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「では、結果を発表していきます」

対戦結果を集計するために対戦スペースを離れていた谷本が、集計の終わったスコアシートを手に会場に戻ってくる。
それを合図に、参加者たちが谷本の所に集まる。ミキオたちも成績は散々だったがそれに習った。

「1位、諏訪部睦月」

参加者が揃ったのを確認して、谷本は結果を発表し始める。
パチパチと拍手が起こり、睦月が賞品であるスリーブと勲章を貰う。
結局、ミキオを下した後も順当に勝ち上がった彼が優勝したのだった。

「あいつ、ムツキって言うんだ」

ミキオが始めて聞く対戦相手の本名に反応する。
先ほど谷本からその名前を聞いていたタンサンは「らしいね。連続優勝中らしいよ?」と補足した。

「だから”KING”か…面白れぇ」

ミキオはそう言って睦月に歩み寄っていった。


第13(19)話 修羅を生きる漢



ミキオは――結果発表が終わった直後の――睦月に「おい」と声をかけた。
手にはデッキケースが握られている。

「KINGさんよぉ、リベンジだ!」

振り返った睦月は「あ、MFの」と思い出したような声を上げる。

「今度にしてよ。今日はもう帰ろうと思ってたんだ」
「勝ち逃げかよ」
「負けたそっちが悪いよっ」

そう言ってきびすを返し、対戦スペースの出口へと向かっていく睦月。
ミキオはやれやれと手を上げて「覚えてろよ」と言った。
安直な捨て台詞に思えたが、それ以外思い浮かばなかったのだ。

諦めてカバンにデッキケースをしまった彼の前に影がさす。

「では、私が相手をしよう」

ミキオの前に立ちはだかった長身の男はそう言った。
ダークグリーンのストライプが入ったスーツを着込み、整った顔に不釣合いなサングラスをつけた男だ。

「相手をする」と言う以上、プレイヤーなのだろうが…大会には参加していなかったハズだ。
とミキオは男を観察する。どこかで見たような気もする。

「あんた、もしかして…」
「ミスターハタドー!?」

ミキオが不審に思いながら口を開こうとしたとき、離れたテーブルで友人と談笑していた谷本が、彼を見つけ驚きの声を上げる。
知り合いなのか、と見上げるミキオ。ハタドーと呼ばれた男性は左手を上げて答える。

「大会に参加してないから、今日は来ないかと思いましたよ」
「所要があってな。様子を見にきたら、やる気のある少年が一人」

ハタドーは、どこから出したのかダークグリーンのデッキケースを机の上にトンと出し「私が相手をしないわけにはいかないだろう」と続けた。
状況が読めない谷本は「は、はぁ」と眉を上げた。
が、ミキオには理解できた。つまり、このどこかで見たような男が自分の相手をするということだ。

「いいぜ。暴れ足りなかったところだ。勝負!」
「望むところだ、少年」

二人の目線が交差し、お互いのデッキケースから50枚のカードが取り出される。
ミキオが席に着こうとしたとき…。

「うがー!飽きたー!帰えろー!」

ナツキが勢い良く飛びついた。
不意打ちを喰らったミキオがいすの足につまずき、よろけて、ナツキ共々倒れる。

「邪魔すんな!」
「うわーん、ミキオのバカー!ウチんちの車に乗ってきたじゃん!」
「っ…何の関係が」

などと言い合いになる2人。
それを見たハタドーは、対戦できる雰囲気ではないと首を振り、タンサンに視線を向けた。

「では、対戦しようか」
「おれっちはいいっす。今日持ってきたデッキ、なんか色事故ばっか起きると思ったら、残留部隊G入れてくるの忘れてたんで」

そう。タンサンのデッキはジンクスを出すために(紫以外で)3色の国力を必要とするデッキにもかかわらず、「間違った改良」のせいでデッキとして機能する代物ではなかったのだ。
そんなもので大会に参加した彼も彼なのだが。
ハタドーは「それは残念」とタンサンから視線をそらす。

「姫様」

ミキオと言い合うナツキの耳に、聞き覚えのある声が届く。
薄手のコートに帽子を深々と被った女…車の運転を務めてくれた使用人、来栖真理が対戦スペースの入り口にいた。
途端にナツキは笑顔で「あ、真理~」と彼女に飛びつく。

「迎えに来てくれたんだね?よし、帰ろう!」
「はい。そろそろお時間かと思いお迎えに…」

そう言いながら真理は、埃を払いながら立ち上がるミキオと、ハタドーの誘いを断るタンサンにも目線を向ける。

「では…君が相手かな」

ハタドーは何を思ったのか真理に視線を合わせ、そう言った。
対戦スペース中が「なんでそうなる」とツッコミの視線を送る中、その使用人は黙ってハタドーに視線を返す。
目つきが悪い、というよりは眠そうな表情の彼女だったが、瞳はハタドーをしっかり捉えていた。

「…仕方ありません」

とナツキの肩に手を当て、一歩前に出る真理。
ナツキは「え?どゆこと?」と真理の顔を見上げた。

「そちら様の気がどうしても晴れないというのなら、姫様たちの代わりに…私が」

さらにもう一歩。
深めに被っていた帽子をテーブルに置き、肩くらいの長さで結ばれた赤茶色の毛が露になる。

その台詞に驚いたのは、ミキオとサンサン。
「え?使用人さんもやるの?ガンダムウォー」とナツキの顔を見る。

「うん。ウチが家で練習相手に困らないように、ルール覚えてもらったんだ」
「初心者のナツキに教わった…?」

2人の沈黙。
その間にハタドーと真理はテーブルに着き、カードをシャッフルし始めた。
いつの間にかコートは椅子に掛かっていた。

「ってことは…”超”初心者」
「あー…そうとも言うね☆」

ナツキは「えへっ」とミキオに笑って返す。
2人はお互いのデッキをカットし、相手の眼前に返した。
対戦スペース中が「一体、この対戦にどんな意味があるんだよ」という雰囲気に包まれていた。
が、そんなことはお構いなしに、準備が出来た2人はゲームを開始する。

「少々お待ちください、姫様。10分で済みます」
「フフッ。面白い…いざ、勝負!」


つづく


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初出:mixi(10.04.02)
掲載日:10.04.02
更新日:10.04.02