード。
しかも、タイミングは配備フェイズ。相手が出したオペレーションをすぐ破壊できる。
ミキオは手札のオペレーションを確認して、「苦しいな」と素直に思う。

「ガンダムデュナメスだけが攻撃に出撃して、まず本国に2ダメージ」

アムロを起動させるもユニットがいないらしく、攻撃規定を宣言するジュン。
ミキオは配備エリアに残ったGNアーチャーを見て「GNアーチャー…ブロックか」と呟いた。

「うん。やろうよ、ガンダムファイト」

リングエリア内ではシャイニングガンダムのテキストは機能しない。
つまりGNアーチャーでダメージを与えることが可能だ。

「考えとくぜ。規定で4ダメージ貰う」

ミキオは本国のカードを捨て山に送る
ターンを開始して、ACEの第1効果で基本Gを2枚ロールさせて1ドロー、その後に規定効果で1ドローする。

「5枚目のGを配備、そして”金色のロシア人”アルゴ・ガルスキー《24》をシャイニングガンダムにセット!」
「んーと…ダメージを受けると交戦中のユニット破壊?」
「そうだ。規定前に撃ってきたら、アーチャーを落とす」

つまり、相打ち。
だが、ミキオは破壊状態のシャイニングガンダムをジャンクヤードのゴッドガンダムに置き換えることでアルゴを生かすことが出来る。
この戦闘はジュンが不利だ。

「攻撃ステップ、シャイニングガンダムがリング!」
「僕の手札はやれないね…いいよ、相打ち希望だ。GNアーチャー!」

リングと宣言されたエリアで、お互いのユニットが向かい合う。
交戦ではシャイニングに分があるが、破壊状態のGNアーチャーがシャイニングガンダムに3ダメージを与えて刺し違える。
交戦はあっさり終わった。ゴッドガンダムへの置き換えも問題なく行われ、ターンはジュンにまわる。

「5枚目のGを配備。アーチャーの穴はきっちり埋めるよ…ケルディムガンダム!」
「なんか似たようなのが出てきやがった…」
「シャイニングガンダムが倒れた時点で、もう怖いものはなくなったんだよ」

ジュンは自慢げに、大型のライフルを構えたイラストを見せる。
自軍配備エリアから敵軍配備エリアを狙えるダメージ効果と、戦闘エリアへのダメージ効果。もはやリング以外に出ることは厳しい。

「だが、今のゴッドガンダムの耐久は10!撃ち抜けるかよ?」
「それなら問題ないよ。危険分子の習慣で黙っててもらうから」
「な…」

ジュンは小さく笑ってオペレーションカードをゴッドガンダムに付けた。
ミキオはゴッドガンダムに釘付けになる。
ゴッドガンダムはもう、立ち上がることは無い…!?


つづく


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txt:Y256

初出:mixi(10.03.16-17)
掲載日:10.03.17
更新日:10.04.01